黒き英雄と竜殺し   作:souやがみん

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久しぶりの連続更新!


ルクス対夜架決着!




37話

「さーて、これからどうするかね。」

 

ウィルフリッドは一人広野を見渡せる所に立っていた。目の前に広がるのは無数のアビス。宰相ナルフの話ではこのアビスは1000体にもおよぶ。圧巻の一言だった。ところ狭しとアビスが詰め合わせのように存在している。

ヘイブルグ王国の軍師、ヘイズの持つ笛で操られているのが容易に分かる。

 

「しかしこれだけとなるとあの笛はマジでスゲーのな。」

 

『あの笛については俺も詳しくは知らん。お前らと知識については変わらんからな。だが禍々しさは感じるな。』

 

《クリカラ》が楽しそうに呟いていた。清々しいまでに戦闘狂だ。

 

『だがウィルフリッド。お前も楽しみなんだろう?』

 

《クリカラ》の言葉を無言で肯定する。そう楽しみなのだ。命をとして戦って戦って戦って。そして死ぬ。それがウィルフリッド・スタンジフォールという人間だ。

フギルを殺して戦いの中で死ぬ。それが何よりも楽しみで仕方がない。

 

『お前ももう狂人の類いだな。俺と同じくな。』

 

それも無言で肯定した。目の前でぎらついた目をしているアビスを見てニヤリと笑う。

 

「さぁ、俺を楽しませろ!この後にあるはずのフギルを殺せる場所へと続く道になってみせろ!」

 

ウィルフリッドが咆哮にも似た叫びをあげ地面を蹴り跳躍する。攻殻機剣を《クリカラ》を抜き装着する。

一番近くにいたアビスを真っ二つに叩き斬る。千切れたアビスの体を振りまわし他のアビスへと激突させるとそこに《創造剣》で作り上げた刀を突き刺す。後ろから襲ってくるアビスを背負い投げの要領で投げ飛ばしまたも《創造剣》で突き刺す。

 

「は、ははは、はははははははは!」

 

ウィルフリッドがアビスを殺しながら笑う。帰り血のようにつく黒い液体を拭いもせずただただアビスを殺し続けていく。

前から上から横から後ろから全方向から襲い掛かるアビスをウィルフリッドはまるで踊るかの如く避け《創造剣》の刀で殺していく。

 

『これぞまさに一騎当千ってやつだな。』

 

《クリカラ》の楽しむようなその声を聞きながらもウィルフリッドは止まらない。剣を振り回すのではなく正確に急所に脆い部分へと滑らしていく。

 

「《クリカラ》!5割解放だぁ!」

 

《クリカラ》が淡く発光する。背中に交差するように吊るしていた刀は翼へと変化し、髪はより灰色にそして左目は完全に碧へと変色している。

 

『やるぜぇ、ウィルフリッド!』

 

「死ねぇ!」

 

刀が分身していく。その数はラグナロク、《ユグドラシル》の時とは桁が違う。ここで一気にぶっ殺す。刀は空を完全に埋め尽くした。そしてウィルフリッドが叫ぶ。

 

「くらいやがれ!《永久舞踏『刀』》!」

 

《ユグドラシル》のときよりも倍以上の刀がアビスを襲う。一本一本がラグナロクを殺す力を秘めたそれがアビスへと突き刺さる。

ラグナロクをも消し飛ばすその刀に触れたアビスは塵へと帰っていった。そしてその高野に残ったのは《クリカラ》を装着しているウィルフリッドだけだった。

 

「はっ、アビスなんて所詮こんなもんかよ。」

 

毒づくウィルフリッドが空を見上げる。きっとルクスはもっと楽しんでいるのだろうなと。

 

 

 

 

 

 

 

 

「帝国の凶刃なんて呼ばれてるからもっと強いのかと思ってたけどこれくらいなら今の僕でも余裕かな。」

 

自分のすぐそばで転がっているラグリードを見て対峙する少年を見て切姫夜架は恐怖していた。アーカディア帝国、第七皇子であるルクス・アーカディアは温厚な男子であり戦いを好む性格ではないと聞いていた。

もちろん、神装機竜《バハムート》の所持者であり帝国を破壊した《黒き英雄》だということも知っている。それでもなお切姫夜架は自分の方が強いと自負していた。

そもそも負けたことがあるのはあの赤毛の男、ウィルフリッド・スタンジフォールだけであり彼にも負けない努力をしてきた。しかしそれは簡単に裏切られていた。

 

