黒き英雄と竜殺し   作:souやがみん

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34話

「じゃあ、ウィルフリッドさんとルクス君は罰として全竜祭のメンバーとデートね。」

 

「いきなりバットコミュニケーションだね。」

 

ルクスがぼやく。全くだと頷きながら目の前の女性、レリィ・アイングラムを少し睨むように見る。

楽しそうに笑うレリィは此方が凝視しているのを見てサムズアップを浮かべながら口を開いた。

 

「ヴァンハイム公国の選抜メンバーの一人をボコったのは誰だったかしら?」

 

「デートかぁ、楽しみだなルクス!」

 

「本当だよ、楽しみだなぁ。」

 

今日の日中に行ったグライファー君フルボッコ事件は王都中に響き渡っていた。パッシングや嫌味等を予想していたのだが流石王都と言うべきか逆に称賛された。

本当にこの国はどうかしている。楽しいから良いのだが。

そんなわけでウィルフリッドとルクスが悠々と宿舎に帰ってくるとレリィが待ち構えており今に至るのだ。まぁ、報告したのはリーズシャルテ達で間違いないだろう。別に困ることでもないのでどうでもいい。

 

「で、デートつったて7人いるんだろ?その辺はどうなんだ?」

 

「アイリさんを入れて八人よ。とりあえずルクス君はリーズシャルテさん、ティルファーさん、ノクトさん、あとは妹のフィルフィよ。

で、ウィルフリッドさんはもうわかってると思うけどクルルシファーさん、セリスティアさん、シャリスさん、アイリさんよ。時間に関しては彼女達で決めるそうよ。」

 

はぁ、とため息をつきながら考える。確かに明日はまだ休みの予定なので遊ぶのは構わない。しかし彼女たちのことを考えると鳥肌がたってくる。

チラリとルクスの方へと目を向けるとルクスも同じことを考えていたのか腕を押さえてさすっている。

 

「じゃあ、明日は宜しくね。」

 

「分かりました。」

 

ルクスが少し澱んだ目で答える。ウィルフリッドも同じ目をしている。それにレリィは呆れるしかなかった。戸に手をかけ外へ出ようとするとレリィから声をかけられた。

 

「あ、ウィルフリッドさん、ルクス君。こんな時間だけど王都のお偉いさんからお呼びがかかってるわよ。無視せず行ってね。行かないと私の立場が危ういから。アイリさんも連れていってね。」

 

自分のことが駄々漏れのレリィにジト目を向けてから戸を閉じる。ルクスと目を合わせ考える。彼らが俺たちに何の用だろうかと。

 

 

 

 

 

 

 

 

その後アイリと合流し3人で夜の町並みを歩いていた。日中来たときは違い別の味わいを見せる夜道を歩きながらウィルフリッドがボソッと呟いた。

 

「あ、あの店飲むにはよさそうだな。さっさと話を終わらせて飲みに行こうっと。」

 

「僕も行きたい。」

 

未成年ってバレなきゃな。と言いながら歩みを進める。

 

「本当に兄さんとウィルフリッドさんって馬鹿ですね。」

 

そんなことをいいながらクスッと笑うアイリにジト目を向けつつ歩き続ける。

お偉いさん方がいるのはこの街の中心である城に集められているらしい。この国の城は旧アーカディア帝国の城を完全に解体してから作られているため、内部構造だけでなく外装も全く違う。

 

「広いねぇ。あのくそ帝国の城とは違ってなんか味わいを感じるね。」

 

「お前17のくせに言ってることがオッサンくせぇぞ。まぁ、俺も同じ考えだから俺もオッサンつてことか。」

 

「お二人とも頭の悪い会話はやめてください。私が恥ずかしいです。」

 

アイリのジト目を受けて黙るウィルフリッドとルクス。そしてその静かなまま城の中を歩いていく。近衛や巡回の兵などとすれ違い、道を聞きながら目的地にたどり着く。

 

「ここがあの方々がいらっしゃるはずです。粗相のないようにお願いしますよ。誰に言ってるか分かってますか?兄さん、ウィルフリッドさん?」

 

「もちろん分かってるよ。マイ・シスター。」

 

「イエス!ウィ!キャン!」

 

