黒き英雄と竜殺し   作:souやがみん

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遂に40話です。
これからも頑張ります。


40話

刀を滑らすように関節部分へと斬りつける。殴り壊すように拳を叩き込む。そのすべてを受けても目の前の女、ヘイズの使う機竜《ニーズヘッグ》に傷をつけることが出来ずにいた。

こんな敵は始めてだなぁとどこか楽観した考えを抱きながらウィルフリッドは体を動かすのをやめない。止めない。反撃を全て回避する。

ヘイズの動きは無駄が多かった。ウィルフリッドは思う。彼女は戦士ではない。

 

「だからと言って油断は出来ないなぁ。」

 

《ニーズヘッグ》の拳が地面を抉りとっていた。そう神装機竜である《ニーズヘッグ》は単純に出力が違っていた。まるで《テュポーン》を更に凶悪にしたようなものだ。

どこか《バハムート》と同じようなフォルムをしたその機竜は《バハムート》と比較にならないほど固く、そして遅かった。

 

「本当に遅くて助かったぜ。これなら特に問題なく狩れるな。」

 

「自惚れるなよ。」

 

得意気に笑いながらヘイズが直進してくる。それを刀を使い受け流す。体勢が崩れたところに蹴りを叩き込む。攻撃ではなく距離をとるための行動だ。

 

「さっきから逃げの一手だな。英雄様は。どうした?そんなもんか?かかってこいよぉ!」

 

ヘイズの声を聞きながらウィルフリッドは別のことを考えていた。フギルがいつの間にか居なくなっていたのだ。その事に内心舌打ちしながらヘイズを睨む。

距離は大して離れていない。どちらが先に踏み込んでも1歩で接近できる距離だ。

 

「しねぇ!」

 

先に動いたのはヘイズだった。その手に持つ大型のブレードを上段に構え振り下ろす。その動きは洗練された戦士には程遠い、言ってみれば汚い一撃だった。

しかしその一撃は《ニーズヘッグ》の力で一瞬にして一撃必殺に変わる。それをわかっているウィルフリッドは慌てずに刀で受け流す。回避ではなく受け流す。《ニーズヘッグ》は大地を抉る一撃を放つ。

 

「そんな一撃は避けられる分けないよなぁ。なら剣先をちょいとずらしてやればその威力は拡散される。覚えておけよ自称皇女様。」

 

ウィルフリッドに明確な敵意を抱きながらヘイズが前進する。デタラメに振られるその大型のブレードは一撃必殺の威力をもっているためウィルフリッドは気を抜かずに一撃、一撃を確実に防いでいた。

しかしどんなものにも限界がある。その限界を迎えたのはウィルフリッドの持つ《クリカラ》の刀だった。舌打ちをしながら次の剣を精製する。しかしそれを見逃してはくれない。

 

「隙だらけだぜ。」

 

お前がな。というツッコミたかったがぐっと堪える。そして一撃必殺のブレードが振るわれる。全力で後ろに跳躍する。直撃は回避するが爆風がウィルフリッドを襲った。吹き飛ばされる。空中で体勢を整えながら刀を精製し構える。

 

「これまでだな。ウィルフリッド。」

 

ヘイズが勝利を確信した声を出す。

 

「お前の《クリカラ》では俺の《ニーズヘッグ》の出力には届かない。しかもお前は受け流しながら威力を拡散しなければならない。そんなもので武器がもつものか。」

 

その言葉を半分聞きながら半分違うことを考えていた。そうスタミナだ。ヘイズは先程から全力を出している。確実にオーバーペースだ。

 

「はっ!俺に勝とうなんざまだ早いんだなぁ、コレが。」

 

煽ることをやめずにウィルフリッドが挑発する。ヘイズもキレているため正しい判断が出来ていない。しかしヘイズはブレードをただ振るうだけで一撃必殺に出来る。威力をかくさんさせるしかないなため受け流す。

しかしやはり刀が持たない。ラグナロクでさえ貫いたその刀は無惨にも砕け散る。そしてそれはウィルフリッドの隙となる。

 

