最初のデートはルクスからだ。
「遅いなぁ。まぁ女の子は男を待たせるものだし全然いいけどね。」
太陽の光をたっぷり浴びながらルクス・アーカディアは伸びをしていた。今日は何時もの制服でもボロの私服でもなく、昨日リーズシャルテに買ってもらっていた礼服を着ていた。
「まさかデートで服装を指定されるとは思わなかったなぁ。・・・、それにしても礼服なんて何年ぶりだろう?」
帝国の皇子だった頃のルクスは決して兄弟の中で優遇されていた訳ではないが一般の人たちと比べるともちろん優雅な暮らしをしていた。
そんな中でもルクスはウィルフリッドと出会うまでの間は礼服などの王族としての責務は果たしていた。
「遠い、過去の話だなぁ。」
「何言ってんの?ルクッチ。」
「Yes,独り言は気味悪がられますよ。」
ティルファーとノクトの声が聞こえそちらに振り替えると別人のような二人がいた。
ティルファーは何時ものポニーテールに緑色のヘヤーバンドをしておりドレスは肩を大きく露出させて淡い緑色だ。
ノクトの方は何時もの髪型だが少し気合いをいれて化粧をしているのが見てとれる。ドレスはティルファーと違い少し控えめなデザインだが純白のそのドレスはまるでウェディングドレスのようだった。
「二人ともすごく似合ってるね。」
「ふっふっふ、そうでしょうー!」
「Yes,神装機竜使いの方々が目立ちすぎて私たちは目立たないだけで美少女という自覚はありますからね。」
ノクトの自信たっぷりな物言いに少し苦笑いするしかなかった。
三人は特に何処に行くわけでもなく町中を歩くことにしていた。町は全竜祭の賑わいのためか人で溢れ帰っておりところ狭しに色々な屋台が並んでいる。
「じゃあ、ルクッチ。私たちはデートって言うよりちょっと一緒に遊ぼう!って感じだから。」
「Yes,このあとは気難しい二人が待っていますので私たちの時は楽にしててください。」
「正直助かるよ。あの二人は本当に難しいからさ。」
ルクスの目からハイライトが消えるがそんなことはものともせずティルファーとノクトはルクスを連れ回して遊んだのだった。
「あの二人以外とパワフルだよなぁ。特にノクトは。」
日が少し傾き始めた時間、ルクスは指定されたベンチに腰かけていた。どちらの指定かはわかってはいない。特に気にすることもなく欠伸をしながら待っているとようやくその待ち人が現れた。
「ルーちゃん、待った?」
「ううん、そんなことないよフィーちゃん。」
ティルファーやノクトと同じときのようにそこには別人になったフィルフィがたたずんでいた。
何時もはツインテールにしている髪をポニーテールで纏めており普段の少しあどけなさを残した顔は何故か大人びて見えた。
服装も普段のフィルフィとは180°違って見えた。スタイルが完全にくっきりと見えるドレスを身に纏っているフィルフィは言葉を選ばなければエロかった。完全に鼻の下が伸びているルクスにフィルフィが不審そうな目を向ける。
「ルーちゃん?」
「ん?・・・、いやっ、えっと、何でもないよ!フィーちゃんのその豊かな胸に目が言ってたなんてことは絶対ないからね!」
「ルーちゃん、心の声が出てるよ。」
ベンチの上で崩れ落ちるルクスをフィルフィはニコリと笑いながら隣に座った。
日が傾き始め秋とはいえ少し暑いと言える気温が出ている。ルクスもフィルフィもそんななか無言で座っていた。
「ルーちゃん、ありがとうね。」
唐突にフィルフィが礼を言った。突然のことにはてなマークを浮かべているルクスにフィルフィはニコリと笑うと言葉を続ける。
「5年前も、今も、ルーちゃんは何時も私を助けてくれた。一生懸命脇目も降らずに。それはウィル君も同じかもしれないけど。私はルーちゃんに助けてもらったと思ってる。」
「フィーちゃん。僕は君を助けられてなんかいないよ。ラグナロクの種子はまだフィーちゃんの中にいるし、あのときだってウィルがいなかったらヤバかった。」
ルクスはフィルフィの目を見ながら少し辛く思いながら呟くように言葉を放っていた。
ウィルフリッドがいなければ何も出来ない。ルクスは自らをそう評価している。それを過小評価と言うものがいるからも知れない。
「僕はあの頃から一人じゃ何も出来ないんだ。」
「それで、それでいいんじゃないかな。」
フィルフィがそう言った。ルクスがフィルフィを見つめる。フィルフィは恥ずかしそうに照れ笑いをしながらルクスの頭を捕まえると無理やり自分の膝にのせる。
「フィ、フィーちゃん?!こ、これはかなり嬉しいけど一体どういうこと?!」
ルクスが少し混乱している様を見ながらフィルフィが言葉をかける。
「ルーちゃんは頑張ってるよ。だからちょっとぐらい休んでもいいと思う、よ。」
フィルフィはルクスの体を押さえつけながら頭を撫で始める。それを心地よく感じるルクスにフィルフィは言葉を続ける。
「ルーちゃんは一人じゃ何も出来ない。って言ったけどきっと一人で、何でもできる人なんて、そうはいないよ。それこそウィル君だって一人で出来ないことは沢山あるはずだよ。」
耳に心地よいフィルフィの声を聞きながら徐々にルクスは眠りにつく。
「今は、ゆっくり寝てね、ルーちゃん。これは私からのせめてものお礼、だよ。」
ルクスが目を覚ますともうそこはオレンジ色に染まった王都の中だった。どうやら三時間は寝ていたらしく顔を上げるとフィルフィも座ったまま寝ていた。
