金曜日は申し訳ない。忘れてたんだ。
夏休み真っ只中。遺跡に乗り込んだりルクスがフィルフィのために命をはれと言ってきたり。フギルを殺し損ねたりした日は過ぎ去り今は夏休み後半。
ルクスの体調が回復していないこともあり今は一人だ。ルクスと二人というのも馬鹿できて楽しいが、たまには一人で行動するのも良いものだなぁと思う。
町を一人で歩く。学院近くの貴族街を抜けて下町へと向かう。学院に行くまでに住んでいた場所でありノリの良い場所でもある。
「ん?お!ウィルフリッドじゃねえか。久しぶりだな。」
「八百屋のおっちゃん。売れてんのか?」
全くだ。世知辛い世の中だよなぁ。そう呟くのは頭に手拭いを巻いた中年の男だった。チョビヒゲが目立つ親父でスタイルとしてはちょいワル親父らしい。これで結婚20年というのだから世の中は分からない。
「てめぇ、今失礼なこと考えたろ。」
「むしろ考えない理由がないなぁ。」
それもそうかと言いながらウィルフリッドを手招きする。八百屋の奥の部屋に入るとおっさんがあるものを俺の手に握らせる。
「これは俺からの学院の教師になった祝いだ。・・・、おっと、何も言うな。礼なら要らねぇ。俺たちの仲だろ?ルクスと二人で行ってこい。それがあればお前たちも喜びで発狂するだろうから。」
「おい、嫁が怖くて渡すもんじゃねぇよな?」
「馬鹿言うな。嫁以上に怖いものなんてねぇんだ。これを手に入れても行く時間もなければ持っていればいつかバレて殺される。俺じゃ駄目なんだ。全てをお前たちに託す。だからな、感想を待ってるぞ。」
肩に手を置いてサムズアップを向ける八百屋の親父に笑顔を向けてサムズアップを返し口を開いた。
「ありがとうな親父。親父のことは絶対に忘れないからな。頑張って後ろでフライパンを振りかぶってる嫁から逃げるんだぜ。」
何も言わずに八百屋の親父が走り去った。それをフライパンを持った八百屋の親父の嫁が全力で追いかけていった。遠くで八百屋の親父の絶叫が響く。
「安らかに眠れ。」
合掌しながら親父の冥福を祈る。お前は良い奴だったよ。手に握らされた紙を見る。それは娼館の無料券が2枚だった。
それをもう一度握りしめるとウィルフリッドは学院へと一心不乱に走り出した。
「ルークス君やぁーい。朗報だぞ!俺たちはやれるんだぞー!」
誰が聞いても下ネタにしか聞こえないそれを保健室で叫んでいた。運良くルクス以外に人はいないようでルクスが返事する。
「どういうこと?僕ら金ないから行けないよね。」
ルクスは何も言わずとも何かが分かっている。その言葉にニヤリとしてその手に握りしめていた紙を広げる。それを見たルクスは《バハムート》の限界突破を使った影響で調子の悪いはずの体を持ち上げる。
「きたぁ!タダ券だぁ!ウィル、これをどうやって?」
「八百屋の親父が自分の命と引き換えに俺にこれを託してくれたんだ。」
「親父ぃ!お前のことは忘れないからなぁ!」
ルクスのテンションが天元突破している。普段はどちらかというと物静かなルクスしか知らない人なら何事かと心配になるであろうがウィルフリッドにとってはそれなりに知っている顔だったりしている。
「しかもここの娼館。隠れた名店でな。物凄い美人が揃っているらしい。」
ふぉー!と叫びながらルクスが外に飛び出していった。いつの間に着替えたのかルクスは私服に着替えていた。
しかも地味な変装もしておりルクスの気持ちが冗談ではないことが見てとれた。
「それではゆかん。我らがパラダイスへ!」
「貴様ら何をしているんだ?」
ビクッと肩を震わし振り替えるとそこには呆れた顔をしているリーズシャルテ・アティスマータだった。腰に手をおきジト目を向けている。
「ルクスよ、貴様は絶対安静だろう?どこへ行くんだ?ウィルフリッド、貴様も無理はするなと言われているだろう。」
リーズシャルテの言葉を聞いてルクスとウィルフリッドは必死に頭を回転させていた。この危機を乗り越え自分達のパラダイスに向かうために。
そしてハッ、としたルクスが口を開く。
「あの、リーシャ様。僕たちはどうしても行かなくてはならないんです。僕たちの命に関わるかもしれないことなんです。」
「命に関わること?それは何なのだ?」
「リーシャ様にもきっと覚えがありますよ。生理みたいなものです。」
せ、生理?!とリーズシャルテが叫んだ。ここは廊下だ。誰が聞いていて此方にやってくる可能性がある。うわ、この皇女殿下やらかしたなぁ。と他人事のようにウィルフリッドが考えている中、ルクスは言葉を続けていた。
