星の花が見る夢は   作:赤いUFO

6 / 13
今回から主要キャラと星花の絡みを書きます。
まずはとまり編です。


6輪目:星花の挑戦

  大佛家に星花と名付けられた少女が一緒に暮らすようになって数日が経過した。

  届けを出したもののこれと言って進展はなく、日々、大佛家の家族に可愛がられている。

  特に星花自身が語った以前のことを聞いた両親が一層星花に甘くなった傾向にあるが。

  体に関しては宇宙仁が診断したところ異常なしとお墨付きをもらった。彼は何だかんだで隠し事はあっても嘘はつかないのではずむは彼の診断結果にホッとした

  ただ、宇宙仁が使っている道具を星花が一般的な道具だと誤解してないか不安だが。

 

 

 

 

「星花、重くない?」

 

「だいじょうぶ〜」

 

  星花の荷物は軽いものばかりだが決して文句を言わず、持ち続ける少女にはずむは偉いねと頭を撫でる。

  すると星花も表情こそ変わらないものの気持ち良さそうに目を細める。

  今はずむと星花は母親に頼まれて買い物に出掛けていた。

  星花は外で見るもの全てが珍しいのかキョロキョロと視線を動かして立ち止まってしまうことはあったが大人しくはずむの後ろに付いて回っている。

  ここ数日で星花ははずむの友人たちとも仲良くなっていた。

  今度、やす菜とお菓子作りを教わる約束をしたし、とまりもなんだかんだで物怖じしない星花を好いている。

  あゆきは町で会ったときに鳴いていたセミの生態について説明して、星花はそれを聞き入っている。

  明日太についてはまだおにいちゃんとおねえちゃんの読みが混ざってるのか明日太おねえちゃんと呼ぶことがあり、訂正させているが肩車などをしてあげたときはものすごく喜んでいた。

  ジャン・プウもよく星花を膝に乗せて絵本を読んであげている。

  そしてはずむとも本当の姉妹のように仲が良い。

 

「ねえ、はずむおねえちゃん」

 

  不意に珍しく星花の方から話しかけてきた。

 

「どうしたの?」

 

「わたしね、いま楽しいの」

 

  表情こそ変わらないがなにかに感謝するように星花ははずむを見る。

 

「知らないものがたくさんあって。ごはんはおいしくて。おねえちゃんたちはやさしくて。むかしのことは少ししか思い出せないけど……とってもしあわせ」

 

  荷物を持っていない手が握られ少しだけ力がこもる。

 

「ずっと……こうしていたいなぁ」

 

  まるでそれはこの時間がいつか終わってしまうと言っているようだった。

  だからはずむは。

 

「大丈夫だよ」

 

「お?」

 

「星花がそう望むなら、楽しい時間はずっと続くから」

 

「ほんとうに?」

 

「うん。僕の言うことが信じられない?」

 

  はずむの問いに星花はブンブンと首を振る。

 

「はずむおねえちゃんがそう言うなら、きっとそうなんだよね」

 

  実際、星花を大佛家の養子として迎え入れようという話は持ち上がっていた。

  それは星花の話を聞いて、彼女の親、もしくは保護者が問題のある人物なら星花を大佛家で引き取ろうと決めていた。

  言ってはなんだが以前言っていた彼女の境遇が子供の誇張という可能性もあるのだ。

  もっともこのまま保護者が見つからないなら自然とそうなるだろうが。

  はずむ自身、星花という家族が増えることを嬉しく思う。

  そこではずむはあることを思いつく。

 

「星花。ちょっと寄り道しようか」

 

「よりみち?」

 

「うん。今は夏休みだし、とまりちゃんもいるだろうから」

 

「とまりおねえちゃん?」

 

「そ。とまりちゃんに会いたい?」

 

「会いたい!」

 

「じゃあいこうか」

 

  即答する星花にはずむは苦笑して手を引いた。

 

 

 

 

  夏の炎天下の中、とまりは陸上部の練習に精を出していた。

  元々運動神経に優れて負けず嫌いなとまりに走って順位を付ける陸上競技は性に合っていた。

  しかし8月の炎天下の中で延々と走り続けるのには流石に疲れを見せ始めている。

  そんなとき、慣れ親しんだ声が聞こえる。

 

「とまりちゃ〜ん!」

 

  声の方に振り向くとそこには両手に荷物を持ったはずむと横には星花が居た。

  とまりは一旦練習を中断して二人のもとに駆け寄る。

 

