黒き英雄と竜殺し   作:souやがみん

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3話

大歓声の中でリーズシャルテ・アティスマータとシャリス・バルトシフトが手をあげその歓声に答えている。

 

「おい、見ろよ親友。あれがカリスマだぜ。俺たちが一生かけても手に入れられない物だぜ。」

 

「そうだね。でもさウィル、それを言うと悲しくなるしやめない?」

 

二人揃ってまだなにもしていないのに疲れてしまった。人生何処をどう辿ればあんなに人気者になれるのだろうか。

しかし彼ら二人、ウィルフリッド・スタンジフォールとルクス・アーカディアはそんな歓声の半分は自分達に向いていることに気づいていない。片や『三和音』の一人を機竜無しで倒した男。片や美形の可愛い男の子である。

 

「「もてたい。」」

 

二人の声は歓声にかき消されお互いにしか届かなかった。しかし、聞かれたら聞かれたで恥ずかしいので聞こえなくて良かったと思う二人であった。

 

「貴様ら準備は良いな?」

 

リーズシャルテの声が歓声に消されることなく聞こえてくる。結界に特別な力が働いているのかも知れない。そして思った。向こうの声が此方に届くなら此方の声も向こうに届くのでは?

 

「な、なぁ俺たちがさっきなんか言ったの聞こえた?」

 

ウィルフリッドが恐る恐る尋ねる。やはり声は届いているようでリーズシャルテが手を腰に当て慎ましい胸を張りながら言った。

 

「あぁ、もちろん聞こえていたぞ。『もてたい』のか・・。残念ながらその夢は叶わんようだ。お前たちはここで負けて豚小屋行きだからな。」

 

膝から崩れ落ちるウィルフリッドとルクス。

実はこの結界、中の音は外には聞こえないようなっている。しかしこの事実を知らない二人にはもう、戦う以前の問題だった。

 

先程からピクリとも動かないウィルフリッドとルクスを見て心配になったのかリーズシャルテとシャリスが心配そうに此方を見ている。二人ともどうして良いのか分からないようで少しおろおろしている。

徐々に結界外の野次馬が静かになり始め戦いが始まるのをいつかいつかと楽しみにしているのが目にとれるようになってきた。

 

「くっ!ダメージは大きいけどやるしかないよウィル!」

 

「あぁ、そうだな親友!ただし、忘れちゃいけない。相手は格上の機竜使ってるぞ。」

 

くっ、そうだった!と乗ってくるルクスとハイタッチを決めつつリーズシャルテとシャリスに向き直る。そして二人は案の定怒っていた。

大変ご立腹の二人から出来るだけ視線を外しながらルクスは《ワイバーン》を、ウィルフリッドは《ワイアーム》と接続する。

 

「なんだ?そのへんてこな機竜は。」

 

リーズシャルテの鋭い目が二人の機竜へと向けられていた。リーズシャルテの言ったことが耳にいたいのか二人は曖昧に笑っていた。

それもそのはず、ルクスは機動力が売りの《ワイバーン》を防御特化にしており、ウィルフリッドは近接戦型の《ワイアーム》の近接武器を全て外した上で装甲を薄くしている。

 

「いやいや、色々あるんですよリーズシャルテ様。」

 

ルクスが頭をポリポリかきながら答える。王女殿下に対する態度ではない。はっきり言って侮辱罪とか適当な罪で捕まっても仕方がないほどに失礼だった。

しかしその隣にいるウィルフリッドの態度はもっとひどかった。

 

「うるせぇ!王女殿下か何か知らねぇがお前に指図されるいわれはないやい。」

 

徐々に声から覇気がなくなっていき最後には枯れた声になっていた。ウィルフリッドが落胆の表情を浮かべる。そう、また罰金が上がるような気がするからだ。しかしリーズシャルテは二人のその態度にあまり関心はなかったようだ。

 

「何であんな無駄なことを?何か特殊武装が?」

 

