絶対正義は鴉のマークと共に   作:嘘吐きgogo

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「もう、分割しないって言ったじゃないですか!?」
「グハハ、そんなことを信じたのかね? 愚か者め!」

というわけでごめんなさい。また分割しちゃいました。
無駄に長い。もっとスマートな文が書けるようになりたい。

誤字修正しました。空さん本当にありがとうございます。
空さんがいないとこの作品は誤字で埋まるw



8話ー進退

「指銃「棍」!」

 

 右手の制御棒を的の大岩に向かって、貫く様に叩き付けると、派手な音を立てて岩が砕ける。

 指銃――六式と呼ばれる体技の一つで、極限まで鍛えた肉体によって素手で相手の体を打ち抜く技である。六式は技のバリエーションが豊富で、指銃も一点集中をするという点は変わらないが、今、私がした様に指以外から繰り出す事もできる。

 

 

 ガンッ!

 

「いったーい!」

「バカもん! それのどこが指銃じゃ!」

 

 頭に拳骨が振り落とされる。とんでもない衝撃で頭が揺さぶられ、痛みで涙が出てくる。

 私を殴ったのは、二メートルを超える巨漢の年配の男性――海軍の英雄といわれている、ガープ中将だ。

 

「今のはただ力任せに砕いただけじゃろうが、何度やればわかるんじゃ!」

 

 上官との訓練の後、私が目を覚ますと、何故かガープ中将が私の訓練を見てくれる事となっていた。

 中将は基礎訓練は意味が無いとわかり、訓練開始から今まで私に体技を中心に叩き込んだ。

 教えられたのは海軍に伝えられている体技、六式。

 六式――それは、鉄塊、紙絵、剃、月歩、嵐脚、指銃の六種の体技。六種全てを極めた者は六式使いと呼ばれ、超人的な強さを得る事ができる。海軍の中にも何種か体得している者はいるが、六種全てを体得するのは並大抵の苦労ではすまない。

 

 それで、私はずっと六式の訓練をこなしているのだが

 

 

「剃!」

 一瞬で数メートルの距離を駆け抜ける。

 

 ガンッ!

 殴られる。

「速く走っただけじゃろうが!」

 

 

「月歩!」

 大気を蹴って空中を自在に移動する。

 

 ガンッ!

 殴られる。

「羽で飛ぶな!」

 

 

「紙絵!」

 ヒラヒラと体を動かし、体を攻撃を避ける事を意識する。

 

 ガンッ!

 殴られ、る。

「マントだけはためかせて何やっとんじゃ!」

 

 

「嵐脚!」

 勢いよく蹴りを放ち、鎌風を引き起こす。

 

 ガンッ!

 殴られ……る。

「単に蹴りだけ放ってどうする!」

 

 と習得率が異常に悪い。

 確かに六式を体得するのは非常に難しいけど、それでも何かしらの手応えという物はあるらしいのに、私にはそれが全くない。

 何度も訓練をして思った事なんだけど、私は成長がとてつもなく遅いんじゃないかという事。

 この体になってから、私はあらゆる面で能力が向上したけど、技術を会得する事に関してだけは前の方が上だった気がする。体技だけではなく、他の事に関しても全然身に付かないので、流石に可笑しいと感じた。

 私は今は妖怪だ。もしかしたら、成長という面では人間より非常に遅いのかもしれない。それか、ウツホになったことで、この体がウツホとして完成しているから他の事が身に付かないのかも。

 

 そのせいで、ガープ中将に鍛えられてからも、度胸はかなり着いたけど技術面ではあんまり変わってない。

 それでも、この体を動かすのには馴れたし、ある程度の戦いの勘という物は着いた。

 中将相手ではすぐぶっ飛ばされるけど。

 

 取りあえず、さっきから殴られすぎて意識がなくなりそう。

 目からも痛みのせいで、少し涙がこぼれてしまっている。

 

「鉄塊!」

「……お主、何もしとらんじゃろ?」

 

 事実なので私は目を反らす。元々、体が鉄の硬さなので鉄塊って他の六式に比べてもよくわからない。

 結果的に鉄塊をしているのと同じだと思われるが、中将が言うには、体技でやるのと能力の特性でやっているのは全然違うとの事らしい。

 

