黒き英雄と竜殺し   作:souやがみん

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皆すまぬ、色々抜けてたり書き忘れていたりで書き終わるのが遅くなっちまったよ。


35話

「それでは今日は頼むぞ。」

 

セリスティアの父であるディストがウィルフリッドとルクスに対して言葉をかけていた。この場にはウィルフリッドとルクス、そしてアイリしかいない。

あの事はこの三人の秘密にしている。まぁ、試合の後半にはウィルフリッドもルクスも居なくなっているので絶対にばれる。それでも、と言ったのはルクスだった。

 

「リーシャ様達にはこれ以上迷惑はかけられないしね。」

 

この言葉に妹は良いのか、と質問しようとしたがそれはアイリによって物理的に止められた。端的に言うとウィルフリッドとルクスは目を潰されたのだ。

 

「しかし、本当に二人で大丈夫なんですか?兄さんは《バハムート》の時間は限られているんですよ。」

 

「まぁ作戦はあるから大丈夫だよ!」

 

ルクスが嬉しそうにいい放ち、ウィルフリッドが少し嫌そうな顔をする。

ウィルフリッドとルクスは一度城に顔を出してから宿屋へと戻ってきていた。ウィルフリッドは教師としてルクスは選手として一度は参加するからだ。

 

「遅いぞ、ルクス。作戦会議を始めるんだ。お前も来い。」

 

「ウィルさんも案を出してね。」

 

そこには一つの机を囲むリーズシャルテ、クルルシファー、セリスティア、フィルフィ、シャリス、ティルファー、ノクトがいた。

それを少し微笑ましく思いながら会話に混ざる。作戦、と言っても個人戦を行い、先に4勝した方が勝利となる。

 

「よし、作戦としてはスタートで神装機竜使いが4勝すると言うことで行くぞ。基本はこれで行くが相性等の考慮も入れて《三和音》の三人は何時でも行ける用意を頼むぞ。」

 

リーズシャルテが会議を指揮していく。流石王族だった。カリスマがあり人を指揮していくことになれている。

その姿を微笑ましく思いながら眺める。

 

「羨ましいですか?ウィルフリッドさん。」

 

ふと隣からアイリの声が聞こえた。昨日は怒っていたが一晩考えてどうにか機嫌を直してくれていた。

 

「自分が手に入れられなかった青春。それを見て羨ましいですか?」

 

アイリは皮肉と試すような声色でウィルフリッドの顔をのぞきこみながら聞いた。

 

「そうだなぁ。羨ましいか羨ましくないかで言えば羨ましいな。でも俺はあの戦場での日々も悪くはなかったって今でも思ってる。だってあの日々があったからこそ俺はこうしてここにいるんだからさ。」

 

「うっひゃー、ウィルが格好いいこと言ってるよ。気持ち悪いね。」

 

ルクスに腹パンを叩き込み床に崩れていくのを横目で確認しつつアイリの頭に手をおく。すこし顔を赤くしているアイリに笑みを向けながら口を開いた。

 

「だから俺は幸せだよ。」

 

アイリとウィルフリッドが笑う。作戦会議で忙しくしているリーズシャルテたちは聞いていないが床に倒れているルクスが顔をあげる。

 

「ならさウィル。この平和を守るためにも死んじゃ駄目だよ?」

 

「はっはっはっ!それとこれとは話が別だ。俺はお前と違って完全な罪人だからな。こんなくそやろうは死んだ方が絶対良いんだよ。」

 

「傲慢だなぁ。」

 

ルクスの言葉にお前の方が傲慢だと言いながら作戦会議は続いていく。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

そして大会が始まっていた。すべての国の機竜使い達が各々全力をつくし戦っている。

主賓席には宰相であるナルフやセリスティアの父であるディストまで昨日いたメンバーがズラリと並んでいた。

 

「うーん、やっぱり敵の動きは対したことないなぁ。一つのことに対して呼び動作が大きかったりするから入り込む隙が分かりやすいんだよねぇ。」

 

ルクスがウィルフリッドの隣で呟いていた。それもそうだ。呼び動作無しでの動きや意図的な隙と自然な隙の見極め方はもう教え終えている。あとはそれを確実に見極めることが出きるまで実践を繰り返す。それがルクスのレベルだったりする。

