黒き英雄と竜殺し   作:souやがみん

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第1話

数年前クーデターが起こった。過去に繁栄を築いた旧帝国は滅び新国家が誕生した。

 

「この国の過去ってまだこの程度だからなぁ。」

 

赤い髪を尻尾のように首元で纏めた男がベンチにもたれ腕と脚を投げ出し空を見上げながらつぶやいた。

桜の花が少し散り始めた今日この頃。男二人並んでベンチに座っている。一人は先ほどの赤毛。もう一人は赤毛とは違いキチンと座っている。髪も赤毛ほど長くはなく白い毛なのが特徴だろう。

 

「まぁ、僕たち二人でぶっ壊したのもまだ数年前だしね。」

 

白毛の少年にそうだなぁ、と相づちを打ちながら笑う。そうだったと俺たち二人でぶっ壊したんだと。多分そんな気持ちを隠せていなかったのだろう。白毛の少年が少し睨むように見ながら言う。

 

「恐い笑い方してるよ。」

 

「うるせぇ!」

 

軽く小突く真似をすると白毛の少年は痛いわ!と突っ込みを返してくる。

はぁ、と溜め息をつく赤毛に不思議そうな目を向ける白毛の少年。

 

「いやな、まさか国を変えてやったの俺らなのに何で戦犯になるのかねぇ。」

 

あぁ、と白毛の少年が乾いた笑みを浮かべる。

 

「それは仕方ないんじゃない。僕たちがあの戦いを吹っ掛けたのは事実なんだし。」

 

そうなんだけどなぁと呟く赤毛。その首には黒いチョーカーのようなものを着けている。そのチョーカーは白毛の少年にもついている。ちっ、と舌打ちしながらそのチョーカーを触る。

そんな赤毛を無視し白毛の少年が立ち上がる。体を伸ばし手や首の関節を鳴らす。体の調子を確かめながら白毛の少年は赤毛の男に手を伸ばす。

 

「さて、今日の仕事は昼から商売区の掃除、それが終われば猫の捜索で今日はおしまい。」

 

うぇ、と吐き気がある真似をしながら手を取り立ち上がる赤毛に白毛の少年は言った。

 

「これからもよろしく、ウィルフリッド・スタンジフォール。」

 

フルネームで呼ばれたことに少し驚いたウィルフリッドは笑みを浮かべて言った。

 

「宜しくな、ルクス・アーカディア。」

 

 

 

 

 

 

 

 

さてウィルフリッド、通称ウィルは不機嫌だった。昼間の商売区の掃除はまぁ良い。それどころかああいう仕事は平和的だし何よりも色々な人と出会えるから個人的には楽しい。そう思っているのがウィルだ。

ではなぜ、彼は不機嫌なのかそれはこの仕事のせいだったりする。

 

「くそ、待ちやがれ糞猫!」

 

大体の人が察せると思うが説明しておこう。猫探しが始まって既に五時間は経過していた。それだけならまだ良かった。彼の神経を逆撫でしていたのはそこではなかったからだ。

捕獲対象の猫はまるで彼らを嘲笑うかの如く姿を現しては逃げるという行為を繰り返していたからだ。これにウィルは激怒していた。

 

「神装機竜でも使ってやろーか!」

 

「冗談抜きでそれをやったら僕はバハムートを抜くつもりだからよろしくね。」

 

二人揃って屋根の上を走りながら会話する。ウィルは少しルクスに嫌な顔をしておりルクスはそれに涼しい顔で答える。

そんなこんなで二人は屋根の上を走り、飛び移り猫を追いかける。動物と完全に同じスピードで走る二人に外に出ていた町の人たちはなんだなんだと外に集まっていた。

 

「おい、ルクス。これは不味いぞ。町人が集まってきやがった。騒ぎがでかくなっちまうぞ。」

 

 

しかしルクスには聞こえていない。そんなものを見ずに淡々と走っているからだ。

そしてこの時ウィルとルクスは気づいていなかった。ウィルにとっては祭りがルクスにとっては地獄が始まることを。

 

 

屋根を飛び越え大きな建物の上に出た。しかしウィルとルクスは猫を追いかけているため気づかなかった。一部腐った場所があることに。

 

「くらぁ、ボケぇ!」

 

ウィルが飛び付き猫の捕獲に成功する。ルクスが肩で息をしながら此方に走ってきて

 

落ちた。

 

「え?えええええええ!」

 

ルクスの叫び声は水の跳ねる音によって止まった。ウィルはおそるおそる中を覗くとそこには四つん這いになったルクスが湯煙に隠れてはいるが確認できる。その事にウィルが軽く舌打ちする。

 

「ちょっとウィル、今舌打ちしたよね?」

 

「あっはっは、親友にそんなことするわけないじゃないか。」

 

胸を張りルクスを見下す。場所が場所のため完全に見下す形になっていることにルクスが悔しそうにすることにウィルは得意顔だ。

だがしかしこんな男は基本的に良いことは起きないのが当たり前なのだ。ミシミシという嫌な音が聞こえたと思うとウィルも暖かいお湯の中に落ちていた。にやっ、と笑うルクスの胸ぐらを掴み睨む。それに対抗するようにルクスも睨んでくる。

 

「おい、お前たち。いつまで人の上にいるつもりだ?」

 

