黒き英雄と竜殺し   作:souやがみん

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これで5巻が終わりですよ






42話

「本当に今回は失礼のないようにお願いしますよ?前回は何とかなったものの今回はやめてくださいね。」

 

「もちろんだよ、本当にアイリは心配症だなぁ。」

 

「信用ないのかねぇ、俺たちは。」

 

そんなことを言ってのける目の前に座っているこの国を救った英雄を見てアイリは頭を抱えていた。ここにリーズシャルテ、クルルシファー、セリスティア、フィルフィがいないことが救いだった。

何故なら彼女たちがこの場にいたらさらに混沌とするからだ。

 

「大丈夫だよ、アイリ。前回も何とかなったでしょ?」

 

自分の目の前に座る白い髪の少年、ルクス・アーカディアが口を開いていた。普段はおちゃらけており何を考えているか分からないルクスだが今日は誰がどう見ても分かりやすい顔をしている。

 

「ええ、主様ならば大丈夫ですわ。何せこの国の英雄で私の主様なのですから。」

 

そう言ってルクスを甘やかすのはルクスの膝の上でルクスと向かい合うように座っている少女だ。

黒い長髪を赤いリボンで結んでいる。肩を大きく露出した服装をした少女、切姫夜架だ。

 

「本当だぜ。なぁ、ヘイズ。」

 

「そ、そうだな。・・・じゃなかった、ですね。」

 

いつも通りのアロハシャツにさらに《クリカラ》との一体化が進み神の色が灰色に近くなってきた大柄の男、ウィルフリッド・スタンジフォールがニヤリと笑いながら目の前で夜架と同じように膝の上に座る少女ヘイズを見ていた。

彼女は恥ずかしそうに顔を赤くしており体をくねくねさせている。

 

「こういうのを見ているから不安なんですけどね。」

 

ヘイズが何故ここにいるのか。その理由は簡単だった。あの闘いの後ルクスがヘイズを助けていた。とりあえず学院に連れて帰っていたのだ。そして尋問が始まる。と言っても学院長、レリィたちにそんな経験があるわけでもない。そんなわけで尋問はウィルフリッドとルクスが担当することになった。

その後はなんとなく予想がつくだろう。ルクスにメイドが出来たことを羨ましく思っていたウィルフリッドがヘイズを◯◯して◯◯して◯◯した結果彼女は完全にウィルフリッドの物になっていたのだった。

 

「見も心もウィルフリッド様に捧げます。」

 

こんなことを言ってのけた彼女はどういう心変わりなのかとアイリが不思議に思ったのも無理のないことだ。

そんな五人が馬車に乗っていた。これから王都の城へと出向き、夜架とヘイズの裁判が始まるのだ。そのついでと言うようにウィルフリッドとルクスに報酬が与えられるそうだ。

 

「もうお二人に何を言っても無駄でしょうし何でもいいです。その代わり服装だけはキチンとしてください。」

 

敬礼する二人を呆れながら見るアイリの目にはこの二人がまたなにかをしでかす未来しか見えなかった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「それでは開廷する。容疑者2名と弁護人を前へ。」

 

扉が開かれそこから容疑者が姿を表した。まず現れたのは黒い艶やかな髪の主、切姫夜架だ。手を前で縄で絞められており身動きはとりにくそうだ。だが、そんなことよりもおかしいのは彼女が肩を大きく露出させたメイド服を着ていることだった。

その大きな胸が否応なしに男たちの目を引く。それを見て夜架は本当に豚でも見るような目でその男たちをにらんでいた。

 

「ダメだよ、夜架。人を睨んじゃ。」

 

「しかし主様、あそこから卑劣な目を向けられているのです。」

 

「何処のどいつだ?殺してやろうか。」

 

後ろからついてきた少年、ルクス・アーカディアがマジギレしながらガンを飛ばしていた。これがこの国を救った片割れだと考えただけでその場にいる人々は頭を痛めている。

 

「ウィルフリッド、やっぱりこいつら殺そう。殺してウィルフリッドが王になるんだ。絶対それがいいって。」

 