軽くルクスも人というくくりから外されそうになるほどインフレを起こしている。それを迷うことなくイタズラに使う辺り流石ウィルフリッドの弟子だろう。

 

「そうだろうけど学生ってのは学びの途中なんだぜ。そう考えると仕方ない。と考えがちなんだがうちのお嬢様方は暴れすぎだな。」

 

神装機竜という力を手にしている少女四人が軽く無双していた。仕方がない。彼女たちも今やウィルフリッドの弟子とも言えなくないのだ。

ルクスは知らないことだが神装機竜持ちの四人と三和音の三人はウィルフリッドのところでみっちりとしごかれておりかなりのレベルに到達している。

 

「うわー、見てよ。リーシャ様相手を重力で潰してるよ。うわ、クルルシファーさんは彫刻作ってるし、フィルフィの相手の姿は見当たらないし、セリス先輩に関してはもう此方に歩いてきてるよ。」

 

ルクスの言うとおり圧巻の一言だった。他者を全く寄せ付けない。本格的にこの少女達の将来が気になる。夫は必ず尻にひかれることになるからだ。

 

「さて、そろそろ時間か。」

 

「そうだね、まぁ楽にやろうよ。」

 

「はっ!アビス程度で止まるウィルフリッドさんではないことをおしえてやろう。」

 

『俺もいるからな。』

 

《クリカラ》が口を挟む。その事に内心では笑いながらグラウンドを後にした。

 

 

 

 

 

 

町中に出るとほとんどと言って良いほど人の気配がなかった。ほぼ全員が入れるようになっているグラウンドだ。きっと見に行っているのだろう。

 

「で、さっきから俺をつけてきてくれている素敵なグライファー君は何のようだ?」

 

ウィルフリッドが振り向かずに口を開く。ルクスはやれやれと言った風に首を降って言う。

 

「そう言うのはもっと後で言わないと。グライファー君は出てくるタイミングを図ってたんだよきっと。」

 

ルクスの微妙にズレた発言にずっこけそうになる。それをグッ、と我慢しながら振り替える。

 

「何時から気づいていた?」

 

「ずっとだよ。」

 

グライファーは今日の朝ウィルフリッドとルクスが城に向かうときからつけていた。流石に城の中には入れなかったがそれでも機会を伺っていたのだ。

 

「んで?弄られた報復か?それともケンカの続きか?」

 

「どちらでもねぇよ。お前らうちの生徒を襲っただろ。」

 

「はぁ?」

 

本当に間の抜けた声を出す。それがグライファーの怒りを買ったのか声に怒気が増す。

 

「知らばくれんじゃねぇ!てめぇらのとこの警備兵にうちの選抜メンバーの一人がやられたんだよ。幸い死んではいねぇが、両足が骨折していて今日は出られねぇ。」

 

グライファーは叫びながら腰に吊るされていた銀色の攻殻機剣を引き抜いていた。

それは抜き身の刃のように美しかった。それを天に掲げる。

 

「貴様らはとりあえず罪を償え!来い!《クエレブレ》!」

 

そして機竜を纏った。無数の鱗を纏ったその機竜は見ただけで分かる。神装機竜だった。機竜は女性の適合率がかなり高く男の機竜使いと言うのはかなりレアだったりする。

その上神装機竜を持っているとなるとかなりの実力なのが見てとれる。

 

「仕方ねぇ。ルクス、コイツのケンカは俺が買うぜ。お前は後の仕事で働いてもらうからな。」

 

「よく言うよ。アップぐらいでしか考えてないくせに。」

 

グライファーの顔がさらに怒りで歪む。それを見てからルクスにジト目を向けるとサムズアップが返ってくる。後で腹パンを叩き込むことを心に誓いつつ《クリカラ》の攻殻機剣を引き抜いていた。

 

「俺らこの後仕事で時間ねぇからとっとと終わらせるぞ。」

 

『久しぶりに神装機竜とのケンカか。楽しくなってきやがった。』

 

ウィルフリッドは《クリカラ》の楽しそうな言葉に苦笑しながら接続する。

すでに背中に交差するように吊るしていた刀は翼へと変化している。普段よりも更に髪の色の灰色の部分が増え、目は完全に碧へと変化している。

 

