黒き英雄と竜殺し   作:souやがみん

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遅くなってすまぬ。。。






幕間四 デート(ウィルフリッド編)

「ねぇねぇ、あの人ホストかなにかかな?かっこよくない?」

 

「確かにカッコいいけど、あの人ヤクザっぽいからねぇ。」

 

あははは、そうだねっと笑いながら通りすぎる学生の二人組の会話を口の動きを見て読み取ったウィルフリッドが地面へと崩れ落ちる。

 

「くそがぁ、どいつもこいつも俺のことをヤクザ顔って呼びやがって。俺も好きでこんな顔してんじゃねえよ。」

 

しかし誰も反応してはくれない。ルクスがいないとツッコミがいないなぁ。そんなことを考えながらウィルフリッドは大きな欠伸をしていた。

レリィの策略によりクルルシファー、セリスティア、シャリス、アイリとデートすることになったウィルフリッドは何時ものアロハシャツ姿ではなく昨日クルルシファーとセリスティアに買ってもらった礼服を着ている。

 

「にしても俺が礼服を着るとホストに見えるのか・・・。今度からナンパの時は着ていこう。」

 

そんな無駄な決意をしているとウィルフリッドがばっ、と後ろへと振り返り舌を出しておどける。

 

「俺を驚かせたいならもっと気配を消さなきゃ無理だぜ。シャリス嬢。」

 

そこには驚いた顔のシャリスが立っていた。何時もの髪型に少し濃いめの青いドレスを身に纏っている彼女は普段のシャリスには見えず名家出身のお嬢様のようだ。

いや、実際はお嬢様なのだが。

 

「そうか、気配か・・・。難しいな。」

 

顎に手を当てフムフムと考えているシャリスに苦笑を漏らす。

 

「シャリス嬢、そのドレス似合ってるな。」

 

笑顔と共に贈られた誉め言葉にシャリスは耳まで真っ赤にして照れるのを眺めながら町を巡るために歩き始める。

町はお祭り騒ぎだ。所狭しと並んだ屋台の数々はウィルフリッドの腹を刺激していく。しかしウィルフリッドにそんな豪遊をする余裕はなかった。

 

「くそぉ、祭りだってのに何も買う金がないってのが辛いところだぜ。」

 

「ウィルフリッドさん、こっちこっち!リンゴ飴があるよ!」

 

シャリスのはしゃぎっぷりに苦笑する。本来機竜使いの適正がなければこんな風な普通の女の子なのだ。

きっとこの道を選んだのも彼女自身なのだろうがそれでもやはり戦ってほしくない。

ウィルフリッドがそんなことを考えているとシャリスが両手にりんご飴を持って此方に駆けてくる。シャリスはウィルフリッドの前まで来るとりんご飴の片方を差し出す。

 

「おお、悪いな。いくらだった?」

 

「お金は良いですよウィルフリッドさん。これは今までの感謝の気持ちです。ちょっと安すぎる気もしますけど。」

 

そんな笑顔を浮かべている。それを見てウィルフリッドは思った。俺がやってきたことに間違いはなかったと。

町を巡り祭りを楽しんだ二人は集合場所へと戻ってきていた。

 

「はぁ、楽しかった。また一緒に出掛けましょうね。ウィルフリッドさん。」

 

「おう、また今度な。」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「次の待ち合わせ場所はラルグリス家の前。もう誰か分かるな。」

 

シャリスと別れてすぐウィルフリッドはラルグリス家の前へと訪れていた。旧帝国時代、よくここにセリスティアの自動にやって来ていた。詳しくは覚えていないけど。

そんなラルグリス家の門前で待っていると一人の侍女のような少女が走りよってきた。

 

「ウィルフリッド・スタンジフォール様ですね。お嬢様から話は聞いています。どうぞ。」

 

ありがとうございます。と言いながら門をくぐる。流石四代貴族の一角。とてつもなく広い家だ。

玄関に入るとさらにそのものすごさに驚くことになった。天井がとてつもなく高い。こんな広さにする意味があるのかと本気で考えるほどに広かった。

 