「主様は戦うのはあまりお好きではないと思っていたのですが違うようですね。」

 

「いや、あんまり好きじゃないよ。でも切姫さん。貴女は僕の大切な人を傷つけようとした。それだけで僕が戦う理由には十分だよ。」

 

自身の神装機竜《夜刀ノ神》の神装《禁呪符号》は相手に触れた時間だけ相手を操ることが出来る協力な神装だ。だが今はそれを使えない。何故なら触ることさえ不可能なのだ。

全く隙がない。揺るがない。言葉はふざけていて行動も常識的ではない。それでも触れられない。

 

「切姫さんは、いや夜架は昔ウィルに負けたっていってたよね。なら僕も君に負けるわけにはいかないな。いずれ僕はウィルを殺すかも知れないんだから。」

 

ルクスが地面蹴った。スピードは《ワイバーン》にしては早い。しかしそれだけだ。神装機竜である《夜刀ノ神》には到底追い付けるものではない。

しかしルクスは大きく震脚を叩き込み夜架の動きを妨害する。

少し足を止めてしまった夜架にルクスが肉薄する。ブレードを上から叩きつけてくるのを横にステップすることで夜架は回避する。しかし回避した地点にルクスは回し蹴りを叩き込んだ。

咄嗟に両腕を交差しガードする夜架を見てルクスは笑った。そのまま力任せに夜架を蹴り飛ばして距離をとった。

 

「まるでウィルフリッドさんの動きですね。」

 

その言葉を聞いてルクスは嬉しそうに笑うと口を開く。

 

「それはウィルは僕の師匠で親友だからだよ。」

 

「そうですか。それはそうとしてその女装は趣味なのでしょうか?」

 

ぐぼらぁ!と言いながらルクスが血を吐いて倒れた。そう夜架が言った通りルクスは今だ女装したままだった。

白いワンピースに黒いロングのかつらを被ったルクスは夜架が見ても可憐だと思えるものだ。

 

「主様にそのような趣味がありましたとは。しかしそれは人の好みの差ですから私は気にしませんわ。」

 

ルクスに追撃のブローが決まる。何時もならここでウィルフリッドからのボケもあるのだが生憎今ここにいない。

 

「ボケがいないのは厳しいな・・・。」

 

空を眺めながらルクスが呟いていた。早く帰ってきてウィル。

 

「ふふ、それでは続きを始めませんか?私は貴方を殺してウィルフリッドさんも殺さねばなりませんから。」

 

「そう?始めても良いけど言っておくね。夜架は絶対に僕に勝てないよ。」

 

勝てないとの断言を受けて夜架は笑っていた。

 

「その言葉は昔ある人に言われましたわ。諦めろとも誰だと思いますか?ウィルフリッドさんですわ。だからこそ私はウィルフリッドさんを殺し最強であることを証明するのです。」

 

ブレードを自分の正面に構えながら夜架はルクスを睨んでいた。彼のウィルフリッドの弟子であるルクスを倒せば必ずウィルフリッドは現れると信じて。

 

「私に勝てましたら何でも言うことを聞いてあげましょう。ええ、私の体を主様に差し上げても良いですわ。」

 

「その言葉、忘れないでよ。」

 

ルクスがボソッと呟くと《ワイバーン》との接続を解除した。警戒を厳にする。こうなると呼び出される機竜は1体しかいない。

黒い攻殻機剣を引き抜き、《バハムート》と接続した。構える。しかしもうルクスの姿はそこにはなかった。刹那、横からの斬撃を弾く。しかしそこにもうルクスの姿はない。

 

「これが《暴食》ですか。」

 

ルクスの《バハムート》の神装。それを目の当たりにして夜架は笑った。楽しい。戦いが楽しく感じたのは何時以来だろうか。そんなことを考えながら見えないほどの速度で動いているルクスの攻撃を正確に弾いていく。

 

「ねぇ夜架。」

 

ルクスが夜架に話しかける。それは怒りの篭った言葉でもなく大切な人にかけるような声でもない。

 

「僕が勝ったら夜架は僕専用の○○メイドね。毎日裸で僕と添い寝してもらうからね。」

 

息を荒立てながら言った。夜架が固まる。自分の体を欲望の捌け口に使うのは構わない。それどころか覚悟していたことだ。

しかしこれにはさすがにドン引きしていた。

 

