今回は漫画版の番外編をもとに書きました。
~い!ーーーちゃん!
「あ?」
突如聞こえた聞き覚えのある声に明日太は周りを見渡す。
しかし周りには誰もおらず、空耳かと疑う。
夏休みの暑い教室で補習を受けてきっと疲れてるんだなと結論付けようとした
っちーーーこっちだよ!明日太おねえちゃん!
「だからおにいちゃんだろうがっ!!」
以前言われたときに周りからそれはもう笑われたため、反射的に声を荒らげる。
「って……え?」
その視線の先にあり得ないものがあった。
視線の先にいたのは親友である大佛はずむの家に居候している女の子がいた。
それはいい。だが驚くべきはそのサイズだ。
強いていうならお手乗りサイズ。
それこそ、明日太の片手に充分乗りそうなお人形サイズになった星花がいた。
さらに当の本人は野良猫に服を後ろからくわえられている状態でどう反応すればいいのか分からず硬直してしまった。
突如振り向いた明日太にビックリしたのか野良猫はそのまま走り去ってしまう。
「お?おぉ~!はやいはやい!」
「っておい待てぇええええええええっ!?」
全力疾走した明日太が野良猫を捕まえて星花を回収するのに1時間ほどおいかけっこをすることになった。
「ゼェ…ゼェ……ゼェ……」
ようやく野良猫から星花(ミニ)を取り返した明日太は日陰のコンクリート地面に腰を下ろしていた。
その腕や顔には野良猫による引っ掻き傷などが残されている。
「ありがとう、明日太…おにい、ちゃん?」
「いや、そこで疑問系はいらねぇだろ……」
長時間激しく動いたせいか明日太の声には最初の元気はなかった。
「だいじょうぶ〜。明日太おにいちゃん?」
へばっている明日太に星花が聞くと大丈夫だと返す。
「つか何でそんな姿に?何があったんだよ?」
明日太の手の平でちょこんと座っている星花は思い出すように頭を左右にゆっくり動かす。
「せんせいが小さくしてくれた!」
「せんせいって宇宙先生か?」
「うん」
明日太の問いに星花は頷く。そして考えてみればこんなことができるのはあの人だけだろうなと納得もした。
そのあと、星花が何があったのか説明を始めた。
子供の星花の説明は正直解りづらい部分もあったが明日太は何とか理解しようと努めた。
その内容は要約するとこんな感じである。
その日、星花ははずむの部屋に保管されてあった絵本をジャン・プウに読んでもらっていた。
はずむは部屋で夏休みの宿題を片付けている。
そして最後の居候である宇宙仁はなにやら色々な道具を広げて分解や組み立てに清掃をしたりしている。
ひとつの部屋でそれぞれか思い思いに過ごしており、はずむは宿題が一段落したのか軽くノビをする。
そこで先程から気になっていた宇宙仁に問いかける。
「さっきから何してるの?」
それに宇宙仁は手を止めずに返答する。
「秘密道具の手入れだ。たまに整備しておかないといざという時に役に立たんからな」
その返答にはずむは劇場版?などと呟く。
そこで星花が転がってきた宇宙仁の道具に興味を持ったのか。ジャン・プウの膝から立ち上がって道具を拾った。
「せんせい、これは?」
それは小型な懐中電灯に見えるそれを渡した。
「む。感謝する。そしてこれは光を当てたものを小さくするちっちゃい光線だ。英語に直すとスモールーーー」
「わあっ!?わあっ!?」
そこから先は言ってはダメだと言わんばかりにはずむは大声を出して宇宙仁の口を閉ざす。
「す、すごいね。そんなのホントに在るんだ~」
そして誤魔化すように笑って話を微妙に変える。
「ふむ。使い方はこんな感じだ。ポチッとな」
宇宙仁がちっちゃい光線のスイッチを押すとその直線上にいた星花の体がみるみる小さくなっていく。
そしてお手乗りサイズにまで小さくなってしまった。
「お?お~!!」
小さくなった星花は驚いて声を出し、はずむはあまりの事態に頭がついていけず固まってしまった。
宇宙仁はこんな感じだとばかりに胸を張る。
そして小さくなった星花を見て一番喜んだのはジャン・プウだった。
「わ~!せいかんかわいいですぅ!」
そうして小さくなった星花に軽く頬擦りするとなにか思い付いたのか星花をそのまま手の平に乗せて。
「おさんぽですぅ~!」
と、そのまま窓から飛び出して空の散歩に出掛けてしまった。
「ちょっ!?ジャン・プウちゃん!?」
珍しくオネニイサマ慕うはずむの声も届かず、そのまま飛び立ってしまった。
