黒き英雄と竜殺し   作:souやがみん

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16話

拳をつきだし体を捻り大きく踏み出す。同時に手刀の要領で腕を回す。

大きく震脚を地面へと叩きつけ、その勢いを利用し大きく跳躍すると拳を空中で連打する。

 

「ウィル~!そろそろ晩御飯だよ。」

 

着地し汗をぬぐっているとウィルフリッドのもとへとルクスがやって来た。後ろにはリーズシャルテ、フィルフィー、クルルシファーが一緒にいるところをみると何かやっていたようだ。

 

「おう、じゃいくか。」

 

そう言うとクルルシファーがウィルフリッドの右腕を抱く。それにジト目を向けるがニッコリ笑うクルルシファーを見て毒気を抜かれ疲れたようにため息をつく。

 

「良いじゃんリア充。」

 

「お前も対して変わらんだろ。」

 

そう言ってルクスを見るウィルフリッド。ルクスの両側にはリーズシャルテとフィルフィーが腕を抱くように寄り添っている。

正しくはフィルフィーは腕を抱いているがリーズシャルテの方は恥ずかしいようで服の端を掴んでいるだけだ。

 

「ちっ、リアルハーレム野郎が。」

 

「喧嘩売ってんのか?買ってやらぁ!」

 

ウィルフリッドとルクスが互いの胸ぐらを掴もうとするがウィルフリッドはクルルシファーにルクスはリーズシャルテとフィルフィーに引きずられていく。

 

「もうそのネタはいらないわ。」

 

「つーか、そろそろうっとおしい。」

 

「そんなルーちゃんも好きだけどね。」

 

最後のフィルフィーの言葉でルクスの目には僅かに光が残るがウィルフリッドの目からは完全に光が消えていた。

食堂へと続く道を歩きながらリーズシャルテが思い出したかのように呟いた。

 

「そう言えばそろそろセリスティア・ラルグリスが今晩帰ってくるそうだ。」

 

「面倒ね。」

 

セリスティア・ラルグリス。この学院の『騎士団』の団長であり、公爵令嬢である。とても優秀な機竜使いでありその実力は正規軍よりも遥かに上だと言われている。そしてもうひとつ特徴がある。

 

「そう言えば金髪巨乳なんだよなあ。たのしみぃだ、なぁ・・・。ぞろぞろじにぞう。ゴメンなざい。」

 

後半はクルルシファーに首を絞められ言葉がおかしなことになるウィルフリッド。それに呆れたような目を向けるルクス。

はぁ、とため息をつきつつリーズシャルテが口を開く。

 

「奴は大の男嫌いだ。そこのヤクザ顔は別に構わんがルクスが心配だ。」

 

「私としては別にルクス君はいなくても変わらないけれど。」

 

リーズシャルテとクルルシファーが唇がくっつくかくっつかないかのギリギリのところで睨みあう。それをルクスとウィルフリッドら乾いた笑みで眺めていた。

 

「私は二人ともいてほしいけどな。」

 

二人してフィルフィーの方へと振り返り涙を流す。喧嘩している二人にもぜひフィルフィーのような優しい心を培ってもらいたいものだ。

その後もルクスとウィルフリッドのことで喧嘩するリーズシャルテとクルルシファーを引きずりながら食堂へと入る。まだ、食堂が開いて間もない時間だからか人はいなかった。

 

「ラッキーだな。これで誰にも邪魔されず食べられるぞ。」

 

リーズシャルテが本当に嬉しそうに呟くのを横目に見つつ定食を注文し席につく。

 

「兄さん、ウィルフリッドさん。それに皆さんも。」

 

不意に声をかけられて、そちらをみてみるとアイリ・アーカディアと『三和音』のシャリス、ティルファー、ノクトがそこにはいた。四人ともご飯を持っているため一緒に食べるように勧め、9人で食べ始めた。

ご飯を食べつつ談笑する。しかしウィルフリッドだけは会話に参加せず上の空だった。

 