「こんな女の子が多いところで過ごしているんです。徐々に溜まってくるんですよ。だからたまに元々住んでいた住みかに戻って抜いてるんです!」
ルクスがリーズシャルテに向かって堂々と言い切った。ルクスはこの後確実に殺されるだろう。
だがリーズシャルテは今羞恥心からか顔を赤くしている。多分正常な考えはできないだろう。
「てことですいませんね。皇女殿下。ちょっとルクスと出掛けてきますわ。」
顔を真っ赤にしているリーズシャルテに背を向けてウィルフリッドとルクスは悠々と学院を後にした。
「こ、ここが例の娼館なの?」
「そうらしいぜ。チケットに書いてある地図にはここが示されているぜ。」
ウィルフリッドとルクスが腰に手を当てながら胸を張りその建物を見上げていた。それはとても大きな建物だった。
城のような外見だ。貴族街にあるということで建物はしっかりており、ウィルフリッドとルクスの下町育ちの教養しかない人にとっては一生縁の無いものと言っても過言ではないはずだ。
更に看板には巨乳のお姉さんがかなり際どい肩を出した服で胸を寄せ上目遣いだった。
「そうか、僕たちはこのために今まであの学院で頑張ってたんだね。」
ルクスが目に涙をためながら呟いていた。リーズシャルテやフィルフィが聞いたら確実に殺されるだろう。しかしこれが終わったあとなら殺されても何も言うまい。
「あぁ、俺もそう思っていたぜ。これが終わったら死んでも良いや。行こう、ルクス。」
「行こう、ウィル。」
意を決してウィルフリッドとルクスはその扉を開いた。そこで見たものをウィルフリッドとルクスは忘れないだろう。
際どい服装をしたお姉さんや本当に成人か怪しいロリ顔、完全にまだ未成年の少女まで色とりどりだった。受付はお兄さんだったがそんなことはどうでも良い。
「すいません、ここを利用したいんですけど。」
「はい、かしこまりました。申し訳ありませんがここは会員制となっておりまして、会員証か無料券の方を提示していただきたいのですが。」
会員制と聞いたときルクスが白目を向いていたがすぐに戻ってきた。
「はい、無料券の方を確認いたしました。それではこの中からお好きな女の子をお選びください。」
差し出された紙を見て目を疑う。美女や美少女ばかりである。テンションが天元を突破したまま、ウィルフリッドとルクスは奥の間へと通されることとなった。
「おい、ルクス。ここは何の店だ?」
何処かの威圧的な皇女殿下の声がした。
「ふふふ、ウィルさんもおいたが過ぎるわね。」
何処かの国の留学生の少女の声がする。
「ルーちゃん、めっ。」
何処かの天然巨乳のお金持ちの少女の声がする。
「ウィルフリッドさん、分かってますよね。」
学院最強と言われる四代貴族の一角の少女の声がする。
嫌な予感と共にウィルフリッドとルクスが首だけをそちらに向ける。そこにはやはり彼女たち、リーズシャルテ、クルルシファー、フィルフィ、セリスティアが立ってた。
「ごめんなさい!」
ルクスが謝りながら部屋の中へと走り去った。それに続いてウィルフリッドが突入する。ここはもう女子禁制ならば追ってはこられない。
そう思いウィルフリッドとルクスは各自指定された部屋に入った。
「本当にクルルシファー嬢とセリスティア嬢は愛が重いよなぁ。独占欲が強すぎるというか、、、まぁ今は楽しむか。」
きっとルクスも同じ事を考えているんだろうなぁ。とどうでも良いことを考えていると二人の女性が部屋に入ってきた。ローブ姿にフードを被っているため顔は確認できないがスタイルはとても良かった。
片方はフードの端から見せる銀色の髪が綺麗だった。スラッとした体型で胸がないのが少し残念だ。
もう片方は対照的に綺麗な金髪だった。フードの上からでもわかるほど大きな胸をしている。完全に顔が緩んでいるウィルフリッドに銀髪の女性が呟いた。
「ウィルさん、本当に残念だわ。」
そしてローブをとった。そしてウィルフリッドの顔が恐怖で歪む。もう分かっただろう。クルルシファー・エインフォルクだ。そしてこうなってしまえばもう片方も容易に想像がつく。
「言ってくれれば私が相手に、、、じゃなかった。お仕置きします。」
頭の中の考えがだだもれになっているセリスティア・ラルグリス。
「俺たちの、男の夢が・・・。」
数秒後ウィルフリッドの意識は闇へと消えた。
この後ウィルフリッドとルクスが目を覚ました時は学院にいてその日のことは何も覚えていなかった。
セリスさんのイメージは私生活はポンコツで、戦闘とかになると張り切るタイプ。