「ダメな気がしてきましたね。」

 

アイリががっくりと肩を落としながらその戸を開いた。そこは城とは思えないほど暗い場所でありまるで裁判所のように真ん中にぽっかり穴が空いており回りの席には見たことのある有力な貴族達が参列していた。

ウィルフリッドとルクスは何も言わず、辺りを見渡しながらその貴族達の真ん中に立った。少しおっかなびっくりの状態でアイリも着いてくる。

 

「よく来たな、旧アーカディア帝国第7皇子ルクス・アーカディアとその妹アイリ・アーカディア。そしてウィルフリッド・スタンジフォール。」

 

多数の執務官がいるなかウィルフリッド達の真ん前に居座っている男が口を開いた。

 

「お、お呼びに預り参上しました。して、用件とは何でしょうか?」

 

「ふむ、アイリ・アーカディアは少々せっかちのようだな。それでは嫁に行けぬぞ。」

 

回りの貴族達が笑う。それを聞いてアイリが恥ずかしそうにそして悔しそうに首を垂れる。

ウィルフリッドとルクスはそれを見て顔をあげると目の前の男、リーズシャルテの母である女王陛下の宰相であるナルフを一瞥すると口を開いた。

 

「ほほぅ、宰相閣下のナルフ殿は少女を苛める趣味でもあるようですねぇ。実に嘆かわしい。その辺り没落皇子様はどう思います?」

 

「国の政治を任されている筈の宰相閣下の性癖が暴露されて今無償に笑いたいです。」

 

ニヤリとウィルフリッドとルクスがナルフへと笑みを送る。それを見てナルフは忌々しい目線をウィルフリッド達に飛ばすが直ぐに首を振ると微笑を浮かべる。

 

「おおっと、私の性癖がばれてしまいました。まぁそれは良いでしょう。そんなことより私の話を聞く方が良いと思いますよ。特にウィルフリッド・スタンジフォールはね。」

 

「おい、ルクス聞いたか。宰相閣下は本当にロリコンだぜ。とりあえず街で拡散だな。」

 

「街だけじゃ物足りないよ。それに先ずは女王陛下と皇女殿下に報告しないと。」

 

それもそうだと言いながらウィルフリッドとルクスがニヤリと笑う。

ナルフはこの二人の影響力ならば対したことはないと考えていた。しかし考えを改める。この二人はリーズシャルテと同じ学院にいるのだ。それに特にルクスに関しては仲が良いと聞いている。

 

「ふぅ、分かった。アイリ・アーカディア、先程の非礼を詫びよう。」

 

「い、いえ勿体ないお言葉。」

 

ウィルフリッドとルクスがハイタッチを決めてからナルフを見ると額に青筋を浮かべている。アイリに謝ることよりも煽られたことに腹がたっているようだ。

 

「罪人の言葉で一々キレてる宰相閣下ざまぁ。」

 

「ざまぁ。」

 

煽ることを止めない二人にアイリがローキックを決めるが二人はまるで大木のように動かない。

 

「まともにやろうと言うのがダメなのではないのですか宰相殿。この二人は噂によると人を煽ることを人生の生き甲斐にしているキチガイですぞ。

例の《七竜騎聖》の候補、グライファーをボコったのはこいつらです。」

 

回りに座っていた貴族の一人が立ち上がる。四大貴族の一人、ゾグァ・シャルトストだ。ウィルフリッドとルクスは誰か分かっていないだろうがアイリはごくっと息をのむ。

この場であの事件が問題に問われれば確実に勝てない。そしてまたウィルフリッドとルクスと離れ離れで暮らすことになってしまう。

 

「キチガイかも知らんが腕は確かだ。特にウィルフリッド・スタンジフォールに関しては俺が強く押すぞ。」

 

四大貴族の一角、セリスティアの父であるディスト・ラルグリスが口を開いた。

 

「今、ヘイブルグが帝都奪還計画を練っている。」

 

その言葉にウィルフリッドが殺気を放つ。ルクスも同じように殺気を放っているがウィルフリッドのものが大きすぎて一般人には分からないだろう。この貴族の中でもそれが分かるのは恐らくディストだけだ。

 

