黒き英雄と竜殺し   作:souやがみん

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28話

問答無用でウィルフリッドはフギルへと接近していた。特別な技法は何も使わず真っ直ぐ前へと踏み出す。

 

「死ね。」

 

呟きながら剣を上段から降り下ろす。しかしフギルはそれをステップを踏むことで簡単に避け苦笑を漏らす。その態度がさらにウィルフリッドに怒りをもたらすがフギルは何も気にせず笑いながら口を開く。

 

「本当にお前は直情的だな。もっと頭を柔軟に出来ないのか?親友としては悲しいところだな。」

 

「お前に今だに親友と思われてることが不愉快だわ。」

 

それは残念。と言いながら笑うフギルを睨むことを止めずに考える。フギルとあのヘイズという女は繋がっている。それはこの会合がほぼ答えとなっている。

フギルはあの女の行動が気にくわないのだろう。そこで交換条件を持ってくることで此方の協力を得ようとしている。

 

「で?どうせ協力でも求めてきたんだろ?フギル。ヘイズって女はお前らの仲間で勝手な行動をとってるからどうにかしたい。ってとこだろ?」

 

「驚いたな分かっていたのか。」

 

本当に驚いたような顔をするフギルに少しイラッとしつつ思考する。条件は多分・・・。

 

「そう、条件はあのピンクの髪の少女の命だよ。」

 

その言葉にちっ、と舌打ちをする。その切符を切られてしまえばこちらは協力することがほぼ確定となる。そのためにルクスと共に覚悟を決めたのだから。

しかしフギルの言うことを鵜呑みにすることはできない。こいつは《クリカラ》にミーナを殺すように言った。必要なら殺すことも厭わない男だ。そんな男の為にルクスやクルルシファー、リーズシャルテ、セリスティアが命をかける理由にはならない。

 

「ああ、その同盟受けてやるよ。その代わりその同盟に入るのは俺とルクスだけだ。」

 

ルクスは何と言っても戦おうとするだろう。ならば止めるのではなく背中を押すのが師匠の責任だろう。しかしこんな浅はかな考えはフギルには読まれているようで口の端がつり上がる。

 

「ならばそれで良い。良いな、賢弟。」

 

「ウィルフリッドが決めたんならそれでいいよ。フギル。」

 

《バハムート》の攻殻機剣を血が出そうな勢いで握るルクスが建物の影から現れた。ルクスがいることは少し前から気をたどっていたので気づいていた。

まぁ、あれだけ殺気だっていたら隠す気は毛頭なかったのだろうが。

 

「それで?フギル。僕たちは何をすれば良いの?」

 

「必要なら敵の手を借りることも厭わないその姿勢。とても俺好みの性格になったな賢弟。

それで作戦だが簡単だ。ラグナレク、ユグドラシルを殺せば良い。もちろんこの作戦にはお前たちが所持しているあの笛が必須だ。」

 

フギルと一定の距離を取りながらその話に聞き入っていた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「《ワイバーン》!」

 

「《ワイアーム》!」

 

ルクスとウィルフリッドの声がこだまするように響き二人に機竜が装着される。

二人は互いに顔を見合わせると遺跡へと飛び乗っていた。その遺跡のなかは昨日と違い大量のアビスがいた。

 

「ははは、やべぇ、こんな状況だってのに楽しくてテンション上がってきやがった。」

 

「ウィルのその修羅ぶりには引くわーって言わせてもらいたいけど僕もだいぶ楽しみなんだよなぁ。はぁ、うつったかなぁ。」

 

馬鹿なことを言うルクスに腹パンを決めてから腰に下げているブレードを引き抜く。

一足で一番近くのアビスへと接近し真っ二つに両断する。その切り飛ばしたアビスの上半身を別のアビスへと蹴り込む。

その死骸がアビスが払うと同時に接近しまたも真っ二つに叩き斬る。

 

「は、ははは!楽しいじゃねぇか!」

 

大声で笑いながらアビスを斬り殺し続ける。それを呆れながら見ているルクスもアビスを1体1体確実に殺していく。ただ、数が多すぎる。

 