「ウィルさん、どうしたの?」

 

クルルシファーの心配したような声にウィルフリッドがハッ、とする。それに気づいたように席についていた全員がウィルフリッドへと意識を向ける。

 

「いや、大したことじゃないんだよ。ラルグリスって名前になんか覚えがあるなぁ、と思って思い出してだけだ。」

 

「それで何か思い出した?」

 

ルクスの質問にどうだろうなぁと言いながらも答える。

 

「ルクスとアイリの爺さんに頼まれてラルグリス家の誰かに近接格闘戦を教えたことがあるのは思い出したんだ。でも教えたのが男か女かは覚えてないんだよな。何せ帝国をぶっ壊したよりも前だからなぁ。」

 

ふぅーん、とリーズシャルテが興味なさげに呟く。フィルフィーに関しては初めから興味なかったようでいそいそとご飯を口に運んでいる。

ともかくだ、とウィルフリッドは再び口を開く。

 

「ラルグリス家のことで思い出したのはこれだけだ。」

 

「どうでいい話だったね。」

 

聞いた本人であるルクスがボソッ、と呟く。それにため息をつきながら飯を口に運ぶ。やはり食べなれた味は美味しい。そんなことを思いながら手を止めない。

 

「そういやぁ、シャリスたち飯食うの今日は早いんだな。」

 

不意に話をふられたことに少々驚きながらシャリスが口を開く。

 

「最近、夜に女子生徒が襲われることが頻発しているんだ。それも痴漢の類いだから相手は男だ。」

 

「んで、それの見回りするためにご飯を早く食べてんの。」

 

ティルファーがシャリスの言葉をひきづきつつ、話す。

 

「Yes、それで実はお兄さんとウィルフリッドさんに手伝っていただきたいのです。」

 

ノクトがルクスとウィルフリッドの目を見て言う。

全員が忘れがちだがルクスとウィルフリッドは5年前の戦犯として国に借金を背負っており無償で雑用をこなしているのだ。

 

「それぐらい構わないけど具体的には何をすればいいんですか?」

 

ルクスがシャリスの目を見て聞く。シャリスはそれに対してにやっ、と笑う。それを見たルクスがシャリスへとジト目を向けるがシャリスはそれを軽く受け流す。

 

「何でも良いがルクスよ、食べたあとは私の部屋に来いよ。」

 

無理です。と一言でいなされたリーズシャルテが机の上に撃沈する。それを見てクルルシファーは得意気に笑うとウィルフリッドへと声をかける。

 

「ウィルさん、頑張ってね。応援してるわ。」

 

「面倒になる予感しかしないんだよなぁ。」

 

ボリボリと頭をかくウィルフリッド。そんなこんなでご飯の時間は過ぎていった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

ルクスとウィルフリッドはシャリスたち、『三和音』に呼び出された場所へとやって来ていた。まだ、3人の姿が見えないが二人は集合時間よりも早く来ているため、何も言わずに手近な椅子に座る。

 

「なんかさぁ。」

 

何時も通り四肢を投げ出しながら椅子に座るウィルフリッドが口を開く。

 

「依頼って久しぶりだよな。しかもこんな真面目そうなのって。」

 

「・・・、そう言えばそうだね。」

 

ルクスの疲れたような声を聞くとリーズシャルテやフィルフィー、ティルファーやクラクメイトたちに訳のわからない依頼をされていることが分かる。心の中で友人へとエールを送っていると部屋の扉が開く。

 

「お、もう来ていたか。ルクス君、ウィルフリッドさん、すいません。」

 

シャリスの言葉を聞いてウィルフリッドが気にすんなと言う風に手を振る。後ろからティルファーとノクトが部屋へと入ってくる。その手には紙袋が握られており妙におもしろい、もとい面倒くさいことが起きそうな予感がする。

 

「えっと、依頼は変質者を捕まえる、で良いのかな?」

 

ルクスの言葉にシャリスが頷く。シャリスは神妙な顔をしているがティルファーの顔が笑っている。

 

