黒き英雄と竜殺し   作:souやがみん

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遅くなってすまぬ。。。。







39話

「待って!確かに夜架とはそういう約束したけど、じゃなくて今はあれを止めるのが先だと思うんだ。」

 

怒りの表情のリーズシャルテをなだめようと必死に言葉を繋ぐルクス。しかしリーズシャルテは止まらない。ルクスの胸元を掴もうとしてそれを妨害される。

もちろん止めたのはフィルフィではない彼女はリーズシャルテの味方なのだから。

 

「主様に対する非礼は許しませんわ。メスブタ。」

 

「あぁ?」

 

リーズシャルテがウィルフリッドを思い起こさせるような目で夜架を睨む。しかし夜架はそんなことはお構いなしだ。

 

「主様、失礼だとは存じますが一言宜しいでしょうか?このようなゲスたちと過ごすのはいかがなのでしょうか。

いえいえ主様とウィルフリッドさんのことを悪く言っているのではなく。友人は選ばねば品位に関わりますわ。」

 

「うん?この人この国の皇女殿下だよ?」

 

ルクスの背中に冷や汗が流れる。駄目だ。このままじゃ僕が精神的に死ぬ。死を実感したルクスは無理やり夜架から解放されると《バハムート》を纏う。

《暴食》を発動させつつ真っ正面から突っ込みタックルをくらわせる。しかし

 

「僕でも出力が足りない、か。」

 

歯軋りする。ただでさえ現状で《バハムート》の使用時間は残り少ない。到底その時間内で《巨兵》を戦闘不能にすることは不可能だった。

建物の上に下り立つと《バハムート》を解除する。

 

「兄さん!大丈夫ですか?!」

 

アイリの声がしてそちらに振り替えるとアイリだけでなく全員が揃っていた。リーズシャルテ、クルルシファー、フィルフィ、セリスティア、シャリス、ティルファー、ノクト。全員の無事を確認してホッと息をつく。そして女の子の中に紛れている男に向かって声をかける。

 

「で、何でグライファー君が?」

 

「いちゃわりぃかよ!何でお前らはそんなにセメントなんだよ!」

 

グライファーが顔を赤くして叫んでいる。しかしグライファーを気にかけている余裕はない。

夜架が横に下り立つ。

 

「主様、私は中の構造も知っております。ここは外からの破壊ではなく内からの破壊が妥当だと考えますわ。」

 

夜架の言葉を聞いて考える。確かに今の戦力を考えれば外からの攻撃で破壊できるとは考えづらい。ウィルフリッドがいれば可能かも知れないが、たらればを考えているほど余裕はない。

 

「うん、それがベストだろうね。リーシャ様。お願いがあります。ありったけ爆薬を用意してください。」

 

「それは構わんが何をする気だ?」

 

ルクスは《巨兵》を睨み、ニヤリと笑いながら言った。

 

「男のロマンを体現するだけですよ。」

 

 

 

 

 

 

 

 

「それで兄さんは爆薬を取りに言ったんですか?」

 

アイリが頭を抱えていた。リーズシャルテによるとルクスは使えなくなった自分の《ワイバーン》を投げ捨て学院生の《ワイバーン》を借り王城へと飛んでいったそうだ。

項垂れるアイリの隣でリーズシャルテは満面の笑みを浮かべながらいい放つ。

 

「やはりルクスは騎士になってくれるそうだ。ふふっ、これからの性格が楽しみだなぁ。」

 

舌なめずりをしているリーズシャルテにドン引きしながらアイリが空を見上げていると紫の閃光が空を駆け《巨兵》の拳を受け流しながら接近する。刀を間接部分へと突くように放つがまるでダメージになっていなかった。

 

「やはり私でも出力不足ですね。《テュポーン》ならば防げるでしょうが、今は無理ですね。」

 

フィルフィは舌なめずりをしているリーズシャルテを羨ましそうに眺めていた。クルルシファーとセリスティアは戦ってはいるがしきりに辺りを見渡しウィルフリッドを探している。

まともに戦っているのは夜架とグライファーだけだった。

 

