撃沈王の土産話   作:vs どんぐり

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あの子らのグラが欲しい

 猫喫茶ハングド・キャットの猫様方はとても賢い。

 ならばこんな取引も可能なんじゃあないかしら、そう大和は考えた。ボックス一箱開封につきCIAOちゅ~る一本の報酬でバニースカサハの脇腹を連打してもらう。

 

「ボックス十箱なら十一本、いえ十二本におまけ! どうかしら~? 決して悪い条件じゃあないと私は思うのよねぇ~」

 

 いつも武蔵の側にいる茶猫――或いは、いつも武蔵の前でカレーを食べている大和の側にいることにもなる茶猫は、それはもう賢い。大和がほれほれとちらつかせる未開封のCIAOちゅ~る三本を奪って他の客のところへ行ってしまった。コイツはただ店に金だけ落とさせればいい、と武蔵に教わるでもなく覚えている。

 

「……ええ、ええ。知ってましたとも。ただ言ってみたかっただけで? 周回ですって? そんな暇なかったですし?」

「けっこう許されたと思うけどな」とは武蔵。「昔なら引っ掻き噛み付きのコンボだったろう」

「許された、って何がよ。私の何が悪いのよ」

「存在」

「匂いとかなら納得できたわ。……いえ、それはそれでイヤだけど」

 

 

◆――――◆

 

 

「――という感じでカウンターを挟んで、私服姿の私はカレーを食べていて、茶猫様はじっとしていて、エプロンを着た武蔵は無駄にコーヒー豆をいじっているでしょう。いつも」

「たまには食前食間食後のコーヒーも注文しろ」

「そこでちょっと考えてみて頂戴。あ、お冷おかわり」

 

 なにも大和は店をコケにしたいわけではない。コーヒー代をケチっているわけでもない。ただただ、武蔵のオリジナルコーヒーが不味いのである。

 

「私と猫と武蔵が、例えば、斑鳩と球磨(アサシン)と売店のお姉さん極楽に入れ替わったら、どうかしら、彼女らを想像できる?」

「斑鳩と球磨と極楽がいる。それ以上の何がある」

「じゃあ聞くけど、斑鳩の顔ってどう? 美人系? 可愛い系? 芋系?

 身長は?

 体格は?

 髪型は?

 マルチロール空母の装備って?

 どんな私服が似合いそう?

 図鑑の写真では棒立ち? それともジョジョ立ち?

 非人道的タブレットを普段どうやって持ち歩いている?

 雰囲気は? ご機嫌な雰囲気だと良いのだけど」

 

 

◆――――◆

 

 

「ほら、私たちってば今から暗殺者と全面対決するでしょ」

「呑気に三皿目のカレー食ってる奴が対決するらしい。大食い対決か?」

「私の部隊では、海の方は扶桑に任せるとして――」

 

 撃沈王が深海棲艦との戦争を放棄している……のも八年目にもなれば少しくらいの失言も出るだろうと武蔵はスルーしてやった。ただ、扶桑の恨み節が武蔵の頭の中でボソボソと再生される。こんなことを言いそう、ではなく絶対に言うと断言できた。

「はぁ……空はあんなに青いのに」

 

「でも激突前にちょっと待って。お付き合い頂く読者諸氏はただ混乱するばかりだわ。あの神州丸、全方位にトゲトゲしてる子とその背景はギリギリ無理矢理そんなものだと理解頂くしかないとして――今後、やっと重要な意味を持ってくるドーカンシャ(洞観者)達の存在、せめてものグラフィックすらないのがあんまりに意味不明を助長しているとは思わない?」

「そうだな。艦これに変なものを持ち込めばBANは免れない」

「今回の場合、話を進めるのに球磨や極楽についての説明が……今更すぎるけれど……欲しいにもかかわらずよ。ただの『長袖の球磨』ですら、ちょっと想像しづらい。姉妹艦タマ改二の迷彩制服が寒そうな色をしているのに半袖でしょう。タマに長袖が収まりが悪いのなら球磨もまた然りだわ」

