黒き英雄と竜殺し   作:souやがみん

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12話

「それでは遺跡調査に向かう!今日はウィルフリッド教官だけでなくルクス・アーカディアとクルルシファー・エインフォルクもついてくる。戦力的にはかなり楽になると思うが全員気を抜くなよ!」

 

リーズシャルテのカリスマある一言に『騎士団』のメンバーがはい!という返事を返す。

それを後ろから見つめているのは《ワイバーン》と接続したルクスと《ワイアーム》のウィルフリッド、《ファフニール》のクルルシファーだ。ウィルフリッドとルクスはまだ、ウィルフリッドは教官だが『騎士団』には所属していない。クルルシファーは所属しているが留学生のため戦闘にはほぼ参加していない。

 

「なんか、すごいですね。クルルシファーさん。何時もこんな感じなんですか?」

 

「そうでもないわ。多分今日はルクス君がいるから王女様が張り切ってるんだと思うわ。」

 

ははは、と乾いた笑みを浮かべつつ疲れたような表情を見せるルクス。

だが、ウィルフリッドはそんなルクスを無視しつつクルルシファーに尋ねる。

 

「何であの坊っちゃんが参加してるんだ?」

 

クルルシファーの疲れたような笑みを受け止めながらふと横を見ると坊っちゃんことバルゼリット・クロイツァーがそこには得意気な顔で立っていた。周りがウィルフリッド以外は学生であり、学院の関係者でもないバルゼリットは浮いていたがそれも気づかないようだ。

 

「あいつ、自分が浮いていることにも気づいてないじゃん。はは、ざまぁ。」

 

決して煽ることを忘れないウィルフリッドにあきれ笑いを浮かべるクルルシファー。

 

「ほんとだ、ざまぁ。・・・、って煽ってみたけどあれって誰なの?」

 

煽ってから誰かを尋ねるとは流石我が弟子と驚愕するウィルフリッドを横目にクルルシファーが答える。

 

「四大貴族の一角、クロイツァー家の嫡男のバルゼリット・クロイツァーよ。エインフォルク家が勝手に決めた私の婚約者ってことになってるわ。」

 

「まぁ、なんかそれにムカついてケンカ売ったらクルルシファー嬢をかけて決闘をすることになったんだけどな。」

 

あっはっは、と豪快に笑うウィルフリッドとルクスは何故かハイタッチを決めながらバルゼリットへと回りから見ればとてもムカつくであろう笑みを浮かべる。

それに気づいたバルゼリットが首を斬るジェスチャーをするので二人揃って自分の尻をたたいて挑発する。

 

「貴様ら!殺す!」

 

殺意を此方へと向けてくるがウィルフリッドとルクスは何事もなかったのようにスルーし『騎士団』の中へと混じっていった。

 

「貴方たち本当に人を煽るのが好きなのね。」

 

「最早、大好物だな。」

 

「面白いから止められないね。」

 

イエーイと言いながらハイタッチを決めるウィルフリッドとルクス。それを見ていたバルゼリットがさらに殺意を込め睨んでいるがやはりスルーする。

ジト目で此方を見ているリーズシャルテに手で早く行けというサインを出すと少し機嫌が悪い顔をしながら進軍を開始した。

 

「ルクス、王女殿下と並んでいってこい。その方が機嫌が良くなるだろうしな。」

 

「完全に僕のことは餌扱いだね。」

 

ぐたぐだと文句を言いつつもルクスはリーズシャルテのもとへと飛んでいった。遠目で見た限りリーズシャルテの顔が分かりやすいほどに笑顔になっていたのは言わずもがなだ。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

それは突然だった。一番始めに気づいたのはやはりというべきか索敵能力の高い《ドレイク》と接続したノクトだった。

 

「気を付けてください。上空からアビスが来ます。」

 

淡々と述べるノクトの言葉とほぼ同時にアビスが目の前に現れた。そのアビスを見て『騎士団』のメンバーの目の色が変わる。まるで勝てない敵を目の前にするような圧倒的な圧力に尻込みしてしまっている目である。

