黒き英雄と竜殺し   作:souやがみん

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ルクスのターン!


26話

「では、今日は皆さんにはあの遺跡の踏破に挑んでもらいます。私とアイリさんの班に別れて行動します。いいですね?」

 

レリィの一言で集まっていた全員が頷いた。今目の前には空を飛ぶ遺跡がある。今からそれに乗り込むのだとレリィから昨日の間に全員へと通達があった。

『騎士団』でも汎用機を使っている生徒は危険という事でここにはいない。但し『三和音』の三人は別のようでここにいる。

 

「それで学院長。この遺跡調査は正当なものなのでしょうか。このような少数の遺跡調査は例がないと思うのですが。」

 

セリスティアが口を開く。それに対してリーズシャルテが頷く。

 

「そこの団長殿の言うとおりだな。この人数では王国が認めるわけないと思うが。」

 

「そこは金の力よ。」

 

手でお金のマークを作っておどけるレリィ。そんなレリィを呆れた目で見ているとウィルフリッドの腕に重さが現れる。それを横目で確認するとクルルシファーが腕を抱いていた。

クルルシファーは笑顔のままウィルフリッドの耳に口を寄せる。

 

「ここでも確認できるかもしれないわ。そのときはよろしくね。」

 

ニッコリ笑って手を振り離れていくクルルシファーを眺めながら溜め息をつく。

 

「ウィル、ちょっと話があるんだ。」

 

ルクスがウィルフリッドに声をかけみんながいるよりも少し離れた場所にある一本の木の下へと向かった。

 

「何か、おかしいと思わない?」

 

「あぁ、レリィのやろうなんか隠してやがんな。」

 

うん、と頷くルクスを見ながらレリィの方へと目を向ける。何となくだが無理をしている気がする。しかしそんな素振りを見せずレリィは生徒達に笑みを向けている。

 

アイリもきっとその事に気づいているだろう。しかし何も言わないことを考えると此方に出来ることはないのかもしれない。

 

「ま、俺たちは何かあったときにあいつらを守れば良いんだ。」

 

「それもそうだね。でもその前に僕が死ぬかもしれない。だって調査の班分け聞いた?僕、リーシャ様とフィーちゃんとなんだ・・・。」

 

一般の人が聞けばとても役得である。何せ片や王国の皇女様、片や大金持ちのお嬢様である。

まぁ、本人たちの性格を知ってしまっているウィルフリッドにとっては何とも言い難い。

 

「ま、まぁ、もしかしたら楽しいかも知れないしさ。」

 

「そういうウィルは班分け見たの?」

 

まずそんなものが発表されていたことに驚きだった。ルクスを放置しつつみんなに近づいていくとシャリスが声をかけてきた。

 

「あ、ウィルフリッドさん!此方ですよ。」

 

そこにいたのは満面の笑みを浮かべるシャリスと少し不機嫌そうなアイリ、そして何時ものポーカーフェイスのノクトがいた。

 

「俺らの班は四人なんだな。」

 

「Yes、私たちはアイリの護衛も兼ねていますので少し人数は多いようです。学院長の班もセリスティア先輩、クルルシファー先輩、ティルファーですので。」

 

ルクスの班が戦力的には余裕があるようにも見えるがその辺りはレリィの悪巧みであろう。

 

「みんな準備は良いかしら?それでは出撃!」

 

全員が機竜と接続し空飛ぶ遺跡へと突入する。

中は広い吹き抜けのようになっておりかなり広い。班分けをしていなければ今日中にすべてを回ることは不可能だろう。

 

「それでは各班行動開始。何かあった時の連絡は忘れないように。」

 

レリィの一声で班ごとに行動を開始する。クルルシファーとセリスティアが羨ましそうに此方の班を見ていたのであとでフォローするのを忘れないでおこう。フォローしなければ自分の命が危うい。そんなことを考えながらウィルフリッドは廊下を進んでいく。

 

「ウィルフリッドさん。」

 

アイリに話しかけられ振り向くとアイリが神妙な顔で口を開く。

 

「この先に何があると思いますか?」

 

シャリスとノクトもそれを聞きたいらしく此方に目を向ける。

 

「そうだなぁ。正直分からん。でも変な気配がするし、注意する点だろうな。」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「ちょ、ちょっとリーシャ様!?そんなにくっついてたら何かあったときにすぐ動けないですよ!

