黒き英雄と竜殺し   作:souやがみん

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5話

どうしてこうなった?ルクス・アーカディアは頭を抱えていた。隣ではウィルフリッド・スタンジフォールが爆笑しているので忘れた頃に必殺の腹パンすることを心に決めつつ、もう一度地獄の舞台を見る。

そこにいたのはこの学院の全生徒と職員たちである。不安と楽しみが合わさったような顔をしている生徒が大半である。

 

「おう、ルクス。準備は良いか?」

 

そこに現れたのはきれいな金髪をサイドテールに纏めた少女で現在のこのアティスマータ王国の第一王女でもあるリーズシャルテ・アティスマータである。

 

「うん、なかなか似合うじゃないか。」

 

リーズシャルテがルクスの着ている服を引っ張る。今ルクスの着ている服はいつものボロではなくこの学園の制服を無理矢理男子生徒用にしたものだ。

 

「華々しいデビューだ。期待してるぞルクス!」

 

そんなリーズシャルテを見てルクスは落ち込む。こんなことならあの時頑張らなければ良かったと。

 

 

 

 

 

 

 

遡ること約一日前。

ルクスとウィルフリッドは学院長である、レリィ・アイングラムに呼び出されていた。急用とのことだったのでルクスは庭でいちゃついていたウィルフリッドを引きづりながら学院長室にやって来たのだ。

 

「で、何でいるんです?」

 

ルクスとウィルフリッドの後を追ってきたのかシャリスとノクトがそこにいた。まぁ、彼女たちはウィルフリッドを引きづっていたとき近くにいたから分からないことはない。

だが、1人確実にあり得ない人物がいた。茶色の髪を赤いリボンで纏めポニーテールにしている少女。シャリス、ノクトと同じ『三和音』の1人、ティルファー・リルミットだ。

 

「何でって・・・、匂い、かな?」

 

なんだか彼女はウィルフリッドと同じ匂いがすることを感じるルクス。多分彼女もウィルフリッドと同じキチガイなのだろう。ただし彼女、ティルファーはまだ隠せているからマシかも知れない。

 

「おい、ルクス。てめぇ、失礼なこと考えてるだろ。今度カーテンに繰るんで山の山頂から転がしてやろうか?」

 

やはりウィルフリッドはキチガイだ。

 

「もう、良いかしら?」

 

レリィが眉間に皺を寄せながら尋ねてくる。起こってンなぁとウィルフリッドが呟く。確かにその通りだ。この人は怒ると眉間に皺を寄せる。多分癖だから本人は気づいていない。

 

「そういや、依頼ってなんなんだ?レリィ。」

 

「ここでは学院長と呼んでねウィルフリッドさん。」

 

レリィの真顔の笑顔に黙りこむウィルフリッド。確かにこれは怖い。二人でひそかに恐怖を覚えているとリーズシャルテが何のそのと言った感じに口を開く。

 

「ご託はいらん、アイングラム学院長。さっさと用件を言ったらどうだ?」

 

リーズシャルテに急かされ頬に手を当てて考える。そしてま、いっかと呟いてから碇ゲ○ドウのポーズをとりながら言う。

 

「今日からルクス君をうちの生徒として迎えることが決定しました!はい、拍手!」

 

レリィ以外の全員が固まった。そして数秒後にはウィルフリッドかまルクスを拐って逃げ出していた。しかし、ドアの前には『三和音』達がいるため逃げることができない。かといって窓の方にはレリィ達がいる。

 

「ウィル、僕のことはもういいんだ・・・。君だけは生き・・て・・。」

 

「ルクスー!」

 

室内を凍えた風が通りすぎた。今は春先のはずなのにその室内にいた全員が寒さに震える。二人でそれを見たウィルフリッドとルクスは顔を見合わせて首を捻る。何でみんなは寒がっているのだろうかと。

 

「はぁ、あの二人はほっておいて話の続きをするとこの意見はリーズシャルテさんからの依頼のようなものよ。」

 

「リーシャ様の?」

 

ルクスがリーズシャルテの呼び方が愛称になっていることにウィルフリッドがニヤニヤする。それを睨むことで牽制しレリィにはなしを促す。

 

「最初はねここで雑用を引き受けてもらおうと思ってたんだけどリーズシャルテさんと、他の生徒がどうしてもっていうからつい。」

 

てへっ、と下を出しておどけるレリィ。その年でおどけても駄目だろう。という言葉を飲み込むルクスとウィルフリッド。しかし、言いたい。めっちゃ言いたい。ここでネタを挟みたい。

しかし、その空気もリーズシャルテがぶち壊していく。今度から彼女のことはKYって呼ぼうぜというウィルフリッドの小言を無視して聞き流す。

 

「ということだルクスよ。ついでに言うと転入生というのは初めてだからな。盛大にやらしてもらうぞ。」

 

高笑いをしながら部屋から出ていくリーズシャルテ。その手にはいつのまにかルクスが捕獲されておりひきづられていった。

ウィルフリッドはそんなルクスに合掌しつつ、あとで煽ることを心に決めてレリィへと向き直る。

 

「用件があれだけなら俺を呼び出す必要ないんじゃねぇの。」

 

意地悪く微笑むレリィ。駄目だ。レリィのこの顔はネタをしているウィルフリッドとルクスと同じ顔だ。ウィルフリッドは肩を落としつつちらっ、と後ろを向く。

シャリスが口笛を吹きながら目をそらす。ノクトがグッ、と親指をたてる。ティルファーが頭にはてなマークを浮かべる。何だ、ティルファーは知らんのか。

 

「ウィルフリッドさん、貴方にはここで戦技講師をしていただきます。拒否権はありませんし、これは王国からの依頼と受け取ってもらって構いません。」

 

