黒き英雄と竜殺し   作:souやがみん

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17話

「と言うことは貴方はここの教師なのですか?泊まり込みの?」

 

金髪巨乳の少女、セリスティア・ラルグリスが未だに信じていないような声を出す。夜中の学院の中庭の真ん中でウィルフリッドとセリスティアが向かい合っていた。と言ってもウィルフリッドは機攻殻剣を首に突きつけられている。

 

「だからそういってるじゃん。レリィにでも確かめてくれれば良いからさ。皇女殿下でも、クルルシファーでも『三和音』でも良いからさ。」

 

一向にウィルフリッドの言うことを聞かないセリスティア。ジト目で睨んでみるが効果はない。

誰か来ないかなぁ。と考えていたウィルフリッドの後ろにセリスティアは回り込むと剣を突きつけたまま口を開く。

 

「ここでは風邪を引く恐れもありますのでまずは学院長室に連れていきます。」

 

手をヒラヒラと振って了承の意を示すと勝手に歩き始めるウィルフリッド。

 

「ま、待ちなさい!貴方は容疑者なのですよ!」

 

はぁ、とため息をつきつつウィルフリッドはセリスティアに剣を突き立てられたまま廊下を歩いていく。運の良いのか悪いのか、廊下には人がいない。まだ、夜も更けきってはいない。まだ誰かいてもいい時間である。

 

「運がわりぃなぁ。」

 

ボソッ、と呟いたウィルフリッド。その言葉をどうやらセリスティアは聞いていたようで少し怒り口調で言う。

 

「どうせ私は運が悪いですよ。友達もいないんですよ!」

 

「誰もそんなこと言ってなくない!?」

 

どうやらセリスティアはかなりの天然さんのようだ。何せあのウィルフリッドが突っ込みに回るような強者なのだ。

久しぶりにツッコミをしたことでウィルフリッドは感慨にふけっているとセリスティアが話しかけてくる。

 

「この廊下は静かで不気味です。何か話をしなさい。」

 

セリスティアの上からの命令にジト目を向けるが、セリスティアはかなりにらんでいた。

 

「そうだなぁ、俺実はさラルグリス家で戦技指導をやったことあるんだよね。」

 

首もとの機攻殻剣が喉に当たる。両手を高く上に伸ばすことで許してもらう。本当なんだけどなぁ。そう思うが言葉には出さない。次は本気で刺されそうだからだ。

多少なら我慢できるとはいえ、進んで刺してほしいわけではない。刺してほしいやつは正真正銘の変態だろう。

 

「まぁまぁ。ifの話だと思って聞いてくれって。

そこにいた女の子の吸収が早くてビックリしたんだよなぁ。あれ?俺何で女の子って言ったんだろ?」

 

呆れたようなため息が聞こえる。

そんなこんなでセリスティアと共に学院長室へと到着した。礼儀正しくノックをしてから入るセリスティア。その後ろを欠伸をしながら入っていく。

 

「ウィルフリッドさん、また面倒なことをひっぱりこんできましたね。」

 

笑顔でレリィ・アイングラムが呟いた。その笑みに恐怖を感じつつ部屋を見渡す。そこには何時も通りのメンバーが揃っていた。ルクスが此方を見てにやにやしているのであとで腹パンを叩き込むことを心に誓う。

 

「学院長、この変質者をご存じなのですか?」

 

セリスティアの厳しい口調が部屋をピリピリした空気に帰る。これにはドーナツを一生懸命食べていたフィルフィーも顔をあげる。

 

「うーん、セリスティアさんも知り合いだと思うわよ?だって、スタンジフォールさんよ?」

 

ウィルフリッドが何故名字で呼ばれたのか部屋にいた全員が不思議に思っているとセリスティアがばっ!とウィルフリッドへと振り返り全身を触りつつ確かめるようにぶつぶつ呟く。