「アホかぁ!!」

 

 バギンッ、と下からアッパー気味にぶっ飛ばされ、私は今度こそ意識を失った。

 

 

 

 

ガープSIDE

 

「全く、こやつは……」

「きゅぅ~」

 

 大の字に仰向けに倒れ、目を回して気絶している姿を見ていると呆れてくるわ。

 こやつを鍛えてからしばらく立つが、全くと言っていいほど成長しておらん。ここまで鍛えがいの無い奴は始めてじゃわい。

 何所でどうやって鍛えたのか、基礎体力は他に並ぶ物が居ないほど高い癖に、技術面に関してはずぶの素人並に酷い。どうやったら、こんな変に育つんじゃ? 森に一人で籠って、延々と基礎訓練をしていたとしても、自分の体の動かし方すら碌に分からないなぞ、矛盾し過ぎじゃ。

 初めて見た時は、育てがいのありそうな奴じゃと思ったんじゃがな~。

 

 

 

 

 

 その日、ワシは、金獅子のシキの襲撃の後始末やら、急増した海賊への対処やらで忙しく、ちょいと息抜きに煎餅でも齧りながら本部の庭園を見に行こうと思っとった。

 じゃが道場の前を通った時に聞こえてきよったのは、いつも聞こえとる新兵達の荒々しい声じゃのうて、すがるような悲鳴と爆裂音じゃった。

 監視役の兵士が新兵いびりでもしとるのかと思っとったら、所々焦げて軽い火傷を負った数人の兵士が逃げる様に道場から出てきよったので、これはただ事ではなさそうじゃと、ワシは道場に足を向けた。

 道場の入り口まで来ると、中からまるで竃の中にいるかの様な熱気が押し寄せてきよった。

 なんじゃ、いったい?

 

「やめろ、ウツホ!」

「駄目だ、聞こえてねぇ!」

「おい、どうすんだ!? 止めねーと!」

「俺達で止まるかよ! 大尉ですら止められねーんだぞ!」

 

 入り口では、後ろに居るワシに気がついていない、逃げ出した新兵達が騒いでおる。

 その視線の先を見ると、道場の中で激しく争い合ってる二人の姿が見えよった。

 片方は新兵達の監視役の兵士、もう片方は服装から新兵じゃろう。動物系の能力者なのか背に生えた羽を動かし空中を舞い、右手に付けた棒のような物で監視役の兵士に殴り掛かっておった。

 これだけを見れば目をつけた新兵に監視役の兵士が直々に訓練をしてやっとる様に見えるじゃろう。

 その監視役の兵士が、火傷を負ってぼろぼろになっていなければのう。

 道場のいたるところにも焦げ目が着いており、熱気で今にも火の手が出そうになっておる。原因は間違いなく目の前で戦っておる二人じゃろう。

 そのうち片方は火傷を負っておる。自分の能力で火傷する奴もおらんだろうしの、となると、原因はもう片方の新兵の方じゃな。

 しかし、見た所、動物系の能力者のようじゃが

 

 そう考えた瞬間じゃった。急な熱風が襲ってきたのは。

 その発生源に目をやると、戦っておった新兵が道場の天井を焦がそうとしておるかの様に、炎をその体から吐き出しておった。

 ワシはその光景を見てある人物を思い出した。

 白ひげ海賊団の若造――不死鳥マルコ。動物系幻獣種の悪魔の実の能力者で、その姿を不死鳥に変形でき、体から再生の青い炎を吹き出す。

 自然系より数が少ないと言われておる、希少種の能力者じゃ。

 最近、本部に幻獣種の能力者が入隊しよったと聞いとったが、もしや、あやつがそうかの?

 

 ワシが考えている間に、炎を吹き出していた新兵がもうぼろぼろになっておる監視役の兵士に向かって襲いかかった。

 かなりの速度じゃ。とても新兵が出せる速度ではない。身体能力だけ見れば一流じゃ。

 

 っ! いかん!

