黒き英雄と竜殺し   作:souやがみん

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15話

白いベットの上で長い青い髪の少女、クルルシファー・エインフォルクは目を覚ました。体のあちこちが痛いが骨が折れたりはしていないようだ。その事に少し安堵しつつ、グー、というイビキの方へと目を向ける。そこで寝ていたのは赤毛の大男だった。髪を首もとで尻尾のように結んでおり顔は完全なヤクザだ。

 

「ウィルフリッド・スタンジフォール。」

 

ボソッ、とクルルシファーはウィルフリッドの名前を呼んでいた。自分のことを一人の人間としてはじめて見てくれた人。王子様には似ても似つかないが初めて助けてくれた人。クルルシファーは自分の頬が赤く染まっていて口元が緩んでいることを理解し恥ずかしそうに俯いたがやがて顔をあげウィルフリッドを見つめる。

クルルシファーにとっての初恋はこんな男だった。だが、クルルシファーにとってはもう離したくないものだった。

 

「私は貴方が好きよ。」

 

寝ていることをいいことにクルルシファーは自分の膝の上にウィルフリッドの頭をのせながら呟いた。

 

「うぅん。」

 

ウィルフリッドが変な声を出しつつ顔の向きを変える。ちょうど二人で見つめ合うような体勢になる。

クルルシファーは自分の唇に手を当て意を決したように唾を飲み込み顔を近づけていく。そして、ウィルフリッドの唇につくかつかないところでドアが開いた。

 

「クルルシファーさん、入るよ。」

 

そう言って入ってきたのはウィルフリッドの親友のルクス・アーカディアとリーズシャルテ・アティスマータ。フィルフィー・アイングラムに『三和音』のシャリス、ティルファー、ノクトの3人。それにアイリ・アーカディアだった。

 

「あら、みんなお見舞いにでも来てくれたのかしら?」

 

何事もなかったかのようにウィルフリッドから顔を離し髪をかきあげる。

うん、と言いながらルクスが近くにあった椅子をリーズシャルテに差し出しつつ此方を見てにやっ、と笑う。多分ウィルフリッドがクルルシファーの膝の上で寝ているからだろう。

ルクスが一番に入ってきて口を近づけていたところは絶対に見ていない。見ていないったら見ていない。クルルシファーはそう信じルクスの顔を見る。するとルクスは先程までよりも露骨ににやっ、と笑った。

 

「貴方、なかなかウィルフリッドさんと同じような性格してるわね。」

 

「うん、自覚してる。」

 

アイリの呆れたようなため息が聞こえる。アイリもこんな馬鹿二人を何時も相手にしているのだと考えると頭が痛くなりそうだなぁ、とルクスとウィルフリッド以外のこの病室にいる全員が考えていた。

 

「と、そうだった。バルゼリット・クロイツァーの処遇が決まったぞ。」

 

リーズシャルテが思い出したように口を開いた。全員がそれに耳を傾ける。

 

「傷害罪等々罪状は多くあるがとりあえずは病院に監禁になった。何処かのヤクザ顔が派手にやらかすからバルゼリットの意識はまだ戻っていない。」

 

リーズシャルテがジト目をウィルフリッドに向けるがウィルフリッドは気持ち良さそうに未だにクルルシファーの膝の上で寝ている。

少し目を伏せクルルシファーがウィルフリッドを見つめ、少し髪を撫でてからルクスへと向き直る。

 

「ねぇ、ルクス君。彼の、ウィルフリッドさんの機竜《クリカラ》とはいったいなんなの?あの機竜は確実に神装機竜でさえ勝てないと思わせるほどの力を持っているわ。そんなものが非公式なんて思えないのよ。」

 

ルクスは目を泳がせ答えることのない意を示す。しかし誰一人それを許すものもいなくルクスを見つめる。ルクスが助けをも止めるようにアイリへと視線を向けるが目を剃らされる。

 

「うーん、僕も詳しいことは知らないんだ。知ってるのはウィルフリッドの元カノのミーナ・テルリって人が作ったことかな?」

 

なっ!?と息を飲んだのはリーズシャルテだった。リーズシャルテは手を顎におき考え始める。

 

「ウィルのあの言動がキツくなるのは『ナイトロシステム』っていうシステムのせいだってことだけなんだ。」

 

何故かシャリスとクルルシファーとアイリが撃沈している。が、ルクスは何故かを知っているので何も言わずににやっ、と笑う。

 

