黒き英雄と竜殺し   作:souやがみん

43 / 46
とりあえず戦闘は終わりな

ニーズヘッグに関してはオリジナルが混じります。


41話

ヘイズは端的に言うと恐怖していた。《ニーズヘッグ》の自動防御は未だに誰も抜けてはいない。しかしそんなことはお構いなしに攻撃を加えてきていた。

何か行動を起こそうとすれば体勢を崩されてしまいそうなそんな気がしている。

 

「押し通れ!」

 

リーズシャルテの一言で四人の神装機竜使いが一斉にヘイズへと襲い掛かる。1人1人の技量はウィルフリッドには遠く及ばない。しかし四人が同時に仕掛けることで技量と出力を補っている。

フィルフィとセリスティアが前衛でヘイズの《ニーズヘッグ》を受け止めリーズシャルテ、クルルシファーの二人が後方からの射撃で足を止める。

 

「私はウィルさんのお仕置きがあるのよ。貴女に構ってる余裕はないわ。」

 

射撃の出力が上がる。いや、そうではなかった。クルルシファーの神装が発動しているのだ。敵の先を読む力。ウィルフリッドやルクスなら自然と行えることだがそれだけの技量はない。しかしやりようはある。

 

「私たちはこれでもウィルフリッドさんとルクス君から教わってますからね。有象無象に殺られるほど弱くはないですよ。」

 

セリスティアが得意気に笑いながらヘイズをみる。それは端から見れば油断のようなものだ。しかし彼女たちの才能は油断さえも踏み潰す。

ヘイズからの攻撃をステップを踏み、さらに《支配者の神域》で完全回避を樹立する。

 

「ウィルフリッドさんにどうやって攻撃を通したかは知りませんが私には貴女の攻撃は通りませんよ。」

 

そして蹂躙が始まる。ヘイズの《ニーズヘッグ》の障壁を叩く。ウィルフリッドの攻撃により殆ど壊れかけだったその障壁は彼女たちの神装機竜4機の攻撃に耐えられるわけもなく破壊される。

そして彼女たちはヘイズに舌打ちさせる余裕も与えない。槍を、拳を、そして砲撃を叩き込む。

 

「さて、もうそろそろ降参したらどうだ?我々にはお前は勝てない。」

 

リーズシャルテが宣言する。そしてそれは確信だ。どうあがいてもヘイズに勝ち目はなかった。しかしヘイズはニヤリと笑う。

 

「ふ、あはははは!そうかそうか!これを使うしかないのか。俺もお前たちもどうなっちまうかは分からないけどな。」

 

そしてヘイズの《ニーズヘッグ》が発光した。それはウィルフリッドと《クリカラ》が一体化するときに放つ光とにている。

《バハムート》と似た形をしていたそのラインは消え去りアビスに似た形へと変わる。機竜に赤いラインが刻まれその赤いラインは血管のように動いているのが見てとれる。

 

『まさかお前は・・・。』

 

《クリカラ》が目を疑うようにつぶやいた。それを聞きながらウィルフリッドはヘイズを見ていた。

真っ白な髪が真っ黒に染まりオッドアイの目が赤で統一される。完全に《ニーズヘッグ》に体を乗っ取られている。その証拠に機竜へと体の一部が飲み込まれている。

 

『よぉ、《クリカラ》久しぶりだなぁ。久々に殺しにきたぜ。』

 

『《ニーズヘッグ》。またてめぇは自分の乗り手を殺す気か?』

 

《クリカラ》の言葉にリーズシャルテ、クルルシファー、フィルフィ、セリスティアが息を飲んだ。彼女たちのなかではまだ殺しは正当化されていない。ルクスも驚いてはいないが少し悲しそうな目をしている。

 

『いやいや、俺は誰も殺す気はないんだぜ?だって使い手を殺しちまったら誰も殺せねぇからな。お前だってそうだろ?《クリカラ》。』

 

