ですが、何と言ってよいものか、お願いです。
叢雲・撃沈王一連のシリーズとして、あるいは単体のストーリーとして。
それとも、今回のエピソードだけでも。
ぜひ一度、最後まで読んでみてください。
あなたから頂いた読書の時間を無駄にはしませんから。……たぶん。
では大和と武蔵によるカウンター越しの会話劇、始まります。
「武蔵に問題です」と大和は唐突に話を投げ掛けた。「『超弩級戦艦』とはどのような戦艦のことでしょう」
「……さあ? 生憎と軍事に明るくないものでな」
「素晴らしい、よく勉強してるわね。じゃあ次の問題です」
「…………」
「戦艦無用論などと嘆かわしい話も耳にする昨今ですが、それでも戦場の華を空母に譲らない戦艦があります。さて、どんな最強型ですか?」
「自分で言っていて恥ずかしくならないのか、それ」
「そうなのよ……そろそろ他の誰かに『最強の艦娘』を引き継いで貰いたくて……」
◆――――◆
「初月の面倒を見てるうちにね、ふと思ったのよ。いつまでも私レベルが最強でいていいのか、とか。初月だけじゃあなくもっと他の子の面倒を見て強く育てることに専念した方がいいのか、とか」
「ふむ。まともな所論を喫茶店で展開するあたりがお前の駄目なところだな」
「まともだと思うなら良い考えを頂戴」
「お前一人だけが飛び抜けているわけでもあるまい。空母でも駆逐艦でも、部隊の旗艦をバトンタッチすればいいだろう」
「今更、そう簡単にできると思う?」
「そうだった。今更過ぎて『撃沈王』から退けられないんだったな」
「実際私は――自惚れてなんかないわよ。私の超長距離砲撃は狙撃と言ってもいいレベルで敵に壊滅的な損害を被らせる。接敵から敵部隊が既に崩壊してる。やらない理由はないでしょう? 私にしかできない。代わりはいない」
「お前に万が一があれば?」
「一応、扶桑が後を引き継ぐことにはなってるけど……撃沈王に万が一なんてあってはいけないじゃあないの。つまり――」
「つまり?」
「私は最強であり続けないといけない。あーもー結局は何も変えられないのよ」
「お前個人の願望は戦況の推移が叶えてくれるのを期待するしかないんじゃあないか。洞観者としての私はそう思う」
「分かるように言って。何か起こるの?」
「ただの勘だ、と言っておこうか。撃沈王とて一人の戦艦だ。できる事は限られているぞ。周りに期待されても無理なものは無理と言え」
「武蔵にだけは言われたくないのよねー。喫茶店のマスターにドーカンシャの管理、それに普通の艦娘としての艦隊業務。そろそろどれかに絞ったら?」
「気遣いどうも。だが私は現状で満足することに忙しい」
「ふうん。変なの」
「下手に戦場で活躍なぞしてみろ。お前よろしくファングッズが作られてしまう」
「! あ、あれは――」
「お前がデフォルメされた絵とサインが入ったTシャツ。二階の箪笥で眠っているぞ」
「なに姉妹艦のTシャツなんて買ってるのよ。馬鹿じゃあないの」
「デフォルメ絵の方はともかく、サインはお前が考えたのか? なあなあ、サインの練習したのか? 一般人の私に教えてくれよ」
「……サインくらい嫌でも慣れるわよ。撃沈王は握手にも笑顔で応じる義務があるし。ええそうよ暇も才能も無いから半分ゴーストなライターさんには何度もお世話になってるわよ。あんまり私に喧嘩を売るようなら武蔵と信濃を全力で道連れにするから。有名税を三人で仲良く分担しましょうよ。――ねぇえ。私たちって一蓮托生の姉妹艦よね?」
「目がマジだな……。まあ愚痴くらいならいくらでも聞いてやらんこともない。ただ開店中の店内でゴーストがどうとか言うのはやめておけ」
◆――――◆
