黒き英雄と竜殺し   作:souやがみん

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29話

「ごめんね、フィーちゃん。」

 

レリィも真っ青になるほどにルクスはフィルフィに対し容赦のない攻撃を仕掛けていた。

《ミスディレクション》、《カリキュレイト》を使いながらフィルフィの視界から消え攻撃を繰り出す。一切の手加減もない。攻撃を仕掛けてこようものならその攻撃を寸前で回避するという煽りまで始めている。

 

「うぅーん?ルクス君ってあんな子だったかしら?」

 

レリィの視線が突き刺さるようにウィルフリッドへと向けられていた。それに対してサムズアップを浮かべるウィルフリッドにレリィが頭をはたく。

冗談はさておきっとウィルフリッドが立ち上がると《クリカラ》を抜いた。

 

「さて、全員戦闘準備だ。どうやらルクスがフィルフィ嬢を相手してくれるそうだからな。俺があの無人の機竜を殺るからそれ以外のアビスを頼んでも良いか?」

 

おう!と言う返事と共に全員が一斉に地面を蹴り飛び出していた。

セリスティアが槍を振るいアビスを蹴散らしていく。クルルシファーがその手に持つカノンでアビスという氷の彫刻を作り上げていく。リーズシャルテが重力を操作しアビスを叩き潰す。

 

「行くぞ!ティルファー、ノクト!」

 

シャリスの掛け声と共に3人が飛び出す。シャリスがアビスの注意を引き付けつつ牽制する。ターゲットが完全にシャリスに向けられている間にティルファーが接近しすれ違い様に一撃を叩きつける。

 

「これで終わりです。」

 

遠くからノクトが最大出力のカノンを放ちアビスを消滅させていた。

 

「全員やるなぁ。それじゃあウィルフリッドお兄さんの格好いいところでも見せるかね。」

 

ウィルフリッドが地面に震脚を叩き込むかの勢いで地面を蹴る。その地面を蹴った勢いで無人機竜へと接近し手に持つ刀を上段から切り下ろす。それを無人機竜は手に持つブレードで受け止めていた。

しかしウィルフリッドはニヤリと笑うとそのまま力を込める。《クリカラ》の刀からも無人機竜のブレードもビキビキと音がなり始めるがウィルフリッドは気にしない。

 

「おらぁ!」

 

ヤクザのような叫びと共に更に力を込め押し込むと無人機竜のブレードが折れていた。それを見てウィルフリッドはその無人機竜を蹴り飛ばし刀を納刀し神装《創造剣》を使い刀を2本生み出すと近くにいる無人機竜に飛びかかる。

迎撃の為に振るわれたブレードの腹を刀の刃をあわせて叩きおる。ブレードを無人機竜の肩に突き刺しその胴体を殴りつけ地面へと叩き落とす。

 

「見え見えなんだよ!もっと頭使いやがれ!あ、頭ないのか。」

 

一人漫才のようなことをしつつサマーソルトでも決めるように後ろからブレードを振るっていた無人機竜の攻撃を避けるとそのまま刀で一閃する。地面に落ちている3機の無人機竜を見下ろしつつウィルフリッドが得意気に笑いながら言った。

 

「はっはっは!俺を殺したかったら気とか全部隠した上でメタ張ってから殺しに来な。」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

良い空気吸ってるなぁ。此方は心をゴリゴリ削りながら戦ってるのになぁ。そんなことを考えつつ目の前にいる敵で幼馴染の少女、フィルフィを見た。此方からの攻撃で服のあちらこちらが破れていてかなりセクシーなことになっているが今はそんなことを気にしている場合ではない。

フィルフィはあれから《テュポーン》を装着したためルクスも《バハムート》を装着していた。とは言え中々に厳しい状況なのは間違いなかった。フィルフィの《テュポーン》はアビスと戦うためではなく機竜と戦う為にあるような機体だからだ。

 

