何回でも言いますがこれは小説を読んでいることを前提に書いていますので質問点あれば感想にでも書いてください。
「ねぇ、ウィル。どうする?このままじゃ僕ら死ぬよ。」
「そうなんだよなぁ。でも俺らってどっちかって言うとアウェーじゃん。勝ち目ないんだよなぁ。」
学院内を走る走る走る。後ろは絶対に振り返らないとウィルフリッドとルクスは心に近いながら走っていた。
「待ってー!」
「ルクスくーん!」
「ウィルフリッドさまー!」
多種多様な女の子が機竜と接続した状態で追いかけてきている。できるだけ後ろを見ないように走っていたウィルフリッドとルクスは追ってくる女の子達の殺意にも似た何かを感じる。
これまでに校舎の中を走ったり、グラウンドや、プールの方へ逃げたりと延々と逃げているが撒けない。撒けないどころか人数が増えていっている始末である。
「学院から抜け出せば確実なんだけどなぁ。」
当然、レリィからの命令によりそれは出来ない。ルクスはここの生徒でウィルフリッドは教師だ。仕事でここにいる以上失態は出来ない。
「ルクス、取り合えず二手に別れよう。んでもって、一時間逃げ切れたら再会しよう。」
全力で走りながら握手を交わしルクスは左へウィルフリッドは右へと逃げていく。
どうしてこうなったのか。ウィルフリッドはルクスと別れて逃げながら思考を半分そちらに傾けた。
約30分前
ウィルフリッドとルクスは学院長であるレリィ・アイングラムからの招集を受けて学院長室へと来ていた。そして部屋にはいった瞬間にウィルフリッドは嫌なものを見たような顔でルクスとアイコンタクトを取るとルクスも疲れたように学院長室へと入った。
「いらっしゃい!ウィルフリッドさん、ルクス君。」
笑顔のレリィとその後ろに騎士のように立つ、ライグリィ教官。そして目の前のソファにはリーズシャルテが座っている。そしてその後ろに少し頬を赤く染めているシャリスと何時も通りの無表情のノクト。そして笑いをこらえているティルファーがいた。
「学院長、話ってのは?」
このメンバーを見て良いことがないことを悟ったウィルフリッドが手短に話を終わらせようと切り出した。しかし、レリィはそんなことお構いなしに自分のペースで話を進める。
「何でだと思う?」
「分かりません。」
間髪いれずにルクスが答える。その答えに少しレリィがずっこけるがなかったことにしててを頬に当てながら話始める。
「実は今日貴方達を呼んだ理由はこれよ。」
そう言ってレリィとライグリィ教官の二人がかりで取り出したのは大きな箱いっぱいに入った紙だった。
「これ全部貴方達への依頼なのよねぇ。しかも9割方が学院生なのよねぇ。」
背中に冷や汗が流れる。ルクスが明らか様にいやな顔をしており、ウィルフリッドにいたっては舌打ちをしている。しかし、そんなことをしても何も変わらないとわかっているからこそルクスは口を開く。
「で、僕たちに全部こなせってことですか?」
違う違うと手を振りながらレリィが笑う。それを不思議そうに見るルクスとウィルフリッドを見ながらレリィの笑みが徐々にいたずらを仕掛ける子供の笑い方へと変わっていた。
いやな予感のするルクスが逃走しようと扉に手をかけるとレリィが高らかに宣言した。
「ただいまよりルクス・アーカディア、ウィルフリッド・スタンジフォールの捕獲大会を開催しまーす。捕まえた人にはウィルフリッドさんか、ルクス君を1週間自由にできる権利を与えます。
ちなみに追いかけるときはウィルフリッドさんとルクス君が死ななければ何でもありだからね。」
どこから取り出したのか手にはマイクが握られている。これで分かったことは全校生徒に知れ渡ったということだ。
「ちっ、レリィめ!いつか腹パンを叩き込んでやる。」
捨て台詞のようにウィルフリッドが呟くと同時に扉を開くともう生徒たちが待ち受けていた。
見つけたー!と叫ぶ彼女達の突進を避けるためウィルフリッドは壁に拳を叩き込み逃走を開始した。
大きく穴の空いた壁を見ながらレリィは呟いた。
「流石に校舎を壊すのはねぇ。」
そして今に至る。