次に入ってきた白い髪のオッドアイの少女は服装は普通だった。髪と同じ色のワンピースを着ている。しかし首輪をつけておりリードの先はアロハシャツの男が握っている。赤い髪に灰色が指しているその髪はデータによると機竜との一体化によるためだと出ている。名前はウィルフリッド・スタンジフォールだ。

 

「お、それは良いなぁ。だが残念、俺は王になるよりもやりたいことをやりたいようにやる人生しか求めてないんだなこれが。てことで後でお仕置きな。」

 

お仕置きと言った瞬間白い髪のオッドアイの少女の顔が愉悦な顔になっている。彼女こそがこの裁判を開くことになった最重要人物ヘイズなのだ。しかし今やただのマゾの変態少女だった。

その後ろではルクス・アーカディアの妹であるアイリ・アーカディアが頭を抱えながら入ってきていた。

 

「おい貴様ら、ここに来る度に意味の分からんことをするのを止めろ!迷惑だ。」

 

宰相であるナルフが大声をあげていた。これを迷惑と言いきったナルフに会場から拍手が贈られる。恥ずかしそうに顔を赤くするナルフにウィルフリッドとルクスが指を指しながら笑う。

 

「見たか、ルクス。宰相様は自分のタイプの女が他の男といるから悔しいんだぜ。」

 

「大人の嫉妬ほど醜いものはないよね。」

 

ナルフの額に青筋が浮かぶ。それをアイリは顔を手で覆い、指の間からそれを見ている。

顔を真っ赤にしながら何とか怒りを抑え込んだナルフは咳払いをすると何事もなかったように口を開く。

 

「では、開廷する!まず、罪状を確認する。」

 

「まず、容疑者ヘイズ。国家転覆罪です。そして切姫夜架はそれに荷担しております。」

 

それを聞いた瞬間裁判に参加していた男たちが口々に死刑だ!と叫び始めた。始めから処刑か終身刑しか求めていない彼らにとっては当たり前の反応だろう。

しかしこれに対してルクスが手をあげる。

 

「意義あり!」

 

「弁護人ルクス、どうぞ。」

 

「いえ、言ってみたかっただけです。」

 

辺りからずっこけ席から落ちるナルフ。いやナルフだけではない色んな人たちがずっこけている。特にアイリはずっこけるどころかルクスにローキックを叩き込んでいる。

 

「べ、弁護人は無意味な発言を控えるように。」

 

「は、ルクス注意されてやんの。ばーか、ばーか。」

 

「馬鹿って言う方が馬鹿なんだよ。そんなことも知らないの?ウィルって。」

 

胸ぐらを掴みあって喧嘩を始める。

 

「問題を起こさないように言いましたよね!」

 

アイリが二人に目潰しを行う。しかしそれを二人は目視確認をしてから回避する。

 

「甘いですね。」

 

しかしアイリが一枚上手だった。途中まで真っ直ぐ向かっていた指が突如軌道を変えウィルフリッドとルクスに襲いかかり二人の目を破壊した。

 

「ああ!目がぁ!ヘイズをいたぶるために使う目がぁ!」

 

「ああ!夜架とイチャイチャするときに使う目がぁ!」

 

二人して同じように目を押さえながら床を転がっている。もちろんそれを介護するのは夜架とヘイズだ。

 

「主様、大丈夫ですか?アイリ・アーカディア。妹とはいえ、主様になんてことを。」

 

「ウィルフリッド!てめぇ、ウィルフリッドに何しやがる。」

 

ウィルフリッドとルクスのメイドの二人組は息を合わせたかのように同じようなことを口走っている。自分達の裁判なのに緊張感がなかった。もうウィルフリッドとルクスに毒されたのだろうかと悩むほどだ。

 

「ナルフ宰相!早く、早く裁判を進めてください!このままでは兄さんとウィルフリッドさんの暴走が止まらないんです!」

 

必死の形相でそう叫ぶアイリを見てナルフは一瞬可哀想な物を見るような目になっていた。

 

「ナルフさんよぉ、無罪にしないと色々と口が滑っちゃうぞ。」

 