って、あぁ!フィーちゃん!それ僕の非常食だからといって食べないでよ!」

 

ルクスの楽しそうな悲鳴が響く。常にウィルフリッドとの通信をONにしているためウィルフリッドからざまぁ、という通信が届く。いずれすれ違い様に足払いをかけることを心に誓いつつ、両隣の少女を見る。

尽くされてるなぁとは思う。しかし正直怖いと言うのがルクスの感想だったりする。

何せ依頼で他の女の子と話しているだけで嫉妬されるし、ウィルフリッドと一緒に素敵な夜を過ごしに行こうとしたら首根っこを捕まれて拉致された。このときはウィルフリッドもクルルシファーに捕まっていたので何だか得した気分になったが。

 

「おい、ルクス。どこを見ている?」

 

あ、すいませんと頭を下げつつリーズシャルテへと向き直る。機竜越しに腕を抱いて意味があるのかと聞きたかったが、身の危険を感じて思いとどまる。

実際、意味はないだろう。ただ、一緒に居たいだけなのだろうと思う。フィルフィーはともかくリーズシャルテにここまで好意を持たれることをしただろうかと疑問に思う。

 

「リーシャ様、ここがどの辺りか分かりますか?」

 

「うむ、だいぶ奥まで進んでるからな。アイリや学院長でもなければ詳しい場所までは分からんが大体今は7割地点まで到達といった感じだな。」

 

フィルフィーがむしゃむしゃとルクスの非常食を食べている音以外は機竜の駆動音しかしないこの場所をルクスはとても気味悪く思っていた。

そして突然そのときは来た。フィルフィーが食べるのを止め何かに気づいた。

 

「気をつけて何か来る。」

 

フィルフィーの声の数秒後、リーズシャルテの体が大きく後ろに弾き飛ばされる。それに呼応するようにルクスは《ワイバーン》の手に持ってるブレードを叩きつけるが未知の敵はそれをも軽く回避する。

 

「動きが他のアビスとは違う?」

 

アビスと同じような容姿だが動きがまるで違う。何処か人を相手にしているようなそんな感覚だ。

フィルフィーがアビスへと肉薄する。動きはウィルフリッド直伝のため素早い。懐に潜り込むと拳を振り抜く。

《テュポーン》の全力の一撃を受けてもアビスは吹き飛びもせずその場にとどまっていた。アビスはフィルフィーを掴み地面へと叩きつけてから壁へと投げつける。

 

吹き飛ぶフィルフィーをルクスは庇いつつ《ワイバーン》をオーバーヒートさせて勢いをそぎ、動きを止める。

気は失っていないもののフィルフィーはもう動けそうになかった。リーズシャルテも吹き飛ばされてからまだ姿が見えない。

 

「フィーちゃん、無茶しちゃ駄目だよ。」

 

ルクスはフィルフィーに釘を指してから《ワイバーン》との接続を解除し、《バハムート》を呼び出す。

踏み出すと同時に手に持ってるブレードを振るう。一瞬の出来事。しかし敵アビスはそれを回避する。歯軋りしつつルクスは叫ぶ。

 

「『暴食!』」

 

時間を圧縮し瞬間移動ともとれる速度で移動する。アビスの腹を蹴り飛ばす。吹き飛んでいるアビスの眼前へと『暴食』で移動しブレードを突き刺した。そのまま勢いよく壁に激突する。

激突と同時にルクスはブレードを手放し大きく後ろに後退していた。そして呟く。

 

「これは不味いなぁ。威力が足りてない。」

 

そこには目を輝かせ面白い玩具を見つけた子供のような感じが見てとれるアビスがいた。手を叩き、まるで褒め称えるかのような行動をとると急速に動き出す。

自分の体に突き刺さっていたブレードを引っ張りだしルクスへと投げつける。それをルクスは首の動きだけで回避すると前へと踏み出す。地面を踏みつけおもいっきり前へと跳躍し肩から体当たりを繰り出す。