ブツブツ言っているため此方の声を聞いていなかった。シャリスが飽きれ顔になっており必死にリーズシャルテを現実世界に引き戻そうとしている。

ウィルフリッドとルクスは顔を見合わせると合掌した。

 

「なんか悲しくなるからやめてくれないか!?」

 

シャリスの鋭いツッコミに拍手を送っているとようやくリーズシャルテが現実世界へと戻ってきた。

 

「ようやく始められる・・・。」

 

シャリスの疲れた声に少し同情しつつ、腰を低く落とし構える。

 

「ルクス、何時も通りこれも経験だ。」

 

「分かってるよウィル。」

 

開始の合図の鐘が鳴り渡る。リーズシャルテとシャリスの二人がその手にもつライフルを掃射する。それをルクスとウィルフリッドは回避しない。

ルクスはその手にもつ大型のブレードで切り落としていく。所々被弾しているため全てを叩き斬れていないのが見てとれる。それに対してウィルフリッドは《ワイアーム》の腕で弾丸を叩き落としていた。

弾丸の嵐が止む頃、ルクスが片膝をつく。

 

「どうしたルクス!へばってんのか?」

 

維持で膝を持ち上げる。それに対して驚いていたのはリーズシャルテとシャリスだ。あの弾丸の嵐を全て防ぎきったことに驚いているのだ。

 

「何故避けないんだ?そっちのヤクザ顔の方は目の前で振られたブレードを生身で避けるほどの強者のはずだぞ。」

 

リーズシャルテの容赦ない一言で思わず片膝をつくウィルフリッド。それを見てルクスがざまぁ、と煽っていた。

 

「くそ、ルクスあとで絶対に泣かしてやるからな。あと俺、いや俺たちは基本的にはこれも訓練だから。」

 

顔が怒りで歪むのが見える。確実にウィルフリッドは二人を煽っていた。

敵は煽って煽って本気を見せたときに戦うべきである。これはウィルフリッドの信念のようなものだった。全ては経験、体験、知識。それら全てが自分の血となり肉となる。もちろん、ウィルフリッドから戦闘技術を叩き込まれているルクスも同じ考えだ。

 

「調子に乗るなよ。没落王子とその従者め。」

 

リーズシャルテの低いトーンの声が此方に響くと同時にリーズシャルテの機竜、《ティアマト》の周りに銃弾の3倍はあるかの金属の物体が現れる。

ルクスは疲れたように溜め息をつき、ウィルフリッドは楽しそうに笑う。

 

「死ね!」

 

その言葉と同時に金属体が襲いかかってくる。その金属体をルクスが斬り落としていく。その隙を狙ってリーズシャルテとシャリスがライフルを掃射するが、それを全てウィルフリッドが叩き落としていく。

 

観客はただただ静かに見守っていた。攻撃し続ける学園代表のリーズシャルテとシャリス。その攻撃を全て回避、もしくは叩き落としていくウィルフリッドとルクス。

 

「兄さんも、ウィルフリッドさんも何で手を抜いているんでしょうか。」

 

席に座らず観客席の一番後ろで立って見ているルクスの妹のアイリ・アーカディアが呟いた。

 

「No、言葉の意図が分かりません。あれだけの激しい攻撃をされればああなっても仕方ないと思いますが。」

 

未だに回避もしくは弾丸を叩き落としているウィルフリッドとルクスを見ながらノクトが呟く。二人を知らない人にはそう見えるのだろう。そうですね、とアイリが少し自重するように笑い言った。

 

「多分、ノクトが言ったことが正しいでしょう。一般的には。でも兄さんはまだ人って感じですけどウィルフリッドさんは戦い始めると人ではなく何か化け物の類いの感じがあるんですよ。」

 

ノクトが頭にはてなマークを浮かべる。とても気になっているのが分かる。しかし、アイリはそれを見て笑うだけだ。

 

「あ、そろそろウィルフリッドさんが人じゃないと言われる理由が分かりますよ。」

 

