悪をぶっとばす青年探偵×2   作:ルシエド

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翔太郎の中の人のお気に入りの仮面ライダー、その変身者の名前は南"光太郎"です


Kの者達/仮面ライダー

 黒い学ランを着た青年は、ニカっと笑って拳を構える。

 その笑顔には、底無しのバカのみが持てる輝きが宿っていた。

 誰もが困難との衝突や大人になる過程で失っていってしまう、真っ直ぐな輝きが宿っていた。

 

「女の人を守ろうとしてる男。

 怯える女の人。

 物騒なこと言いながら迫る怪物。なら、決まりだ。お前らが悪党だな!」

 

 玖珂光太郎と名乗った青年は、極めてシンプルな在り方を口にする。

 

「この……ガキが!

 ぼく達はこれからこの男を殺さねばならんのだ! 邪魔をするな! お前から殺すぞ!」

 

 緑のドーパントが、光太郎を恫喝する。

 橙のドーパントは無言のまま、じりじりと距離を離していた。

 

「危ねえぞ坊主。こいつらが悪党だろうってのは同意見だが……

 なら、そういう悪党と戦って街を守るのは、俺の役目だ」

 

 翔太郎もまた、光太郎の拳の威力に驚きつつも、光太郎の身を案じて下がらせようとする。

 光太郎の登場に三者三様の反応を見せる、男達。

 

「人様に迷惑かけるのを何とも思ってなさそうなのが悪党。

 そいつから何かを守ろうとするのが正義の味方。なら、あんたは正義の味方だろ?」

 

「あん?」

 

「怪物相手なら、手助けが要るんじゃないか?」

 

 光太郎の言葉に、翔太郎は面白そうなものを見る目で光太郎を見る。

 

「いーや、俺一人で十分だ」

 

 翔太郎が腰にドライバーを当てると、ドライバーからベルトが展開され、彼の腰に固定される。

 

《 JOKER! 》

 

 更に手にしたガイアメモリを操作すれば、翔太郎の手の中で黒紫のメモリが叫んだ。

 

「変身」

 

 ドライバーに刺さるメモリ。

 『変身』の一言と共に、変わり始める翔太郎の身体。

 

《 JOKER! 》

 

 メモリの音声に驚いて光太郎が振り向いた瞬間、翔太郎の姿は変わる。

 ほんの一瞬。

 ほんの一瞬で、翔太郎は黒と紫を基調にした『仮面ライダー』に姿を変えていた。

 

「な……なんじゃそりゃ!? かっけー!」

 

「俺は仮面ライダー、ジョーカー」

 

 変身を終えた翔太郎は、驚く光太郎の横に並び立つ。

 そして左手をスナップして、二体のドーパントを睨みつけた。

 

「下がってな坊主。こっからは、俺の出番の風向きみてえだ」

 

「足手まといにはならねーよ。でっかい船に乗ったつもりでいいぜ!」

 

「ったく」

 

 変身した後の翔太郎には、変身前の翔太郎には見えていなかったものが見えていた。

 玖珂光太郎の右拳が纏う『青い光』である。

 ガイアメモリの力が、翔太郎に"それ"を見る力を与えているようだ。

 

 変身前は見えなくて、変身後には見える光。

 そんなものを纏っていたとなれば、翔太郎が光太郎を見る目も変わる。

 翔太郎は変身していない人間の耐久力をちょっと心配するも、振れもしない剣を引きずりながら生身でトリガー・ドーパントに挑んだ人間を思い出し、光太郎の参戦を受け入れていた。

 

「遅れるなよ、コータロー!」

「おう、ジョーカー!」

 

 光太郎は橙の敵を。

 翔太郎は緑の敵を。

 それぞれに狙い、戦いを挑む。

 

「てめえら、財団Xか? それともミュージアムの残党か? それとも別の何かか?」

 

 目も無く、口はあるのに言葉も無い、そんな橙のドーパントにジョーカーの拳が飛ぶ。

 ドーパントはガードでその拳を防ぐが、ジョーカーはすぐさま打撃を投げに切り替えた。

 拳が当たるはずだった場所に、当たる掌。殴る拳を掴む掌に変え、ドーパントがガードに使った腕を掴み、ジョーカーは綺麗な投げを決めた。

 路面に叩きつけられ、呻き声を上げる橙色のドーパント。

 

「まあいい。叩きのめしてから、全部吐かせてやる!」

 

 ドーパントは立ち上がりながら、起き攻めを仕掛けて来るジョーカーを見て、ジョーカーの顔面に拳を放つ。

 しかしジョーカーは橙の腕を取り、極める。

 関節技がドーパントの腕を取り、折るにこそ至らなかったが、その腕を使い物にならない状態にさせる。ドーパントが、苦悶の声を漏らした。

 ジョーカーはそこから、関節を極めたドーパントの顔面を踏みつける。

 

「らぁッ!」

 

