黒き英雄と竜殺し   作:souやがみん

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20話

セリスティアとウィルフリッドの組み手から数時間後『騎士団』の面々とルクスは特訓を開始していた。何故ルクスが特訓しているかというと学院長命令だったりする。

 

「にしてもレリィ、よくついてきたな。普段なら絶対ついてこないのにさ。」

 

そういうウィルフリッドも腕立てをしながら呟く。

 

「まぁ、学院長だからね。・・・、にしてもウィルフリッドさんのそれはいつ見ても凄いわね。」

 

レリィの呟きを聞いてウィルフリッドは自分の姿を確認する。

逆立ち状態で腕立てをしているわけだが片手の上、指一本である。

 

「俺にとっては普通、と言うかコレができなきゃ俺じゃない。って思えるほどだぞ。」

 

やっぱり頭おかしいわねと唸るように言うレリィを睨みつつ、『騎士団』の練習を見る。今はどうやらタッグ戦の練習らしく二対二の試合を行っている。

見た感じやはり神装機竜持ちのリーズシャルテ、クルルシファー、フィルフィー、セリスティアは群を抜いている。ついでに言えばルクスはやる気はないが負けたくないと言う矛盾に襲われながら四苦八苦しながらノクトをパートナーにし戦っていた。

 

「もっとルクスが苦しむ姿が見たい。」

 

「分かりやすい屑ね。」

 

「お褒めに預り光栄です。」

 

誉めてません。と笑いながら言うレリィ。なんだかんだでノリの良い彼女とは気が合う。と言ってもお互いに友としてだ。

少し影のある笑みを浮かべるレリィを横目で見ながらウィルフリッドはまたも『騎士団』の特訓に目を向ける。ルクスが三連勝している。なんだかムカついてくる。

 

「うし、ルクスをぶっとばす。」

 

そう言いながら立ち上がり《ワイアーム》と接続しルクスの前に立ちはだかる。

 

「どうしたの?ウィル。」

 

「久しぶりに指導してやろうと思ってな。」

 

それはありがたいな。と呟きながらルクスがブレードを投げ捨てる。それを見てウィルフリッドは嬉しそうに笑いながらすべての武装を棄てる。

異様な光景だった。武器を持ち斬りあったり、撃ち合ったり、それが機竜の基本戦術のはずだ。だが二人は一切の武器を使わない。

 

「さて、じゃあ始めるぞ。」

 

ウィルフリッドの言葉を聞いた瞬間ルクスが地面を蹴る。回り込むでもなく、真っ直ぐにウィルフリッドへと肉薄する。それを見てウィルフリッドは拳をにぎり叩きつける。それをルクスは受け止めず回避する。

回避した位置から体の回転を利用し拳を叩き込む。それをウィルフリッドは体を回すように動き、受け流す。その体の回転を利用し裏拳を放ちつつ距離をとるためバックステップをとる。

 

「は、だいぶ良くなってきたなぁ。」

 

「そりゃね。今日こそウィルをブッ飛ばす。」

 

やる気をみなぎらせるルクスに苦笑する。そして両者が接近する。まったく同じモーションの同じ拳が打ち出される。技が同じ場合、勝者を決めるのは力の強さ、もしくは体重である。

 

「真正面から挑んでくることに共感は持てるがお前の背丈じゃ届かないさ。」

 

ルクスが押し負けて吹き飛ぶ。ウィルフリッドはそれを見逃さず追撃する。一足でルクスへと肉薄すると機竜の腕をつかみ地面に叩きつけ、空中へと投げる。それを追うように飛び上がり両腕をルクスへと叩きつける。

しかしルクスはそれを体を回すことで回避してウィルフリッドに拳を叩き込む。それを裏拳の要領で受け止めつつ回し蹴りを使いルクスとの距離をあける。

 

「まだまだぁ!」

 