アビスがただ、突進する。動けなくなっている『騎士団』へと突撃する。少女にあたると思われた瞬間、アビスの動きが止まる。

 

「ったく、なんでこんなとこにディアボロスがいるんだ?」

 

「さぁ?でも・・・、ちょっと厳しいかな。」

 

ウィルフリッドとルクスの機竜のブレードがほぼ同時に砕けるとアビスは突進を止めず突っ込む。

ウィルフリッドが両手を使い食い止める間にルクスは少女を避難させる。

 

「ウィル!」

 

ルクスの声に反応してウィルフリッドは大きく脚を振るいアビスの顎に爪先を引っ掻けるとオーバーヘッドキックの形でアビスを蹴り出す。

両手と蹴り出した足の間接から上がる煙を無視しながらルクスのもとへと戻っていく。

 

「《ワイアーム》や《ワイバーン》じゃ、一生かかっても倒せそうにないのな。」

 

「全くだよ。」

 

ウィルフリッドとルクスはまるで地面を蹴るように空中を蹴るとアビスへと肉薄する。攻撃は最大の防御である。とは良く言ったものだとこの戦いを見て『騎士団』の少女たちは思っていた。

攻撃の隙を与えず一方的に殴り続けるウィルフリッドとルクス。しかし限界というものはいずれやって来るものだ。始めに機竜が音を挙げたのはウィルフリッドだった。急激に機体のスピードが落ちる。

それを狙いアビスが仕掛ける攻撃を右腕で受け流すと今度は右腕が動かなくなる。舌打ちをしつつ左腕で距離を取るためにアビスを強く押す。しかし、その押した行為で左腕も駄目になる。

 

「やばっ、ルクスあとは頼んだ!」

 

ええっ!と割りと本気で慌てているルクスを尻目に地面に降り立つと今度こそ完全に機竜が崩れ去った。

 

「ふん、やはり所詮は貴族でもない男だ。」

 

横を見ると機竜と接続したバルゼリットが立っていた。接続した機竜の名は《アジ・ダハーカ》。神装機竜の1体だ。神装に関しては知られていない。

 

「じゃあ、貴族様はあれを倒せるのかしら?」

 

ウィルフリッドに大声で文句をいつつ戦い続けているルクスには目を向けずバルゼリットは得意気に笑う。

 

「あぁ、簡単だとも未来の妻よ。そうだ、あの獲物は君にやろう。僕からの初めてのプレゼントだ。」

 

「あら、とても素敵な物をありがとう。」

 

クルルシファーが肩に置かれた手を払い除けながら皮肉10割の言葉をバルゼリットへとぶつける。しかし、バルゼリットは嬉しそうに笑い跳び去る。

それを見届けるとクルルシファーも飛び立つ。ウィルフリッドはそんな後ろ姿を眺めながら腰に指している灰色の機攻殻剣を抜き叫んだ。」

 

「来い!《クリカラ》!」

 

灰色の機竜が体を覆う。地面に手をつき神装を発動する。手を地面からはなしなにもない虚空で手をグッと握るとその手には剣が握られていた。

神装、『創造剣』。あらゆる物質から剣を作り出す神装。まるでウィルフリッドのためにあるかのようなその剣を握りウィルフリッドが地面を蹴る。

 

「『財禍の叡智』!」

 

《ファフニール》の神装が発動する。その未来予知の力でクルルシファーはディアボロスを『凍息投射』で攻撃する。未来予知を行っているその攻撃はあたると思われた。しかし

 

「何で神装が発動しないの?!」

 

攻撃が外れる。それは神装を発動しているクルルシファーにはあり得ないことだった。

ウィルフリッドは舌打ちしながらディアボロスとクルルシファーの間に割り込むとその手に持つ剣を振るう。ディアボロスの腕と拮抗する。しばらくの拮抗の後ウィルフリッドはディアボロスの腹に膝を叩き込み、体勢が崩れたところに剣を振り下ろす。

しかしそれは空振りに終わった。何故ならバルゼリットの操る《アジ・ダハーカ》の両肩にあるキャノンがディアボロスを捉え吹き飛ばしたからだ。

 

「てめぇ、邪魔するならまずお前から殺すぞ。」

 