侍女の少女に案内されとある大扉のまえで立ち止まる。

 

「現在、当主様とお嬢様は中でパーティーの真っ最中です。」

 

「俺なんかが入っても?」

 

「そのようにお聞きしています。」

 

ウィルフリッドがそんな台詞を言うことも読まれていた。ディスト・ラルグリス。彼の凄みを感じながら扉をあけるとそこには物凄い光景が広がっていた。

至るところに並ぶ飯、飯、飯。ウィルフリッドの目がそれを捉えると同時に地面蹴っていた。それも本気の戦闘をしているとき並みに全力で。

 

「う、旨い。ヤッホー!」

 

がっつき始める。脇目も降らずに食べ続けるウィルフリッドの元に一人の少女が歩み寄る。

 

「ウィルフリッドさん!来てくれたんですね。」

 

「おう、セリスティア嬢。飯がうめぇなぁ。」

 

髪をポニーテールに纏めており黄色いドレスを纏ったセリスティアが声をかけてきた。

セリスティアの感動を半分無視しながらウィルフリッドはいまだに飯にかぶりついている。

 

「来たか、ウィルフリッド・スタンジフォール。」

 

渋い声を聞きウィルフリッドは飯を食べる手を止めて振り替える。そこには予想通りの人物が立っていた。

ガッチリとしたその肉体は礼服を着た上からでもはっきりわかる。そう、ディスト・ラルグリスだ。

 

「お呼びに預かり光栄です。とでも言えば宜しいでしょうか。」

 

「はっ、お前にそんなことを言われると少しこそばゆいわ。しかし許そう。その代わりキチンとわが娘の面倒を見てもらうぞ。」

 

肩をすくめるとディストは納得したように何処かへ歩いていってしまった。

それを見届けるとウィルフリッドがセリスティアの方へと振り替えると沢山の男に囲まれていた。

 

「セリスティア様、よろしければ私と一曲どうしょうか。」

 

「いえいえ、私と踊ってください。」

 

「貴様らごときではセリスティア様が踊ってくださるわけなかろう。セリスティア様、私と一曲踊りましょう。」

 

口々にセリスティアに迫る貴族の男たち。セリスティアはきつく言うことも出来ずに困り果てている。そういえばとウィルフリッドが思い出す。

 

「セリスティア嬢って男が苦手なんだっけか。」

 

ウィルフリッドとルクスとは普通に会話できるため忘れがちだがセリスティアは男が苦手なのだ。ウィルフリッドはその事に苦笑を浮かべつつどうしょうかと、悩み始めていた。

 

「ちっ、ディスト卿に頼まれてるからな。助けないわけにはいかないか。」

 

独り言のように呟くとウィルフリッドは貴族の男たちに囲まれているセリスティアへと歩み寄る。セリスティアへと群がる男たちに体をぶつけて無理矢理道を作り出すとウィルフリッドがセリスティアの前へと到着する。

少し呆けた顔をしているセリスティアに笑いかけると片ひざをつく。

 

「セリスティア・ラルグリス嬢。俺と一曲いかがですか?」

 

「貴様!罪人の分際でよくもこのラルグリス家に足を踏み入れたな!」

 

ラルグリス家の人間でない男が叫んだ。貴族としての誇りか手には攻殻機剣が握られている。それを振り上げようとしてその男の手が止まる。

 

「うるせぇぞ、餓鬼ども。俺にお前らが勝てると思ってんのか?意気がってんなら死ぬぞ。」

 

腰に吊るしてあった攻殻機剣、《クリカラ》を引き抜く。

 

『なんだ?久しぶりに殺れるのか?』

 

《クリカラ》の言葉を無視しながらウィルフリッドは少し怯え始めた貴族の男達を睨んで言葉を続ける。

 

「死にたくなければ俺に喧嘩売るんじゃねぇぞ。」

 

それだけ言うとウィルフリッドは未だに呆けた顔をしているセリスティアの手を掴み無理矢理ダンスホールに連れ出していた。

 

「ウィルフリッドさんって強引、なんですね。」

 