 続く攻防。

 橙のドーパントは地味であっても確実に、かつ一方的にダメージを与えられている現状をひっくり返すため、全身から橙色のエネルギーを放出・爆発させる。

 ジョーカーはあえなく浮かされ、吹っ飛ばされてしまった。

 しかしジョーカーは空中で姿勢を整え、吹っ飛ばされた先にあった街路樹を踏み、木に足を着けると同時にジョーカーメモリを手に取る。

 そしてマキシマムスロットに突き刺し、メモリの力を最大限に開放した。

 

《 JOKER! MAXIMUM DRIVE! 》

 

 同時に、木のしなりとジョーカーの脚力を重ね合わせて跳躍。

 一直線にすっ飛んで行って、橙のドーパントの胸に強烈な飛び蹴りを叩き込む。

 

「ライダーキック!」

 

 叩き込まれたエネルギーがドーパントの内部に染み、人体と融合していたガイアメモリの力のことごとくを粉砕し、暴走したエネルギーが、大爆発を起こした。

 左手をスナップするジョーカーの背後で、広がる爆炎。

 爆炎が消えれば、そこには少し怪我をしただけの人間が転がっていた。

 

「……こいつ……ドーパントに変身してたこいつが着てた服……

 加頭順と同じ、財団Xの野郎が着てた服か? キナ臭くなってきやがった」

 

 砕けた"O"のメモリに、財団Xの代名詞の一つである白いスーツ。

 敵の正体に当たりをつけつつ、翔太郎は光太郎の方の戦いを見た。

 

 

 

 

 

 緑のドーパントはツルを伸ばす。葉を飛ばす。枝を突き出す。

 その攻撃の全てが植物を使ったものでありながら、鋼鉄をも裂く威力を持つ。

 なのに。

 どの攻撃も、玖珂光太郎には届かない。

 

「お前、お前、お前……何者なんだ!?」

 

「俺の名前は玖珂光太郎! さっき名乗ったろ、この悪党!」

 

 光太郎の両の拳には青い光が宿っていた。

 それは拳撃のたびに緑のドーパントが放つ攻撃を叩きのめし、粉砕する。

 ただひたすらに敵の攻撃を殴り落としながら、光太郎は一直線に敵へ向かって駆けていた。

 

 ただ真っ直ぐに突き進むバカは、敵からすれば恐怖の一言だろう。

 殺すつもりで攻撃を放ったのに、光太郎は止まらない。

 一旦動きを止めようと考えてから攻撃しても、光太郎は止まらない。

 とにかく物量を叩き込まねばと連射連打を繰り返しても、光太郎は止まらない。

 こっちに来るな、来ないでくれと、祈りながら攻撃しても、光太郎は止まらない。

 

 全ての攻撃を"無駄な足掻き"と化しながら、光太郎はドーパントの目の前にまで辿り着く。

 

「来るなぁ!」

 

 緑のドーパントが植物を根を模した槍を突き出し、光太郎が頭を下げてそれを避ける。

 

「行くかどうかは、俺が決めんだよ!」

 

 そしてカウンター気味に、ドーパントの腹に、青い光を纏わせた右拳を叩き込んだ。

 

「そんでもって! 悪党を殴るかどうかも俺が決める!」

 

 拳の衝撃と、青い光がドーパントの胸に叩き込まれる。

 

「か、はっ……」

 

 光太郎の拳の一撃は、人体と一体化していたガイアメモリだけを、見事に粉砕していた。

 

「うしっ」

 

「おいコータロー!? 今お前、素手でメモリブレイクしたのか……!?」

 

 先に戦いを終えていた翔太郎が、驚きながら光太郎の腕を掴み上げた。

 メモリブレイクは人を殺さず、その力だけを壊すガイアメモリ破壊の行為であり、ガイアメモリがあれば誰でも使えるというものでもなく、ましてや素手でできるものでもない。

 ただのパンチで、人を殺さずその力だけを殺すことなど、できるわけがないのだ。

 

 しかし、玖珂光太郎にそんな理屈は通じない。

 彼の拳は心の拳。

 悪党ならば殴って倒す、良い奴が間違えた時は殴って正気に戻す、そんな"当たり前"を尋常でない形で実現させる想いの拳である。

 

「メモリブレイク? なんだそれ?」

 

「いや、そもそもお前は何者なんだ?」

 

「俺の名前は玖珂光太郎! 悪をぶっとばす青年探偵! あんたは? ジョーカー」

 

「む……俺の名前は左翔太郎。ハードボイルドな青年探偵だ」

 

「お、俺と同じ探偵か!」

 

「そういうお前も探偵か!」

 

 一見噛み合っていないようでこの上なく噛み合っている二人の会話を見ながら、雪絵は呆けた口調で言葉を漏らした。

 

「凄い……圧倒的だった……」

 

 彼女は怪物を倒すHERO達のあまりに圧倒的な戦いを見て、少しばかり、左翔太郎と玖珂光太郎という人間に対して抱いていた第一印象を、改めていた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 玖珂光太郎は、とある世界で自分の街を守るために戦った青年だ。

 "街を守るために戦う"という意味では、極めて翔太郎に近しい存在と言える。

 彼は戦いの最後に、東京に落ちそうになっていた空中要塞(ねじれた城)を落とさないため、城を連れて別の世界へと旅立って行った。

 