「さっき武蔵がしれっと言ったこと。私一人が飛び抜けて強いわけじゃあないって、そのこともけっこう悔しいのよね」
「自惚れがないだけマシだと思うが」
「例えばよ。天照大艦隊の斑鳩が本気になって編成した部隊と演習したら勝敗は五分だと思うわけ」
「斑鳩は洞観者だぞ。洞観者といえば一度、長月一人に挑んでみるといい。真の最強のレベルを知りたければな。大和型のプライドが数分で砕かれるぜ」
「遠慮します。私は現実的なレベルで考えたいの」
「じゃあ霧の艦隊はどうだ」
「……微妙なところを出してくるわね。また私たちの前に立ち塞がってきたら考えるわ」
「もう『撃沈王』はお前で、お前が最強という役割は世界から与えられてしまっている。練度の上限が見直されても普通に労働に励む中で一瞬でカンストしてしまう内は、お前の悩みは続くだろうが、自分が最強だと胸を張っておけ」
「真面目に説教されちゃった」
「真面目に世界を見通すのが洞観者だ」
「武蔵がヘンテコな存在にならなければって今でも思わずにはいられないわ」
「ほう。撃沈王が私の力を買ってくれるのか。言っておくが、この武蔵とてお前に後れを取るつもりは更々無い」
「そして武蔵のTシャツも私のと一緒に販売される」
「やめろ」
「拒否権なんて無いわよ。本当に勝手に作られちゃうんだから。市中でそのTシャツを見かけたときの恥ずかしさ、あれこそ姉妹艦と分かち合いたい有名税ね」
「洞観者は路地裏深くを住処とする猫のような日陰者だからな。同じ大和型として力になれず残念極まりない」
「Tシャツ、マグカップ、缶バッジ――他に何があったかしら」
「陳列された自分のグッズを見ていれば些細なことは吹っ切れるだろう、たぶん。そうだ。この店にお前のグッズを置いてみれば売れるんじゃあないか? 我ながら良いことを思いついた」
「…………本っ当に、まだ知らないみたいね、武蔵」
「あん?」
「言ったでしょう。拒否権は無いし勝手に作られるって」
大和は取り出したスマートフォンを操作して、その画面を武蔵に見せた。
海軍の通販ページに並んだ大和型二番艦のTシャツ、マグカップ、缶バッジ、トートバッグ――。
「な、何だこれ!」武蔵は大和からスマートフォンを引っ手繰った。「何だこれ。何だこれ。何だこれ……! 私は、知らないぞ……!」
「販売が始まったのは二週間くらい前だったかしら。はー、やっと言い出せたわ。有名税分担の話、ゴメンね、見ての通り実はもう動いてるから」
「ふ、ふざけるなよ貴様……! そもそも私がいつ貴様らと――」
「武蔵がドーカンシャになる前、だからけっこう昔よね。でも実績であることに間違いはないし、私と並んでた映像もバッチリ残ってる。ほら、大和型コンビのTシャツも抜かりなく売ってるでしょ。イラストレーターさんって上手よねえ」
「誰が許可した!」
「だから拒否権はないんだって言ってるじゃない。でも強いて言うなら――私がゴーサインを出しちゃった♪」
「イヤーッ!」
武蔵渾身の右ストレートを大和は完全に見切ってガード! そんじょそこらの艦娘であれば確実に骨や臓器が爆ぜる激突だ!
「貴様の撃沈王という重圧、腐った根性ごと粉々にしてくれるわ!」
「ドーカンシャはイクサの前にアイサツをするんじゃあなかったの? 私にやられる前に名前くらい言っておけば?」
「死ね! このクソ姉妹艦が!」
「グッズ化してあげた姉妹艦を有難く思いなさい!」
武蔵のチョップが木製のカウンターを重機めいて叩き割った!
時刻はヒトハチマルマル。喫茶店ハングド・キャットの稼ぎ時である。
4話ほど連続で書いて、疲れました。限界です。
最後に少しくらい宣伝(前書きのアレ)を入れたって構いませんよね。