「そうだぜ、俺ってば超肉食!ついでに言うと《クリカラ》はリアルに肉食だぜ。」

 

そんな冗談を織り交ぜながら会話をするとセリスティアがクスッと笑う。

そして曲が奏でられる。至るところで踊っている男女の姿がある。もちろんその中にはディストの姿も存在している。

 

「ウィルフリッドさん。」

 

名前を呼ばれてウィルフリッドはセリスティアへと向き直る。セリスティアは上目遣いで笑顔のまま言葉を紡ぐ。

 

「もう一度、ダンスに誘ってもらって良いですか?」

 

その言葉に内心ドキッ、としながらウィルフリッドはニヤリと笑うとセリスティアに声をかける。

 

「いいのか?セリスティア嬢。俺って超肉食なんだぜ?さっき言ったけど。」

 

「全然構いませんよ。あんなチキンな男たちと踊っても仕方ありませんし。」

 

チキンと称された男たちの冥福を祈りつつウィルフリッドは再び片膝をつき、手を差し出す。

 

「では、セリスティア・ラルグリス嬢。私と踊って頂けますか?」

 

「喜んで!」

 

このときのセリスティア嬢の笑みは見たこともないものだった。手をとり二人はダンスホールの真ん中へと歩いていった。

 

 

 

 

 

 

 

「おおう、またパーティーか。ってことはアイリじゃなくてクルルシファー嬢だな。集合場所もユミル公国の館の前だし。」

 

ラルグリス家体を離れたウィルフリッドはユミル公国の館の前に来ていた。ディストにはもう少しゆっくりしていくように言われたがそうも言ってられない。

相手はあのクルルシファー・エインフォルクなのだ。怖すぎる。

 

「遅れたら腕の骨を折られる未来しか見えないもんなぁ。」

 

そんなことを言いながら門のまえで待っているとドレス姿の少女が歩み寄ってきた。

その少女は綺麗な銀髪をポニーテールににしておりホルターネック型のドレスを着ている。しかし胸がないからか色気がない。

 

「痛い痛い痛い痛い!クルルシファー嬢!あった瞬間に腕の骨を折ろうとしないでください!」

 

「でも今失礼なこと考えていたでしょう?」

 

腕を解放しながらクルルシファーがウィルフリッドへと言葉をかける。目をそらしながら無言を貫いているとはぁ、とため息をつく。

 

「で、でもちゃんと時間通りだろ?」

 

クルルシファーのジト目に冷や汗をかきながらウィルフリッドは口を開いていた。クルルシファーの目に恐怖を覚える。

 

「はぁ、まぁいいわ。行きましょ。」

 

クルルシファーはニコリと笑うとウィルフリッドの手を掴んで館へと引き入れていた。

ユミルの館の中はラルグリス家と家の作りは違っていたがダンスホールだけは似たような作りをしていた。

 

「さぁ、ウィルさん。踊るわよ。」

 

そう言うとクルルシファーがウィルフリッドの手をとって踊り始める。無理矢理踊らされながらウィルフリッドは辺りを見渡していた。

クルルシファーの両親が誰かは分からなかったが殺気に似た嫉妬を感じたからだ。ここでも同じか、と思いつつ嬉しそうに踊っているクルルシファーに笑いかけていた。

 

15分も踊った後クルルシファーが休憩のためにと踊るのを止めて飲み物を取りに行った。

 

「少し良いかお前。」

 

声をかけてきたのはイケメンの男だった。爽やか系のイケメンで金髪が少し羨ましい。

顔が怒りに燃えている。男の後ろにいるのは友達だろうか。大層な人数でウィルフリッドを囲っていた。やれやれここでもか。

 

「お前がクルルシファー様を狂わせたのか。昔のクルルシファー様はもっと優雅で聡明な方だった。そんなお方が貴様のようなヤンキーかぶれと一緒にいるのは間違っている。」

 

言っていることは超のつくほどの正論だった。しかしウィルフリッドにそんなことは考えなかった。

 