 そうして光太郎は、自分の世界から遠い世界に城をポイ捨てし、ポイ捨てという名の封印を施してから自分の世界に帰ろうとしていた。

 玖珂光太郎は世界を渡る。

 世界を渡り、帰路の途中で修行をこなし、自らを鍛え上げていく。

 翔太郎達の世界に居るのは、自分の世界に帰る途中に、ちょっと足を止めただけだという。

 

 一言でまとめてしまえば、玖珂光太郎は異世界から来た街を守る青年探偵。

 風都を守る探偵ではないが、それでも翔太郎が奇縁を感じる男であった。

 翔太郎&光太郎は、メモリブレイクで気絶した男達を縛り上げつつ、互いの身の上を語りつつ互いが持つ情報を交換していた。

 

「悪をぶっとばす青年探偵……いいな、格好良いな」

「ハードボイルド……いいな、格好良いな」

 

「だろ?」

「だろ?」

 

 しかもこの二人、妙に気が合った。

 

「俺は街を守る仮面ライダーで……」

「俺は街を守る正義の味方で……」

 

「……」

「……」

 

「「 街を愛してる奴に悪い奴は居ないな、うん 」」

 

 左翔太郎とフィリップが、真逆のタイプが噛み合った最高のコンビであるのなら。

 左翔太郎と玖珂光太郎は、初対面から親友になれるタイプのコンビであった。

 

「ジョーカー、あんたいい帽子被ってるな」

 

「お? そうか? この帽子、お気に入りでな」

 

「俺に探偵のイロハを教えてくれるオッサンの所長が居てさ。

 その人がやたら帽子の似合う探偵なんだよ。

 だから俺は知ってるんだ。帽子が似合う探偵に、悪い奴は居ないってさ」

 

「―――!」

 

 帽子が似合う男、と言われて翔太郎も悪い気はしない。

 ちょっと、というかかなり嬉しそうだ。それを顔に出す当たりが実にハーフボイルドである。

 しかも『帽子が似合う』『探偵の師匠』『探偵事務所の所長』と聞けば、翔太郎は色々と思い出して"重ねて"しまう。

 

「……その所長は、まだ生きてるのか?」

 

「? そりゃ生きてるけど、どうかしたのか?」

 

「いや、大事にしろよ。そう言いたかっただけだ」

 

 翔太郎と光太郎は、何を話しても話が弾んでしまいそうだ。

 この二人にない細やかな空気読みスキルを発揮した雪絵は、このままだと話が明後日の方向に行ったまま何時間も帰って来ないこともあり得ると思い、二人に話を振る。

 

「あの、それでこのドーパントに変身していた人達、どうするんですか?」

 

「照井……俺の知り合いのデカに連絡しておいた。その内連行されるはずだ」

 

「そうですか」

 

 ほっと一息つく雪絵。安心した様子の雪絵をよそに、翔太郎は緑のドーパントに変身していた方の男の頬を、ビンタし始めた。

 

「おい起きろ。起きろ! いつまで寝てやがる!」

 

「気絶したまんまにしておかないのか? ジョーカー」

 

「尋問だ尋問。こいつらが財団X絡みだと、情報の速さが命取りになりそうだからな」

 

 最初はペシペシと、途中からビシビシと、最終的にバチンバチンと頬を叩く段階になって、ようやく緑のドーパントになっていた男は目を覚ます。

 

「うーんうーん……痛い痛いぼくちんMじゃないっす……って仮面ライダー!?」

 

「おう、仮面ライダーだ」

 

「それにさっきのこわいガキ!? って、ぼく縛られてる!?」

 

「俺の名前は玖珂光太郎! ってこれ三度目だな……」

 

「お前もいちいち名乗らなくていいんだよ、コータロー。

 おいお前。なんで俺達を襲った? 目的は? 作戦は? 他に仲間は居るのか?」

 

「はいはいはいはいなんでも喋りますッ!」

 

「……財団Xのやつっぽくない口の軽さだな。お前本当に財団Xか?」

 

「しょうがないじゃないですかぁ!

 ぼくらアイン様と一緒にセプテントリオンから来たばっかなんですから!」

 

「セプテントリオン~?」

 

 異様に口が軽かった敵が口にした『セプテントリオン』という言葉に、彼らが見せた反応も三者三様。雪絵は一から十まで話についていけていないため表情は変わらず、翔太郎は聞き覚えのない名前に首を傾げ、光太郎は聞き覚えがあったが覚えておらず、思い出そうともしていなかった。

 

「はい、セプテントリオンです、はい。

 財団Xの上位組織みたいな感じです、はい。

 白と呼ばれる者達が中心になって出来た組織で、トップは白の白と呼ばれています。

 財団Xの白いスーツは、セプテントリオンに敬意を表したものであるとか聞いています、はい」

 

「……おいマジで勘弁してくれよ……財団Xの後ろ盾とかなんだそりゃ」

 

 翔太郎は現状でも財団Xを倒せる見込みが無いというのに、それより更にデカい巨悪が見えてきたことにクラっとするが、話を続けさせる。

 