『お前と一緒にするなよ《ニーズヘッグ》。俺は殺しよりも今こいつらの馬鹿を見ている方が楽しいんだよ。だから俺はこいつがウィルフリッドが最後の扉を開けようとも最後の力を使う気はねぇんだよ。』

 

《クリカラ》の以外な言葉に思わず吹き出す。《クリカラ》から抗議の声が上がるがそれを無視して前へと踏み出す。

 

「さて、んじゃ、やるか。《ニーズヘッグ》。」

 

《創造剣》で精製した刀を《ニーズヘッグ》へと向ける。それを笑いながら見つめる《ニーズヘッグ》。リーズシャルテ、クルルシファー、フィルフィ、セリスティアが道を譲ってくれる。

その真ん中を歩きウィルフリッドと《ニーズヘッグ》は1歩で接近できる距離まで近づいていた。

 

「蹂躙する。」

 

ウィルフリッドは短い呟きと共に踏み出す。《ニーズヘッグ》も同じタイミングで踏み出しておりそして同じタイミングで互いの武器が振るわれる。それはちょうど二人の真ん中で弾けるように交錯する。

拮抗と同時にウィルフリッドがさらに1本、小太刀を精製し逆手で握り振るう。しかし《ニーズヘッグ》はそれを軽くステップを取ることで回避する。拮抗していた刀と剣が解放され、さらに振るわれる。

 

『すごいぞ人間。貴様のような竜と斬り合える人間がいるとはな。これだから闘いをやめられん!』

 

「楽しいのは理解できるが止められないってのは理解できないな。俺は修羅かも知れないが戦闘狂ではないからな。」

 

再び刀と剣が拮抗する。火花が飛び散るが二人はものともしない。互いに押し返すように距離をとると口を開かずにさらに接近し斬り会う。

ヘイズの《ニーズヘッグ》の刃がウィルフリッドの肌を薄く切り裂き、ウィルフリッドの刃もまたヘイズの肌を薄く切り裂く。互いに薄く血を流す。

 

『楽しいよなぁ!《クリカラ》の主!お前なら分かるだろ?この興奮を!』

 

「痛いほど分かるぜ。けどなお前と俺は全然違う存在だな。やっぱりよ。」

 

怪訝な顔をする《ニーズヘッグ》に少し笑いかけながらウィルフリッドは口を開く。

 

「俺はお前と違って戦いを求めちゃいねぇんだよ。誰かを守れるならそれでいい。殺したい奴を殺せるならそれでいい。」

 

刀と剣が拮抗する。互いに体が後ろに吹き飛び体勢を立て直す。そして全く同じタイミングで両者が武器を首へと滑らしていく。

同じようなステップをとり回避する。

 

「やはり、てめぇのその動きは俺の動きだな。」

 

ウィルフリッドが忌々しく呟いた。それに対して《ニーズヘッグ》がニヤリと笑う。

 

『あぁ、そうだお前の動きだ。今まで数々の動きを見てきたがお前のその本気の動きほど人を殺そうとする動きを見るのははじめてだ。』

 

《ニーズヘッグ》が言葉を紡ぐ間にもウィルフリッドは体を動かし続ける。

音もなく接近し刀を振るう。それを《ニーズヘッグ》は見えているかのごとく武器を合わせて防御している。

ウィルフリッドは止まらない。自分の刀を手放し打撃戦に移行する。拳を数発、絶えなく叩き込む。少し苦い顔をする《ニーズヘッグ》が後ろに大きく跳躍するがウィルフリッドはそれを逃がさない。

 

「お前は《ニーズヘッグ》はここで殺す。例えその影響でヘイズが死んだとしてもな。」

 

ウィルフリッドが呟きながら肉薄する。剣を振るうことが出来ない距離に飛び込むと《ニーズヘッグ》も剣を捨てる。そこからは殴りあいだ。

拳を叩き込み、拳を叩き込まれる。カウンターぎみに拳を放ち、放たれる。互いに拳を止めない。ボロボロになっていく機竜を無視して殴りあう。そして終演が訪れる。

 

『ウィルフリッド、限界だ。』

 