「ああ、しかしこの変質者は女性以外には近づかないんだ。そこで囮を用意することにした。」

 

そう言うとティルファーとノクトが紙袋から女子用の制服とスカート等々女性ものの衣類を取り出した。顔をひきつらせながらルクスがウィルフリッドの顔を一度見てからシャリスへと訪ねる。

 

「あ、あの、それ着るのウィルですよね?」

 

「俺が着たらただのオカマにしか見えんだろ。」

 

大きな体に強靭な筋肉質のウィルフリッドがこれを着れば本当にただの変態になることは目に見えている。

てことは、とルクスが消えそうになる声で呟くとシャリスたち、『三和音』がにやっ、と笑う。

 

「じゃ、ルクっち着替えよっか。」

 

逃げだそうとするルクスをウィルフリッドが捕獲する。それを恨みたらしく睨むルクスを無視しつつシャリスたちへと差し出すと一瞬でルクスがパンツ一枚になる。

 

「女性ものの下着もありますがどうしますか?」

 

ちょっと笑いつつノクトがルクスに尋ねる。

 

「要らないよ!」

 

ルクスの叫び声が部屋に木霊した。

 

 

 

着替えが終了すると全員が目を疑った。回りからみればこの部屋にいるのは男一人と女が四人だろう。

 

「ル、ルクス君。悔しいが綺麗だ。君はどこからどう見ても立派な貴族令嬢だぞ。」

 

項垂れるルクスを横目にウィルフリッドが口を開く。

 

「ルクスの役目は分かったけどよ。俺の役目はなんなんだ?」

 

「Yes、ウィルフリッドさんには監視をしていただきたいのです。」

 

「そーそー、ウィルフリッドさんにはミスディレクションなんて反則じみた力持ってるし隠れるのは得意でしょ?それでさルクス君には南側、ウィルフリッドさんには北側の警備をお願いしたいんだよね。」

 

ティルファーの軽い口調に少し呆れつつも了承の意を示す。

 

「では、よろしくお願いする。」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「おーい、早く寮に戻れよー。」

 

夜の学院の敷地内を歩く生徒に声をかけると、こっちを指差しながらやったー!などと叫んでいる。本当にここの生徒は濃いキャラをしてるなぁと思いつつミスディレクションを使い人の視界から消えることに務める。

もうすぐ10時になるかと思われる時間に、草むらの中から声が聞こえた。

怪しく思いつつその草むらを覗き込むと一人の少女が座って子猫に話しかけていた。

 

「確かに帰るように言いましたし、他の誰かが残ると言っても帰らせる予定でしたが。誰か残ると言ってくれても良いと思いませんか?貴方はどう思います?」

 

猫に向かい小言を言うその金髪の少女を段々哀れに思えてくるウィルフリッド。そしてその言葉を聞いていた子猫が逃げる。

 

「ああ!まだ、もう少し待ってください。・・・、はぁ。」

 

本当にがっかりしたように立ち上がりウィルフリッドの方へと振り返った。青い瞳に黒いカチューシャ。さらにウィルフリッドは巨乳に目を奪われた。

 

「あの、どうも。」

 

とりあえず挨拶するウィルフリッド。金髪の少女は目をぱちぱちさせながら此方を見ている。何となく嫌な予感のしたウィルフリッドは何も言わずに後ろに一歩踏み出す。

 

「待ちなさい。」

 

金髪の少女の凛とした声が響く。

 

「何故この学院に私の知らない男性がいるのですか?外部講師ならこの時間ここにはいないはずです。

つまりは貴方が例の変質者ですか。仕方ありません。腰の機攻殻剣を地面におき手をあげなさい。さもなくばセリスティア・ラルグリスの名において貴方を成敗します。」

 

変なことに巻き込まれた上に完全に間違えられたなぁ。そう思いつつセリスティアの男嫌いを垣間見ていた。





金・髪・巨・乳爆誕!
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