フィルフィらしいなぁと思いながら体を起こすと何か柔らかい物に当たる。何だろうと思い触ってみるとフィルフィのからだがビクッと震える。
「ま、まさかこれが至高のアレなのか?」
ルクスは未だに手を離さずそう呟いた。ルクスたちが寝ていたベンチの回りは人通りが少ないようで回りには誰もいない。
「も、もう少しならいいよね。フィーちゃん。」
そう言ってルクスがてに神経を集中させようとしたときだった。
「ん、ルーちゃん、むずむずするから止めて?」
「ごめんなさい!!」
フィルフィの体が飛び上がりその勢いのまま地面へとジャンピング土下座を行う。
「?なんで謝ってるの?」
フィルフィのおとぼけた顔にルクスは苦笑を漏らしつつ立ち上がる。
「ルーちゃん、最後はリーズシャルテ様だよ。」
「うん、ありがとう。フィーちゃん。」
フィルフィと別れルクスは最後の集合場所へと走り出していた。最後の集合場所はとある公園の花畑の真ん中にある時計台だった。事前に少し調べた結果どうやら告白スポットのようだ。
公園に到着すると件の公園の花畑の真ん中の時計台に一人の少女がたっていた。赤いホルターネックと呼ばれるタイプのドレスを纏い、何時もとは違い髪を纏めることなくストレートにしている姿に少しドキッ、とする。その少女リーズシャルテはルクスを見つけると嬉しそうにはにかみながら手を振っていた。
「何だろう、良い予感がしないんだけど。」
ルクスは誰にも聞こえないであろうほど小さな声でボソッと呟いた。そんなこととは露知らずリーズシャルテはルクスへと声をかける。
「ル、ルクス。私の姿はどうだ?一国の皇女らしいだろうか?」
「大丈夫ですよ、リーシャ様。僕の皇子時代なんて今の僕の私服とあんまり変わりませんでしたから。」
ああ、あれかと遠い目をするリーズシャルテ。それを複雑な気持ちでルクスは見ながら口を開く。
「そ、それよりリーシャ様。デートしましょう、デート。」
ルクスが何気なく言ったデートというワードに顔を赤くするリーズシャルテ。そしてルクスの悪のりが始まる。
「どうしたんですか?リーシャ様。デートしましょうよデート。デートですよ、デート。いやー、リーシャ様とデートできるなんで嬉しいなぁ。デートやったー!」
デートを連呼する。するとリーズシャルテが子犬のように小さくなっていく。それを見てルクスは癒されながら手を差し出す。
「リーシャ様、行きましょうか。」
弄るのをやめ、普通に手を差し出し立たせるといまだに顔を赤くしている。そんなリーズシャルテを見てルクスは違うことを考えていた。
(これだけ弄ったら明日からが怖いなぁ。)
ルクスがそんなことを考えているとは知らないリーズシャルテは顔を赤くして考えていた。
彼女は恋をしたことがなかった。年頃の女の子なのにそれもこれだけの美貌を持っていながら言い寄る男はいないし逆に言い寄ることもなかった。
「ル、ルクス!」
「はい!?」
腕を組んでいるため耳元で叫ばれたルクスはビックリして攻殻機剣を抜いていた。
「何故抜いた?」
「条件反射ですかね。」
そんな条件反射嫌だなぁと思いながらリーズシャルテはため息をついた。この男、此方が覚悟を決めたと同時に意味のわからないことをしでかすのだ。
これのそれも全てあのヤクザ顔が悪いということでリーズシャルテの中で完結する。
「実はな、お前に言いたいことがあるんだ。ちょっと公園まで戻らないか?」
「えっ、と3分くらい前に公園を出たところですけど・・・、いえ、戻りましょう!」
リーズシャルテに睨まれて即座に公園へと引き返すルクス。そんな姿を見てクスッと笑いながらリーズシャルテも公園へと引き返す。
公園にはライトアップされた木々などが立ち並びさながらクリスマスの夜のような明るさだった。
「3分の間に照明がついたんですね。綺麗だなぁ。」
ルクスの感想に相づちをしながらリーズシャルテもライトアップされた木々を眺めていた。そして思う。チャンスはここだと。
「ルクス、頼みがある。」
ルクスがきょとんとした顔でリーズシャルテを見る。腕に力を込め、喉の奥から震えそうになりながら声を絞り出す。
「私の騎士になってくれないか?」
「いいですよ。」
「へ?」
リーズシャルテが間抜けな声を出しながらルクスを見ていた。そこにはニコニコしながらうんうん頷いているルクスがいる。
「ほ、本当に良いんだな?決まったからには拒否権はないぞ。」
「ええ、問題ありません。リーシャ様の騎士になれるなんて光栄だなぁ。」
ルクスが笑顔でそんなことを言ってのける。リーズシャルテはそれを聞いて舞い上がった。自分の好きな男を自分の騎士にすることに成功した。これで四六時中一緒に居ても誰からも文句を言われない。
「よ、よしルクス。私はこれから母上にこの事を報告しに行かねばならない。デートはここまでだ。」
そう言い残すとリーズシャルテは《ティアマト》を装着し飛んでいった。
それを終始笑顔で見送ったルクスはリーズシャルテが見えなくなると地面に崩れ落ちていた。
「ヤバいヤバいヤバいヤバいヤバい。何がヤバいって?アイリに知られたら殺される。」
騎士になると言ったのはただの機嫌とりだったりする。さっきの弄りの腹いせに明日殺られるのを避けるためにほぼ無条件で答えていた結果だった。
「ま、何とかなるか。」
そう言いながらルクスは宿へと帰るのであった。
ルクスが首輪つけられると思った?
残念、今回はリーズシャルテとフィルフィのヒロイン力が高いって話じゃよ。