「一つの街を影響下に置ける規模の組織がミュージアム。

 複数の国に跨って一つの星を影響下に置ける規模の組織が財団X。

 複数の世界に跨って影響を及ぼす規模の組織がセプテントリオンです。

 あの、これだけ喋れば、せめてぼくだけの命は助けてくれますよね? ね?」

 

「命乞いは後にしやがれ。……おいおい、話の風向きが怪しくなってきやがったな」

 

「おいジョーカー、他の世界があるってのは本当だぞー」

 

「ああ分かってるっての。コータローのその辺の話信じてっから、俺は頭抱えてるんだよ」

 

「翔太郎さん、私はずっと頭を抱えています」

 

「そうだよな、雪絵さんの記憶も取り戻さなきゃならないんだよなぁ……!」

 

 翔太郎は一人で踏ん張らないと、と思いつつも、けっこういっぱいいっぱいだった。

 

「それでですね、ぼくら仮面ライダーを血祭りをあげようって計画を立てていまして」

 

「あぁん? 俺を血祭りぃ?」

 

「ひぃ! すみませんすみません!

 でも仮面ライダーを殺せばウチのトップのアイン様が出世させるって約束だったんです!

 でも玖珂光太郎さんが現れたことで、当初予定してた作戦は全部おじゃんになっててですね!」

 

「作戦ねぇ」

 

「まずは俺達二人のオーマ・ドーパントで仮面ライダーの足止めをしまして!

 狭い所に追い込んでオーマ・ドーパントを三人追加して!

 それで五人で痛めつけた後アイン様がトドメを刺すって感じで!

 あ、オーマメモリは使用者の個性に応じて違う特性を発揮するんです!

 それでアイン様が出世すれば、アイン様はこの世界の管理権と必要な力を貰えるって話で!」

 

「……何? 世界の管理権だと?」

 

「睨まないで睨まないで!

 それに必要な人材とか、武器とか兵器とか貸して貰えるって話で!」

 

「第一なんだ、そのアイン様ってのは?」

 

「アイン様は―――」

 

 翔太郎が敵のボスの素性を聞き出そうとした、その時。

 ペラペラと喋っていた緑のドーパントの変身者と、気絶したままだった橙のドーパントの変身者が、その喉と心臓を遠距離から貫かれた。

 

「何!?」

 

「……ぁ」

 

 狙撃だ、と気付いたその瞬間、翔太郎と光太郎は跳んで雪絵を守る位置に立つ。

 遠方のビルの屋上に黄、赤、黒のオーマ・ドーパントが見えた。

 狙撃の下手人はあの三体のドーパントと見て間違いはあるまい。

 

「喋りすぎだ」

 

 赤のドーパントが発した言葉に、翔太郎と光太郎は不快感に顔を歪める。

 あの三体のドーパントは、仲間を殺したのだ。

 それも、緑のドーパントの変身者を、自分達にとって不都合な存在になったというだけで。橙のドーパントの変身者を、自分達に不都合な存在に"なるかもしれない"というだけで。

 躊躇いも後悔もなく、仲間を殺したのだ。

 

「ジョーカー! 口封じだ! 悪党の得意技!」

 

「分かってる!」

 

 敵ドーパントの出現に、翔太郎は反射的に変身した。

 

「変身」

 

《 JOKER! 》

 

 仮面ライダージョーカーになった翔太郎と、両の拳に青い光を宿した光太郎が、雪絵を攻撃させないように立ち回りを選ぶも、ドーパント達は攻撃を仕掛けて来ない。

 怪訝そうに警戒を続ける翔太郎と光太郎の背後で、雪絵が恐る恐る口を開いた。

 

「どうしたんでしょうか? 姿を見せるだけ見せて、こっちにも来ないで……」

 

「案外、ボスの到着を待ってたりして」

 

 雪絵の疑問に、光太郎がおちゃらけて答えると、翔太郎が交差点の向こう側を見て目を細める。

 

「……お前の予想、大当たりみたいだぜ、コータロー」

 

 園咲琉兵衛。

 加頭順。

 大道克己。

 左翔太郎が今日まで戦って来た男達の中でも、とびっきり強い男達のみが持っていた存在感。

 それを持つ若い男が、一人の女性を連れて、そこに立っていた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 男は、心の歪みが顔に出ているような男だった。

 卑屈な人間、いやらしい人間の性格が、顔に出るのと同じだ。

 その男は顔つきにも、その顔に浮かぶ表情にも、歪みが現出している男だった。

 

 女は、心の無さが顔に出ているような女だった。

 人間であるのは確かなことなのに、どこか"不気味の谷"にすら見える。

 無表情過ぎて、顔が動かなすぎて、それが人間であるかも怪しく思える女だった。

 

 そして二人とも、財団Xの白いスーツを身に付けている。

 男は交差点の向こうで暇潰しと代わりに指を鳴らし、翔太郎達三人が自分の存在に気付いたことを認識すると、おぞましく笑った。

 

「にひっ」

 