「ウィルフリッドさん!無茶しないでください。」

 

雷が目の前の敵を穿った。

 

「ウィルさん。私をおいてくなんて馬鹿なことをするのね。」

 

氷がアビスの彫刻を作り出す。

 

「ふん、ルクスよお前だけに格好いいことはさせんぞ。」

 

重力がアビスを叩き潰した。

こう見てみると何ともリーズシャルテだけがグロいことをしているように思える。

 

「ここのアビスは数が多いねぇ。1体1体はそこまで強くないけど。」

 

「Yes、それに最深部近くには学園長もいらっしゃいますね。隣に昨日クルルシファーさんが拾った人形もいるようですが。」

 

「ウィルフリッドさん!ここは我々が相手をしますので力を温存しておいてください。」

 

リーズシャルテ、クルルシファー、セリスティア、三和音の三人、シャリス、ティルファー、ノクトが笑みをこぼしながら此方に口を開いていた。

それをルクスとウィルフリッドは嬉しそうに笑いながら眺めていた。

 

「ついでですが私もいますよ?」

 

そんなことを言いながらアイリがノクトの《ドレイク》から飛び降りていた。流石にアイリの登場には驚いたのかルクスが呆然としている。

ウィルフリッドはやれやれと肩をすくましている。ため息を1つ吐き、ウィルフリッドが叫んだ。

 

「ああもう!こうなりゃやけくそだ!いくぞお前ら!」

 

ウィルフリッドの言葉に全員が返事しながら一斉に飛び出した。

リーズシャルテとクルルシファーが後方からの砲撃で援護しセリスティアが前衛で敵を引き付けつつ殲滅していく。そして撃ち漏らしたアビスを三和音の三人が斬り殺していく。

 

「!ルクス!」

 

ウィルフリッドが叫ぶと同時にルクスの体をウィルフリッドが全力で前方へと投合する。ルクスはその投げられた勢いのまま前方を歩いていた学園長、レリィの後ろから迫っていたアビスを斬り飛ばす。

焦りと驚きの表情でこちらを見つめるレリィに近づきデコピンを食らわせる。ぐわっ!と言いながら倒れている辺り何となく余裕が見えるが今はそんなことを言っている暇はない。

 

「ったく、レリィ。無茶すんじゃねぇよ。機竜も展開できねぇくせによぉ。」

 

そんな馬鹿にした言い方だったがレリィはうつむいてしまっていた。その頭に手をおき撫でながら笑いかける。

 

「とりあえず先に進むぞ。あのヘイズって女は絶対にぶっとばす。んでもってさっさとフィルフィを助けるぞ。」

 

目元に涙を浮かべるレリィににかっと笑うウィルフリッド。それを見て俄然やる気を見せるレリィ。

 

「ええ!もちろんよ。あの子は私のかわいいかわいい妹なんだから!」

 

「ついたぞ。」

 

あれから数度の戦闘を繰り返し最深部の扉の前にたどり着いていた。扉の前に人形、ラ・クルシェが立つとなにかを考え込む様子を見せる。

 

「どうかしたのかしら。早く扉を開けてほしいのだけれど。」

 

クルルシファーがウィルフリッドの腕へとしがみつきながら不満を漏らしていた。抱きつく意味があるのかと聞かれれば意味はないのであろう。ただその事にツッコミを入れると確実にウィルフリッドの腕は見たことのない方向へ曲がるだろう。

 

「いえいえ、扉は開けません。記憶が戻りましたので私のすべきことを行うことに致します。」

 

「はぁ?そりゃどういう意味だ?」

 

「あなた方をここで始末します。」

 

ラ・クルシェの言葉と共にかなりの数のアビスが姿を表していた。

1体1体のアビスは神装機竜を持つリーズシャルテ、クルルシファー、セリスティアにとっては敵にならないレベル。三和音の三人もアイリとレリィを守りながらでも充分に戦える程度だ。

 

「やっぱり無理だったかぁ。まぁ、もともとそこまで期待してねぇけどな。」

 