「とりあえず僕は、これだけしか知らないんだ。」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「ん?あ?」

 

ウィルフリッドが目を覚ますと部屋のなかはオレンジ色に染まっていた。どうやらかなりの時間を寝ていたようだ。

 

「目が覚めたかしら?」

 

上から声が聞こえる。そちらに振り向くとそこにはクルルシファー・エインフォルクがいた。どうやら彼女の膝の上で寝ていたようだ。体を持ち上げようと腕に力を込めるが頭にクルルシファーが手をのせそれを妨害する。

 

「おい。」

 

「良いじゃない。美少女の膝枕を目が覚めているのにしてもらえるのよ。」

 

「自分で美少女って言えば世話ねぇな。」

 

起き上がることを諦めて笑う。クルルシファーも嬉しそうに笑う。

他愛もないこの時間をウィルフリッドは守りたかったのかも知れない。

 

「ねぇ?」

 

不意にクルルシファーがウィルフリッドへと声をかける。

 

「貴方は何で私を助けてくれたの?私は貴方に眠り薬を飲ませたわ。利用するだけ利用して私は貴方を捨てた。それなのに何故?」

 

クルルシファーの言葉は最後の方には涙声になり聞きづらくなっていたがウィルフリッドはクルルシファーへと笑みを向けながら答えた。

 

「あの時いったろ?俺がお前を叩いた時あの言葉に嘘はねぇよ。本当に利用するだけ利用して捨てるならバルゼリットと戦わして最後の最後でお前がバルゼリットを倒すってすりゃ簡単だったはずだ。

でもそれをしなかった。つまりはそう言うことだ。お前は善意で俺を遠ざけた。でも俺はそんな簡単に折れたりしない。」

 

一息をおいてから頭をあげクルルシファーの眼前へと迫ると笑いながら言った。

 

「お前を一人の人間として見てる、って言ったからな。自分の言った言葉に嘘はつきたくないんだよ。」

 

予想外の言葉にクルルシファーの目からは涙が流れた。そして小声で呟いた。

 

「ありがとう。」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

夜。学院の屋根の上に男が二人座っていた。ウィルフリッド・スタンジフォールとルクス・アーカディアだ。二人は特に何をするでもなく月を眺めていた。先に口を開いたのはルクスだ。

 

「ねぇ、ウィル。《クリカラ》のこと、みんなには話さないの?」

 

何時もの煽るような口調ではなく優しい口調で話しかける。ウィルフリッドは月を眺めたまま、自らの腰にさげている灰色の機攻殻剣を抜き放ち目の前に出す。

 

「そうだなぁ。どうせ、喋ったんだろ?」

 

「ううん。まだミーナさんの名前しか出してないよ。」

 

少し驚いたような目をルクスに向けつつウィルフリッドは黄昏るように言った。

 

「あいつらに妙な心配をかけるわけにはいかないしなぁ。」

 

そうだね、と呟くルクス。二人の顔が月の光に照らされる。暗い顔をしている二人に月は無情にも光を指し続けていた。

 

「ルクス。今日俺が決闘に遅れただろ?」

 

「うん。」

 

「あれはさ《クリカラ》の出力リミッターを外してたからなんだよ。」

 

ルクスは何も言わずに俯いた。そんなルクスを優しい目でウィルフリッドは見つめながら言葉を続ける。

 

「《アジ・ダハーカ》。あれはミーナが発掘した機竜だ。それにあれはある男に預けられていたはずだ。つまりはあの男の後ろにあいつがいたんだ。」

 

ルクスは顔をあげない。しかしウィルフリッドはまたも月を見上げながら言葉を続ける。

 

「奴が出てくるなら俺は本気で殺しにかからなくちゃならない。ミーナの敵を討つためにも。そのためならミーナとの約束だって破って俺はあいつを殺す。

まぁ、そのために出力リミッターを外した。ってもまだ十分の三程度の出力しか出ないけどな。」

 

「それでもその力は必ずウィルを喰らい尽くす。」

 

まぁそうだろうなとウィルフリッドは呟く。互いの過去を知りそれでもウィルフリッドとルクスは友として一緒に居続けた。

 

「ルクス、わかってるとは思うが・・・。」

 

「うん、いざとなれば僕が君を殺す。」

 

それでいいと言いながらウィルフリッドは立ち上がる。それにつられるようにルクスも腰をあげる。二人は軽く視線だけ交わすと自分の部屋へと戻っていった。

 

 

 

 

