「今日はいい天気になって良かったわね。」
「ああ、まったくもってそうですね。」
気持ちのこもっていない返事にクルルシファーがクスッ、と笑うとウィルフリッドが疲れたように肩を落とした。
今日は学院が休みのためウィルフリッドとルクスは特訓のために山に籠る予定を立てていたのだ。
「なぁ、クルルシファー嬢。休日だってのに恋人のふりをすんのか?」
「あら?休日だから恋人のフリをしてもらうのよ。」
クルルシファーはウィルフリッドの腕をとりながらそう呟く。何時もなら声をかけてくれる街の中でも隣にこれほどの美少女がいるためかみんなが遠慮している。その事にまた少し肩を落としつつも目的地へと踏み出す。そう今日はまず服を買いにいくそうだ。
基本的にアロハシャツに黒いパンツを履いている。というよりは今もそのままの格好である。
「ここよ。」
つれてこられたのは高級そうな服の並ぶ店だった。ウィルフリッドにとっては別世界のこととでも言うレベルで関係ない店である。
「じゃあ、外で待ってます。」
そう言うウィルフリッドを意地悪な笑みで見つめるクルルシファーが店内へと引きづりこむ。店内はウィルフリッドの予想通りと言った感じだった。高そうな服が並んでいる。近くにあった服の値段を確認する。
「・・・、1ヶ月は飯が食えるじゃん。」
改めてクルルシファー・エインフォルクをお嬢様だと実感したウィルフリッドだった。
「さて、じゃあ、これを試着してみて。」
「え!?俺の服買うの?金ねぇよ。つーかこんなとこで服買うなら貯金するよ!」
店員さんが青筋を浮かべながら笑顔で此方を睨んでいた。それにあははは、と愛想笑いを浮かべつつクルルシファーを見る。冗談ではないようで男物の服を見比べている。しかもどれもが礼服である。
観念したようにウィルフリッドが両手を挙げ降参の意を示すとクルルシファーは嬉しそうにウィルフリッドを引っ張り回すのだった。
結果から言うと服はクルルシファーの奢りとなった。分かっての通りウィルフリッドは罪人で借金を抱えているため礼服なんて高価な物は絶対に買えない。
「ああ、女の子に奢ってもらうとは恥ずかしいなぁ。」
公園のベンチで何時かのように四肢を広げてベンチに座りながら呟いた。
もう日も沈みかけており賑やかな町も今は落ち着いた様子を見せている。ウィルフリッドのだらしなさと違いクルルシファーは姿勢正しく座っているため二人が恋人同士には見えない。
「あら、別にいいんじゃないかしら。今のご時世男が引っ張るだけは時代遅れよ。」
「まぁ、確かにそうだな。でもこれは何かって言うと俺のプライドの問題なんだよな。」
不思議そうに首を傾けるクルルシファーを見てから胸ポケットから煙草を取り出そうとして辞めながら呟く。
「女は男が守るってのは古いってのはまぁ確かに分かる。でもな、男よりも女の方が身体的に劣っているのは目に見えて分かる。
だからかな、何でもまずは男がやらなきゃいけないと思ってんだよ。まぁ、俺の爺さんにそう教えられたのもあるけどな。」
そう言いながら立ち上がる。クルルシファーも気づいたように立ち上がる。そしてベンチの裏に跳び、肘を打ち付ける。
「つけられていたのかしら。」
「どうだろうなぁ。気づいたのは公園に入ってからだからなぁ。」
気にしても敗けだって。そう言い笑うウィルフリッド。それを見てため息をつきながら追っ手をどこから取り出したのかロープで結ぶクルルシファー。
「さて、じゃあ追っての犯人を捕まえようか。」
そう言い人気のない路地裏へと向かう。二人で談笑しながら歩いているとウィルフリッドがクルルシファーに停まるように合図をかけ一番手前にあった角に入る。
バキ、ドコッ、ドカーンという音が聞こえたと思うと同時にウィルフリッドが角から現れる。するとクルルシファーが機竜《ファフニール》を起動すると飛び上がり三ヶ所に射撃した。どの着弾地にも男が倒れていた。
「ふぅむ、全く分からん。」
「本当に分からないわね。」
ま、いいかと二人揃って頷きながらその男達を無視しながら歩き去った。
「流石だなあ、あの二人。」
「おい、ルクス。今日は二人で出掛けると思っていたのに何故この天然腹ペコ娘がいるんだ?」
《ワイバーン》と接続したルクスに《ティアマト》と接続したリーズシャルテが腕を組ながら天然腹ペコ娘ことフィルフィー・アイングラムを睨んでいた。しかし、その天然腹ペコ娘のフィルフィーはドーナツを食べているためか全く気づいていない。
「まぁ、クルルシファーさんが狙われてると知ったから声かけたらまさかフィーちゃんも来てくれるとは思ってなかったよ。それにフィーちゃんが神装機竜を使っているなんて思ってもみなかったよ。」
そう、フィルフィーの機竜は神装機竜である《テュポーン》だ。その紫色の機竜の特徴としては大きい。通常の機竜の2倍はある。神装も強力で他の神装を打ち消すと言うものだ。
「ふん、まぁいい。取りあえずはあのヤクザとクルルシファーは無事だったんだ。帰ろう。」
そうですね、と呟きながらルクスとフィルフィーも背を向ける。そしてルクスはにやっ、と笑う。これでしばらくウィルフリッドをいじることが出来ると。
あれから二人はクルルシファーが連れ込んだレストランでとある女性の前に隣同士で座っていた。
「お嬢様お久しぶりです。」
「貴女もね。アルテリーゼ。」
