黒き英雄と竜殺し   作:souやがみん

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ここからは本編です。





32話

「話ってなんだろうな。」

 

「あれじゃないか?好きな人が出来たとか。」

 

そんなことを言いながらウィルフリッド・スタンジフォールとルクス・アーカディアはルクスの妹であるアイリ・アーカディアの部屋へと足を進めていた。

色々な事件が起きた夏休みを越え秋になりつつある今日この頃。特に大きい事件もなく時が進んでいた。

 

「でもさ、最近なーんかみんな気合いが入っていんだよなぁ。いやさ、全竜祭もあるしよ。やる気だしてんのは良いんだけど良い予感がしないんだよなぁ。」

 

「同感。失礼だけどこの学院の女の子たちは怖いんだよなぁ。」

 

うんうん、深く頷きながら階段を上る。寮にはほぼ全校生徒が入っているためとてつもなく広い。しかも元皇女のアイリはウィルフリッドとルクスの人質という反面もあるため特に複雑なのだ。

これと似た理由でリーズシャルテやクルルシファー、フィルフィ、セリスティアと言った面々も部屋が分かりにくくなっている。

 

「まぁ、全竜祭を頑張らなくて良いんなら僕は何でも良いんだけどね。」

 

「お前学生の癖にめんどくさがり過ぎだぞ。もうちょいやる気だせよ。」

 

えー!と文句を垂れるルクスを横目で見ながら部屋の前でたち、扉をノックする。

 

「どうぞ、入ってください。」

 

中から聞こえるアイリの声を聞いて扉を開く。中にいたのはもちろんアイリだった。ノクトもアイリの側で立っている。まぁ、二人はルームメートなのでここにノクトがいることには何の疑問も抱いてはいない。

 

「よう、アイリ。今日はどうしたんだ?」

 

ウィルフリッドがなにげなしにベッドへと腰掛けながらアイリに話しかける。ノクトが少し顔を赤くしていることからこのベッドはノクトの何だろうなぁと考える。

 

「いえ、今日は兄さんとウィルフリッドさんの機竜について話があるんです。」

 

「僕たちの機竜?」

 

ルクスが首をかしげながらアイリに話の先を促す。それを頷くことで答えながらアイリが口を開いた。

 

「はい。先ずは兄さんの《バハムート》ですが限界突破の影響で機体に大きな負荷がかかったようで今までのようには使えません。

その前に兄さんの体を考えると《バハムート》を使えるのは長くても数分間しか使えません。」

 

うげっ、とわざとらしいリアクションをとりながらルクスが呻く。

気持ちは分からなくもない。フギルやヘイズと言った奴らが今は敵として存在している。今のところ襲撃はない。だがいつ始まるかはわからない。

 

「兄さんが何を考えているかは大体予想できます。ですけど私や学生の皆さんは兄さんとウィルフリッドさんに無理をしてほしくはないんです。」

 

ルクスがばつが悪そうに顔を背ける。ウィルフリッドとルクスは無理をしすぎるというのがリーズシャルテたちの意見だ。それは何時も言われている。

ウィルフリッドとルクスはそれを変える気もないから意味のないことなのだが。

 

「話はこんなところです。結局のところ無理はするな。という忠告がしたかっただけです。」

 

「ん?俺の《クリカラ》の話もあるんじゃないのか?だから俺も呼んだんじゃないのか?」

 

「いえ、《クリカラ》に関しては解析出来なかったんです。パーツにはダメージが入っていたはずなのにウィルフリッドさんからお借りしたときにはもう修復していました。

それに《クリカラ》さん?は何も答えてくれないんです。」

 

『それは近くにウィルフリッドがいなかったからだぜ、嬢ちゃん。』

 

ウィルフリッドの髪が灰色に染まり目が碧に変化していた。その変化の早さに部屋にいた全員が驚いている。否、ルクスだけは爆笑している。

 

「それはどういう意味ですか?」

 

『あ?ウィルフリッドから何も聞いてねぇのか?こいつはリミッターの七割を解除してるからな。俺はその攻殻機剣というよりは今、ウィルフリッドと一体化してるんだよ。』

 

笑っていたルクスが真剣な顔になり黙る。そしてアイリとノクトが慌てて立ち上がりウィルフリッドに近づいていく。

ウィルフリッドの髪が燃えるような赤に戻り目の色も琥珀色に戻る。

 

「ほらほら心配すんな。手品みたいで面白いだろ?《クリカラ》はミーナを殺した仇だが、今は良いんだよ。フギルがもうすぐ殺せるんだ。俺はそれでは良いんだよ。」

 

押し黙ってしまったアイリとノクトの頭を撫でながらウィルフリッドは薄く笑った。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「本当に良かったの?《クリカラ》が言っちゃうのも止められたんじゃないの?」

 

次の日ルクスと共にレリィに呼び出され学院長室に向かう途中ルクスが唐突に口を開いていた。

それに少し笑いながらウィルフリッドは口を開いていた。

 

「気にすんな。あいつらは俺らと違って強いんだ。大丈夫だ。そんなことより俺たちはどうやって何時もを過ごすか考えないと駄目だろ?」

 

ウィルフリッドの試すような笑みを見てルクスは考えるのを放棄してニヤリと笑った。

 

「そうだね、先ずはレリィさんに何するかだね。」

 

「おう、そうやって馬鹿しながら過ごしていこうぜ。」

 

「聞こえてますよ。」

 

気づけば学院長室の前にいたらしくレリィへのイタズラは出来ないまま終わってしまった。

 

 

 

 

 

 

「ではでは、これより全竜祭の会場、王都ロードガリアへ出発しまーす!」

 

「「イエーイ!」」

 

