黒き英雄と竜殺し   作:souやがみん

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1巻終了ですね


8話

アビスを凪ぎ払う。《ワイバーン》では出力が足りずにできなかったことが《バハムート》なら余裕があった。背中から襲い来るアビスを視認してから行動を起こす。

 

「暴食!」

 

体が弾けるように動く。何よりも早くアビスの背に回り叩き斬る。浅く息を吐きながら何度も何度も暴食を繰り返し敵をアビスを切り落としていく。

 

「ルクス!此方はもういい。早く赤毛のヤクザを回収してこい。」

 

返事をするよりも早く飛び出す。《クリカラ》を使ったとなればそれは相当のピンチのはずだからだ。

邪魔をするように現れるアビスを切り落としながら進む。そしてたどり着くとそこは死が道溢れていた。四肢を切り落とされた機竜。それに乗っているパイロットは皆心臓を穿たれていた。さらに隊長機だと思われる《エクス・ワイバーン》の機竜は壁に埋もれ、接続している男の頭がなかった。

吐きそうになるのを堪えながら当たりを見渡すとシャリスとティルファーが仕切りに何かを、いや誰かを揺すっている。

 

「ウィルフリッドさん!ウィルフリッドさん!」

 

シャリスの悲鳴にも聞こえる声が辺りに木霊する。この辺りは完全にアビスが掃討されており敵の心配がないためルクスは《バハムート》を解除し彼女達に近づく。そしてウィルフリッドを見ると左手には《クリカラ》の機攻殻剣が握られていた。

 

「シャリスさん、ティルファー、ここは危ないから避難しましょう。」

 

そう言ってウィルフリッドを担ぎ上げシャリスとティルファーを立たせ少し離れた岩の陰へと移動する。岩にもたれかかるようにウィルフリッドを下ろすとシャリスが恐る恐るといった風に口を開く。

 

「一体、あの機竜は何なんだ?」

 

俯くルクス。言っていいか迷った末ルクスは意を決したように言った。

 

「これは神装機竜《クリカラ》。僕の《バハムート》と同じく5年前に帝国を滅ぼした時に使った機竜です。」

 

息を飲むシャリスとティルファーを無視しながらルクスは考えた。本当に言ってよかったのだろうかと。そして言ってしまったことで今後彼女達に危険が及ばないかと。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

なぁ、俺頑張ったかな?なにもない虚空でウィルフリッドは呟いた。きっと誰も聞いてはいない。しかしウィルフリッドは独りでに話続ける。

 

「家族を殺して、友達を殺して、彼女を殺した。そんな機竜を使っていて俺は本当に大事な物を守れんのか?」

 

それは誰に向けて投げ掛けたのだろうか。ウィルフリッドは自重気味に笑いながら自分の左手に持つ剣、機攻殻剣を目の前まで持ち上げる。

 

「なぁ、《クリカラ》。俺達は何処へ向かってるんだ?何をするためにこの世界に生まれたんだ?何のために俺は存在しているんだ?」

 

誰もが幸せな世界。それを目指して戦った。あの帝国を滅ぼした時も。あの時も俺は殺した。沢山の人間を。姉を、家族を、アイツを。

失って失って失った。何もかもを。それでも何かを守ろうと手を伸ばし、掴んだと思えば失う。そんな無限に続くようなループからどうやって抜け出せば良いのだろうか。

 

「誰でもいい。俺に生きる意味をくれ。そう思ったときだったな。ルクスやアイリに会ったのは。」

 

帝国を滅ぼす前に出会ったのがルクスとアイリだった。アイリの方は始めはかなり警戒していた。まぁ、帝国から追い出されているから仕方ないことかもしれない。だから、連れ回した。遊び方を教えた。

 

「そしたら面白いぐらいにアイリははっちゃけれるようになったんだ。」

 

そしてルクスは恐るべきスピードでウィルフリッドの技術を盗んでいった。それが嬉しくて彼らを守ると決めた。

 

「あぁ、そうか。何かをしなくてはならない、じや、ないんだ。何をしたいか、だったんだ。」

 

そう言うとウィルフリッドの目の前を光が包んだ。

 

 

 

 

 

 

 

 

目を開けると先ず天井が目に入った。そして横を見るとシャリスとティルファーが肩を寄せあい寝ている。逆側ではノクトが布団に顔を埋めて寝ていた。そして

 

「おはようございます、ウィルフリッドさん。」

 

「あぁ、おはよう。」

 

そして沈黙が生まれた。当たりを見渡すと《ワイアーム》と《クリカラ》、両方の機攻殻剣があることを確認し少し安心する。

 

「良かったんですか?」

 

アイリの消えそうな声に無理矢理笑顔を作りながら答える。

 

「良いんだよ。コイツらなら何も言わないさ。それに俺は後悔してない。だって守ることができたんだから。誰も死なずに帰ってこれたんだ。

それで俺の罪が増えるだけなら安い買い物さ。」

 

「そう思っているのはウィルフリッドさんだけですよ。」

 

何も言わずただ、アイリの目を見る。彼女の目には涙が溢れそうになっていた。それを見てウィルフリッドは口を紡ぐ。

 

「シャリスさんや、ティルファーさん、ノクトやクルルシファーさん、そしてリーズシャルテさんや、兄さん、それに私だって心配です。それに私たちのためにウィルフリッドさんの心を削っていくなんて私は嫌です。]

 

最後は少し泣いていた。あの日を後悔していない。アイリは2年ほど前に言われたこの言葉に引っ掛かっていた。

きっと彼は身内のために自分の命も厭わない人だとそう思っている。ならそんなことをさせないためにも強くなくてはならない。アイリは言う。

 