セリスティアの行動に呆気にとられつつレリィへと視線を向けるとおどけるように舌を出す。その行動にあとでレリィの私室にピンポンダッシュすることを心に決めつつもう一度セリスティアを見る。慌てたように全身を探る。

 

「あの、そろそろやめてくんない?あそこで2、3人俺を殺すかの勢いで睨んでんだよ。」

 

ふとウィルフリッドが部屋の一角に目を向けるとクルルシファー、シャリス、アイリが恨みがましい目を此方に向けていた。俺なんか悪いことしたかなぁと思いつつルクスへと視線を送るとサムズアップを返してくる。絶対ぶん殴ってやる。

 

「10年前、」

 

ふとセリスティアが口を開く。

 

「私はあるかたの紹介で一人の男の子と修行しました。その男の子は私なんかでは全然敵いませんでした。でもその男の子は言ったんです。

『力だけが強さじゃない。気持ちを強く持っている奴が一番強いやつなんだ』って。私はそれを聞いてなんだか胸が暑くなりました。名前も聞けずじまいで修行期間は終わってしまいましたが、私の師に名前だけ聞いたんです。スタンジフォールという名を。」

 

セリスティアがうるうるとした瞳で此方を見つめている。なんだか感動的な場面のようだがウィルフリッドは今物凄く焦っていた。何故なら覚えていないからだ。確かにそんなことをラルグリス家で修行していたときに言った覚えはある。ただ、彼女のような女の子に言った覚えはない。

ルクスへと視線を写すと肩をすくめている。アイリに助けを求めるとkillサインを送られ、クルルシファーからは恨みと嫉妬の目を向けられる。シャリスに至っては目を合わせてくれない。

 

「つまり、俺に味方はいないってことか。」

 

首をかしげるセリスティアに笑いかけつつウィルフリッドは思い出そうとする。

金髪、少女、才能・・・、3つのキーワードから答えを導きだそうとして見つける。

 

「あ!思い出した。ルクスの爺さんが才能に溢れてるから此方の子も頼むって行って1ヶ月だけ修行した子か。」

 

ぱぁ、とセリスティアの顔が明るくなる。なんだこの子身内にはかなり優しい子なのねと考えつつとりあえずセリスティアの頭を撫でる。

 

「昔は良くこうしてたなぁ。」

 

はい、と言いながら目を細めるセリスティア。負のオーラを全開に放つ三人を無視する。あれに関われば必ず殺される。ふぅ、と息を吐きセリスティアがルクスの方へと振り向く。

 

「ウィルフリッドさんは良いです。私の師匠ですから。ですが男子生徒は承諾しかねます学院長。」

 

先程までにやにやしていたルクスの表情が固まる。それを見てウィルフリッドがガッツポーズをとる。

困ったように頬に手をあて何も言わないレリィに変わりリーズシャルテが口を開く。

 

「でかい口を叩くのもその変にしておけセリスティア・ラルグリス。このルクス・アーカディアはお前なんぞより遥かに強いぞ。」

 

しかしルクスはリーズシャルテの前に立ちふさがりセリスティアに頭を下げる。

 

「セリスティア先輩、僕を退学にしてくれるんですか?喜んでお受けします。荷物をまとめてきても良いですか?」

 

ルクスが全力で頭を下げる。すると、セリスティアは少し驚きつつ了承する。それを見たルクスが嬉しそうに扉に手をかける。

しかしルクスの動きが止まる。理由は簡単だ。リーズシャルテとフィルフィーが機攻殻剣をルクスに突きつけているからだ。

 

「は、ははは、リーシャ様もフィーちゃんも怖いなぁ。僕が本気なわけないじゃないか。仕事もあるしね。断じてリーシャ様やフィーちゃんから逃げたいなんて思ってないからね?」

 

冷や汗がルクスの背中から流れているのが見てとれる。それはリーズシャルテもフィルフィーも気づいているだろう。

 

「ふむ、冗談か。そうだよなぁ。」

 

高圧的なリーズシャルテ。

 

「・・・、ルーちゃん信じてたよ。」

 

