撃沈王の土産話   作:vs どんぐり

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改二の目処が付いたんですってね

 前回、大和型姉妹の姉妹喧嘩により壊滅的損害をこうむった喫茶店ハングド・キャットは三日で完璧に元通りになり、四日後には営業を再開した。武蔵がチョップで叩き割った木製のカウンターから皿の一枚に至るまで完璧に元の姿を取り戻していた。

 

 大和が撃沈王であると同時に、家具コイン長者でもあったからだ。最強の戦艦が使い道もなく、ずっと無駄に貯め込んでいたコインの枚数はハングド・キャットを修復するのに十分だった。

 

「もうちょっとコイン余ってるのよ。この際、何かに使い切っちゃおうかしら」

「仕事場を温泉にでも模様替えしたらどうだ」

「それ、いいわねえ。――温泉に模様替え、って石油王の思いつきみたいよね」

「仮想通貨みたいだよな。家具コイン」

「金(Gold)よりも安定してるんじゃない? 資産価値があるかどうかは知らないけど。そういえば武蔵はどれくらい家具コイン持ってるのよ。ハングド・キャットの二号店は出さないの?」

「お前と違って私個人は家具コインを持たない。あれは普通、艦隊の財産だ」

「ああ、なるほど」

 

 店は完全に元通りになった上にピカピカになりはしたが、染み付いていたらしいカレーやコーヒー、そして猫の匂いだけは新たに染め直す必要があった。

 

 

◆――――◆

 

 

「まあ、家具コインは私からの餞別よ。改二の目処が付いたんですってね」

 

 大和はコーヒーカップに口を付けて「コーヒーも改二になればいいわね」と言った。

 

「餞別ってお前、改二になった私をどこへ飛ばす気だ」

「私のレーダーの届かないところ」

「改二改造、羨ましいのか?」

「…………うるさい」

「お前の気持ちは分かるとも。撃沈王が最強の座を譲り渡すわけだからな」

「ちょっと。まだ練度もカンストしてないのに、なーに私に勝った気でいるわけ?」

「勝った気も何も現時点で私の方が強いだろう。出撃数こそ店の仕事もあって減っているが私には洞観者の能力がある」

「わけの分からない能力とやらに頼らないと大和型としてやってられないなんて、姉妹艦として心配だわ。改二で逆に弱くなるんじゃあないの?」

「そぉら僻め僻め。今日のカレーは私が奢ってやろう」

「私が出してあげた家具コインもそうだけど。たくさん集めた特注家具職人の分、お金を請求しようかしら。そういえば扶桑たちはよく職人さんに上手くお願いして仕事してるからお金もかかってると思うのよね。大本営直属の仲間のために職人さんを呼ぶべきだったかしら。――武蔵、貯金ある?」

「……お前の方が強い。少なくとも札束での殴り合いなら」

 

 

◆――――◆

 

 

 大和はカレーの一皿目を食べ終えて「よし。今日はたくさん食べるわよ」と張り切った。

「私の奢りだからか」武蔵は大和の皿を下げてすぐに用意していた二皿目を出した。

「違うこともないけど、そうじゃあないの。今日はこの後、気合を入れて行かないと」

「何処に?」

「天照大艦隊の売店。正体を暴くわよ」

「――ついに行くのか」

 

 大和と武蔵は『島攻略オンデマンド』なる商売に乗せられたことがあった。

 

 島攻略オンデマンドとはその名の通り、気になる島をオンデマンド攻略してしまうという海軍を嘲笑うかの如き軍事商品である。大和がヤーナム島に頭を悩ませていた時に営業のイムヤが話を持ちかけ、また武蔵の元には島を攻略するフィクサーを提供しないかとゴーヤが現れた。

 

 武蔵は大金と引き換えに長月を送り込もうとするも思いとどまり、結局、ヤーナム島は他の誰かの手によって綺麗サッパリ無害化された。現在のヤーナム島は艦娘・深海棲艦の双方から人気のまるでない泊地になっている。

 

 送り込む予定だった長月は恐ろしく強い。その長月に代わる者を用意してのけたのが、イムヤとゴーヤを遣わした天照大艦隊の売店である。ただの売店であるはずがなかった。

 

「何か新しい情報が手に入ったのか」と武蔵は訊いた。

「ちょっと調べたのよ。――あそこの売店、アカシマートじゃあない」

「ああ。それで?」

「それで、って、それだけだけど」

「いいか大和。グーグル先生に数分質問したことを『調べた』とは言わない」

「武蔵こそどうなのよ。長月ちゃんには聞けたの?」

「長月にとっては、ずっと利用してきた普通の売店、だそうだ。特別変わったところと言えば品揃えがやたらと充実しているくらい、とか言ってたな」

「ぜんぜん情報無しじゃあないの。ほら、だから私が直接行って確かめないと」

「行くなら怪しまれないように振る舞えよ。長月以上の化物が出て来そうだ。そうなったらお前は……長月があの強さだ、証拠隠滅のために文字通りフィクサーに消されかねん」

「そうやって勘繰りながら行ったら余計に怪しい顔になっちゃうでしょ。あくまで私は天照隊の売店に買い物に行って、ついでにちょっと世間話をするのよ」

「何を買うつもりだ?」

「武蔵のグッズ。マグカップとか」

「……なんでだよ」

「だって改二になるんでしょう。じゃあ今のデザインが使えなくなってグッズも古いデザインのものはお店から消えちゃうわ」

「私の熱心なファンがいるかどうかは知らないが、お前がグッズを保存しておく意味はないだろう。というかやめろ。気持ち悪い」

「姉妹艦の思い出を残しておいてあげようっていう私の優しさが伝わらない?」

「伝わったから気持ち悪いんだ」

「プッ。照れ屋さん♪」

「売店で消されてもお前のことは探さないからな」

 




ダッシュで書きました。
本編『叢雲の薬指』なんかが特にですが、さいきん仕事が非常に雑になっている気がしてなりません。
とにかく書いて出す、これってなかなか難しいですね。
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