そう言われノクトはウィルフリッドの《ワイアーム》を見て驚愕した。

 

 

 

 

 

 

ウィルフリッドが弾丸を掴んでいた。

 

 

 

 

 

 

 

「あれがウィルフリッドさんを人間じゃないと言った理由ですよ。あの人は自分の努力だけで音速を越えて飛来する弾丸を掴めるようになったんですよ。

まぁ、ライフルによって若干の、私たちには分からない程度の誤差はあるようなので慣れるまでは、と前に言ってましたけど。

それに人間をやめているように見えるはこれだけではないんですけどね」

 

それでもこの観客達を教官を、そして学園長である、レリィを驚愕させたのは言うまでもなかった。そしてノクトはアイリの最後の一言に疑問を感じつつもその事を口にせず戦いに見いってしまった。

 

 

その弾丸をつかむという行為を見て一番驚いていたのはリーズシャルテとシャリスだった。

 

「貴方はいったい、なんなのだ?」

 

攻撃を停止させシャリスがウィルフリッドへと質問する。ウィルフリッドは気恥ずかしそうに頭をかきながら答える。

 

「没落王子の従者じゃないかなぁ。俺自身よくわからん。」

 

「そんなこと聞いてるんじゃない!」

 

リーズシャルテが叫んだ。まるで何かに期待するように何かに寄り頼むように。

互いの間に少しの間沈黙が生まれる。そしてウィルフリッドが空に溜め息をつきながら言った。

 

「俺の名前はウィルフリッド・スタンジフォール。ただ、それだけだよ。」

 

目に涙を浮かべるリーズシャルテにウィルフリッドは優しく宥めるように言った。本当のことを隠し自分を語らない。そう知っているからルクスは隣にいながらも何も言わなかった。

 

「嘘だ嘘だ嘘だ嘘だ嘘だ嘘だ嘘だ嘘だ嘘だ。お前は、お前たちは一体、何者なんだ!」

 

怒気のこもった声が響いたと思うと同時に全身が地面へと叩きつけられた。腕力と足の力でどうにか立ち上がりながらウィルフリッドがルクスへと笑いかける。

 

「これ、アイリが言ってた《ティアマト》の神装っぽくない?」

 

「ウィルがリーズシャルテ様に隠し事し続けるからこうなるんだよ。」

 

はぁ、俺が悪いのかよと肩を落としつつリーズシャルテを見る。完全に怒りに呑まれている。何に怒っているかはよく分からないがあれは止めないと大変なことになる。

その隣のシャリスも神装の影響を受けており地面に叩きつけられている。

 

「止めないと不味いな。」

 

「そうだね。ってことでリーズシャルテ様の相手は僕がしても良いかな?」

 

おうよ、親友と言いながら思いっきり地面を蹴る。向かった先はシャリスのもとだ。シャリスは驚きからか目を閉じる。

 

「おいおい、シャリス嬢。戦闘中に目を閉じるのはご法度だぜ。」

 

下を出しておどけながら言う。目をパチパチさせているシャリスに苦笑しつつルクスに目を向ける。そこには攻撃せずだけど前へと進んでいくルクスの姿がある。

最低限の回避行動と直撃以外の金属体と弾丸を無視しつつ突き進みリーズシャルテに肉薄する。そして首もとに剣を突き立てる。

 

「もうやめましょう、リーズシャルテ様。《ティアマト》も暴走寸前ですし。それに僕たちを許してくれるともしかしたらウィルフリッドの過去も知れる機会があるかもしれないですよ。」

 

驚いたような目をするリーズシャルテ。彼女は初めてまじまじと見たルクスの顔に少し心をドキドキさせていた。

そして咆哮が響く。人類の敵とも呼べる存在アビスが現れた証だった。




基本的にこの二次では機竜等々の説明はしません。読んでいる方々は最弱無敗を読んでいる、もしくはアニメを見ていると思って書いてますので。

次回でようやくアニメの1話が終わりますな
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