ウィルフリッドの脅しが入る。

 

「ちょっとリーシャ様とお茶したくなってきたなぁ。」

 

ルクスが唐突に言葉を紡ぐ。ナルフの顔に怒りが込み上げているがウィルフリッドとルクスはなんのその。満面の笑みを浮かべている。

 

「貴様らと話をしていると気が滅入る。無罪にしてやるからそこのポンコツ二人組の面倒をみるんだぞ。」

 

ナルフが投げやりに言う。それに対して大多数の人間が反発するがウィルフリッドとルクスが同時に攻殻機剣を引き抜き床に叩きつけると黙り混んだ。

それを見てウィルフリッドとルクスが大爆笑する。それを見てまたアイリが頭を抱えている。

 

「はぁ、本当に貴様らは。・・・まぁいい。こんな裁判よりも貴様らへの報酬が今日のメインイベントだからな。」

 

そう言ってナルフがウィルフリッドとルクスへと近づいていく。

目の前で止まると手を軽く挙げる。まるで選手宣誓のような格好で口を開く。

 

「ウィルフリッド・スタンジフォール、ルクス・アーカディア両名に貴族の位を与える。本件はこの国を救った英雄に対する正当な報酬だと言うのが女王陛下の決定である。反論あるものは挙手を。」

 

それを受けて誰も手をあげない。それどころか拍手が贈られる。それを一番嬉しく思ったのはアイリだった。やっと二人が認められたことへの安堵なのかもしれない。

しかしウィルフリッドとルクスは互いに顔を見合わすとニヤリと笑いナルフへと向き直ると思いっきり股間を蹴り飛ばした。

 

「うぬらぁ!?」

 

訳のわからない叫びと共にナルフが地面へと転がった。そんなナルフを見ながらウィルフリッドとルクスが口を開く。

 

「うわー、宰相を蹴っちまったなぁ。」

 

「ほんとだね、これで僕らは罪人。さてさて学院での仕事が残ってるし帰ろうか。」

 

ウィルフリッドとルクスが勝手に扉から出ていった。続いて夜架がペコリと頭を下げて退出した。その後、ヘイズが中指をたてながら退出し、最後にアイリがレイプ目をしながら出ていった。

 

「やられたなぁ、ナルフ。あいつら始めから此方の言うことが分かっていたようだ。」

 

四代貴族の一角にしてセリスティアの父であるディスト・ラルグリスが口を開いていた。

 

「そうでしょうね。あのキチガイどもはただのキチガイではないですからね。」

 

ふんと鼻をならしながら笑うディストが口を開く。

 

「あぁ、あんなやつらがアーカディア帝国をぶっ潰しこの国を救った英雄なんだ。ただのキチガイな訳があるまい。」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「うーん、ヤバイなぁ。」

 

「そうだねヤバイね。これはもうすぐ死ねるね。」

 

王城から出ると同時にウィルフリッドとルクスが呟いていた。首を傾けるアイリとヘイズに笑いかける。流石というべきか夜架は気づいている。

 

「すごい殺気ですわね。何故怒っているのはアイリ・アーカディアに聞けば分かるでしょう。」

 

「え、何で分かるんですか?」

 

勘です。と笑顔で答える夜架を無視しながらウィルフリッドとルクスは町中へと駆け込んでいた。

 

「ルクスー!出てこい。今なら痛くないように殺してやるぞ。」

 

「ウィルさん、早く出てこないと腕をまっぷたつに叩きおるわよ。」

 

「ルーちゃん、ウィル君、めっ!」

 

「わ、私はそれでもウィルフリッドさんが大好きです。だから一回死んでくださいね。」

 

そんな怖いことを言う少女たちの声を聞きながらウィルフリッドがルクスに声をかけていた。

 

「さて、ルクス。多分この国を救うより難易度高いぜ。」

 

「そうだね死なないように頑張ろう。」

 

そんなことをいいながらまた走り始めた。





次回からはルクスとウィルフリッドのデート(隠語)の幕間をやったら本編に戻るよ。




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