目の前から不意に現れた少女を目線だけで視界から自分を外す。その隙に少女を抜き去る。
この技術をミスディレクションという。本来は手品等のたねを見せないようにするためのものであるが戦闘にでも役立つ。
「それにしてもほぼ全校生徒じゃないのか?」
ミスディレクションを使いながら何人も避けているが一向に減るように思えない。それどころか増えている始末である。
待ち伏せ覚悟で自分の部屋へと向かうと誰も居なかった。逃げているのに自分の部屋へと戻るとは誰も予測していなかったようだ。
「取り合えず撒いたか。ちくしょうレリィのやろういつか絶対とっちめてやる。」
心に固い決意を抱きながら扉を開くとそこには青髪の少女がウィルフリッドの布団上に座っていた。名前は確か、とウィルフリッドが思い出そうとしていると少女が口を開く。
「ウィルフリッドさん、生徒の顔を忘れたのかしら?」
挑発するような物言いに何時もならネタで怒るところだが今はそんな気にもなれなかった。
「忘れてねーよ。クルルシファー・エインフォルクだろ?」
ふふ、正解。と呟く少女を見下ろすように立ちながら彼女を見る。よく見ると学院生が機竜と接続するときに着ているスーツを着ていた。
まずいと直感的に理解したウィルフリッドが逃げようと一歩下がるとクルルシファーが立ち上がる。それを見てさらにヤバイと感じたウィルフリッドは走ろうと後ろを向くと腕を捕まれた。
「えーと、クルルシファーさん?まさか貴女もです?」
恐る恐る聞くとクルルシファーはにっこり微笑んでいた。
まだ、腕を捕まれているだけなのでどうにでもなるとはいえ相手は年端のいかない少女。それに彼女はウィルフリッドの教え子にあたる。投げづらい。彼女はそれをわかってかゆっくりと此方へと近づいてくる。そしてウィルフリッドの腕を抱くように回り込むと耳元で呟いた。
「もう時間終了よ。」
その言葉と同時に終了を告げるチャイムがなる。多分ルクスはリーズシャルテかルクスの幼馴染みであるフィルフィ、もしくはアイリ辺りに捕まっていることだろう。
「ははは、モテる男は辛いねぇ。」
使い古されたネタを挟みながらウィルフリッドは肩を落とした。そして覚悟を決めたようにうし、と気合いをいれるとクルルシファーへと向き合う。
「んで?依頼は何なんだ?《クリカラ》と模擬戦は駄目だからな。」
足早に言うとクルルシファーがクスッ、と笑う。大人びたイメージのあるクルルシファーがそう笑ったからか少しドキッとなったがそんなことはクルルシファーの台詞でウィルフリッドの中から消え去った。
「1週間、私の『恋人』になってほしいの。」
『恋人』の依頼を受けた次の日の昼休みウィルフリッドはクルルシファーに呼ばれて食堂へと顔を出していた。ルクスには事情を説明するとかなり可哀想な目でこちらを見ていたので腹パンで沈めて来たところだ。
「此方よウィルフリッドさん。」
席に座ったクルルシファーが大きな声で呼ぶのが聞こえた。ちょっとやめてくれよライグリィ教官がめっちゃ睨んですよ!と心のなかで叫びながらクルルシファーも元へと向かう。
「ちょっとクルルシファー嬢、辞めてくれない?学院の中は。俺この後きっと質問攻め、言葉攻め、身体的虐待を受けちゃうよ?」
今のをボケと勘違いしたのかクルルシファーはクスクス笑っていた。しかし、ウィルフリッドにとっては笑い事ではない。しかし、何も聞いてくれそうにないので諦める。
「今日はお弁当作ってきたから食べて?」
「やっぱり言葉攻め、質問攻め、身体的虐待を受けてでもここへ来ます。という事で明日からもよろしく!」
女の子の手料理、もうそのワードだけで弄られるのを我慢できる。それがウィルフリッドという男だった。
また、笑うクルルシファーを見ながらハンバーグを口の中へと放り込む。上手い。食レポは出来ないが取り合えず上手い。
「どうかしら?」
やや、上目遣いのクルルシファーが質問してくるがウィルフリッドは食べるのに精一杯でクルルシファーの方を見ずに答える。
「超上手いです。」
その言葉で満足したのかクルルシファーは微笑みながら頬に手を当てながらウィルフリッドを見つめていた。