あぁ、何だか本当に面倒な琴似なってきたなぁ。

 

 

 

 

 

 

 

 

そして時は今に至る。ルクスの紹介のあとはウィルフリッドの紹介と挨拶になるがほとんどの生徒はルクス目当てのはずだからとても気が楽なのがウィルフリッドだ。それに比べルクスは肩を落としている。

 

「はぁ、あんな大勢の女の人の前に出るなんて嫌なんだけど。」

 

「まぁ、ほとんどの女の子の目的はお前だろうしなぁ。」

 

はぁ、とまたひとつ溜め息をつくルクス。こうなれば腹を括るしかない。

会場がまるでアイドルのコンサートが始まったかのような歓声をあげる。その声も様々な者で「ルクスくーん!」だとか「結婚してー!」だとか「私とベッドに・・・。」等々、下ネタも所々に飛び交うルクスにとっての地獄になっていた。

 

「行ってくるよ。」

 

声が震えている。緊張からではない。あれは純粋な恐怖だ。ルクスの勇気に合掌しつつ、ルクスのある意味晴れ姿を眺めることに。

 

 

 

 

 

 

 

 

ヤバイヤバイヤバイヤバイヤバイ。ルクス・アーカディアは自分が大勢の女の人の前に立っていて、半分近くの人から好意の目を向けられるという前代未聞の事態に喜びではなく恐怖がうわまっていた。

 

「(アイリのおかげで女の人って怖いんだよなぁ。)」

 

ふとぐるっと見回すとアイリを見つける。そして彼女が何かを伝えるためにジェスチャーをしている。とても分かりやすかった。アイリはこう言っていた。

 

「何目立ってンですか?兄さん?言いたいことは山ほどあるのであとで私の部屋に来てくださいね。」

 

背筋が凍る。そして舞台袖にいるウィルフリッドに向けて目で合図するとウィルフリッドが疑いの目のまま観客を見渡しアイリを見つけると顔を真っ青にして逃走した。コレが機竜を素手で倒せる男とは思いたくない。

しかし、この状況。何か言わなければ終わらない。逃げるためにも先ずはこの舞台から降りなくては。

 

「は、初めましてルクス・アーカディアです。皆さん、よろしくお願いします。」

 

最後にニコッと笑う。すると前の方に陣取っていた女の人達数名がまるで目眩でもするように倒れた。そしてルクスは悟る。

ここは本気で不味い。常時ルクスとウィルフリッドのテンションだと言うことに気づいてしまった。

 

挨拶も終わったのでいそいそと舞台から降りようとする。すると舞台袖にはロープでぐるぐる巻きにされたルクスの師匠、ウィルフリッド・スタンジフォールが死んだ目をして、そこにいた。

 

「ルクス。俺はリアルにもうだめだ。外に出た所にバイクがおいてある。それで逃げろ。ここは本当に色んな意味でヤバイ。」

 

「その意見には激しく同意だよ。・・・、絶対助けに来るから。」

 

頼んだぜ親友。そう言いながらウィルフリッドは舞台へと歩いていった。

友の犠牲を無駄にしないためルクスは走った。あった、バイクだ。しかもウィルフリッドの愛車のWOLFだ。

 

「ウィル・・・。」

 

そして走り出した。何も見ずに真っ直ぐ。いつかウィルフリッドを助けることを心に誓いながら。

 

「残念だけど逃がさないんだなぁ。」

 

その声にびくっ、と肩を震わせて後ろを見る。そこにいたのは《ワイアーム》と接続しているティルファーだった。

 

「Yes、この状況で我々が貴方を逃がすとでも?」

 

《ドレイク》と接続しているノクトもいる。

 

「個人的にはウィルフリッドさんだけで良いんだが・・、ま、任務は任務だからな。」

 

シャリスもいた。『三和音』が総出でルクスの捕獲へと赴いていた。しかも機竜を装備している。それに比べルクスはWOLFに跨がっているためバハムートでさえ抜けない状況にある。

 

「(一か八かやるしかない!)」

 

そう覚悟を決めるといきなりアクセルを思いっきり回す。そして飛び出した先はシャリスだ。

 

「私なら抜けるとでも思っているのかい?」

 

「逃がしてくれればあとでウィルの連絡先教えるよ。」

 

バイクでシャリスの横を駆け抜け校門へと走り去る。やはりシャリスはウィルフリッドに惚れている。ウィルフリッドのおかげで助かったことに安堵しつつ校門を抜けて町へと続く一本道を行く。

やったんだ、僕は自由の身だ。そう思ったルクスの目の前を弾丸が通った。

 

 

「ま、まさか・・・。」

 

ギギギという擬音語よろしくの動作で首を向けるとそこには赤い機竜がいた。その赤い機竜は《ワイバーン》や、《ワイアーム》などの汎用機とは違い独自の装甲を持っている。

ルクスの背に冷や汗が滝のように流れる。そしてその赤い機竜と接続している少女が口を開く。

 

「ふふふ、ルクスよ。お前がそんなに馬鹿な奴だとは思ってもみなかったぞ。

まぁ、でも良いさ。これであの決闘の続きができるな。」

 

そう言ってリーズシャルテはとても笑顔だった。彼女を知らない人が見ても怒っていることが明白なほどに。

 

「ごめん、ウィル。僕ももうだめだ。」

 

諦めと共に弾丸が撃ち込まれWOLFが爆砕しルクスは気を失った。

そして気づけば前と同じくウィルフリッドと共に牢屋にいたのは言わなくても分かることだろう。






学院生、キチガイ化事件が勃発しました。
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