「はぁ……」
大きなため息を漏らしながら歩く少女がいた。
「と、友達ができない」
西住みほ。彼女は訳あってここ大洗学女子園に転校してきたのだ。
前の学校では姉がいたのが数少ない救いだったが、新天地には身内もいないし知り合いなど誰ひとりとして存在しない。
このままでは、もしかすると卒業するまで
嫌な考えが脳裏をよぎる。せめて誰かしら話せる人がいたらいいのに。友達とどこか買い物をしたり、お店に入って談笑をしたりできたらな。
本日何度目かのため息を吐き出すと同時に、何かにぶつかりこける。そういえば朝もぼーっとしていて電柱にぶつかった事を思い出す。
なぜだか涙が出そうになった。そうだ逃げて来た自分にはこれがお似合いなんだ。
「だ、大丈夫かい」
後ろから声がし振り向くと、黒いベストを着た人が立っていた。どうやらお店から出て来たらしい。そこで私はぶつかったものが黒板の看板だというのに気付く。
「ご、ごめんなさい……」
泣き顔を見られたくないと無意識的に思ったのか看板を立てて帰ろうとした時、
「ちょっと待った」
腕を優しく握られ引きとめられた。
止めた人の顔を見ると予想以上に若い男性だった。
「えーっと。お茶ぐらいだったら出すよ。何かあったの?」
「君が一番最初のお客さんだよ。ようこそバーチガンへ」
「ばーちがん?」
見覚えのある子だった。どこかで見たことのある顔、声。ってか似てる様な。いやきのせいだろう。そんなことよりもてなさないと。なぜ泣いていたのかは気になるがあまり深く聞かないほうがいいだろう。あの制服は大洗女子学園だろう。船舶科の子はまだ作業中だろう。この時間に外を歩いていると普通科の子かな。
開店初日のお客さんが女の子なのはいいことだろう。女子高校生の噂は広がりやすいからな。しかし一番最初のお客さんがこんな夕方に来るとは。
「何か飲みたいものとかある?」
「えーっと。でも私」
「お代は良いよ。一番最初のお客さんだからね。それぐらいのサービスぐらいさせてよ」
「最初?」
「そう実は言うとココ、今日が初めての営業日なんだよね。そして君はめでたいことにお客さん第一号って事だよ」
何かと明るい言葉を使う。
見間違えじゃなかったら泣いているように見えたのだ。泣きながら下校している女子高生を放っておけるわけがないだろう。……お客さんが欲しいというのは二の次ぐらいの理由だ。
あの歳ぐらいだったら、紅茶にしておくか。コーヒーは苦手な子もいるし。カウンターの奥にある棚を開け以前車で店を開いていた時に買った物を出す。そこそこの値段の物だがまぁ彼女には必要だろう。茶葉を出し準備にとりかかる。
作業をしながらもしきりに座っている彼女を見る。首元ぐらいまで伸びている明るい髪、身長は俺よりかは低い。顔は、可愛い部類には絶対入るだろう。女子校にかよっている、見た目がいい……周りにちやほやされる、あっ(察し)。
もしかしたら俺が思っている以上に深刻な問題なのかもしてない。
紅茶をカップに注ぎテーブル席に座っている彼女の前に置く。
「どうぞ。あとこっちがクッキーね」
「ありがとうございます」
そう言って彼女は紅茶や菓子にも手をつけなかった。
「その、さ、なんというか。余計なおせっかいかもしれないけどさ、何かあったの?いやその学校のこととか何も分からないけどさ、相談ぐらいにはのってあげられるよ?」
「……ありがとうございます。でも大丈夫です」
いや全然大丈夫そうじゃないんですけど。
「まぁ辛い時はつらいって言った方が身のためにもなるよ」
「…………」
何か言いそうな感じだな。
「実はその、私、友達がいないんです」
「――――あぁ。なるほど」
たしかに深刻な事だ。花の高校生、人生で一度しかない時期だが友達がいなければ彩れないと考えているのだろうか。それよりなぜ友達がいないのかの方が気になるが、このさいどうでもいいだろう。
「えーっと君って呼ぶのもいやだな。名前は?」
「西住みほっていいます」
そう言ってから軽く一礼する。
なるほどそういうことか。友達は確かにいないのが当り前だろう。
「えーっとみほちゃんでいいかな、君の親族ではないと思うけど知り合いに西住ってのがいるんだよ。その子と区別をつけたいから、下の名前で呼んでもいいかい?」
「……はい」
「そうかいみほちゃん。おめでとう!君は今一人目の友達をゲットしたぞ!」
「へ?」
俺は立ち上がり芝居かかった感じで言ってみた。
「俺が一人目の友達だよみほちゃん。友達なんてそんなもんだよ。知らないうちにできてるんだよ。みほちゃんはちょっと過敏になりすぎじゃないかな?」
「そ、そんな簡単に友達ができるんでしょうか」
「あぁできるさ。実は言うとね。俺も昔ぼっちだったんだよな。色々あって転校してね。転校先ではまぁ最初は誰とも話さなかったな。でも次第にいろんな奴と話そうようになって、知らない間に友達だ。あ、でも受け身じゃだめだよ、自分から行くようにね」
「そんなことできるでしょうか」
「できるさ」
みほちゃんを極力はげませられるような言葉を選ぶ。
すると少しだけ顔が明るくなったような気がした。
「なんだか少し気が楽になったような気がします」
「だったら嬉しいな。とりあえず紅茶のみなよ」
そう言うと彼女は紅茶を口に運ぶ。少し時間は経ったが飲むのにはちょうどいい熱さだろう。
「おいしい!」
そうだ。こんな笑顔が欲しかった。
暗い顔よりもずいぶんと可愛いじゃないか。
「え?」
「いや。そう言ってもらえるとうれしいよ」
「そ、そうですか。あ、このクッキーもおいしいです!」
「今度は、今度は友達をつくって、来ますね」
「!そうだね、よろしく頼むよ」
「はい、えーっとマスターさん?」
「マスターか、いい響きだね」
始めてそんな呼ばれ方をした。
バーじゃないからマスターでいいのかな。まぁいいか本名を出すよりかはいいだろう。今の彼女に俺の名前は必要ないだろう。
「それじゃあね。また来てよ」
「はい!」
手を大きく振りながら去っていく。いい加減前を見ないとぶつかりそうなんだが。あ、本当に電柱に当たった。俺は彼女が顔をおさえながら見えなくなるのを待った。店はもう少し開けておこうかな。
「西住みほか……大洗にいるだなんてね」
もう少しだけ秘密にしておくか。
実は言うと劇場版ガルパンもう五回も見たんですよね。
そして五回目は4DXで見ました!
幸いにも地元の映画館だったので見に行きました。
なによりも揺れが凄い!
とくに継続高校のシーンとか最高でした。
しかしローズヒップ、お前はだめだ。
お前がでるたび椅子が揺れて首痛めたんだよ。