「ぐっ!、、、このぉ!」

 

刀が砕かれる瞬間には次の刀の精製が完了し攻撃へと転ずる。1本で攻撃を繰り返しながら逆の手にもう1本刀を精製する。計2本の刀を振るう。

ヘイズのようなめちゃくちゃな動きではなく精練された動きで刀をヘイズめがけて振るう。しかしそれは一撃も通らない。

 

「無駄だ。こいつには自動防御の機能がついている。俺が防御の動作に入らなくてもオートでシールドがはられるんだよぉ!」

 

ヘイズの得意気な笑みを見ながらもウィルフリッドは攻撃をやめない。ただただ斬激を繰り出し続ける。一点に集中し刀を振るう。

そして《ニーズヘッグ》を守るシールドは破壊される。なっ、と息をのむヘイズにウィルフリッドはニヤリと笑うと口を開いた。

 

「どんなに強固でも一点を打ち続ければ脆くなるんだよ覚えときな。」

 

それはルクスやリーズシャルテたちに教えているときのようなウィルフリッドだった。余裕たっぷりのウィルフリッドにヘイズが怒りを露にする。

一撃必殺のブレードを振るう。しかしウィルフリッドは慌てずに確実に受け流す。そして刀が砕ければ逆の手に持つ刀で反撃に転ずる。

 

「二刀持っていればお前の攻撃は全部防げる上に反撃することも可能だ。お前じゃ俺には勝てないよ。」

 

ウィルフリッドの言うとおりヘイズには単純な戦闘での勝機を、そもそも勝つ可能性さえ残されていなかった。そして舌打ちする。

 

「くそ、この手は使いたくなかったんだがなぁ。フギルの野郎が考えたってだけあって胸糞悪い。」

 

フギルの名前が出たことでウィルフリッドの目付きが悪くなる。それを見てニヤリとヘイズが笑う。

 

「ははっ、にしてもお前の女も馬鹿だよなぁ。お前を救うっていって自分が死んでるんだもんなぁ!なぁどうだった?目の前でフギルの命令で自分の好きな奴が殺された気分は!」

 

ウィルフリッドが爆発するようにヘイズへと飛びかかっていた。その速度は目では追えない。ましてや戦士でもないヘイズには反応することさえ許されない。

刀がヘイズの《ニーズヘッグ》へと叩き込まれる。刀が根本から砕け散るがウィルフリッドは動きを止めない。足払いをかけ体重が傾いた瞬間に持ち上げ地面に叩きつける。

 

「てめぇに!ニーナの!何が分かるってんだ!」

 

ウィルフリッドの怒りを真っ正面から受けヘイズは少し恐怖を感じていた。単純な怒りと殺意。それはヘイズに向けられているというよりもウィルフリッド本人とフギルへとむけられている。そんな感じがした。

 

「くくく、はははは!フギルの言った通りだな。また早くそして出力が上がっていやがる。だが動きがまるで単調だな。」

 

先程までのウィルフリッドの洗練された動きはまるで嘘のようになくなっていた。怒りと殺意だけで体を動かし目の前の存在、ヘイズを殺すために動いている。

地面が爆発したかのように抉れる。ウィルフリッドが地面を蹴ったのだ。そんな勢いのまま、ウィルフリッドは新たに精製していた刀でヘイズへと攻撃を仕掛けていた。ヘイズに追えないほどの斬撃を放つがそれを《ニーズヘッグ》の自動防御の機能が受け止めている。

ヘイズはすべてをその自動防御に任せて攻撃に移る。ウィルフリッドの刀を掴み投げる。

 

「てめぇ。」

 

ヘイズは得意気に笑うと踏み出していた。英雄と称される男は今怒りで周りが見えていない。ヘイズだけをただ頃そうと動いている。

 

「これなら俺でも余裕だな。」

 