「どうすんだよ。お姫様方!男の話で戦闘をやめんなよ!」

 

「あ?私たちにとってはこの国よりも大切なんだが?」

 

リーズシャルテが言ってはならないことを簡単に言ってのけた。

 

「貴方何様?あのデカブツよりも先にミンチになりたいのかしら?」

 

クルルシファーがまるで吹雪でも降らせそうなほど冷たい声を出していた。

 

「ルーちゃん、馬鹿にするなら、潰す、よ?」

 

おとぼけた表情でフィルフィが死刑宣告をする。

 

「あぁ、グライファーさん。そちらに流れ弾が飛んでも文句を言わないでくださいね?」

 

笑顔のセリスティアがキレながら口を開いていた。

 

「主様になん足る無礼。貴方についてるその粗末なものを切って差し上げましょうか?」

 

丁寧な言葉のはずなのに丁寧な言葉に聞こえない夜架。

終始あきれ顔のアイリはチラッとグライファーの顔を見た。単純に怯えている。こうなることは簡単に予想できていた。いやあれはそれでも言ってのけたグライファーを誉めるべきだろう。

 

「ありがとうございます。グライファーさん。」

 

手を合わせてグライファーの冥福を祈る。隣でシャリス、ティルファー、ノクトも同じように手を合わせている。みんな同じことを考えていたのだった。

 

「兄さん、ウィルフリッドさん。どっちでも良いんで戻ってきてください。デカブツを倒す前にグライファーさんがミンチにならないように。」

 

 

 

 

そんな中大量の爆薬を背負いルクスは1人《巨兵》の中への侵入していた。予想していた通り中は人がいない。《巨兵》の戦力があれば中を無視するのは当然だろう。しかし今だけは違っていた。

 

「さてさて。ウィルと二人で考えた男のロマンその1!機動要塞は内部からの爆薬破壊!」

 

誰もいない《巨兵》のなかでルクスが叫ぶ。

 

「いやー、本当に楽しみだなぁ。全くもって楽しみだなぁ。町の被害を気にせずに思いっきり爆破できるなんてリーシャ様も気がきいてるよね。」

 

実際リーズシャルテはそんなことは言っていない。町の住民の避難は終わっていると言ったのだ。しかしルクスはご都合主義並みに自己中的な反応をとる。

 

「よおし!全力でいくぞー!ウィルが見てないことを後悔できるぐらい仕掛けてやろーっと。」

 

満面の笑みを溢しながらルクスは爆薬の設置を始めたのだった。

 

 

《巨兵》への攻撃はいまだに継続されていた。軍の機竜使い達も機竜が使えなくなると大砲などの旧装備を持ち出し戦っていた。

 

「俺達のロリを守れ!俺達ロリコンがロリコンであるためにも!」

 

大砲に玉を込める者、指揮をとる者。誰もがロリータ万歳!と言いながら戦っているカオスな戦場だった。

アイリはそんな中自らの国の皇女がロリコン呼ばわりされしかもその皇女が血を吐きながら地面に崩れ落ちているのを見ていた。

 

「本当にこの国の人間は下品ですね。やはりアーカディア帝国を復活させるべきでは?」

 

夜架が真面目な顔で考え事をしていた。フィルフィは真面目に戦っているがルクスが心配なのかしきりに中に突入しようとしている。

 

「でも本当にウィルさんかルクス君に戻ってきてもらわないと押し込まれるわ。」

 

クルルシファーが苦しそうに呟く。

 

「確かにそうですね。もっと人数がいればまだ戦況は違うのでしょうが、無い物ねだりは出来ませんからね。」

 

戦場を縦横無尽に駆け巡りながらセリスティアが呟いていた。今戦況が不利になっていないのはセリスティアと夜架の奮闘によるものだった。

完全に二人を中心にフォーメーションが組まれそれを援護するように軍は動いている。

 

「ルクスは何をやっとるんだ?はやくせんと此方がまずいと言うのに。」

 