「ヘイブルグには旧帝国に忠誠を誓っている輩が逃げ込んでいる。主導は奴等だろう。」

 

ディストの言葉にウィルフリッドは何も言わずにナルフを睨んだ。その圧力に負けたのかナルフが一歩後ずさるがとどまり口を開いた。

 

「もうこの王都周辺には1000体のアビスが潜伏していると考えられる。」

 

ナルフは冷静に言葉を続ける。

 

「もうみなまで言わずとも分かるだろうがお前達にはコイツらを撃退すると同時にヘイブルグの軍に攻撃を加えてもらう。もちろん援軍は出せない。この事は国民には言わないつもりだからな。」

 

「宰相閣下よぉ、もっとはっきり言えよ。この国のために死ねって。」

 

ウィルフリッドから放たれた言葉にアイリが下唇を噛み締めていた。ここに来る前から何となくだが予想はしていた。何故彼らがウィルフリッドとルクスを呼び出していたかを。それは確実に二人を利用することだろうと。そしてアイリは人質だと。

アイリが反論しようと口を開こうとしたときディストがそれを遮るように口を開いた。

 

「これを承諾してくれるのならば先日のレリィ・アイングラムの独断での遺跡調査と君たち《騎士団》の独断行動は不問にしよう。」

 

「ディスト卿!それはあまりにも無謀です!」

 

アイリが反論した。だが、

 

「良いぜ、やってやるよ。」

 

「そうだね、やろっか。」

 

ほとんど考えることもなくウィルフリッドとルクスは答えていた。

 

「兄さん!ウィルフリッドさん!何を考えているんですか?死ぬかも知れないんですよ!」

 

アイリが泣きそうな声で叫んだ。きっとここにいる貴族たちも同じことを考えていただろう。この男たちは何を考えているのだろうか。

1000体のアビスの中に二人で特攻し、その上でヘイブルグの侵攻を防げと言われて即答でOKを出したのだ。

 

「本当にいいんだな?特にルクス・アーカディア、貴様は貴様を慕っているかもしれない奴に刃を向けるのだぞ?」

 

「いいんですよ。そんな寝ぼけたことを言っている人にはビンタでもかまして目を覚まさせた上で服を全部剥いて木からぶら下げてやりますよ。」

 

ウィルフリッドは笑いながら気配を消してルクスに腹パンを叩き込む。崩れ落ちていくルクスを横目に見て満足しながらウィルフリッドが口を開く。

 

「俺はフギルをぶっ殺せればそれで問題ないぜ。ついでに言うとフギル殺したあと俺を戦いの戦犯にして殺してくれたっていいんだぜ?

あんたらには嬉しい条件だろ?何せ罪人が死んでくれるって言うんだからよ。」

 

復活したルクスが気配を消してウィルフリッドの目に2本の指を突き刺す。

ぎゃあああ!と言いながらのたうち回るウィルフリッドを無視しながらルクスが口を開く。

 

「このバカが死ぬかどうかはさておき、僕たちはその作戦に参加します。」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「兄さんとウィルフリッドさんの馬鹿!」

 

城を出たとたんアイリがウィルフリッドとルクスに馬鹿と叫びながら走り去ってしまった。こうなることは分かっていたので特に何も言わず苦笑しながらその後ろ姿を見ていた。

 

「これから大変だね。」

 

「そうだなぁ。」

 

ウィルフリッドとルクスはさも他人事のように呟きながら街中を歩いていく。特に話すこともなく二人は宿屋の前で立ち止まっていた。

そしてウィルフリッドがルクスへと向き直ると口を開いた。

 

「ルクス、これからちょっと付き合ってくれよ。デートしようぜ。」

 

攻殻機剣を少し鞘から出し勢いよく鞘に戻す。カチャンと音が響いた。

 

『ウィルフリッドとルクスに死なれると俺も困るからな。俺も混ざるぞ。』

 

「うわー、今から3P?」

 

そんな下品なことを言うんじゃありません。」

 

ネタに走るルクスに苦笑しながら夜の町を抜けていく。





うーん、進まないなぁ。
この夜架編?は個人的に一つの山場かなぁと。原作ラノベでもここはラスボスと戦ってる感があったし。


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