「いやー!まさか教官がおごってくれるだなんてね!」
茶髪のロングヘアーが印象的な女の子、武部沙織だったか。彼女は嬉しそうにそう言った。そのとなりではかなり満足げな顔をした子、名前はたしか五十鈴華。気持ち良さそうに寝ているのが冷泉麻子、天パの子が秋山優花里。
みほちゃんが紹介してくれた。そして以前うちに来たのが武部さんと五十鈴さんだったらしい。また来たがっていたのをみほちゃんが誘ったとか。グッジョブみほちゃん。寝ている子はケーキを食べ得た後寝てしまった。こんな時間に寝ていいのか。
「ふふ。よかったねみほちゃん」
「はい。マスターの言ったとおりでした」
「友達は勝手にできるからね」
お皿を片づけながらみほちゃんと話す。
あまり言いたくはないが、実は言うと金額分をちょっと上回っていたりするのだ。いやそこまで大きな差額ではないのだ。お金の問題がどうでもよくなるほど、あの五十鈴華さんが食べる量が多いのだ。今もこうしてお盆をもって皿を上にのせカウンターの裏のシンクに置くというピストン作業をしているのだ。よく食べるね、と言ったら、ここのケーキおいしいですから、と返された。
「嬉しいんだけどねぇ……」
ちらりとショーケースをみると、そこには数分前にはあったケーキがすべてなくなっている。また新しく作るか。クリームとかなしのスポンジケーキとかタルテとかにするか。
「みほちゃん、今楽しい?」
俺はその後ろにこう付け加えたかった。
――――――前と比べて。
「はい楽しいですよ」
にこりとほほ笑む。
「うんうん。だったらいいんだよ。楽しむのは大事だからね」
「おや~?みぽりんいい雰囲気だねぇ~?」
二人でにこやかに話していると、武部さんがにやにやしながら近づいてきた。
「ち、違うよ。私とマスターはそんなんじゃ」
「武部さん?だっけ。君が想像しているような関係じゃないよ」
えーっとなぜか納得がいかないような顔をされた。いや女子高生と大人が恋愛とかちょっと犯罪臭あるからね。え、恋愛に年齢は関係ないって?だったら八十のおっさんと女子高生は?それはだめなのか。
そんなときお店の電話が鳴る。会話を中断して電話をとる。
「はいもしもし。カフェ、バーチガンです」
『ふふふ。やはりお店の電話番号にして正解だったかしら?』
「……冷やかしだったらきりますよ?」
『冷たいのね。こんな格言を御存じかしら?友の友情は固い殻の下にひそんでいるのがいいと。こうやって電話で秘密裏に話すのも楽しいかと思って、ね?』
「それ絶対そういう意味じゃないと思うんですけどね」
俺が電話をしているのをみるとみほちゃんは自分の席に座り同学年の子と話し始めた。
「で。何用ですか?」
『近日中に大洗に行くことになりましたの』
「へぇー。あなたみたいな人がどうしてですか?」
『お願いですから敬語をやめてくださいな。私とあなたの仲ではありませんか』
え!?ダージリン様私たち以外にそんな知人いたんですか!?
あっちに行きなさいローズヒップ
そんな声が電話の後ろで聞こえる。どうやら彼女はそんなみられ方をしているようだ。もしかして学校ではぼっちだったりするのかな。
「はいはい。で?大洗に来て何すんのよ」
『実は戦車道の練習試合を大洗女子学園とすることになりましてね。できればそちらに遊びに行きたいと』
「いいぜ。それじゃあ来たい時間メールで教えてよ」
『メールですか?ごめんなさい私』
「ああ大丈夫。薔薇尻とペコちゃんが知ってるよ」
『え!? え、いや、ちょ、ローズヒップ!戻ってきなさい!ペコ、あなたも――――』
そこで俺は電話を切った。
懐かしい上に楽しみだ。
そうか。そうなのか。自然と笑みがこぼれる。そうだよなはじめだったらあんたがいいよ。大洗はもうちょっと戦車道を知るべきだろう。こういった練習試合があれば興味も出るだろうし、やる気が出るってもんだ。公式ルールにのとった戦いやそうではない戦い。どちらも違うし、両方いい。でも君の、みほちゃんの戦いはそこにあるんだよね。
君は強くなるべきだ。今よりも、昔よりも。
そして君のまほちゃんよりも。
「みほちゃん」
「はい?」
「戦車道、がんばってね」
さきに言っておきますが、戦車戦は書く気はないです!
みたい方はアニメをどうぞ。
そして次の話は試合後の話となります。