ウィルフリッドが迎撃のために振るう刀を自動防御で受け止め殴りつける。障壁でもはっているのだろう。抜けた感覚はない。ただかなりのダメージを与えることには成功した。その余韻に浸りながらウィルフリッドを吹き飛ばした方へと足を進める。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「くそがあ!」

 

ウィルフリッドが叫びながら立ち上がった。ヘイズの《ニーズヘッグ》に殴り飛ばされ町の瓦礫の中から這い上がった。

 

「ウィルが血を流してるなんて珍しいね。」

 

「思いの外アイツ手強いんだよ。」

 

ルクスの声に軽口をたたきあう。

 

『ようやく戻ったかウィルフリッド。』

 

《クリカラ》がウィルフリッドに対して声をかけていた。そしてウィルフリッドは今までのことを思い出していた。

 

(だらしねぇな、俺は。)

 

『全くだ。怒りで周りが見えなくなるなど愚の骨頂だ。戦士失格だ。』

 

《クリカラ》の言葉に苦笑するしかなかった。戦いとは常に余裕をもって行うものだ。その余裕を忘れ怒りに燃えていた。

幾らミーナを侮辱されたからといってそれはしてはならないことだった

 

『気を引き締めろ。ウィルフリッド。お前の敵は怒りではない。お前はフギルとか言う餓鬼を殺すのだろう?』

 

そうだったなと胸の内で呟きながら自分が吹き飛ばされてきた後を見つめていた。そして現れる。

 

「よぉ、ウィルフリッド。まだやれるよなぁ?」

 

「当たり前だろ?自称お姫様。お前の涙目で俺に許してくださいと懇願するのが規定路線だぜ?」

 

そしてその場から高速で回避する。先程までウィルフリッドがいた場所は氷の柱が出来上がっておりそれが雷で打ち砕かれていた。

恐る恐るウィルフリッドが後ろを向くとそこには笑顔のクルルシファーとセリスティアが立っていた。

 

「ウィルさん?どうやらお仕置きされたいようね。」

 

「そ、それくらいなら私がやってあげますよ?!」

 

セリスティアは怒っているのかボケているのかいまいち分からないがとりあえず怒っていた。

ルクスがニヤリと笑いながらウィルフリッドを見ている。

 

「まぁ、その点僕は夜架という奴◯メイドを手に入れたからね。ウィルフリッドよりは勝ち組だね。」

 

そしてルクスが自爆した。自ら地雷を踏み抜いたのだ。ルクスの背中から滝のような冷や汗が流れる。

 

「ほほぉ、ルクス。ちょっと向こうで話をしないか?ん?ウィルフリッドを手伝う?はは、馬鹿を言うな。そのヤクザなら1人で殺れるさ。」

 

「ルーちゃん、めっ!」

 

いつも無愛想なフィルフィまでもが珍しく怒った顔をしている。

いつの間にか出来上がった空間にアイリが頭を抱え、ティルファーが大爆笑し、シャリスとノクトがそんなアイリをなだめている。そして完全に忘れられているヘイズが声を荒立てる。

 

「お前らぁ!俺がいることを完全に忘れてやがんだろ!」

 

「うるせぇ!こちとら生きるか死ぬかの瀬戸際なんだよ!」

 

「以下同文!」

 

ルクスと共に学院最強の四人から逃走しながらヘイズへと言い返していた。そしてそんなことで納得できるわけがない。

 

「もう許さねぇ。てめぇら絶対ぶっ殺してやる。」

 

「うるさい、黙れ。」

 

リーズシャルテがヘイズへと一瞥もくれずに射撃する。それは《ニーズヘッグ》の自動防御にかき消されるがそんなことはどうでもよかった。

 

「今、とても大切な用件の最中なのよ。邪魔しないでくれないかしら。」

 

「今、貴女を、構ってる時間、ない。」

 

「どうしてもと言うならウィルフリッドさんたちにお仕置きする前に潰します。」

 

確実に怒りに飲まれていながらも自分の意思で戦う四人がヘイズへと飛びかかった。

 






遅くなって申し訳ございませんでしたあ!
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