「うーん、素手の殴りあいなら負けることはないんだけどなぁ。」

 

呟いている間にも自我が明らかに存在していないフィルフィが接近してくる。既にフィルフィは神装、《無情の果実》を発動させておりルクスは《暴食》を封じられている。

フィルフィの拳を空中でステップをとるように回避し、カウンター気味に拳を叩き込む。それをフィルフィは回避ではなく体で受け止める。ルクスの腕をつかみ壁へと叩きつけるように振りかぶる。

 

「それじゃあ隙だらけだよフィーちゃん。」

 

捕まれている腕を軸にするように回転しルクスの腕を掴んでいる左手を思いっきり蹴り飛ばす。腕が解放された瞬間にフィルフィの胴体を掴み壁へと叩きつける。

大きく跳躍しルクスは一息ついていた。そして考える。不味いと。

 

「負けることはないんだけどなぁ。でもそれで終わっちゃうんだよなぁ。」

 

今回の目的はフィルフィの救出だ。フィルフィの体内にあるユグドラシルの種子をどうにかしない限りはこの状況は抜け出せない。

そんなことを考えている間にもフィルフィが此方へと踏み込んできていた。拳が振るわれるがルクスはそれを合気道の要領で受け流し地面へと転がすとその上に跨がりマウントポジションを取る。

少し恥ずかしさを感じつつ腰のブレードを引き抜き《テュポーン》の腕の関節に突き刺す。

 

「なっ!」

 

ルクスが声をあげる。フィルフィがそのブレードを反対の腕で掴んでいたのだ。そのままフィルフィはルクスを地面に2、3回地面へと叩きつけると壁へと投げつける。壁に当たる寸前に体勢を建て直し地面にたつルクスの体にもかなりのダメージが貯まっていた。

単純な一撃の威力だけならフィルフィは学園最強だろう。ウィルフリッドは色々な技法を組み合わせて威力を出していると言っていた。

 

「速度が上回っているから早々当たることはないけど神装が、使えないのがキツいかな。」

 

自分に言い聞かすように呟いてから踏み出す。フィルフィよりも早く前へと詰めブレードで足を浅く切り裂くように滑らせる。

しかしフィルフィはそれを読んでいたかのようにステップを踏みルクスの胴体を思いっきり蹴り飛ばした。とっさのことに少し焦りが見えるルクスだったが空中で体勢を建て直し地面に立つ。

 

「フィーちゃんの格闘センスは僕を越えている、かな。まぁ、そこまで才能がある訳じゃないから仕方ないけど女の子に負けるのはいい気がしないなぁ。」

 

軽いことを呟くルクスだったが状況は最悪だった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「ぐっ!・・・、このぉ!」

 

気合いと共に一閃する。大型の槍を杖がわりに使い立ち上がる。フィルフィーの《テュポーン》の神装が発動はすべての戦闘に被害をもたらしていた。そして一番被害が大きかったのはリーズシャルテ、クルルシファー、セリスティアの神装機竜持ちだった。

三和音とは違い各自でアビスと戦い続けていた彼女たちの戦力は大幅に落ちていた。

 

「みなさん、大丈夫ですか?」

 

セリスティアが傷だらけの顔をリーズシャルテとクルルシファーへと向ける。遠距離がメインの二人はセリスティアほどダメージは受けていないがそれでもかなりのダメージが蓄積されていた。

 

「まぁ、ルクスやウィルフリッドに比べればマシだろうよ。」

 

リーズシャルテが軽口を叩きながら砲撃を撃ち込みアビスの一団を吹き飛ばしていた。しかし明らかに数が違う。

 

「もう例の作戦を始めるべきではないかしら。このままだとウィルさんまた《クリカラ》のリミッターを外しかねないわよ。」

 

そんな脅しのようなことを言うクルルシファーに視線を向けながら考える。確かにその通りだった。この状況ならば確実にウィルフリッドか、ルクスが無茶をする。そのおかげで大抵のことは何とかなるだろう。しかし、