《クリカラ》と接続しているため口調が攻撃的になっているウィルフリッドが本気で怒っていた。それもそのはず彼、バルゼリットとウィルフリッドの間には沢山の『騎士団』少女たちがいたのだ。運良く少女達の間を弾丸を抜けてきたが当たっていれば大惨事だった。

 

「すまないな。しかし、これぐらいやらねばそいつは倒せないだろうな。」

 

《アジ・ダハーカ》が神装を発動する。周りに変化はないがバルゼリットは得意気に笑いながらに腰についていた大型の斧状の武器を投合する。すると高速でバルゼリットへと飛来していたディアボロスに直撃した。

なっ、と始めに息を飲んだのはウィルフリッドだった。まさに今の神装が《ファフニール》の『財禍の叡智』そのままだったからだ。

 

「てめぇ!どういうことだ!」

 

バルゼリットへと怒鳴る。しかしバルゼリットはそれに答えず笑うだけだ。

 

「まだだ!お前たち気を付けろ!障壁を最大質力で発動しろ!」

 

リーズシャルテの叫びが聞こえたかと思うとディアボロスが弾けた。その弾けた勢いで『騎士団』の少女たちが吹き飛ばされる。ルクスも障壁を張り、防御しているのを確認するとウィルフリッドはクルルシファーへと意識を向ける。するとクルルシファーはただ呆然としたまま立ち尽くしていた。

 

「あの、馬鹿!」

 

ウィルフリッドが地面を蹴ると同じように空中を蹴りクルルシファーを抱き抱える。背中からの衝撃をもろに受けながらウィルフリッドはどこかに打ち付けられた感覚だけを覚えて意識を失った。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「はははは!コレが『ナイトロシステム』。すごいすごいじゃないか。」

 

フギルの声が木霊する。赤く燃える城で一際目立つ灰色の機竜が一人の男を追い詰めていた。その男は豪華絢爛な服を着ている初老の男だった。

周りには数十機の機竜と絶命している人間が転がっている。灰色の機竜《クリカラ》と接続しているウィルフリッドは笑っていた。

 

「ははは!楽しいなぁ!全く人殺しってのは止められないよなぁ!なぁ、どう思う?おっさん。」

 

目の前の男に剣を突きつけながら言う。本当に楽しそうに。普段の彼を知るものならきっと疑問に思うほどの変化だった。人殺しを楽しみ、快楽に溺れる。

 

「早くしろウィルフリッド。まだ我々には殺さないといけない奴等がいるからな。」

 

「あぁ、分かったよ。」

 

そう言って首に剣を突き刺した。男はプルプルと少し震えてやがて目の光が消え失せ体がぐったりとなる。

 

「ウィル!」

 

女の声が聞こえてきた。それは本当に親しいものの呼び方だった。ウィルフリッドは剣を抜きながらそちらを見るとそこにいたのは機竜も接続していない。一人の少女とも呼べる女だった。

 

「やめて!ウィル!貴女はそんなことをする人間じゃない。私の発明でそうなってしまったのはわかってる。でも私は・・・。」

 

「殺せ、ウィルフリッド。」

 

呟くようにフギルが言う。その言葉にウィルフリッドの中でブレーキが外れるように飛び出す。頭の中が殺したいという衝動に駆られる。

そしてウィルフリッドはその女に剣を突き立てた。胸を貫通し背中から剣先が見えていた。

 

「ウィル。殺すのは私で最後にしてね。それに貴方ならきっと『ナイトロシステム』も使いこなせるわ。・・、ごほっ、私は・・・、どん、なあな、たでも愛している、か、ら。」

 

そして女の体から力が抜ける。

 

「は、はは。お、俺は何をしたんだ?何でミーナが何で・・・。」

 

城に咆哮が木霊した。




ウィルさんの過去を少し載せました。
そしてここで《クリカラ》の機能を紹介。知ってる人の方が多いだろうけど『ナイトロシステム』

ガンダム的には機械的にニュータイプを作り出すってのが簡単な説明だと思う。まぁ、この世界でもそのまんまウィルさんの性格変化はこれのせいですな
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