リーズシャルテが口を開いた瞬間セリスティアと夜架が《巨兵》に吹き飛ばされていた。壁に埋もれて動けなくなる二人からは機竜がなくなっていた。強制解除されていた。

なにも言わずに戦線を維持するためクルルシファーとフィルフィが前へと出る。が、直ぐに吹き飛ばされる。それはそのはずだった。フィルフィは前半戦で拳を1人で受け止めており限界だった。クルルシファーにしても軍の援護や、学院生、各国の要人などの護衛等でほとんど力を残していなかった。

 

「リーズシャルテ様!」

 

ロリコン達がリーズシャルテを呼ぶ。《巨兵》の前には1人で立つ赤い機竜がいた。そうリーズシャルテだ。

 

「この国は私の国だ。これ以上は絶対にやらせん!」

 

《巨兵》が拳を振り上げていた。確実にリーズシャルテを潰すためのその拳が放たれた。

障壁を全力で張る。しかしそれは意味のないことだった。神装機竜5体の障壁をも破る相手に1人の障壁は無駄だった。拳が障壁を破壊しリーズシャルテへと届く。リーズシャルテは片手を犠牲にすることで直撃を避けたが吹き飛ばされていた。

 

「まだだ、まだ終わっていない!」

 

リーズシャルテが立ち上がろうと瓦礫の中から這い上がる。血を流しながら立ち上がる。そして無慈悲にもリーズシャルテに向け《巨兵》は拳を振り上げた。

ギュッと目をつぶり叫んでいた。

 

「ルクスー!」

 

「はい、リーシャ様。僕は何時でも助けに来ますよ。あ、遅くなるのは英雄の専売特許なんで許してくださいね。」

 

リーズシャルテは体が宙に浮くのを感じていた。その瞬間轟音が戦場に響いた。恐る恐る目を開けるとそこにはルクスの笑顔があった。

 

「遅くなってすいませんリーシャ様。予想以上に中が広くて道に迷ってたんですよ。あ、でもちゃんと爆薬は全部仕掛けたんで大丈夫ですよ。」

 

いつもと変わらないルクスを見てリーズシャルテがやれやれと笑う。

地面へとリーズシャルテを降ろすとルクスが両手を失った《巨兵》へと振り替える。

 

「それではリーシャ様。サクッとあのデカブツをぶっ潰して来ますんで待っててくださいね?夜架?それはまた今度という事で。」

 

逃げるように飛び去った。ルクスはこんなときでも、いやこんなときだからこそ平常運転だった。

 

「馬鹿馬鹿しいなぁ。」

 

あきれ笑いしか出なかった。

そして《巨兵》が吹き飛ばされていた。その大柄な《巨兵》が町に転がる。上空には黒い機竜が《巨兵》を睨み付けている。そして音速を越える速度でその黒は《巨兵》に突っ込みパーツパーツを破壊していた。

 

「うっひゃー、あれが《黒き英雄》かぁ。俺達ロリコン勢いらないじゃん。」

 

軍の人間が呟いていた。そのレベルでの凄まじさだった。四人の神装機竜持ちでも破壊できなかった装甲を削り破壊していた。

ルクスがすべてを破壊していた。残っていたのは《巨兵》の残骸だけだった。これがウィルフリッドの弟子であり親友の力だった。

 

 

そしてルクスを中心にリーズシャルテ、クルルシファー、フィルフィ、セリスティア、夜架、シャリス、ティルファー、ノクト、アイリが集まっていた。

 

「皆さん、お疲れさまでした。では僕と夜架はウィルを探してきますので。」

 

そう言って二人で飛び出そうとしたときだった。近くの瓦礫に何かが突っ込んでいた。壮大な音をたてながらその突っ込んだものは静止する。

 

「くそがあ!」

 

瓦礫の中から出てきたのはウィルフリッドと《クリカラ》だった。血を流しボロボロになっていた。

 

「ウィルが血を流してるなんて珍しいね。」

 

「いやー、思いの外アイツ手強いんだよ。」

 

ウィルフリッドが睨む方向を見ると機竜に包まれたヘイズがニヤリと笑った。

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