心理に訴えかけるフィルフィー。それを見て頭を押さえながら溜め息をつくアイリ。

呆然とするセリスティアの頭を軽く叩き、ウィルフリッドが声をかける。

 

「あれが俺の一番弟子だ。」

 

「何となく分かります。なんというかノリ・・、みたいなものがそっくりです。」

 

セリスティアの言葉に苦笑を浮かべる。まぁ後ろから未だに睨みを効かしているクルルシファーとシャリスのことはまだ無視しようと心に決めつつレリィへと目を向ける。

 

「うーん、ルクス君には仕事を頼んでるのよね。だからあんまり抜けてほしくないんだけれど。」

 

レリィの困った顔を見てセリスティアがはぁ、と溜め息をつきつつルクスを指差しながら言う。

 

「ルクス・アーカディア。私と決闘しなさい。勝てばこの学園に残ることを許可します。」

 

その言葉にルクスの目が輝くのをウィルフリッドは見逃さなかった。完全に負ける気でいるのが目に見えている。

そういう奴は思い通りにならない。

 

「いや、私が戦おう。」

 

リーズシャルテが手をあげる。それを世界の終わりのような目で見るルクスを見てウィルフリッドが爆笑する。

 

「私が、やる。」

 

フィルフィーも手をあげる。頭を抱え項垂れるルクスを見つつ腹を抱えてウィルフリッドが爆笑する。

 

「分かりました。それでも貴女方二人ではもの足りませんね。」

 

その言葉にリーズシャルテとフィルフィーがムッ、とする。しかしセリスティアはさも当然と言う風に立っている。

 

「じゃあ、私もいれてもらおうかしら。」

 

クルルシファーが手をあげる。それに驚いたのはウィルフリッドとルクスだ。

いや、ルクスの場合は完全に意気消沈である。ウィルフリッドと言えばちょっとラッキーと思いつつ見守る。

 

「私のウィルさんを奪おうとするなんて許さないわ。」

 

「ざまぁ。」

 

「おい、ルクス喧嘩なら何時でも買ってやるぜ。」

 

互いに胸ぐらを掴みあい至近距離で睨みあう。そんなネタを挟んでいる間にセリスティア対リーズシャルテ、フィルフィー、クルルシファーの戦いが決まってしまった。

ルクスがまた項垂れるのを見てウィルフリッドが笑っていたのは言わずもがなだ。

 

 

 

 

 

 

 

 

「ねぇ、ウィル。本気で逃げたいんだけど。」

 

「奇遇だな。俺もまったく同じ事をかんがえていたよ。」

 

次の日目を覚ますとウィルフリッドとルクスはロープで椅子にくくりつけられていた。しかも中々結びかたが上手くはずすことができずにいた。

 

「くそ、お嬢様がたは何でこんなことが上手いんだよ!」

 

「まったくだよ。はぁ、泣きたい。」

 

ルクスの言葉を聞くと近くにいた女の子が答える。

 

「何でって、いずれはルクス君に縛ってほしいから・・・。」

 

ルクスが撃沈する。その姿に合掌する。

 

「私はウィルフリッド様に縛ってもらいたいです。

 

「ぐは!」

 

血を吐き出して倒れる。そんなリアクションをとっても終わらない彼女たちのエロトークを止めるためにルクスが口を開く。

 

「そ、それで今どうなってるの?」

 

「そうねぇ、あ!セリスティア先輩とリーズシャルテ様たちが出てきたわ。今から始まるわよウィルフリッド様とルクス君をかけた一戦が。」

 

え?とウィルフリッドとルクスが同時に聞き直す。

 

「?何も聞いてないの?リーズシャルテ様たちが勝てばルクス君とウィルフリッド様はあの3方のものでセリスティア先輩が勝てばルクス君は退学でウィルフリッド様はセリスティア先輩の物になるんですよ。」

 

この言葉を聞いてルクスは叫んだ。

 

「セリスティア先輩!頑張って下さい!」





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