 左翔太郎は身構える。

 玖珂光太郎は拳を構える。

 須藤雪絵は少し怯えた。

 その笑顔は一般人ならば、恐怖を感じて当然のもの。

 そして多くの戦いをくぐり抜けた戦士には、"こいつはとてつもない被害を出す"と直感させる笑顔だった。どこか頭のネジが外れた狂人だけが、浮かべる笑顔だった。

 

「俺の名はアイン。この女の名はツヴァイ」

 

「てめえか、あいつらの親玉は」

 

「その通り」

 

 アインと名乗った男はおぞましく笑う。

 遠くのビルの上で、静観を貫くドーパント達。

 男の背後で、何の感情も見せずに佇むツヴァイという女。

 どれもこれもが、不気味だった。

 

「俺達に血の繋がりはないが……人は俺達のことを、『地獄兄妹』と呼ぶ」

 

「地獄、兄妹……」

 

 アインは『R』のメモリを手にし、眉間のコネクタに突き刺した。

 

「始めようか、仮面ライダー。お前達の最期を」

 

《 RETURNS! 》

 

 そして、その体を怪物と化す。

 その姿はまさしく怪物にして人形。

 ガラスのように透明で、どこにも起伏のないマネキンのような姿。

 特徴をとことん排除した形状が、逆に特徴になっていた。

 

(リターンズ・ドーパント……)

 

「リターンズメモリは『再来』の記憶を持つメモリ。

 その土地の記憶を参照し、その土地に住まう人間の記憶を参照するメモリだ。

 この場で戦う限り、言ってしまえば……"風都"そのものを丸ごとガイアメモリに見立てられる」

 

「風都を丸ごとガイアメモリに見立てる!?」

 

 アインが指を鳴らすと、リターンズ・ドーパントの体が輝き始めた。

 "土地"に接している足裏から、リターンズ・ドーパントが必要な記憶を吸い上げる。

 そしてドーパントの体を包む光が消えた時、その体は全く別のドーパントの姿となっていた。

 

「風都は全てを覚えている……こんな風にな」

 

 翔太郎が忘れるわけもない、『ナスカ・ドーパント』の姿に。

 

「ナスカ……だと!?」

 

 ナスカの姿になったアインは、更に指を鳴らしてツヴァイという女に合図する。

 

「ツヴァイ。メモリを使え」

 

「了解しました」

 

《 SKULL! 》

 

 ツヴァイは服をはだけさせ、大きな胸の合間のコネクタに、メモリを挿す。

 そしてツヴァイもまた、翔太郎が忘れるわけもないスカルメモリを使い、『スカル・ドーパント』の姿へと変貌した。

 

「ナスカの次は……スカル……霧彦のナスカに、おやっさんのスカル……!?」

 

 雪絵は新たな怪物の出現に一歩後ずさる。

 だがそんな彼女よりもはるかに、翔太郎が受けた心的衝撃は大きかった。

 かつてこの街を愛した男、園咲霧彦が使用したナスカの力。

 かつてこの街を愛した男、鳴海荘吉が使用したスカルの力。

 それが今、悪の手の中にある。

 

 呆然とする翔太郎に代わり、そこからは光太郎がアインを問い糾し始めた。

 

「何が目的だこのやろう!」

 

「色々あってな……俺達は、この世界が嫌いなんだ。

 憎んですらいる。

 だから実験材料として全人類をしゃぶり尽くして、苦しめ尽くしてから……皆殺しにするのさ」

 

「!」「!」「!」

 

 リターンズ・ドーパントことアインの目的は、仮面ライダーを倒すこと。

 そして仮面ライダーを倒し、セプテントリオンから世界の管理権を貰うこと。

 管理権と共に得た戦力で、この世界の人間全てを最大限に苦しめてから、皆殺しにすること。

 

 有り体に言って、最悪だった。

 

「そんなこと……させるかよ!

 ナスカとスカルに! そのメモリに、そんなことの片棒を担がせてたまるか!」

 

 ナスカとスカルを目の前にして、少し気の抜けていた翔太郎の体に気合が入る。

 させてたまるかと、決意が滾る。

 滾る脳裏に、フィリップの言葉が蘇る。

 

―――止めるさ……何度でも……この左翔太郎が、街に居る限り

 

 この街を守るために散って行った男達の思い出は、いつも翔太郎の胸の中にある。

 だからこそ戦うのだ。

 仮面ライダージョーカーは。

 そこに悪がある限り。

 

「アイン、ツヴァイ……お前達の罪を数えろ!」

 

 そしてここには、翔太郎と心を同じくする友が居る。

 

「力を貸してくれ、コータロー!」

 

「任せろ、ジョーカー!」

 

 心のままに悪を討つ、青い光の青年探偵。

 折れず曲がらずうつむかず、前に進み続ける三国一のいい男。

 その輝きは、豪華絢爛である。

 

「俺の名前は玖珂光太郎! 悪をぶっとばす青年探偵! お前の野望もここまでだ、悪党!」

 

 黒い学ランの青年と、黒い仮面ライダーの青年は、そうして肩を並べて駆け出した。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 スカル・ドーパントことツヴァイは、接近してくる二人の敵に対し、アインに指示された通りの反撃を放つ。