 

「そうですね。もうあの二人に無茶をさせるわけには行きませんね。それではアイリに連絡をお願いします。」

 

リーズシャルテとクルルシファーが同時に頷いた。

 

 

 

 

 

 

 

笛の音が戦場を満たした。そう思うほどに響く音にフィルフィが頭を押さえ苦しそうに唸っていた。そしてそれはフィルフィだけでなく他のアビスたちも同様であった。

 

「ん?もう始めるのか?」

 

ウィルフリッドがそう口にすると隣にルクスがやって来ていた。特に意味もなくルクスと拳をぶつけると目の前にいる無人機竜を睨む。

 

「あとはアレだけ、だね。」

 

「そうだなぁ。じゃあちゃちゃとやっちまうか。」

 

ウィルフリッドがそう言うと二人は地面を蹴った。先程の《無情の果実》が発動されていた時とはまるで違うスピードで接近する。

ルクスはすれ違い様にブレードを滑らして足を一本斬り飛ばす。無人機竜は反撃にと振りかぶっていたブレードをルクスへと降り下ろすがもうそこにはルクスはいない。

 

「《暴食》」

 

神装により圧倒的な速度で無人機竜が一振りする間に手足を斬り飛ばし胴体を真っ二つに切り裂いた。粉々になる無人機竜を横目にルクスはウィルフリッドへと目を向けるとウィルフリッドは笑顔のまま無人機竜を殴り付けていた。

此方よりも戦闘が長引いているのは確実に遊んでいるからだろう。

 

「はっは!死ねぇ!」

 

無人機竜へと叫びながらウィルフリッドが両腰に吊るしている刀を引き抜き一瞬で無人機竜を塵に返した。残り1体そう思ってルクスが振り替えるともうそこには何も居なかった。

 

「あぁ、ルクスが戦闘終わらせるのが遅かったからやっといたぞ。」

 

ジト目を向ける。ウィルフリッドのサムズアップを受けて少しイラッとするが頭を今は切り替えフィルフィの元へと降り立つ。今は《テュポーン》も解除されすやすやと眠っている。それを見てホッとする。

 

「これで暫くは問題ねぇな。笛はあるからフィルフィ嬢が暴れそうになるたびに吹く必要があるけどな。」

 

ウィルフリッドがそう言うと本当に力が抜けそうになる。それをグッ、と堪えてこの騒ぎの元凶であるヘイズを睨む。彼女もこの事態を予測していなかったのか驚き半分怒り半分といった顔をしている。

 

「さて、あとは彼女を捕らえるだけですね。」

 

振り替えるとリーズシャルテ、クルルシファー、セリスティアが立っていた。満身創痍と言った姿をしていたがそこまで大きな負傷はしていないことに安堵する。

 

「ああ、アビスはもう問題ないぞ。アイリの笛の音のおかげでほとんどが逃げていったからな。」

 

リーズシャルテが心配していたことを口にしてくれた。ほんのり顔を赤らめているリーズシャルテへとルクスが笑みを浮かべるとリーズシャルテは嬉しそうに笑った。

 

「何故だ!何故てめぇらが笛を持っていやがる!」

 

「何でって言われてもなぁ。そんなの答える義理はねぇだろ?」

 

ウィルフリッドがイタズラする前の顔をしながら言ってのけた。その事に更にイラつくヘイズを横目にルクスもにやっと笑う。

 

「じゃあ、さっさと終わらせようか。」

 

「はっ!いきがっているのも今のうちだ!」

 

ヘイズの言葉ともに地面が砕けた。正しくはヘイズが立つ地面が完全に砕けていた。そして現れる。フィルフィの命を救ったとも言える存在ユグドラシルが。

 

「こいつを出すはめになるとは思わなかったがまぁ良い。ここでてめぇらはぶっ殺して殺るからよ!」

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