その声を探すと声は下から響いている。ふと目を下ろしたルクスがギョッ、とする。それを見てウィルもそれを見た。

そこにいたのは金髪の少女だった。ラインのくっきりとした良い体をしているが成長しきっていなさそうなその慎ましい胸を見る限り年齢は14,5といったところだろう。

しかし問題はそこではない。裸なのだ。タオルも巻いていない。そして手はウィルとルクスが踏んでしまっていて隠すことができずにいた。そして二人は気づいた。やってしまったと。ここは女子風呂だと。

 

「お先に失礼!」

 

周りにいる少女達が叫び声をあげる前にウィルは走り出していた。ルクスを見捨てて。

 

「あ、ウィル!」

 

それを見てルクスも言い訳せずに逃げ出す。しかしここは風呂場。屋根以外の唯一の出口は少女達に固められている。しかし二人は思いっきり壁へと走っていく。

すると突然ウィルが左腰に吊っていた剣を抜き思いっきり壁を斬る。

 

「その壁は対ショック障壁が張られているわ。そんな斬撃では斬れないほどのね。」

 

少女の声が風呂場に響く。そして本当に斬れない。だが、ウィルもルクスも笑う。

 

「じゃあ、上から逃げようか。」

 

ウィルが持つ剣の1本をルクスが受け取り肩に乗せるように持つ。そしてその剣の腹にウィルが飛び乗るとルクスが思いっきり投げるように剣を振るう。それに合わせウィルが飛び、ルクスに短剣を投げ渡す。それの柄を掴んだルクスの体がウィルのもとへと飛んでいく。

二人が屋根に出る。

 

「やったな親友。」

 

「そうだね。でも此処が予想通りの場所なら大変なのはこれからだよね。」

 

あぁ、そうだったな。と呟くウィルが思いっきりルクスとは逆に跳ぶ。元々ウィルがいた場所には穴が開いており人間に当たれば一撃であの世行きだろう。

ははは、と顔を見合わせ乾いた笑みを浮かべる。顔を前方に向けるとそこにいたのは青髪の少女だった。ただし、少女はとてもただの少女とは言えない。なぜならそこにいる少女は青い機械のロボットを身に纏っている。

 

「うわー、痴漢撃退のために《ワイバーン》を持ち出すとはねぇ。世も末だなぁ。」

 

「そんな軽口が言えるなら逃走の計画でも練らない?」

 

あっはっはと笑うと少女は苦笑するように笑うとその手に持つ、ライフルを射つ。

いっ!と変な声を出しながら転がるように回避する。しかし何故かルクスは狙われていない。

 

「なんか、ルクスだけ優遇されてる気がするのは何でだろうなぁ。」

 

そう思いルクスを見ると別の少女に襲われていた。装備している機竜は《ドレイク》だった。

《ワイバーン》と違い武装が少ないが偵察や隠密等々が得意とされている。此方よりマシなようでマシでない。ルクスもそこそこ辛い立場にいるので文句が言えない。

 

「あー、ルクスも大変だなぁ。《ドレイク》使ってる子って絶対についてくるよなぁ。」

 

《ワイバーン》に搭載されているライフルやら肩に装着されているキャノンも襲ってくる。徐々に慣れてきたウィルはアクロバティックに避けていく。明らかに挑発している。

 

「くそっ!馬鹿にして!」

 

ライフルを投げ捨て大型ブレードを取り出す《ワイバーン》の少女。ブレードを上段に構え突っ込んでくる。

 

「やっぱし、実戦経験少ないんだろうなぁ。」

 

そう言いながら自分の左腰にあるはずの剣を掴もうとするがないことに気づく。何せさっき風呂場から脱出する際にルクスに渡したままだったからだ。

うげ、と舌を出しながらウィルが諦めたように武器を持たずに《ワイバーン》を纏う少女を迎え撃つ。上段から振り下ろすブレードをサイドステップで回避しブレードの腹に拳を叩き込む。もちろん、折れることはないが剣が弾かれ少女の動きが止まる。

 

「動きは良かったぜ、嬢ちゃん。でもまだ隙が多いし課題が見つかって良かったってことで。んじゃな。」

 

《ワイバーン》の少女が悔しそうに此方をにらんでいるが今は無視だ。何せ早くこんなところからは脱出しなければならない。なぜだか嫌な予感がしてならないからだ。主に女絡みで。

 

「あら、貴方も覗き魔かしら?」

 

ふと、横を見るとそこには髪が膝裏まであるんじゃないかと思わせる長さ覗き銀髪の少女が立っていた。そして足元にはルクスが目を回している。

あちゃー、と額に手を当て片目でその少女を見る。

 

「見たとこ嬢ちゃんは新王国の人じゃないしよ、ソコに伸びてる阿呆と共に見逃してくんない?」

 

「あら?私はこれでもここの生徒よ。見逃すと思う?」

 

はは、仰る通りで。と言いながらどうするか考える。多分だが目の前の銀髪の少女一人ならなんとかなる。向こうが竜を纏おうが一対一なら負けることはない。問題はそこではなくその少女の足元で伸びている阿呆だった。

もちろん助け出すことは可能だがまず、第一にめんどくさい。第二に増えればさすがに神装機竜を使わないと無理がある。

 

「どうする?さっさと降参してくれた方が助かるのだけど。」

 

あぁ、ルクスのせいで。そう思いながらウィルは苦笑しながら両手を挙げた。




あらすじにも書きましたが過去はオリジナルなのでご注意下さい。
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