 ワシは攻撃を仕掛けた新兵の目を見て、急いでその場から動いた。

 あの目は獲物を狙う目じゃった。止めんかったら殺しておったな。

 ワシが辿り着く前に、新兵は監視役の兵士が繰り出した槍を、まるで無意味だと言わんばかりに、真っ正面からその体で受け止め、なおかつ叩き折りよった。

 入りたての新兵が鉄塊を知ってるとは考えづらいので、能力のおかげじゃろう。

 何の能力か知らんが生半可じゃ通用せんの。

 

「やめんか! バカもん!」

 

 ワシは殴り掛かろうとしていた拳に力を更に加えて、今まさに監視役の兵士に攻撃を加えようとしていた新兵のその無防備な側頭部を横合いから強打した。

 

 

 

 

 

 

「きゅぅ~」

 

 殴り飛ばした新兵は、か細く可愛らしい悲鳴を上げ、床で目を回しておる。

 女兵士じゃったのか。マントと帽子で分からんかった。

 海軍にも女兵士は数は少ないが確かにおる。ワシと同じ中将にも一人、つるという海軍きっての大参謀がおるしの。しかし、珍しい事には変わりがない。海軍の九割以上は男じゃし。

 

「ガープ中将!?」

「ん? おう無事じゃったか?」

 

 ボロボロな体ながらも、しっかりと意識を保っておった。

 監視役の兵士はふらつきながら、立ち上がり敬礼しようとしとったのを手で制し、楽にさせる。

 

「何故こちらに?」

「ちょいと息抜きしようとしたらの、何やら騒がしいので来てみただけじゃ」

「また抜け出したんですか? センゴク元帥に怒られますよ?」

「息抜きじゃ、息抜き……それより、何があったか話せ」

 

 

 

 監視役の兵士が言うには、自分から戦闘を好む性格というわけでもなく、言われた事も文句一つ言わずにやる真面目な奴じゃったらしい。ただ、その卓越した身体能力のせいで、意味の無い訓練の日々にどこか不安を感じている様に見えたそうじゃ。夜中に自主特訓をしているのを見かねて、自分から特訓相手になったら訓練中にいきなり暴走したと。

 

 こやつがのぉ~。

 未だ床で目を回している姿からは、あの時見た凶悪な目は想像できん。

 今までの訓練中に人に攻撃をしても暴走しておらん事から、強者との戦闘になると性格が変わるのかもしれんの。

 戦闘能力が高いが、戦闘技術もそれを扱いきる精神も無い。

 やっかいじゃな。

 一般の兵士と一緒に訓練させておくのは無理じゃとわかったが、あの動きや能力からそこらの奴に任せとく訳にもいかん。

 ワシが思いついたのは一つだけじゃった。

 何かと忙しいが仕方あるまい。それに、こやつが育ったらどうなるか考えると結構面白そうじゃ。

 

「こやつはワシが預かろう」

 

 

 

 

 

 そういった訳で今まで育ててきたんじゃがな~。

 ワシの予想と違い、まったく技術を身につけんし、精神にいたっては会った時より酷くなっとる様にみえるのぉ。

 

「……温泉卵……おりぃ~ん、もう一個とって……」

「はぁ~」

 

 ワシは一度ため息を深く吐くと、先ほどまで気絶しておったのに、いつの間にか幸せそうに涎を垂らしながら眠っとる馬鹿弟子を起こすために、拳を高く振り上げた。

 

 

 

 

 

 

ウツホSIDE

 

 透き通るような青空に、強過ぎも弱過ぎもしない日差し。まるで春風のようにあたたかな風が帆船のマストを押すのを見ながら、私は船の入り口の屋根に当たる所で横になり、羽をめいいっぱい広げ気持ちよく日光浴をする。

 下の甲板では、船の雑用係が掃除をしているのか、モップで甲板を磨く音が定期的に聞こえてきて眠気を誘う。

 さて、このまま寝ようかと思ったら

 

「大尉~、ウツホ大尉!」

 

 あ~、もう!