「極楽の方に至っては『そもコイツは誰だ』状態だからな」

 

 我が意を得たりと大和はスプーンを武蔵にビシッと向けた。

 

「だから私は考えたの。球磨(アサシン)と極楽、ついでに斑鳩のグラフィックが説得力を持たせるのに必要だなって。あと、カッコイイ球磨に釣られて表紙買いならぬ表紙ブックマークしてくださる諸氏もきっといらっしゃるわ」

「それ、後者がメインだろ」

「当然でしょう。ところでお冷まだ?」

 

 

◆――――◆

 

 

「困ってることは大きく分けて、三つ」

 

 カレーは四皿目。大和が来店した時に席を埋めていた客らはとっくに別の顔触れになっていた。

 

「一つ目。――簡単に言える範囲で、球磨はアサシンクリードコスプレ娘でしょう。空母斑鳩は表情豊かな深海棲艦空母ヲ級、髪型はにゃしぃと言わない方の睦月ちゃんを意識したって五年も前に言ってた。この二人はまあいいわ。でも……武蔵ならどう? 戦艦極楽、アイツの外見的特徴をどう表現する?」

「……こう……なんだ……氷雪よりも秒速490メートルの3.57マグナム弾を信じている雪女?」

「今そのキーワードで少し画像検索してみたけれど全然それっぽいのが無かったわ」

「だろうな」

「困ってること二つ目。第06話【ラックレッサー山城】だけ表紙が作られているけれど、Paint.NETとマウスで頑張った結果がアレ。初期家具のみかん用段ボールの落書きにも負けるわ」

「よくよく考えるとあの落書き、いったい誰が描いたのか闇が深い気がするな」

「困ってること三つ目。もう一度Paint.NETで頑張ろうにも、今はマウスを捨ててトラックボールを使っている。お絵描きなんてとても無理。遺伝子レベルで細かい操作に慣れられない。――ああそれと、言いながら思い浮かんだわ。絵が上手な方に『お仕事』を依頼するのはナシね」

「うむ。現実逃避先にまで『お仕事』を持ち込むと第30話の私のようになるからな。……はぁ……」

 

 

◆――――◆

 

 

 説明不要のフリー素材集、いらすとや。最早「こんな素材あるかなあ」と疑うほうが愚かというもの。

 武蔵の言う、氷雪よりも秒速490メートルの3.57マグナム弾を信じている雪女、も素材を合成して作ればいい。

 何より規約の範囲内での使用ならば話が波立つ事故がないのが良い。

 

「……でも、違う」とは大和。「極楽はこんなに、ふんわりしてない」

「フリー素材に文句言っている阿呆がいるぞ」

「一人称は『我』で、

 イムヤ達の師匠で、

 磯風ちゃんに丁寧語を使わせて、

 もし春風ちゃんが逃げなかったら本気で圧殺していて、

 かつての仲間も戦艦ミズーリで圧殺しようとした、

 マグナム弾を信じている雪女。

 ……本気で素材を漁って頑張れば作れそうなのがすごいわよね、いらすとや」

「極楽(いらすとやVer.)が完成する前に頑張るベクトルを間違えていると気付くだろうがな」

「それを言うなら、極楽なんかのために頑張るのがそもそもの間違いだわ」

「それを言うなら、話を振ったお前がそもそもの間違いだ」

「自分の物忘れを棚に上げて言う姉妹艦がここにいまーす」

「は? 私が何を忘れたと?」

「お冷はまだですかぁ? カレー五皿目の前に潤いが欲しいんですけどぉ?」

 

 

 

 

氷雪よりも秒速490メートルの3.57マグナム弾を信じている雪女

https://i.imgur.com/jm180Nx.png

(手元に.357マグナム銃が無かったので.44マグナム銃で代用)

 

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