「マスターさん!私、私……やりました!!」
「お!とうとう友達できたのかい?」
「いえ、少しだけクラスの子とお話ができました!」
「あ、うん、まぁ進歩だね」
「消しゴムを貸してもらえました!」
「もうちょっと先に進んでるかと」
目の前でみほちゃんが机に頭をごつんとぶつける。以前と同じテーブル席で紅茶を出している。どうやら今回はお客さんとしてちゃんと来てくれたらしい。
お店は良い感じに繁盛している。お客さんが来なかった理由は、おもに宣伝不足だった。あの後ブログも更新し、チラシを配布し、ツブヤキッターでもかなりの回数宣伝しまくった、ってか定期呟きに入れた。おかげで以前の評判を聞きつけた人がやってきてくれたのだ。ありがたやー。
「はぁー」
また大きなため息をつく。
彼女は毎日のようにここに来て俺と話をするのだ。それは他愛無い世間話だったり、彼女の学校のことだったりする。しかしそんな彼女の話には友達はでてこない。主に授業の話しだ。
「どうすればどうすればどすれば……」
そこまでして友達が欲しいのか?
いやこの問いかけは必要ないな。彼女はこれほどにも欲しいと思っているんだ。みほちゃんには必要なんだ。
「いらっしゃいませー」
ドアのベルが鳴る。
「ここが?」
「そうだよ!むちゃくちゃ有名なんだよ。いろんな学園艦を旅してたんだけど、お店をここで出すだなんて!いやー時間ずらして正解だね!」
「わたくしこのようなカフェは初めてですわ」
「私もだなー。でも華が好きそうなものとかおいてあるから」
大洗の制服を着た女の子が二人入店した。
「いらっしゃいませ。窓際のテーブル席にどうぞ」
俺は慣れでそう言ってしまったが、どうせだったらみほちゃんの近くにすわらせればよかったな。水やおしぼりの用意をしながらちらりとみほちゃんを見ると、顔を机につけさも寝ているかのようにしている。しかし目は大きく開いており、何かしなければ、はなしかけなくちゃとうわ言のように呟いている。
「どうぞ」
「あ! ありがとうございます!」
明るい色の髪をした子は受け取る。
「メニューはこちらです。ご注文のさいは」
「もう決まってるんで。コーヒー二つで!」
「それと私はこの日替わりケーキで!」
「かしこまりました」
メモをとってからカウンターへと向かう。
もう一度みほちゃんを見るが先程と何も変わっていなかった。作り置きしていた最期のケーキをお皿にのせ、コーヒーを入れる。一応うちのみせの名物はコーヒーということにしてある。お世話になった人に何度もつくらされたので、正直得意だからである。
「おまたせしました」
基本準備していたものを出すだけだったのですぐに注文されたものをトレーにのせて運ぶ。みほちゃんの後ろを通るが、今度は汗が流れ始めていた。
「どうぞ」
「まぁ!」
「おー! すごい! おいしそう」
こうやって喜んでくれるとつくってよかったと素直に思える。昔車でお店を出していた時はお客さんと直のやり取りが多々あったので(嫌いなわけではないし、友人も増えた)良かったが、店を出したら減ってしまうのではと勝手に危惧していたがいらぬ心配らしい。
「むー! おいしいですわ!」
「ほんとに! 私も一口ちょうだい!」
俺はゆっくりと後ろに下がりみほちゃんの隣に立つ。
「(みほちゃん?)」
「(お、おんなじ、クラ、クラスの子、ははは話しかけないと)」
「(み、みほちゃん?)」
「(へ、へっへへへ。机冷たいなー)」
目は俺ではなくどこか別の所を見ていた。女の子がしていい目じゃないと思うな。手助けするべきなのか。いや俺がみほちゃんを紹介するってのも何かおかしいな。
あえて俺は彼女を放置することにした。
「ごちそうさまでした! またきますね~!」
「またのご来店をお待ちしております」
ちゃりん、と扉の鈴が鳴り扉が閉まり二人組の女子高生は楽しそうに去って行った。ばたんと木製の扉が閉じられお店には静寂が訪れる。しかしこの空間には俺以外にもう一人いるのだ。後ろをみると今度は汗ではなく、涙が流れていた。
「ぐすん……ぐす……ふぐぅ……」
もう色々とあれだった。だめだめだった。どうやらみほちゃんは俺が思っている以上にシャイな子だったらしい。とりあえず話しかけて見ろとは言ったが彼女にはそれさえも困難らしい。
「大丈夫だよみほちゃん。すぐに友達ができるって」
「もうマスターだけでいいです」
「そんなこと言っても、学校には僕はいないんだよ?」
「だったら毎日ここに来ますよぉ」
そしてまだ泣き始めた。
しかし妙な確信を得ていた。すぐにでもみほちゃんは色々な人に囲まれるだろうと。
こんな感じで短い話を出すの好き。