 せっかくいい気持ちだったのに、部下の誰かから呼ばれる。

 ガープ中将に訓練をつけてもらってから一年。いきなり「実戦して来い」と言われほっぽり出された。

 ほっぽり出された当初は、訓練のできからも少尉の階級をもらったんだけど、一年も海賊を捕まえていたら大尉になった。

 一年以内に二階級も上がるのは普通は無理だけど、私がこの一年間で捕まえた海賊団は五十を超える。

 捕まえた海賊の総計賞金額はすごい事になっている。

 これだけ捕まえれば、階級も上がる。それに今は海賊が急増した対処のため、海軍の方針として力のある者は階級が上がりやすくなっている。

 将校になった私は私服が認められる階級になったので、海軍の制服からウツホの服に戻っている。少尉になった時に将校に与えられるコートは一応もらったが、私はそれを着ないでいつものマントの背中に「正義」と文字を入れたのを着ている。

 実は結構かっこいいと思って気に入ってる。

 

 私はしぶしぶ体を起こすと、屋根の上からひらりと甲板に飛び降りる。

 

「あぁ!? そこにいらしたんですね、大尉!」

「なによ~、いったい?」

 

 眠りかけた所を邪魔されたので、ちょっと不機嫌になりながら兵士に聞く。

 

「はっ! 三時の方向に海賊船を発見しました!」

「え~、また~?」

 

 うんざりして羽が自然と下がる。

 数日前も発見して、捕まえたばっかなのに。大航海時代とはよく言った物で、海賊がそこら中にゴロゴロしてる。

 まったく、ゴキカブリじゃあないんだから。

 一匹見つけると三十匹は出てきそうで嫌。

 

「発見した海賊は、帆の髑髏マークから……」

「そういうのは別に良いわ。海の上じゃあ関係ないもの。賞金首なのは間違いないのよね?」

「は、はっ!」

「じゃあいつも通り停船命令だして」

 

 まぁ、止まった事無いけど。

 部下の兵士は敬礼すると、自分も慌ただしく動きながら、他の兵士達に船を海賊船に向けるよう指示を出した。

 あれ? あの兵士もしかして副官だったのかな? 皆同じ格好してるから、兵士の区別がつかないよ。

 

 

 拡声電伝虫――カタツムリの様な姿をした生物で、電波で仲間と更新する能力がある。人間が受話器やボタン等を取り付けて、特定の電伝虫と更新する事ができる様になり、多様な種が居て、この世界の電話やカメラ等の映像、音声関連の様々な機械の変わりになっている――が聞こえる範囲まで近づく。といっても、大砲が届くか届かないかという距離だけどね。

 

『そこの海賊! 武装を解除して停船しろ!』

 

 拡声電伝虫で部下の兵士が海賊船に向かって停船命令を出す。

 さてと、今回はどうかしら?

 

 

 

 

 

「あっ、今回も駄目ね」

 

 炸裂音の後、重い物が落ちてくる音。

 

「大尉! 撃ってきました!」

「わかってるわ、いつものことじゃない。それにこの距離じゃあ、そう当たらないでしょ?」

「いえ、あの弾道だと直撃します!」

「うにゅ?」

 

 ヒューン、っと放物線を描いて飛んでくる砲弾をよく見れば、確かに真っ直ぐこちらに飛んできている。

 仕方ないな~。

 フワリと浮き上がり船の前に出て、飛んでくる砲弾に身をさらす。

 砲弾が直撃する寸前、私は体から炎を吹き出させる。

 

 ジュュュウ、っとそのままだと私に当たるはずだった砲弾は、融点を超え沸点を超えて、音を立てて蒸発する。

 

「停船命令無視。ちょっと行ってくるわね」

「はっ! お気をつけて」

 

 私はこれからやる事を考えると、胸の奥から沸き上がる感情を抑えきれずにニヤリと顔に凶悪な笑みを浮かべ、私の中でクルクルと原子を回し核融合を開始した。

 

 

 

 

 

SIDE OUT

 

 

『そこの海賊! 武装を解除して停船しろ!』

 

 

「お頭、海軍の奴らあんな事言ってますぜ?」

「大砲すら撃ってこないで、舐めた奴らだ。おい! 奴らにその気がねぇならこっちからお見舞いしてやれ!」

「了解、お頭。俺にかかればこの距離でもでっかい的だぜ」

 