 

「やれ、ツヴァイ」

 

「我は白にして白に要求する

 それは一人の女よりはじまる女の鎖

 白にして白骨の我は 万古の契約の履行を要請する

 今は亡き情熱を 今ひとたびここに捧げさせ賜え

 我は生み出す贖罪の檻 我は号する心を縛る美しき牢獄

 完成せよ 『絶愛の檻』」

 

 スカルの突き出した腕に応じるように、視界を埋め尽くすほどのイバラが現れ、光太郎とジョーカーに襲いかかった。

 

「なんだ!? これはスカルメモリの能力じゃねえぞ!」

 

「魔女とか魔法使いとかいうやつだ、ジョーカー! 俺の世界とかに居た!」

 

「スカルメモリに別の力を追加してやがるのか!」

 

 光太郎は茨の津波とでも言うべきそれに、拳を叩き込む。

 すると炸裂した青い光が、イバラの大半を吹き飛ばした。

 流石にこれは予想外だったのか、アインが少し驚いているのが見える。

 

「こっちは俺が相性いい、任せろ!」

 

「任せた、コータロー!」

 

 光太郎はスカル・ドーパントに。

 翔太郎はナスカ・ドーパントに。

 それぞれ向かい、それぞれの信念を載せた拳を振り上げる。

 

「園咲冴子といい、お前といい……霧彦のメモリを、どんだけバカにすりゃ気が済むんだ!」

 

「知ったことじゃあないな」

 

 ジョーカーの拳を、ナスカは軽々と受け止めた。

 この両者の間には様々な要因があり、倍に近いスペック差が存在している。

 それは例えるならば、50m走5秒の人間と50m走10秒の人間が競争するようなもの。

 しかし翔太郎は、そのスペック差を技量一つで埋めていく。

 

「うらぁっ!」

 

 ナスカ・ドーパントが振るうナスカブレードを、ジョーカーは紙一重でかわしていく。

 それも、踏み込み次第で拳を届かせることができるような距離でだ。

 ナスカの剣を振るうアインは、舞い散る木の葉を剣で切ろうとしているかのような、そんな手応えの無ささえ感じていた。

 

 更にジョーカーは、ナスカの顔面に右ストレート。

 ナスカが剣の腹でそれを受け止めたのを見て、顔近くに構えた剣のせいでナスカの視界が一部塞がれたのを確認し、一瞬遅らせたキックを放った。

 ジョーカーの足裏が、踏み砕くように、ナスカの伸びきった膝に当たる。

 生身対生身であれば、これで膝を逆向きに折れていたであろう一撃。

 しかしナスカの耐久力のせいで、この一撃は痛みを与えるに留まった。

 

「む」

 

 翔太郎は顔を攻めてそこに意識と防御を集め、腹に拳を叩き込む。

 腹を攻めてそこに意識と防御を集め、顔に拳を叩き込む。

 この二つを流動的に、敵の動きを見つつ織り交ぜる。

 迂闊なガードをすればそこから投げ、あるいは関節技に繋げる。

 

 仮面ライダージョーカーに、高いスペックはない。

 あるのは技だけだ。

 ただ技だけで、翔太郎とジョーカーは十二分に強い。

 

 ナスカはたまらず、後ろに下がろうとする。

 しかしそこで翔太郎は、後ろに下がろうとしたナスカの右足のカカトに、左足を引っ掛けた。

 バランスを崩し、転びそうになるナスカの顔面に、容赦なく叩き込まれる右ストレート。

 そうしてジョーカーは、文字通りにナスカを殴り飛ばした。

 

「っ……なるほど、ナスカの力では勝てない、か」

 

「ナスカが弱いんじゃねえ。お前が弱いんだよ!」

 

 仮面ライダージョーカーは、力強く拳を握り、力強く叫ぶ。

 

「霧彦のナスカだったなら! 一人で戦ってる時の俺が、勝てるわけがねえんだ!」

 

 左翔太郎は、今でも園咲霧彦との戦いを覚えている。

 その攻撃の重さも、速さも、鋭さも。

 巨悪に利用されていたとはいえ、霧彦の街を愛する気持ちは本物だった。

 だから、強かった。

 リターンズ・ドーパントのナスカは、園咲霧彦のナスカの強さには及ばない。

 

 アインはふむ、と少し納得した様子だ。

 ジョーカーに圧倒されてなお、その余裕は崩れない。

 何故余裕が有るのか。翔太郎から向けられる怪訝な視線を受け止めつつ、アインは指を鳴らす。

 

「なら、こういうのはどうかな?」

 

 すると、土地に接する足裏から、リターンズ・ドーパントの体に街の記憶が吸い上げられる。

 地球が、土地が、町の人々が抱えていた"特定の対象"の記憶が、ドーパントに馴染んでいく。

 遊びのナスカはもうおしまい。

 そうしてまた、アインは姿を変えた。

 

 仮面ライダージョーカーを倒すため、最初に想定していた姿に、『変身』した。

 

「……え」

 