「はずむに星花。どうしたんだ?なにか学校に用って訳じゃないよな?」

 

「買い物の帰りに近くに来たから。とまりちゃんが今日部活だって聞いてたし。はいこれ、差し入れ。良かったら部活の子達でどうぞ」

 

  はずむは片手に持っていたコンビニの袋をとまりに渡す。

  中には大量のスポーツ飲料やお茶などが入っていた。

 

「あぁ。悪いな、ありがと」

 

「いいよ。とまりちゃん、頑張ってるし」

 

「とまりおねえちゃん、おはよう」

 

  下から見上げて挨拶する星花にとまりは苦笑する。

 

「もう昼だからこんにちわだろ」

 

「おぅ?こんにちわ?」

 

  分かっているのかいないのか星花は若干首を傾げて指摘された通り訂正する。

  それにとまりはあぁ、こんにちわと星花の頭に手を置く。

 

「はずむ君、こんにちわ。その子は?」

 

  とまりと同じ陸上部員の女子生徒数名が来て話しかけてくる。

 

「ちょっと事情があってうちで預かってるんだ。星花、挨拶して」

 

「星花、です」

 

  ペコリと頭を下げる星花に皆がかわいい!!と声を上げる。

  集まった女子部員に頭を撫でられたり、抱っこされたりと揉みくちゃにされていた。

 それから皆がはずむが持ってきた飲み物を貰って礼を言い、休憩に入った。

 

「とまりおねえちゃんは今日なにしてたの?」

 

  見上げる形で星花はとまりに話しかける。

 

「ん?部活だよ。陸上部の」

 

「りくじょうぶ?」

 

  首を傾げる星花にはずむが補足に入った。

 

「走ったり、跳んだりしてその記録を録って競うんだ。とまりちゃん、足、速いんだよ」

 

「おぉ!とまりちゃん、すごいの!?」

 

「別に普通だよ!練習すれば誰だって速くなるんだから」

 

  目をキラキラさせて聞いてくる星花。照れから少し語調を強めるとまりに周りの部員が煽り立てる。

 

「え~!とまりはメチャクチャ速いじゃん!」

 

「そうそう。先輩たちでもとまりと張れるのって片手で数えられるくらいだし」

 

  周りの評価を聞いて星花の目の輝きがます。

 

「とまりおねえちゃん、すごいね」

 

「うん。とまりちゃんはすごいんだよ!」

 

「はずむまでなぁっ!!」

 

  顔を赤くしながら声をあげるとまりに周りがキャーと笑いながら怖がるポーズを取る。

  そんな中で星花はとまりの手を握って。

 

「ねえ、とまりおねえちゃん。わたしも走ったら速くなれる?」

 

「ん?あぁ。言ったろ?練習すれば誰だって速くなるんだよ」

 

  そう言うとまりの横に居た部員が話しかけてきた。

 

「星花ちゃん、陸上に興味あるの?なんだったら走ってみる?教えてあげようか?」

 

「いいの!?」

 

  好奇心の強い星花は飛び付くように顔を上げる。

 

「いいよ。それじゃあはずむ君この子借りるね」

 

  そうして星花は数人の部員に手を引かれてグラウンドに行く。

 

「まったくあいつらは……」

 

「ごめんねとまりちゃん。なんか邪魔しちゃったみたいで」

 

「それは大丈夫だけどさ。練習って言ってももう一時間ちょいで切り上げるから」

 

  少し遠くから星花は見ていると部員に説明を受けてグラウンドを走り始める。

  50mを走り終えるとまた折り返し走ってもとの位置まで移動する。

  子供である星花の速度はお世辞にも速いと言えるものではないが、本人は楽しそうに息を切らして走っている。

 

「なんつうか不思議な子だよな。なんにでも楽しそうにする」

 

「うん。今度、やす菜ちゃんにクッキーの作り方を教わる約束をしててすごく楽しみにしてるみたい」

 

  表情の変わりは乏しいものの感情の機微は分かりやすく、興味のあることに関しては特に顔に出る。

  50mを何本か繰り返して走っていたら星花が汗をたくさん掻いてこちらに戻ってくる。

  そんな星花にはずむも笑顔で手を降っていると。

 

「お?あれ?」

 

  体をふらつかせてパタンと星花が倒れた。

 

「……星花っ!?」

 

  急に倒れた星花にはずむは一瞬理解が遅れてしまい、理解が及んだ時は血の気が引いて駆け寄る。

 

「お~」

 