 海賊船の狙撃手が大砲の狙いを、停船命令を出してきた船に合わせる。

 海軍船は一隻しか居ないので、あれさえ沈めてしまえば終わりだと海賊達は笑う。

 

「オラよ! くらいやがれ!」

 

 炸裂音を響かせ、大砲から砲弾が勢いよく飛び出る。飛び出た砲弾は狙撃手の狙い通り、真っ直ぐに海軍船へと向かう。

 あれは直撃だ。

 海賊全員がそう思った。

 

「よっしゃ、よくやった。てめーら、一発くらわした海軍を逆に叩きのめして名を上げるぞ!」

「「「「おぉぉー!!」」」」

 

 砲弾が着弾するのを見る前に海賊船の船長は部下達に命令し、部下も雄叫びを上げそれに答える。

 海賊がはびこるこの時代。名が売れた者こそ海賊として成功を収める。財宝がなくとも、名を上げるために戦うのは当たり前の事でもあった。

 戦いだと意気込んだ海賊達が船を煙を上げているだろう海軍船に向けようとしたその瞬間

 

 

 

 ギィィィオオオン!

 

 

 

 何かが高速で通り過ぎ、海賊船の一部を根こそぎ削り取っていった。

 その後少し遅れてとてつも無い衝撃波が海と海賊船を押し付ける。

 船に乗っていた海賊達は船ごと吹っ飛ばされ、立っていられる者はおらず、何が起きたかさえ分からない。

 

「何だー!? 何が起こったー!?」

「分かりません!」

「何かが通り過ぎて行ったようです!」

 

 海には、傷一つない海軍船の少し前から海賊船の方角に、海賊船をかすめる様な軌道で幅数メートルのへこみができていた。

 転覆こそしなかったが、一部が吹き飛び、強力な衝撃波をくらった海賊船はギシギシと悲鳴を上げている。

 

「直撃してないのに。結構もろいね、この船」

 

 何とか体制を立て直した海賊達に、聞き慣れない歳若い少女の声がかけられる。

 

「誰だ! 何所にいやがる!?」

「あそこだ! 海の上!」

「何だあいつ!? 飛んでやがるぞ!?」

「悪魔の実の能力者か!?」

 

 海賊達が声がする方に目をやれば、右手を半ばから棒で覆い、背にある黒い一対の羽にマントを羽織った十代半ばぐらいの少女――ウツホが海賊船の横腹辺りの海の上に飛んでいた。

 

「誰だてめぇ」

「海兵だよ」

「海兵? てめぇみてえなガキがか?」

 

 ウツホはそれを肯定で返すと海賊達はウツホを馬鹿にする様に一斉に笑い出す。

 原因不明な出来事が起きたにもかかわらず、肝が据わっているのかただの馬鹿なのか。

 

「ねぇ、最後通告だけど、武装解除して停船しない?」

 

 ウツホは気にした様子も無く、逆にニヤニヤと海賊達を小馬鹿にするような笑みを浮かべ海賊達に問いかける。

 元々聞く気もないが、そんな態度で海賊達がおとなしく言う事を聞くはずも無く。

 

「これが答えだよ、お嬢ちゃん」

 

 バンッ、っとウツホに鉄砲を向けて引き金を引く。

 しかし、ウツホに向かった銃弾はウツホに当たる直前に砲弾と同じ様に蒸発する。

 

「なっ!?」

 

 ウツホの事を知らない海賊達には何が起きたか分からず、銃を連射する。

 もちろん結果は変わらず、全ての銃弾はウツホに当たる事無く蒸発してしまう。

 わけがわからず、狼狽する海賊達にウツホは、ニッコリと見た目、年相応のかわいらしい笑顔を向け

 

「最終警告終了! 通告無視の場合は反応を再開し、即座に異物を排除せよ」

 

 まるで連絡事項を淡々と告げるかの様に言葉を並べると、キュゥンという何かをためているような独特な音を発しながら、胸の赤い目のような飾りを中心に赤く輝きだす。

 それを見た海賊達は更に慌て、今更ながらに理解できない物への恐怖が沸き上がってくる。

 

「ま、待ってくれ」

 

 

 

 

 

「ロケットダイブ」

 

 

 

 