 赤い目、緑の右半身、黒の左半身。

 たなびくマフラー。

 見慣れた姿。

 半年前までなら、鏡でも見ているのかと、翔太郎は錯覚していたかもしれない。

 

 『仮面ライダー(ダブル)』が、そこに居た。

 

「仮面ライダー(ダブル)―――リターンズ」

 

 かつて翔太郎とフィリップが力を合わせ、変身していた仮面ライダーと同じ姿と力を得て、アインは含み笑いを漏らす。

 

「これが仮面ライダーを倒し、この憎い世界を滅ぼす……『憎しみの(ダブル)』だ!」

 

 愉快そうなアインとは対照的に、翔太郎は激怒した。

 

「てめええええええっ!!」

 

 その思い出に触れるな。

 その思い出を汚すな。

 その思い出は、お前のものじゃない。

 感情が煮え滾り、燃え滾る。左翔太郎は冷静さを失い、その怒りの熱を拳に込めて振るう。

 

《 HEAT! METAL! 》

 

 だが返って来たのは、その怒りの熱よりも熱い炎の一撃だった。

 アインはメモリを挿し直す作業すら行わぬままにメモリをチェンジし、燃える金属の棒でジョーカーの顎をカチ上げる。

 

「がッ……!」

 

 ジョーカーの体が浮いて、アインが仮面の下でにひっと笑った。

 

《 LUNA! TRIGGER! 》

 

 またしてもメモリの差し替え無しで姿を変えたアインの手には、トリガーマグナム。

 そこから放たれた追尾弾のビームが、浮いたジョーカーの体を滅多打ちにした。

 

「かっ、はっ、あ゛っ!?」

 

 リターンズ・ドーパントはそのまま、トリガーメモリをトリガーマグナムにセット、ジョーカーの着地と同時に銃口を空に向け、マキシマムドライブを放つ。

 

《 TRIGGER! MAXIMUM DRIVE! 》

 

 すると空に放たれた弾丸がそれぞれ曲がり、正確無比かつ空から降り注ぐ狙撃攻撃と化した。

 

「うわっ!?」

 

 『絶技』と呼ばれる特殊技能を身に付けたスカル・ドーパントという、最悪に反則な存在をも圧倒し、トドメを刺そうとしていた光太郎が、慌てて回避・迎撃行動を取る。

 この攻撃は、翔太郎と光太郎の両方を狙っていた。

 翔太郎は地面に転がされていたが、あえて立ち上がらず、地面を転がることでビームの追尾弾を地面にぶつけて消失させる。

 

(ダブル)は……お前みたいな奴が! ましてや一人で! 使っていいもんじゃねえんだよ!」

 

 そうして諦めず立ち上がり、憎しみの(ダブル)に立ち向かうジョーカー。

 

「所詮道具だ。誰が使おうと使うまいと、文句を言われる筋合いはない」

 

 アインはそれを見て、更に容赦なく力を見せつけようとする。

 

《 CYCLONE! JOKER! XTREME! 》

 

 通常のダブルドライバーでは鳴らないはずの音声が鳴り、メモリの挿入無しでまた姿が変わる。

 

「エクストリームまで……!」

 

 緑と黒のサイクロンジョーカーは、ジョーカーの倍のスペックを誇る。

 サイクロンジョーカーエクストリームともなれば、サイクロンジョーカーの1.5倍~2倍のスペックとなる。ジョーカーメモリ単体の力で勝てるはずもない。

 

「ぐっ……!」

 

「ほらほら、どうした? 弱いのはメモリではなく、俺なんだろう? 勝ってみろよ」

 

 CJX(サイクロンジョーカーエクストリーム)の力に、押されるジョーカー。

 左翔太郎の全能力を用いて、彼は三倍以上のスペック差のある攻撃を捌き切っていた。

 CJXが素手で攻めているからとはいえ、翔太郎の技量の高さが伺える。

 仮面ライダージョーカーはそうして耐えながら、勝機を探していた。

 

「俺は記憶を吸い上げ、再来させることができる。

 そして吸い上げた記憶を"混ぜて"から、再来させることもできる」

 

「それがどうした!」

 

「"ありえなかったもの"まで再来させることができるということさ!」

 

 だが、アインは勝機を見つける余裕など与えてくれない。

 

《 HEAT! METAL! XTREME! 》

 

「何!?」

 

 ()()()()()()()()()()()()()に姿を変えて、アインはジョーカーを殴り飛ばす。

 ヒートメモリの炎、メタルメモリの力が、エクストリームメモリによって最大限にまでその特性を発揮した――という仮定を再来させた――、一撃。

 ジョーカーの装甲に、ヒビが入る。

 

「ぐああっ!」

 

《 LUNA! TRIGGER! XTREME! 》

 

 リターンズ・ドーパントは、重量級近接型から、遠距離火力型(ルナトリガーエクストリーム)にフォーム・チェンジ。

 続けて放たれた追尾光弾を、ジョーカーは回避して地面や電柱に当てて消滅させ、かわしきれないものは拳で叩いて弾く。

 ジョーカーの装甲に包まれた拳の骨が、ミシリと音を立てた。

 