「ウィルフリッド、てめぇは休んでな。このガキは俺がやるぜ。」

 

『絶対殺すなよ。あと身体的な怪我も少なくな。この後こいつは試合なんだからな。』

 

《クリカラ》はニンマリと笑いながらグライファーを見る。焦ったような驚いているようなそんな顔を見せている。

そして《クリカラ》は呆れていた。この世界の戦士は覚悟が足りないと。戦場ではこの間で確実にグライファーは死んでいる。

 

「おい、ガキ。ケンカを売ったことを謝るなら今だぞ。俺は許さんがウィルフリッドは許してくれるぞ。」

 

「君は許さないんだね。」

 

ルクスのツッコミを無視しながらグライファーを見ると彼はブレードを引き抜いていた。止まる気はないようだ。

《クリカラ》は何も言わずに地面を蹴る。それは一瞬で音速へと到達している。刀を横に凪ぎ払うように振るう。グライファーはそれを寸前でのガードに成功するが遅い。《クリカラ》は逆の手で逆手に握る短剣サイズの刀、小太刀を振り上げグライファーの握るブレードを上へと弾く。

完全にできた隙をつき刀を刺すように突き付ける。しかしそれはグライファーのブレードで防御されていた。《クリカラ》は大きく跳躍するとすこし怒気を含みながら声を出す。

 

「それがてめぇの神装か?」

 

「神装とはちと違うがこいつの《クエレブレ》の固有武装さ。」

 

それだけ言うとグライファーはブレードを振るう。接近せずともその場でブレードを振るうだけで相手に届くブレードは確かに極悪な性能を秘めている。しかしそれだけではウィルフリッドと《クリカラ》には届かない。

 

「武器を振り回す前に全方位を警戒しな。」

 

グライファーの耳元で《クリカラ》が呟く。あの嵐のような攻撃を防ぐだけでなく接近されたことに驚き。ブレードを元の長さに戻しながらバックステップをとって距離をとる。

しかしそれはあのときのケンカと同じだ。

 

「学習しろよ。ガキが。」

 

二刀の刀がグライファーに迫る。それをギリギリのところで受け止めグライファーが叫ぶ。

 

「このタイミングを待ってたんだよぉ!」

 

グライファーの機竜、《クエレブレ》が発光する。それは《クリカラ》のように変形するためのものではない。その光は全てを包み込むと光が消える。

 

「ちっ、目潰しか。」

 

「あぁ、それがこいつの神装さ。能力としては少し劣るだろうがそんなことはどうでもいいぜ。これでお前を殺してそこの皇子様も殺す。」

 

殺意の高いグライファーがルクスを睨んでいた。ルクスは肩をすくめるとグライファーに声をかける。

 

「何でも良いけどグライファー君、気を付けてね。ウィルフリッドと《クリカラ》ちょっとキレてるからね。僕には止められないから。」

 

その言葉を聞くと同時にグライファーの体が大きく吹き飛んでいた。《クリカラ》が蹴り飛ばした姿勢で止まっている。目はつぶっているがキレていることは一目瞭然だった。

 

「目潰しなんて糞みたいなことしやがってぶっ殺す!」

 

『殺すなよ。』

 

ウィルフリッドのため息混じりの声が聞こえるが本人もされれば多分キレている。

《クリカラ》はウィルフリッドの言葉と共に地面を蹴りグライファーに肉薄していた。目は見えていない。それでも確実にグライファーの目の前で制止すると刀を投げ捨て拳を叩き込んでいた。

ブレードを持ち上げればブレードを持つ手を殴り動きを止める。足を振り上げればそれを上から足で叩き潰す。

 

「お前にぃ、勝ち目はぁ、ねぇんだよ!」

 

《クリカラ》の楽しそうな声が響く。暫くして動かなくなったグライファーを抱え《クリカラ》と接続を解除したウィルフリッドが戻ってきた。

 

「ちっ、《クリカラ》め。やり過ぎたっての。」

 

「まぁいいんじゃないかな。」

 

ルクスの軽い言葉にため息を吐き、この戦闘は終了した。






という訳で《クリカラ》無双でした。
次回!コーラルの女装大会!?
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