アルテリーゼと呼ばれた女性は女性らしい素晴らしいものを持ちながらスーツを着ているためそれが分からない。その事に少し肩を落としているとアルテリーゼが声をかけてくる。
「それで隣の男性はどなたでしょうか。」
「私の恋人よ。格好いいでしょ。」
思ってもいなさそうな声で言うクルルシファーにジト目を向けつつもアルテリーゼに挨拶しようと座り直す。
「クルルシファーちゃんの恋人のウィルフリッド・スタンジフォールだ。これでもクルルシファーちゃんも通っている学院の戦技教官何てのをやってる。」
「ということは貴方は強いのですか?」
試すような挑発するような声音でアルテリーゼがウィルフリッドが尋ねてくる。そして気づく。クルルシファーが黒き英雄か竜殺しを求めていた理由が。
「しかし、此方も婚約者をエインフォルク家で決められています。明日夜はその方に会ってもらいます。」
「遠慮しておくわ。私達ラブラブだから。」
店の端から皿が割れる音が聞こえるかここからだと皿を割ったのは誰か分からない。
そんなことを頭の中から追い出しつつ考えていた。つまりはこの婚約を無くすために黒き英雄か、竜殺しを求めていたのだ。何のためにかは分からないが彼女、クルルシファー・エインフォルクには何かやることがあるのだろう。
「そうです。悪いですが彼女を、クルルシファーちゃんを渡すわけにはいかねぇですよ。」
クルルシファーの肩を抱き引き寄せながら言う。クルルシファーの頬が赤く染まっていることにウィルフリッドは気づかず話を続ける。
「んてことで、そんな婚約者とかいう奴には残念だったな負け犬。って伝えといてくれ。」
「そんな暴言を放っておいて認められるとでも思っているのですか。」
「まぁ、良いではないか。」
急にアルテリーゼの後ろから声が聞こえてきた。その男は金髪の長髪をまくし上げ得意気に笑う。しかしウィルフリッドにはキモいやつにしか見えずに思わず吐く真似をする。
「ふん、流石旧帝国の没落皇子何かとつるんでいるだけあるな。言葉遣いは悪いわ、態度は悪いわ。俺の未来の妻が何故にこんな男が好きなのかが全く分からんな。」
「あら、貴方よりも何億倍も格好いいし大人の男の風格があると思うのだけれど。バルゼリット・クロイツァー。」
バルゼリット・クロイツァー。新王国の四大貴族の一角クロイツァー家の嫡男である。そのバルゼリットは怒りで少し顔を歪めるが直ぐに元に戻る。そして何もなかったように髪をかきあげる。
「この世界は機竜の操縦がすべてを決める。そうだろ?ウィルフリッド・スタンジフォール。決闘だ。勝った方がクルルシファー・エインフォルクを手に入れる。どうだ?」
何も言わずに男の顔を見る。得意気に笑うバルゼリットに少し嫌悪を覚えながらクルルシファーの顔を見ると首を横に振っている。ここまでしなくても良いという意味だろう。しかしウィルフリッドは胸ポケットから煙草を取り出しながらバルゼリットの前まで移動し火をつける。
煙草を吸い、口からはなしバルゼリットの顔に煙を吐きながら言う。
「かかってこいよお坊ちゃん。世界の広さを教えてやるよ。」
「おぉ、親友。あの機竜を持ってきてくれたか。」
「あぁ、約束してたじゃないか。」
バルゼリットとフードを被った誰かが話をしていた。ここは先ほどのレストランではなくどこかの地下のようで灯りは蝋燭しかない。しかしその蝋燭のおかげでこの地下室もどこか幻想的な雰囲気を醸し出していた。
「ふふふ、ははははは!これであの忌々しい男を殺せる。汎用型の機竜じゃ万が一があるからな。」
一本の機攻殻剣を振りながら高らかに笑うバルゼリット。それを微笑で見るフードの人間。
「ではさらばだ。俺はこいつの稼働テストをしなければならないからな。」
フードの人間が片手を挙げて答えるのを確認するとバルゼリットは得意気な顔のまま部屋を出ていった。
それを見送ったフードの人間がフードをとりながら呟いた。
「くくく、ははは!なぁ、ウィルフリッド。俺を裏切ったお前はどんな惨たらしい死を迎えてくれるんだろうなぁ。」
フードの中から出てきた顔はルクスに似ていた。
「本当に良かったのかしら?あんな決闘を受けてしまって。」
「良いの良いの。俺はあんな馬鹿をぶちのめすのが好きなんだよ。」
ははは、と笑いながらクルルシファーの頭に手を置く。それを不思議そうに見つめるクルルシファーにウィルフリッドは頬をかきながら言う。
「まだ、お前らは子供だからな。大人に任しとけばいいんだよ。俺に全部任しときな。」
「ウィルはお節介だもんね。」
公園のベンチで座っていた二人に後ろから声がかかる。
「おい、ルクス。気配は人が多いところでは誤魔化すが人が少ないところでは消さないと意味ないぞ。」
あ、そうかと呟きながらルクスが姿を表す。その後ろからリーズシャルテ、フィルフィー、シャリス、ティルファーが顔を出す。
げっそりとした顔を浮かべるウィルフリッドにシャリスが顔を背けながら言った。
「べ、別にクルルシファーと二人で出掛けたのが気になって追いかけたわけじゃないからな。」
はいはい、と呟きつつもウィルフリッドは全員を連れて学院へと戻るのだった。
アニメがもうフィルフィーの話も終わりましたね。ついに次は夜架の話でしょうかね。金髪巨乳で種田梨沙のセレスの次にテンションがあがるぅ!