《クリカラ》が強制解除される。ちっ、と舌打ちしながら《ニーズヘッグ》を睨む。しかし《ニーズヘッグ》も片膝をついており動ける状態ではなかった。

 

『くくく、あははははははは!そうか、そうか!人間ごときが《クリカラ》の力をほとんど出さずに俺を倒すか。お前は本当に人間か?負けてから言うのも何だがお前は化け物だな。』

 

それだけ言うと《ニーズヘッグ》から強制解除された。そしてヘイズが握っていた《ニーズヘッグ》の攻殻機剣が砕け散った。

 

『あれが意思を持つ機竜の最後だウィルフリッド。俺も死ねばああなる。基本的には俺が体を乗っ取っている状況のみだがな。』

 

その声を無言で聞いていた。体のあちこちが痛い。長い長い1日だった。

 

「ウィルさん!」

 

「ウィルフリッドさん!」

 

クルルシファーとセリスティアが駆けてくる。その後ろからリーズシャルテやフィルフィ、《三和音》シャリス、ティルファー、ノクトの三人が、そして親友であり弟子であるルクスが、アイリが走ってやってくる。そして何故かルクスを追いかけるように《帝国の凶刃》切姫夜架が此方に走ってくるのが見えた。

 

「何故、《帝国の凶刃》がいるんですぅ?」

 

疑問を口にして意識が闇の中へと落ちた。

 

 

 

 

 

「ウィルさん!ウィルさん!」

 

「ウィルフリッドさん!」

 

目に一杯の涙を溜めながらクルルシファーとセリスティアがウィルフリッドの体を揺すっていた。

 

『嬢ちゃん方には悪いがウィルフリッドは暫く目覚めねぇぞ。』

 

意識を失い倒れているウィルフリッドの口がおもむろに開いた。それは《クリカラ》の声だった。夜架が警戒しながらウィルフリッドに近づく。

 

「何故そのようなことが分かるのでしょう?ここでは新参者なので私だけ貴方が誰なのか分かりませんの。」

 

『そう言えば挨拶が遅れたな嬢ちゃん。俺の名は《クリカラ》、ウィルフリッド・スタンジフォールの機竜であり体を奪うものだ。』

 

面白いものを見つけた子供のような顔をする夜架をルクスが羽交い締めにする。

何故かエロい雰囲気を出し始める二人をリーズシャルテとフィルフィが詰め寄る。しかしクルルシファーやセリスティア、アイリといった面々は無視して《クリカラ》のはなしに耳を傾ける。

 

『簡単に言えばウィルフリッドは走りすぎて立てなくなっている状態だな。経験があるだろう?疲れて立てなくなることが。それの酷い版だ。』

 

それを聞いて心配していたクルルシファーたちの顔から少し安堵の表情が浮かぶ。

 

『っていってもうかうかはしてられないぞ。俺は人間の体には詳しくないんでな。』

 

それを聞いて少し慌てながらクルルシファー達がウィルフリッドを運んでいった。

そしてルクスは気を失っているヘイズのもとへと歩み寄っていた。どう見てもアーカディア家の髪をしている彼女を見つめる。

 

「うーん、やっぱり分からないなぁ。まぁ今さら兄弟姉妹なんてアイリ以外どうでもいいから何でもいいけど。それよりこれからどうするか、かなぁ。」

 

ウィルフリッドならまず間違いなく彼女をヘイズを殺すだろう。それは経験から来る考えだ。この手の敵は確実に助けた後にまた襲ってくる。

 

「っていってもウィルほど人殺しに慣れちゃいないんだよなぁ。ま、目覚めてから彼女が決めればいいか。」

 

 

  1. 目次
  2. 小説情報
  3. 縦書き
  4. しおりを挟む
  5. お気に入り登録
  6. 評価
  7. 感想
  8. ここすき
  9. 誤字
  10. よみあげ
  11. 閲覧設定

▲ページの一番上に飛ぶ
X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧 ※ログインせずに感想を書き込みたい場合はこちら
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。