ルクスは振り向きもせずに声の方へとブレードを投げていた。金属音が響くことから失敗というのを感じとりながら振り向く。

 

「あっぶねぇなぁ。2日ぶりなんだぜしっかり挨拶ぐらいしろよな。」

 

ヘイズが苦笑を浮かべる。それに対して何も答えずに睨むルクス。ウィルフリッドがそんなルクスに腹パンを叩き込み悶絶しているルクスを端に蹴り飛ばす。

 

「んで?俺たちと遊びたいのか?嬢ちゃん。」

 

「いや、そんなことより今蹴り飛ばした奴の心配はしないのかよ。」

 

少し焦ったようすのヘイズを尻目になんのことだと首を捻るウィルフリッド。ヘイズが何処か疲れたような視線を向ける。

横から飛んで来た剣を受け止め、元の場所へと投げ返す。

 

「おい、ルクス。敵は俺じゃねぇよ。」

 

「今わかった。僕の本当の敵はウィルだわ。」

 

やんのか?とガンを飛ばしあう。そんな二人に頭を抱えるリーズシャルテたちを見てからハイタッチを決める。

 

「言っとくが俺たちはどんなときでも俺たちなんだ。ピンチ?そんなもん笑いながら踏み潰してやるよ。」

 

「そう言うこと。まぁ、さっきまでキレてたから完全に忘れてたけど。ヘイズ、君に勝ち目はないよ。」

 

グッ、と下唇をかみながらヘイズが此方を睨んでいる。しかし得意気に笑うとラ・クルシェに声をかける。

 

「コイツらはここで殺す。あれを出せ!」

 

ラ・クルシェが淡く光る。そして現れたのは機竜、《ワイバーン》が3機ラ・クルシェとヘイズを守るように現れる。

3機ともルクスが操っている《ワイバーン》とそうかわりあるものではない。しかし明らかに一点違っていた。3機とも人が操っていない。まるで自分の意思で動いているような感じだった。

 

「そうコイツらはオートマタみたいなもんなんだよ。だからよぉこんなこともできんだよ!」

 

ヘイズが叫ぶとまたもラ・クルシェが淡く光る。すると今度は3機の《ワイバーン》に変化が起こる。

まるでウィルフリッドの《クリカラ》のリミッターを外したときのように形が変わっていった。

 

「これは、限界突破か?」

 

すべての体にかかる負担を無視することで発動できる機竜の奥の手とも言える状態。ウィルフリッドのリミッター解除とは違い意識や体を乗っ取られることはないが常に全身に激しい痛みを伴う。

 

「そうだ!限界突破だ!誰も乗っていないからな。なんのデメリットもなく使えんだよ。」

 

得意気に笑うヘイズはまだ言葉を続ける。

 

「んで、さらに保険はかけておくか。来い!」

 

そうしてヘイズから現れた人影にルクスが焦ったように目を見開く。レリィが崩れ落ちた。そう現れたのはアビスに似た目をしているフィルフィだった。

 

「なんで、フィーちゃんが・・・、」

 

ボソッと呟き項垂れる。それをウィルフリッドは横目で見つつヘイズへと声をかける。

 

「なるほどなぁ。ユグドラシルのちから、か。で?それで俺を止められんのか?」

 

「なにいってんだ?止めるのは俺じゃない。そっちの没落王子だろうよ。」

 

大きく跳躍しルクスから距離をとる。

 

「顕現せよ、神々の血肉を喰らいし暴竜。黒雲の天を断て《バハムート》」

 

そこには《バハムート》と接続されたルクスが立っていた。

そして

 

「《暴食》!」

 

神装を使いフィルフィを思いっきり殴り付けていた。ヘイズやリーズシャルテ達が呆然とする。そのなかでルクスははっきりと言った。

 

「僕はもう何も失わない。そのために手に入れた力だ。邪魔するならとりあえず殴って黙らせる!」

 

変な方向に進化しつつあるルクスを見てウィルフリッドは乾いた笑みを浮かべることしか出来なかった。






次回からがフィルフィ編の最後の戦いですな。

この戦いは何回かに分けてやる予定です。
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