予想外だったのかまともにアビスへと直撃する。それを確認すると腕を掴み地面へと叩きつける。叩きつけてからすぐに蹴り飛ばす。

 

「《バハムート》じゃないと出来ない格闘術だもんなぁ。ウィルにもっと教えてもらわないと。」

 

鎧通しの技はまだ教えてもらっていないため身体的なダメージしか与えられない。ルクスは余裕を保ってはいるが心の中では舌打ちしていた。

舌打ちと同時に踏み出す。フィルフィーの《テュポーン》ほどの攻撃力がなければダメージが通らないアビスに対してルクスがとった行動は単純なものだった。

 

「フィーちゃんにしかダメージが通せないのならフィーちゃんが回復するまで粘れば良い。」

 

肉薄すると同時に拳を叩き込む。しかし、それはどうでいい。ルクスは拳を引き抜くと同時に逆手に持っていたブレードを喉元に突き立てる。

流石にこれはアビスにきいたようで、呻いている。

 

「流石に喉はダメージが通る、か。でももう使えないな。」

 

ブレードを引き抜きつつ、距離をとりながら呟く。それと同時にブレードが砕けるのを確認する。

軽く溜め息を付きながらも構える。アビスの突進を合気道の要領で受け流す。ルクスのすぐ後ろにある壁に激突するも傷一つつけずにルクスを睨むように見つめている。

「『暴食』!」

 

ルクスが神装を発動しつつ突っ込む。後ろに回り込み拳を叩き込む。何発も叩き込むもアビスにはダメージが通っていない。

アビスが《バハムート》の足を掴み壁へと叩きつける。それをもろに受けてしまい、ルクスが地面を転がる。腕に力を込めて何とか立ち上がりつつルクスは呟いた。

 

「うーん、勝てないなぁ。対策があるわけでもなし。」

 

「でも、私が立つまでの時間、稼いでくれたよ?」

 

ふと、横を見るとフラフラながらも立っているフィルフィーがいた。今にも倒れそうだが目がランランと輝いていた。

 

「フィーちゃん。止めないけど、無理したらダメだからね。」

 

フィルフィーはルクスに薄く笑いかけアビスに突っ込む。ルクスのステップ、ウィルフリッドの戦闘用に歩行術を使いつつ肉薄する。体部位をがっちり掴み《テュポーン》の出力を最大にまで引き上げる。

 

「ルーちゃんをいじめるの、許さない。」

 

遺跡の壁を貫通し外に出ると地面へと叩きつけるように投げる。アビスは地面に叩きつけられる直前に体を捻ることでダメージを薄くしていた。

外でアビスが地面に足をつけると同時に先回りしていたルクスがアビスに足払いをかけ体勢を崩すとフィルフィーの方へとおもいっきり蹴り飛ばす。

 

「終わり、だよ。」

 

フィルフィーの言葉とともに拳がアビスへと叩き込まれる。拳が叩き込まれた地点顔面からアビスは消え去った。そしてフィルフィーが倒れた。

どうやら全てを使いきったようで《テュポーン》との接続も切れている。

 

「お疲れさま、フィーちゃん。」

 

ルクスはフィルフィーへと薄く笑いかけると《バハムート》ととの接続を解除し、近くにあった小屋へとフィルフィーをおぶっていった。

壁に背を預け、フィルフィーを下ろすと一息つく。

 

「フィルフィーの、気持ちよかった。」

 

『おい、ルクス。通信を切ってないの忘れるな。王女殿下には此方で回収しといてやるよ。まぁ、あらぬことを言っちゃうかも知れないけどな。』

 

通信が切れた。そしてルクスは地面に四つん這いになりつつ項垂れる。うっかりしていたと。

馬鹿なことをしているルクスに寄りかかる影があった。そう、フィルフィーだ。

 

「どうしたの?フィーちゃん。寝てないと?」

 

大きく後ろに跳躍する。人間とは思えない色の目をしたフィルフィーは一歩一歩踏みしめるようにルクスへと近づいていく。

 

「だめ!ルーちゃん、逃げて!」

 

フィルフィーの必死な叫びを聞き、ルクスは《バハムート》に手をかけつつ言った。

 

「大丈夫だよ。フィーちゃん。僕が助けてあげるから。」

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