「あ、主様はどんなことをなさるつもりでしょうか。」

 

少し心配になった夜架は恐る恐る訪ねていた。これでただの変態のときはまた違う覚悟を決めなければならない。

 

「うーん、僕は割りとノーマルが良いかなぁ。あ、あと僕がM側ってのは絶対なしね。」

 

ルクスが真面目な顔で言い切る。それを呆れながら見る夜架は少し嬉しかった。ただの変態でなかったことに。

 

「それじゃあ夜架、始めよう。」

 

言葉と共にルクスが姿を消した。いや《暴食》だ。そう判断した夜架は全方向に気を配りながら大きく跳躍する。

そしてルクスのブレードを弾く。ルクスは弾かれてすぐに距離を開きまたも《暴食》で加速しながら夜架へと接近する。しかし夜架は慌てない。姿を見えないまでも現れた瞬間に刹那をかけるように構え防御する。勘と動体視力に全てを委ね防御する。

しかし、ルクスは止まらない。今度は息をするようにカリキュレイトを使い完全に夜架の視界から消える。しかし夜架は慌てなかった。地面を思い切り蹴り空へと飛び上がると全方向にブレードを振り回す。

考えることをやめ防御に専念した夜架に攻撃が通らずルクスは距離をとると口を開く。

 

「スゴいね夜架。全て防ぎきるなんて。」

 

「ふふっ、滅相もございません。私ばかりが受けというのも男女平等に反しますので次は私から行かせて頂きます。」

 

一足で接近するとルクスの首にブレードを滑らせる。通常の人間ならば知覚も出来ない速度をルクスは笑いながら回避する。夜架は止まらず懐に隠してあるもう一本のブレードを突き刺すように放つが上と弾かれて手を離してしまった。

 

「ちっ。」

 

短い舌打ちと共にひとつのビンを取りだし地面へと叩きつけた。そこから出てきたのは白い煙だった。

 

「煙幕?目を潰されたのか。」

 

ルクスがそう呟いた。その声の方向へと真っ直ぐに向かう。普通煙幕を使えば裏へと周り首をとるのがセオリーだろう。しかしルクスやウィルフリッドといった幾つもの修羅場を切り抜けてきた相手はそれを警戒する。

だからこそ裏をかき真ん前から攻撃する。心の中でとったと叫びながらルクスにブレードを突きつけた。それはルクスの体を貫通していた。

 

「主様、残念ですがここまでです。さようなら。」

 

そう言いながらブレードを引き抜く。そしてふと気づいた。肉の感触がしないと。人の肉とは固く一度刺さると抜きづらいものだ。しかし今すんなりと抜けた。

 

「まぁ僕とかウィルじゃなかったら今ので決められていたと思うよ。でも残念。僕もウィルもその程度じゃ殺されない。」

 

気がついたときにはルクスは後ろに立っており首筋にブレードが添えられていた。そしてそれは完全な夜架の敗北を意味していた。

 

「聞いても宜しいでしょうか?」

 

「なんだい?」

 

「どうして私の攻撃を避けられたのですか?煙幕で完全に視界を奪ったはず。」

 

あー、と頬をかきながらルクスは答える。

 

「僕やウィルは気配が読めるからねぇ。これくらいなら目なんかなくても何とかなるよ。」

 

愕然としそして完全な敗北を感じた。ウィルフリッドの弟子であるルクスがここまで強いのだ。ウィルフリッド本人は勝てない。そう感じてしまった。

 

「私の敗けです。主様。私は貴方のものになりましょう。それが約束ですから。」

 

ルクスの前にかしこまりながら夜架は呟くように言った。しかしルクスは夜架の脇に手を通すと立たせる。そして言った。

 

「じゃあ夜架も一緒に僕たちの学院に行こうか。そこでならウィルから学べるから夜架ももっと強くなれるよ。」

 

思いもよらない言葉をかけられ呆然とする。そして小さく笑った。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

ルクスと夜架に決着が着いた頃ウィルフリッドはある男と対峙していた。

 

「久しぶりだな、ウィルフリッド。」

 

「遺跡以来だな、フギル。早速だが死ね。」

 

刀と剣が拮抗した。




弟?知らんなぁ。ルクスは自力で夜架に勝ったんですよ。
キチガイはとどまるところを知らんのだよ。
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