レリィのはっちゃけた声に反応したのはウィルフリッドとルクスだけだった。ノリが悪いなぁと思いながら全竜祭メンバーであるリーズシャルテ、クルルシファー、フィルフィ、セリスティア、シャリス、ノクト、ティルファーを見ると全員が少しウィルフリッドを睨んでいた。

 

「おい、ヤクザ。そんなテンションで出発する前に我々に言うことがあるだろうが。」

 

リーズシャルテの容赦ないヤクザという言葉で膝から崩れ落ちる。それに笑ったり呆れているのはルクスとレリィだけだった。

リーズシャルテたちは真面目な顔でウィルフリッドをじっと見ていた。

 

「わかったわかった。俺が悪かったよ。アイリから聞いたんだろ?今の俺が《クリカラ》と一体化してるって。そのおかげでお前ら生きてんだからそんなに深刻になるこないじゃねぇか。」

 

「ウィルさんがそうでも私たちは違うわ。」

 

クルルシファーが呟いていた。それに続くようにセリスティアとフィルフィが口を開いた。

 

「私たちはウィルフリッドさんにたしかに感謝しています。でも私たちは無理してほしくはないんです。」

 

「めっ、だよ。」

 

それに同調しレリィとルクス以外のここにいるメンバーが頷いていた。

 

「分かりましたか?ウィルフリッドさん。みんな心配なんですよ。」

 

「わかったって。気を付けるよ。」

 

苦笑を漏らしながらウィルフリッドはアイリの言葉を受け入れた。それを嬉しそうに見守っていたルクスを腹パンで地面に沈める。

それを見て全員が笑った。やっぱり笑顔で過ごすのが一番だなぁ。そんなことを思いながら全竜祭の会場である王都ロードガリアに向けて足を進めた。

 

 

王都ロードガリアはこの国のアーカディア帝国が滅びてから出来たこの国の王都だ。街並みはアーカディア帝国のときとはまるで違う。人の活気も今の方が断然良いと言える。

 

「じゃあ、全竜祭の開会式も明後日だしとりあえず今日と明日は自由時間にしましょう。私も例の件で呼び出されてるし。」

 

「後から話聞いたときは流石にビビったぞ。あれ無許可だったのかよ。」

 

ウィルフリッドがゲンナリとした様子で口を開いた。ここにいるメンバーは全員知っていることだが。あの夏休みの遺跡の探索はレリィが勝手に進めていたことだった。フィルフィの命を救うヒントを探すために無断で行ったのだ。

 

「えぇ、とりあえずかなり怒られたのと罰金だけで済んでるわ。」

 

レリィの言葉にあきれ顔を向ける。レリィは何を思ったか此方にサムズアップを浮かべてくる。それを見て更に呆れる。

 

「ねぇ、ウィル。この国の王都になってからは来たことなかったよね。探索しない。」

 

「そうだなぁ、行くか。」

 

ウィルフリッドとルクスが足を進め始めるとウィルフリッドの腕にしがみつく姿がある。それを確かめることもなくウィルフリッドは口を開いた。

 

「クルルシファー嬢、こんなとこで悪ふざけしないの。」

 

「ふざけてなんていないわ。デートしたいだけよ。」

 

それを悪ふざけっていうんだよ!と言おうとしてやめる。クルルシファーが笑顔で圧力をかけてきていた。男が尻に敷かれるのは仕方がないことかぁと諦めていると逆の腕にもしがみつく人影があった。

 

「何でセリスティア嬢まで?」

 

「わ、私もウィルフリッドさんとデ、デートしたいんです!」

 

少し胸元のボタンを開けている。何時もきっちりとした制服の着方をしているセリスティアには珍しかった。そしてその状態で上目遣いでこちらを見ているセリスティア嬢を見ると何故かムラムラしてくる。

 

「クルルシファー嬢!腕はそっちにはまがらなぁぁぁぁ!」

 

痛さで悶絶して地面に崩れ落ちそうになるがセリスティアに助けられる。やっぱり女の子はこういう子が一番だよなぁと思いながらルクスを見ると何故か完全に地面に崩れ落ちていた。

 

「何をどうしたらこうなったんだ?」

 

恥ずかしそうに顔を隠すリーズシャルテとツンツンと死体になっているルクスをつつくフィルフィ。そんな二人も引き連れてルクスを蹴りながら町を回ることになった。

 

 

 

 

 

「酷い目にあったよ。何があったかって?思い出したくもないよ。」

 

「お、おう。」

 

ルクスの目からハイライトが消えるのを見てウィルフリッドがルクスの肩に手を置き本気で同情していた。

場所は街の飲食店だ。この国の名産の野菜をふんだんに使ったサラダなどの料理が目の前に置かれておりそれなりに美味しそうと言えるものばかりだった。

 

「あ、親父とりあえずビール一本。ジョッキで。」

 

ジト目を向けてくる学生たちを無視しながら出てきたビールをグビッと飲む。うめぇなあと思いながら食事を開催する。

 

「それにしても良かったのか?俺らの礼服なんて買ってもらってよ。」

 

うんうんと頷くルクス。街を見て回る際何故か礼服を買うことになり買ったのだ。もちろんルクスは全竜祭の前夜祭と後夜祭で必要になるため買う必要はあった。しかしウィルフリッドは参加しないため特に必要ないのだ。

 

「あぁ、それなら問題ないわ。ウィルさんにも前夜祭には参加してもらうことになってるから。」

 

えっ?という言葉を無視しながらクルルシファーが言い切るとご飯へとありついている。

いくら聞いても答えてくれないので諦めながらご飯を口の中へとかきこむ。うん、美味しい。





予想以上に進まなかった。
あの公国の男たちを出す予定だったんだけどなぁ。


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