ルクスが地面を蹴る。そして今度は接近戦でのラッシュが始まる。

それをリーズシャルテとフィルフィー、クルルシファーは嬉しそうに眺めていた。普段、ルクスとウィルフリッドは手加減をしていた。それはリーズシャルテたちが何も思わないようにと言う考慮である。と考えていた。

 

「私たちではあいつらには絶対に届かないからなぁ。」

 

リーズシャルテの言葉に『騎士団』全員が頷いていた。クルルシファーは少し前にウィルフリッドに向かって聞いたことを思い出していた。どうすればウィルフリッドのように強くなれるのかと。

しかしウィルフリッドはこの質問を聞いたとききょとんた顔で逆に質問を返してきた。

 

「なんで、クルルシファー嬢は自分が弱いと思ってんだ?人の強さってのは他人には決められないさ。単純な力が全てじゃないからな。

思いがあって負けたくない。や勝ちたいって気持ち以外にもあるはずだ。自分の信念が。それが人の強さだよ。」

 

俺はそれが欠落してるからただ力が強いだけなんだよ。苦笑しながら呟くウィルフリッドを。

あのときのウィルフリッドは自分を強くないと言ったも同然だった。その意味は今もなお考えているが思いつかなかった。

 

「ウィルフリッドさんとルクス君はいったい何を目指しているのかしらね。」

 

クルルシファーの言葉に同意するようにフィルフィーが口を開く。

 

「そう、だね。でもここであった以前の、旧帝国時代の二人はあんなに楽しそうに笑ってなかったよ。」

 

「わたしたちのおかげ、と思いたいな。」

 

リーズシャルテたちはその戦いが終わるまで口を挟まず互いの好きな人を見続けた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「くそー、体重差がなければ勝ってたんだよ。」

 

ルクスが恨みがましく呟いていた。右横にはリーズシャルテが左横ではフィルフィーがルクスの傷の手当てをしていた。

ここは特訓先近くの宿泊所であり、ルクスとウィルフリッドの部屋である。しかしこの部屋にはウィルフリッドはいない。

 

「それにしてもあのヤクザ顔は大丈夫なのか?クルルシファーが無理矢理連れ出していったが、奴も怪我をしていただろう。」

 

「大丈夫ですよリーシャ様。あの馬鹿はあの程度の怪我じゃ堪えませんよ。」

 

ウィルフリッドはクルルシファーに引きづられながら出ていったのだ。聞きたいことがある。ここじゃ聞けない。じゃあ行きましょうか。それだけ言って連れ出したのだ。

 

「ウィルフリッドめ、慈悲はない。」

 

いままで、リアルハーレム野郎や、リア充死ねなど様々な罵倒を言われてきたので奴にも罵倒を浴びせることを心に誓う。

 

「おい、ルクス。とんでもなく悪い顔をしているぞ。」

 

「それぐらいならいいんじゃないかな?」

 

フィルフィーには心を読まれていた。その事に溜め息をつきながら彼女たちの行為に甘え傷の手当てをしてもらう。

彼女たちには珍しく無言での作業だった。その事に何故か少しだけルクスは恐怖を覚えていたが首を横に振る。

 

「お前は、ルクスとウィルフリッドは何でそんなに必死に戦うんだ?」

 

リーズシャルテが少し遠慮がちに訊ねてきた。それに目を丸くしつつもルクスは苦笑しつつもフィルフィーへと顔を向ける。

 

「私も、聴きたい、かな?」

 

「分かりました。でもそんなに面白くないですよ。所詮は男のプライドの問題ですから。」

 

そう言いながらルクスは口を開く。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

海岸線でウィルフリッドとクルルシファーは座っていた。互いに寄り添う姿は恋人のように見える。しかし正しくはウィルフリッドが逃げないようにクルルシファーがウィルフリッドの腕を抱いており逃げられないようになっているだけだったりする。

 

「それで、あのときの続きを話してくれないかしら。」

 

突然の質問にウィルフリッドは一瞬怪訝な顔をするがすぐに思い出したようであぁ、と呟く。

 