「人は誰も1人では生きていけないんです。私たちじゃ頼りないかもですけど頼ってほしいです。]

 

消えそうな笑みを浮かべながら彼女はそう言いきった。

 

「前にも言ったかもだけどさ。アイリは強いよな。俺なんかとは違ってさ。]

 

目を見開くようにウィルフリッドを見つめるアイリ。それを真っ直ぐに受け止めがらウィルフリッドは口を開く。

 

「はじめてお前ら兄妹と会ったときもそうだった。ルクスはそれなりに心を開いていたけどアイリは警戒してたもんなぁ。]

 

恥ずかしそうに俯くアイリの頭を撫でながらウィルフリッドは話を続ける。

 

「でも、それがアイリの強さだったんだろうな。ルクスを守るため、たった1人の肉親のためにお前は俺を警戒し続けた。まぁ、俺がスパイなんかできっこないって分かるまでは時間かかったけどな。」

 

「それは言わないでください。」

 

本当に恥ずかしかったらしく俯いてしまう。それを見てウィルフリッドは笑いながらアイリの頭を撫でた。

 

「きっと俺はそんなお前達のタメに何かしたかったんだと思う。

家族を、友達を、自分の彼女までを殺した俺が言うのはおかしいけどさ。」

 

アイリはその言葉を黙って聞いていた。そしてウィルフリッドの胸に額を当てる。そっと寄り添う。それだけでアイリはウィルフリッドを救えると思っていた。

例えそれが自己満足であろうとこの時だけはウィルフリッドに甘え、甘えられたい。そんなことを思いながら。

 

「ありがとな。」

 

ウィルフリッドの優しい言葉にアイリの顔が真っ赤になりのぞけるように離れる。

 

「あの、その、ごめんなさい!」

 

そう謝ってアイリは保健室から出ていった。中々に騒々しかったからかモゾモゾと『三和音』の3人が目を覚ます。少し寝ぼけ眼の三人に笑いかけながらウィルフリッドは自分が守った世界を噛み締めた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「なんで、なんでウィルフリッドを使ってこんなことを。」

 

ルクス・アーカディアが自分の体に鞭を打つように力を入れて立ち上がろうとする。しかし、暴走寸前まで戦っていたルクスに立ち上がる力はなかった。

 

「いやいや、お前には助けられたよ賢弟よ。」

 

フードを被った男、フギルが表情は見えないがそれでも嬉しそうに笑っていると分かる声で語りかけてくる。

 

「お前のお陰で死人は減ったよ。わざわざウィルフリッドを暴走させて皆殺しにするハメにならずにすんだからな。」

 

遠くで爆発が起こる。きっと今町の中も戦火に飲まれている。その状況の中でフギルは大胆にも笑っていた。自分がしたことに対する責任をまるで持たないかのように。

横を見ると頭がない死体がそこらじゅうに転がっている。元凶はフギルの後ろにたつ灰色の機竜だった。その機竜に乗る男、ウィルフリッド・スタンジフォールは何時もの琥珀色の目ではなく青い目をしている。

 

「おい、フギルだったか?次はどいつを殺していいんだ?早くしないとコントロールが本人に戻っちまうぜ。」

 

ルクスが目を細める。今この状況をきっとウィルフリッドは求めてはいない。ならばウィルフリッドさえ元に戻ればこの殺戮は終わる。

痛みに震える足を、体を無理矢理起こし《バハムート》を起動する。

 

「まだ、そんな元気があるのか?そんなことをしても無駄だ。ウィルフリッド・スタンジフォールはお前の知るウィルフリッド・スタンジフォールでない。

自らの機竜《クリカラ》に完全に飲まれているからな。」

 

「僕はウィルを救う。それがこの戦いを終着させるタメに必要だから。」

 

目頭を抑えフギルが高らかに笑う。それも楽しそうに。それを見てルクスはフギルに明らかな殺意を抱いた。戦いを楽しむことを否定しはしない。だが人を殺しそれを笑いながら見ている男が許せなかった。

地面を蹴りフギルに本物の殺意を乗せながら手に持つ剣を振る。取ったと思った剣は止められていた。そして止めていたのはウィルフリッド、いや《クリカラ》だった。

 

「何で邪魔するんです?《クリカラ》には彼の死は関係ないはず。」

 

「ところがどっこい、そうもいかないのがこの世の困ったところだ。」

 

お互いそれ以上の言葉はなくなく再び地面を蹴る。振りかぶり思いっきり振り下ろしたルクスの剣を《クリカラ》は剣を斜めに当て全ての威力を逃がす。

振り下ろした反動で隙のできるルクスに《クリカラ》は膝を叩き込もうと足をあげる。

 

「暴食!」

 

ルクスは《バハムート》の神装で辛くも回避すると距離を取る。強い。確実にルクスよりも。ただ何時もより技の切れがなかった。

 

「君はやっぱりウィルじゃない。」

 

「まぁ、そうだわな。」

 

軽い声に軽く怒りを感じる。ウィルフリッドは《クリカラ》のやったことは自分の罪だと言う。

 

「僕はウィルを救う!」

 

「ははは!やれるもんならやってみなぁ!」

 

黒と灰がぶつかり死闘が始まった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

ベッドから起き上がりルクス・アーカディアは呟いた。

 

「《クリカラ》、あの機竜は一体何なんだろう。」




やっと次からはクルルシファーさんだよぉ。

早く金髪巨乳のセレスティア先輩をだしたいよぉ。
あ、アニメはフィルフィが覚醒しましたね。
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