「おい、餓鬼。俺のことをヤンキーかぶれって言ったな?言ったよな。言っちゃったよね。よし殺す。ぶっ殺す。貴族なんて関係ない。ぶっ殺す。」

 

若干貴族の坊っちゃん達が引いている。それも仕方ないことかも知れない。ヤンキーかぶれという言葉が出るまではウィルフリッドは笑顔だったからだ。

そしてこのキレ方だ。しかしウィルフリッドの喧騒は止まらない。

 

「お前がどこのお偉いさんの息子かは知らねぇが俺をヤンキーと言った罪は重いぞ。」

 

器の小さな男だった。ウィルフリッドは指の骨を鳴らしながら接近していく。そして掴みかかる瞬間にウィルフリッドの腕が消える。いや、正しくは誰かが掴み関節技を決めているのだ。

 

「ふふ、ウィルさんは本当にお茶目よね。」

 

「待って!クルルシファー嬢待って!悪いのは俺じゃないんだよ。この餓鬼どもが俺のことをヤンキーかぶれって!

あああああ!腕はそっちには曲がらないよぉぉぉぉ!」

 

ウィルフリッドの腕を完膚なきまでに叩き折るクルルシファーの姿を見た貴族の男子はボソッと呟いた。

 

「もうクルルシファー様に関わるのは止めよう。」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

ユミル公国の館で腕の関節がおかしくなっていたのを無理矢理戻してからウィルフリッドは最後の約束の場所に来ていた。

そこは街から少し外れた場所にある古い小屋だ。

 

「ウィルフリッドさん、遅かったですね。」

 

「クルルシファー嬢に関節を殺されててね。」

 

その言葉にクスッと笑ったのはルクスの妹でアーカディア帝国の王族の証である白髪を揺らしている少女、アイリ・アーカディアだった。

彼女は他の学院生たちとは違い制服を身に付けていた。

 

「アイリは制服なんだな。」

 

「ええ、私はこれでも兄さんとウィルフリッドさんへの人質ですからね。」

 

そう言われて笑うしかなかった。こんな自由な人質は世界広しと言えどアイリだけであろう。

二人は特に何も言わずに小屋へと入っていった。そこはもう何年も使われていないのか埃が舞い、蜘蛛の巣がそこかしろにあった。

 

「懐かしいですね。私と兄さんが初めてウィルフリッドさんに会った場所ですよ。」

 

そうだなぁ。と呟きしみじみとする。そう全てがここから始まった。アイリとルクスと出会い、笑い、王族としてアーカディア帝国を叩き潰すとルクスが決めた場所でもある。そして

 

「俺とニーナが初めてニーナの親に黙って抜け出してきた場所でもあるんだよなぁ。」

 

へぇ、と興味深そうにアイリがウィルフリッドの顔を覗き込んでいた。

 

「大した話じゃあないぞ。ニーナは親に逆らえないタイプの子供だったからよ。俺が無理矢理連れ出したんだよ。そしたらどうよ。アイツはっちゃけちまって俺がビックリしてよ。」

 

クスッと笑うアイリから視線を外しつつ部屋を見渡す。長年使っていないこの小屋はこの先もきっと誰も使わないだろう。

 

「なぁ、アイリ。俺が死んだら悲しむ奴はいんのかな。」

 

アイリは目を伏せ覚悟を決めたように目を開くと真っ直ぐとウィルフリッドの目を見つめた。ウィルフリッドもそれから目をそらさない。

 

「ウィルフリッドさんが思ってる以上にウィルフリッドさんに依存している人はいるんですよ。兄さんだってそうです。兄さんに依存している人がいるんです。」

 

アイリははっきりと言い切る。

 

「それはきっとウィルフリッドさんと兄さんがそういう優しい人間だからですよ。」

 

ウィルフリッドはそれを聞くとニヤリと笑った。

 

「俺が優しい、か。ルクスがともかく俺が優しいならこの世の男はみんな優しいな。」

 

そんな冗談を交えるとアイリが本気で怒ったように頬を膨らませる。それを見てウィルフリッドはアイリを撫でていた。





アイリちゃんがツッコミからヒロイン枠に足を伸ばして来た模様。



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