「強さ、だったか。意味はあのまんまなんだけどなぁ。要約すると自分の中に信念があればいつかまた立ち上がれる。それが強さ、ってことなんだよなぁ。」

 

「でも、それを見つけるのが難しいんじゃないかしら。」

 

クルルシファーのその言葉を肯定する。そう、見つけることが難しいのだ。言うのは簡単だ。だが言うだけでなく行動に移す。

それが人として最低限の努力だとウィルフリッドは思っていた。

 

「そうだなぁ、じゃあ俺の最近できた俺の信念と過去を聞かせてやろう。・・・と、その前に、アイリ、と『三和音』の三人とセリスティア嬢、そこにいるのは分かってるぞ。隠れてなくても話しは聞かせてやるからこっち来いよ。」

 

少し恥ずかしそうに5人が姿を現す。その姿にクルルシファーが彼女たちにジト目を向けたのちウィルフリッドへとニッコリ笑いかける。

 

「二人きりが良かったわ。」

 

もう嫌だ、なにこの子。愛が重い。そんなことを考えていると5人が腰を下ろした。

 

「ふぅ、じゃあ話を始めるけどくそみたいに面白くないのは確実だ。それでもいいんだな?」

 

クルルシファー、アイリ、シャリス、ティルファー、ノクト、セリスティア、全員が頷いていた。

それを見てウィルフリッドもルクスと同じ時に口を開いた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「よっ、・・・・、らぁ!」

 

ウィルフリッドの声が城の中庭に響く。それを聞いているのはルクスとアイリ、そしてピンク色の髪を肩に届く所で切り揃えているウィルフリッドと同じくらいの歳の少女だ。

ウィルフリッドの剣を使った舞を見てルクスがてを叩く。

 

「流石私のウィル!そんじょそこらの男たちとは違うね。」

 

ピンクの髪の少女が叫ぶように言う。それを聞いてルクスとアイリが苦笑し、ウィルフリッドは疲れたように呟く。

 

「何回でも言うが俺はお前の物じゃないからな。」

 

「良いじゃん。私はウィルのことを大好きだよ。もちろん異性として。」

 

「はぁ、ミーナ。お前は仕事残ってんじゃねぇのか?」

 

しまったぁ!と叫びながら城の中へと突撃していく様をため息混じりで見つめる。

 

「それにしてもウィルフリッドさんはミーナさんに冷たくありませんか?」

 

「そうか?」

 

「そうですよ。もっと乙女心に敏感になってあげてください。ミーナさんだってまだ17歳。ウィルフリッドの一つ下なんですよ。」

 

って、言われてもなぁと頭をかく。剣を腰に下げている鞘に直し、ルクスとアイリに向き直る。

 

「だって考えても見てください。ミーナさんから見ればウィルフリッドさんは一つ上の幼なじみで喧嘩に負け知らず。1つ屋根のしたで暮らしている。

恋愛の臭いがぷんぷん漂ってるじゃないですか。」

 

うぅむ、と唸るウィルフリッド。ウィルフリッドにとってミーナとは家族と同等のため恋愛対象として見たことがなかった。

 

「ウィルフリッド・スタンジフォール戦技技官殿はどちらに!」

 

この城の衛兵がウィルフリッドを呼んでいた。それを聞いたルクスがその衛兵を呼び寄せる。

 

「ウィルフリッド・スタンジフォール戦技技官殿。国王が御呼びです。すぐに来られたしとのこと。」

 

「了承した。すぐに向かうとだけお伝え願う。」

 

衛兵が綺麗に敬礼しまたも走って行ってしまった。その姿に肩をすくめる。

 

「にしても父さんがウィルを呼んでどうするつもりなんだろ?」

 

「さぁ?ま、仕事は仕事だからな。それに例のあれも勘づかれる訳にはいかないしな。」

 

そう言って背中越しにルクスとアイリに手を振りながらウィルフリッドは謁見の間へと歩み始めた。





話が進むと思わせてまさかの過去編。
正直自分でもビックリww
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