 

 

 

 

次の日ウィルフリッドはクルルシファーに連れられてバルゼリットと決闘の約束をしたレストランへと足を運んでいた。

当たり前のようにクルルシファーがウィルフリッドを隣へと座らせる。

 

「いやいや、依頼は終わったんだから隣じゃなくてもいいだろ?」

 

「期限は切れてしまっているけれど今日までは恋人のフリをお願いね。」

 

クルルシファーへとジト目を向けるが、何時もの涼しい顔で無視される。無駄だと分かっているのか。ウィルフリッドは疲れたようにため息をつきながら目の前の料理に目を向ける。

どれもこれもが一流のシェフによる料理だ。ウィルフリッドには一生縁のない物だと思っていたためテンションはかなり高かった。

 

「これ本当に食っていいんだよな?」

 

もちろんよと言いながらウィルフリッドを眺めるクルルシファー。いただきまーす!と子供のように大きな声を出しながら料理にかぶりつく。何がどうかはウィルフリッドには言えなかったが叫んだ。

 

「うんめぇー!」

 

「大声を出しては駄目よ。ウィルさんはまるで子供ね。」

 

ジト目をクルルシファーへと向けるが、クルルシファーはニッコリと笑う。はぁとため息をつきながら料理を一口食べる。

 

「うん、旨い。」

 

軽く現実逃避しつつ、黙々と料理を食べていると一人の女性が席に座った。

その女性はタキシードのような服を着ており、座る姿勢から何に至るまでとても綺麗だった。

 

「遅くなり申し訳ございません。お嬢様、ウィルフリッド様。」

 

机に額がつくのではないかと思わせるほど頭を下げたのはアルテリーゼだった。

 

「別に構わないわ。彼と二人きりの時間が長くとれたから。」

 

歯が浮くような台詞を恥ずかしげもなく言うクルルシファーにウィルフリッドが軽く戦慄しつつも料理を食べる手は止めない。

アルテリーゼは頭をあげ二人に向き合うともう一度頭を下げた。

 

「この度は本当に申し訳ございませんでした。あのような不祥事、許されることではございません。いかなる罰も慎んでお受けする所存です。」

 

「なら俺と素敵な一晩を・・、いだ!」

 

クルルシファーに足を踏まれ、どこからともなく飛んできた2本のフォークが額に突き刺さる。

ぐわー!とのたうち回るウィルフリッドを無視しつつクルルシファーがアルテリーゼへと口を開く。

 

「別に罰を与えるつもりはないわ。その代わり私にはすばらしい彼氏がいると伝えてもらえるかしら?」

 

ウィルフリッドの行動に呆気にとられていたアルテリーゼだったが頭を振ってからクルルシファーの方へと向き直る。

 

「お任せください。ウィルフリッド様のような方ならばきっと認めてくださるでしょう。いや、認められなくとも力ずくで認めさせてみせます。」

 

アルテリーゼは物騒なことを言いつつ立ち上がりさっそく伝えに行って参ります!と勇んでレストランを出ていった。

ようやくフォークの痛みから回復したウィルフリッドがクルルシファーに対して口を開く。

 

「おい、何で俺がお前の本当の彼氏みたくなってんだ?」

 

ふふ、とクルルシファーは笑うと不意に唇を重ねた。ウィルフリッドは驚くでもなくただ眉を少し寄せていた。やがてクルルシファーが唇を離すとウィルフリッドが困ったように呟く。

 

「お前なぁ、そう言うのは好きなやつにしてやれよ。ほらみろよ。そこで覗いてたシャリスとアイリがカンカンじゃねぇか。俺はなにも悪くないのにさぁ。」

 

そう言うとウィルフリッドが店を飛び出した。それを追いかけるようにシャリスとアイリも物陰に隠れるのをやめ追いかけ始めた。

店に一人取り残されたクルルシファーはウィルフリッドが使っていたフォークを持ちそれを少しなめると楽しそうに呟いた。

 

「私もうかうかせずに追いかけないとね。」

 

腰から《ファフニール》を抜き放ちクルルシファーはウィルフリッドを手に入れるために走り出した。





最弱無敗の神装機竜って全員過去を引きずってる奴らばかりだと思う。で、それを肯定した上で受け止めるのがルクスという主人公。
なら肯定した上で過去にあったことを全部前提をぶっ壊してヒロインを助けるのがウィルフリッドという主人公。


いちよ、そういうのをイメージで書いているつもりですな
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