(ダブル)を……俺達の(ダブル)を……よくも……!」

 

 仮面ライダー(ダブル)がかつて使用していた、九種の形態。

 それら全てをエクストリームの力で倍加させ、アインは翔太郎を攻め立てる。

 死ぬ気で敵の猛攻を受け流す翔太郎は、かつてフィリップから聞いた言葉を思い出していた。

 

―――僕は大事な事を忘れていたんだ

 

 忘れるわけがない。その言葉が翔太郎を立ち直らせ、エクストリームに至らせたのだから。

 

―――鳴海壮吉の意志を受け継いだ(ダブル)は、戦闘マシンであってはならない

 

 フィリップは、『仮面ライダー』を、『(ダブル)』を、特別なものと見ていた。

 

―――強いだけの(ダブル)に価値はない。君の優しさが必要だ、翔太郎

 

 フィリップの言葉を思い出している翔太郎の顔面を、(ダブル)が殴る。

 

―――それがもし、弱さだとしても……僕は受け入れる

 

 今の(ダブル)は、ただ人を殺すためだけの戦闘マシンだった。

 優しさなんてどこにも無い。

 罪を憎んで人を憎まないという、仮面ライダーに求められる在り方も無い。

 今この世界に唯一居存在する(ダブル)は、憎しみで人を踏み躙る『悪』の存在だった。

 

「ちく、しょう……!」

 

 ズタボロになり、膝をつくジョーカー。

 翔太郎の心は折れていないが、体の方がもう限界だった。

 

「さて」

 

 リターンズ・ドーパントはジョーカーを追い詰め、なおも止まらない。

 指を鳴らして、更に自己強化を繰り返す。

 

《 CYCLONE! ACCEL! XTREME! 》

 

 そうして、彼らが手にしなかった可能性の力を、その身に体現した。

 

「お前達が至らなかった『可能性』で……お前を殺してやろう」

 

 青い目、緑の右半身、赤の左半身。

 ありえなかった可能性。

 どこかの誰かの記憶の中にしか、存在しなかった(ダブル)

 

「サイクロン、アクセル、エクストリーム……!?」

 

「これが俺の『憎しみの(ダブル)』、究極形態。お前を殺す力だ」

 

 『仮面ライダー(ダブル)・CAX』。

 再来(リターンズ)のメモリを異常なレベルで使いこなしているアインの手によって、この世界に形を結んでしまった"究極の(ダブル)"。

 それが、メモリがセットされた盾を掲げる。

 

《 CYCLONE! MAXIMUM DRIVE! 》

《 HEAT! MAXIMUM DRIVE! 》

《 LUNA! MAXIMUM DRIVE! 》

《 JOKER! MAXIMUM DRIVE! 》

 

 盾は四つの光を収束し、収束された光は、アインが盾から抜いた短剣に内包されていた。

 アインは人知れずにひっと笑い、右手で剣を振り下ろす。

 本来刀身に四色の光を収束して放つ"ビッカーチャージブレイク"という名の技が、リターンズのメモリの効果で応用され、剣から放たれる遠距離斬撃へと変わる。

 飛び道具として飛んで行った四色の光が、ジョーカーを飲み込む――

 

「させっか!」

 

 ――かに、見えた。

 しかしそこで自分の担当の敵を一発殴って離脱してきた玖珂光太郎が、翔太郎を庇う。

 彼の青い拳は正義の体現。

 悪の振るう斬撃で、それを貫ける道理はない。

 

「んぎぎぎぎ……! 悪党の勝利なんて、誰も望んでねえんだよ……!」

 

「ほう」

 

 しかし両手でサイクロンアクセルエクストリームの斬撃を挟み止めていた光太郎は、斬撃の重さに身動きも取れない状態だった。

 それを見たアインは仮面の下でにひっと笑い、空いた左手でエンジンブレードを投げる。

 アクセルの剣は一直線に飛び、光太郎の右肩に突き刺さった。

 

「ぐあああっ!」

 

 そして光太郎にある程度受け止められたとはいえ、多大な威力を持った四色の光の斬撃が、翔太郎と光太郎に直撃する。

 攻撃の余波で土煙が舞い上がったが、土煙が晴れた後には、苦悶の声を漏らしながら悶える、倒れたままの二人の姿があった。

 

「翔太郎さん! 光太郎君!」

 

 戦いを物陰から見守っていた雪絵が、悲痛な声を上げる。

 翔太郎と光太郎が弱いのではない。

 オーマ・ドーパントを一方的に、圧倒的に叩きのめしていたこの二人が弱いわけがない。

 ただ、リターンズ・ドーパントが『再来』させた、『仮面ライダー(ダブル)』が強かった。

 

「これが、風都を丸ごとガイアメモリとした力だ」

 

 寄り添うツヴァイに視線をやり、おぞましくにひっと笑ってから、アインは含み笑いする。

 

 地球人類を苦しめてから皆殺しにする計画の開始に、王手をかけながら。

 

 

 




二話以降はあらすじの文字列の意味がちょっと違って見えるようにするスタイル
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