  星花を抱き起こすと目を回している星花がいた。

  その後大慌てで保健室に星花を駆け込ませた。

 

 

 

 

  星花の症状は軽い脱水症状で炎天下の中で急激に体を動かした反動らしい。

  星花が目を覚ますとそこにははずむと制服に着替えたとまりが居た

  保健室には空調が効いており、心地よい室内温度だった。

 

「星花、大丈夫!?」

 

  はずむが詰め寄ると星花が訳がわからずぼうっとはずむを見上げる。

 

「お前なぁ!自分の限界くらい判るだろ!倒れるまで走る奴があるか!」

 

「おぅ?ごめんなさい」

 

  シュンとして謝る星花。

 

「たのしかったの」

 

  ポツリと星花が呟いた。

 

「お車に乗ったみたいに周りが少しだけ変わって。あたる風が気持ち良くて。不思議で楽しかったの。だから、ごめんなさい」

 

  それはまるで産まれてはじめて走ったかのような感想だった。

  それを聞いたとまりは落ち着かせるために大きく息を吐く。

 

「いいよ、もう。怒鳴って悪かったな」

 

「はい、星花。お水飲んで。水分摂らないと」

 

  はずむは買ってきたスポーツ飲料を星花に手渡す。

 

「うん。ありがとう」

 

  缶を開けて星花は少しずつ中を飲み始めた。

 

「しっかし、走るだけでこれだけ喜ぶんなら自転車とか乗ったらもっと喜びそうだな」

 

「じてんしゃ?」

 

「えっと、2つタイヤが付いた一人用の車って言えばいいのかな?足で漕いで進むんだ。走るよりずっと速いんだよ」

 

  はずむの説明を聞いて星花が目を輝かせた。

 

「おぉ!はずむおねえちゃん、わたしもじてんしゃ乗れる!!」

 

  さっきまで落ち込んでいたのは何処へやら表情を変える星花にはずむは苦笑した。

 

「もう少し体が大きくなったらね。そうしたら乗り方を教えてあげる」

 

「ホント!?約束だよ!」

 

「うん。約束」

 

 

  座っているはずむの手を握って約束する。それをとまりが笑う。

 

「でもはずむに教えられるか~?昔あんなに自転車で転けまくって危なっかしかったのに」

 

「それ乗り始めたばかりの頃の話だよね!?今はちゃんと乗れるよ!」

 

「そうだっけかな」

 

「もう!とまりちゃん!」

 

  からかうとまりにはずむは顔を赤くして否定する。

  そこで星花がなにか思い付いたように。

 

「じゃあ、とまりおねえちゃんもおしえてくれる?」

 

「は?あたしも?」

 

「うん。ダメ?」

 

「いや、ダメじゃないけどさ」

 

  戸惑うとまりにはずむがお返しとばかりに口元を吊り上げた。

 

「とまりちゃん、教える自信ないの?」

 

  はずむの言葉に挑発に乗りやすいとまりはそんなわけあるかと声を出す。

 

「弟にだって教えられたんだ!はずむより上手く教えられるっつー!!」

 

「それじゃあ、わたしがじてんしゃを乗る練習するときはとまりおねえちゃんも教えてね。約束だよ」

 

  満面の笑顔になり、約束してくる星花に観念したのかとまりは小指を出す。

 

「お?」

 

「指切りだよ。破れない約束するときにするんだ」

 

  とまりは星花の小指を絡ませる。

 

  ゆ~び~きりげんまんうそついたらはりせんぼんの~ます。

 

「指切った!」

 

  そう言って絡ませた指を切った。

 

「ほら。これで約束、破れないだろ針千本飲みたくないからな」

 

「やくそくやぶったらはりせんぼん飲むの?」

 

「そうだよ。だから破れないんだ。僕ともしようか」

 

  そして今度ははずむと指切りをする。

 

  そのあと、三人は星花を真ん中にして手を繋いで帰った。

  星花は約束が嬉しかったのか何度も嬉しそうに小指を確認していた。

  その姿を見てはずむととまりはこの先、星花に自転車の乗り方を教えるのが楽しみで。

  この笑顔が曇らないことを強く願った。

 

 




次回は明日太編を予定。
  1. 目次
  2. 小説情報
  3. 縦書き
  4. しおりを挟む
  5. お気に入り登録
  6. 評価
  7. 感想
  8. ここすき
  9. 誤字
  10. 閲覧設定

▲ページの一番上に飛ぶ
X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧 ※ログインせずに感想を書き込みたい場合はこちら
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。