 ウツホは赤い輝きが最高潮まで達すると、背にある羽の根元から核融合エネルギーを、更に赤い羽が一対増えたかのように噴射して、先ほどここまで来たのと同じ様に海賊船に突進する。

 今度はかすめるような事はせず、横腹から直撃し海賊船を貫通する。貫通した箇所はあまりの高熱に一瞬で焼き崩れ、貫通した後には核反応エネルギーの余剰出力よる衝撃波で何もかもを吹っ飛ばす。

 その衝撃に耐えきれるはずも無く、船は半ばから砕けるが、ウツホは一度突進するだけでは飽き足らず、貫いた後はそのまま旋回しまた船へと何度も突進を繰り返した。

 

 端から見れば、赤い流星が高速で旋回して、一瞬のうちに船を空中で分解してる様が見れただろう。

 

 

 

 

 

ウツホSIDE

 

「終わった、終わった~」

 

 海賊船をスクラップにした後、船に戻ってくると「お疲れさまでした」と部下達が敬礼してくれる。

 私は部下にいつもの様に、海に落っこちた海賊の回収を頼むと日光浴の続きをするため屋根の上に戻る事にする。

 ここの海賊は本当に頑丈だ。今回みたいな事をしても大抵死んでない。

 私としては死んでても死んでなくてもどちらでも良いんだけど、政府は公開処刑を望んでるからなるべく生かして捕まえろと言われている。

 そのため手配書には「DEAD OR ALIVE(生死問わず)」と書かれているが死亡していた場合三割も金額が減る。

 まぁ、私は海軍だから懸賞金は関係ないけどね。

 因みに何度も海賊を捕まえるために動いていれば必然だけど、私は海賊だが既に人を殺した事はある。けど特に嫌悪感は感じなかった。逆に楽しく感じたぐらいだし。

 ウツホになったから精神構造が変わって来てると前に考えたけど、その通りだったみたい。特に困った事はないし、自分じゃあよくわからないから別に良いけど。

 

 

 さて、海賊の引き上げも終わったようだし、本部に着くまで私は寝る事にする。

 いい天気の中、今度こそ邪魔されないうちにゆっくりと眠りについた。

 

 

 

 

 

 

 

「あららら、俺はこんなお嬢ちゃんの相手するために呼ばれたんですかい?」

「いいから、文句言わずにさっさとやらんか!」

 

 なにやるの? 私、何も聞いてないんだけど?

 海軍本部に着き、捕まえた海賊の引き渡しを終えた後、廊下であったガープ中将に「ちょっと、こんか」と襟元を猫の様に持ち上げられ捕まり、訓練場に連れてこられ、今まさにこんな状況です。

 目の前にはガープ中将と、二メートルは超える巨漢なガープ中将を更に超えるほどの長身、約三メートルぐらいはある丸い小さなサングラスを付けたヒョロっぽい男。頭に海軍のマークの入ったバンダナを巻いており、縮れた髪の毛が両サイドで盛り上がっている。

 

 

 

 

 

 

 

 

 ……誰ですか? というか見上げすぎて首が痛いです。

 




また分割で一番やりたかったことは次回行きです。

今回から主人公がガラッと変わってしまっているので、かなり驚かれてると思います。
もしかしたら、無いわ~。と感じる方もいるかも。先に誤っときます、すみません。

主人公の口調は一応、原作のウツホを意識しています。二次ではもっとバカっぽい喋り方が多いのですが、原作だと結構お嬢口調で難しい言葉で喋るんですよね。基本、馬鹿なのは変わらないけどw

原作風味にするか二次風味にするか迷いましたが、原作風味で行くことにしました。

主人公は原作ウツホより、ちょっとだけ頭のいいのウツホになるように最終的になる予定で、今の状態で性格はほとんど完成されてます。

今回やりたかったこと
精神の女性化というかウツホ化
ウツホに原作台詞を言わせる
キングクリムゾン。一年進めてやったぜ。
第三視点。かなり失敗した。

以上です。もうちょっとやりたいことあったけど、それは次回。

東方知らない人への設定

ロケットダイブ:核融合エネルギーを推力利用した突進技。
        判定が大きく高威力

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