そのあとは、おぅ。お〜などと星花は空の散歩を楽しんでいたがジャン・プウの指から手を離した瞬間、強い風に襲われそのままバランスを崩す。
そしてお約束とばかりにそのままジャン・プウの手の平から滑り落ちてしまった。
「せっ!?」
流石にこの事態にはジャン・プウも顔を青ざめさせてキャッチしようとするが間に合わず、そのまま自由落下してしまった。
「せ、せいか~んっ!?」
「おぅ?お~!!」
「っで、あの猫の体に落ちちまったと……」
「うん。あの猫さんわたしを舐めたあとに口にくわえて明日太おにいちゃんのところまで運んでくれたの」
「いや、あの猫は俺のところまで運んじゃ訳じゃ……」
おそらく、そのまま餌になりかけたのだろうが本人の危機感がゼロなため、言うのを止めた。
そんな会話をしていると明日太は自分の家に戻ってきた。
とりあえず、星花を机に座らせて携帯を取り出す。
内容はシンプルに星花を保護したとだけ書いてメールで送信。
これで大丈夫だろうと座り込む。
「う~。ベトベトする~。お風呂入りたい……」
星花が珍しく顔を歪める。
猫に舐められてべとつく体が気持ち悪いらしい。
「あ~。ちょっと待ってろ」
明日太は部屋を出て一番小さなカップに温い湯を用意し、いらない布地をハサミで切る。
「っと。こんなもんでいいか?」
ぬるま湯が入ったカップを星花の横に置く。
「体洗いたいんだろ?それ使えよ」
「お?ありがとう。明日太おにいちゃん!」
お礼を言うと、星花は服を脱いでカップの中に入る。
「お〜!気持ちいい〜!」
「そりゃよかった」
ご満悦な様子の星花に明日太は苦笑ぎみに答える。
それから少ししてなにか思い出したのか星花が突如お願いしてきた。
「ねえねえ、明日太おにいちゃん。ちょっとこっち」
「あ?どうした?」
手招きする星花に明日太は不思議そうに近づく。
「もうちょっとお顔近づけて」
「?」
チュッ
言われたとおり顔を近づけると星花が明日太の鼻の先にチューをした。
「い、いきなりなにすんだ!?」
「せんせいがおとこの人にはこうやってお礼すると喜ぶって教えてくれたの!」
「ホントなに教えてんだあの人!?」
あの教師のことだから悪意があって教えたわけではないだろうが、やはり色々とずれている。
「おぅ?嬉しくなかかった」
「いや、そういうわけじゃねえけど……」
嬉しいか嬉しくないかで答えれば間違いなく嬉しい。
まだ幼いとはいえ星花は間違いなく美少女だ。
そんな彼女から口付けされたのだから嬉しいに決まってる。
ただそれ以上に気恥ずかしさがあるだけだ。
首を傾げている星花にどう説明したものかと考える明日太になにやら慌ただしい足音が聞こえた。
「明日太!星花がここにいるってーーー」
やって来たはずむはその光景を見て絶句した。
机の上に裸の星花がいたからだ。
「明日太?」
「え?え?あっ!」
「おぅ?はずむおねえちゃん!」
すでに元のサイズに戻っていた星花ははずむに手を振っており。明日太はこの状況の不味さに冷や汗を掻き。はずむは表情が固まっている。
「ねぇ、明日太……何で星花は裸なの?」
「へ?何でって俺はなんにもーーー」
「(お湯が)気持ちよかったよ、はずむおねえちゃん」
「き、気持ちよかった!!?」
顔を赤くしてなにやら検討違いの想像を働かせるはずむ。
明日太はそれにあたふたとどう説明しようか頭を張り巡らせる。
「明日太……どういうこと?」
なにやら目が怖いはずむにどう言ったものかと考える明日太に星花がまた余計な発言を重ねる。
「ちゃんと(お礼に)チューはしたよ?」
「チュー!?」
顔が蒼白になるはずむ。
「ちょっ!?違っ!?ははずむ、お前が考えてるようなことはーーー!」
「あ、あああ明日太の、バカぁああああああああっ!!」
はずむから平手打ちを喰らわされて星花は即座に引き取られた。
その際、星花はなぜ明日太が叩かれたのか分からず、お?お?と終始目を丸くしていた。
明日太がこの時思ったことは。
(なんでこうなるの?)
というこの理不尽な現実への嘆きだった。
翌日明日太ははずむの誤解を解くのに丸一日費やすことになる。
そして星花を危ない目に遭わせたりマスターの許可なく勝手な行動を取ったジャン・プウも宇宙仁の説教を喰らうことになったのは余談である。
明日太は良いことをしても最後には何故か悲惨な目に遭うのがお決まりだと思います。
次はあゆき編を予定。