撃沈王の土産話   作:vs どんぐり

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なお作者は第6章で戦力と備蓄のバランスが取れずに停滞している模様。
しかし祥鳳・山城を改にする目標を達成したため満足しちゃってます。

祥鳳カワイイヤッター!


近況報告という名目の愚痴

 ヤーナム島の泊地化計画、あれは我ながら上手く事を運んだものだと大和は彼女にしては珍しく自画自賛していた。

 

 ワークショップなど知ったことではなかった。彼女が(フィクサーを雇い)島を無害化したのだから泊地づくりまで好きなようにすることに誰にも文句は言わせなかった。とにかく人と施設を置いて自分だけの泊地を――そこまで自分勝手にするつもりはなくとも、なかなか難儀な物件をカタチにする作業を彼女は少し楽しんだ。

 

 物流や建築、インフラなどについては『撃沈王』の名を使えば想定よりも楽ができた。血の海を恐れるのは直にそれを浴びる艦娘くらいで、船に乗ってしまえば恐怖は多少薄れるらしかった。まずは空っぽの泊地が、十全とは程遠い質素なものであっても出来上がった。

 

 問題は艦娘と、責任者となる提督集め――これも運が大和に味方をした。

 

 初月を預けた練習巡洋艦の元には多くの艦娘が集まる。その中には「はい! 今すぐにでも泊地の初期艦になりたいです。神風型一番艦、神風が絶対に拝命します!」と言い切った駆逐艦がいた。艦娘になってまだ日が浅くヤーナム島に先入観を持っていないことも好都合だった。

 

 誰を提督にしようかと顔と名前を知っているクズ男共を頭の中で選んでいると、このような話を偶然耳にした。

 

「陸軍を追い出されても権力が欲しい馬鹿がいるらしい。艦娘と同じ機能持ちらしいが艦娘にはなりたがらないだと。がめつい奴だ」

 

 大和はその元陸軍人に話を持ちかけた。今なら泊地の頂点の席が空いていると。元陸軍人は二つ返事で書類にサインをした。

 

 こうしてトントン拍子でヤーナム泊地は、人類の新たな拠点となった。

 

 規模こそ小さく、海域作戦に組み込むには何もかもが不足しているものの、大和の胸は達成感で満たされた。

 

 

◆――――◆

 

 

「それがまさか……まさかあの斑鳩に壊されるとは思いもしなかったわ」

【大和:Lv.155 → 165】

 

 ハングド・キャットの猫は賢く、カレーを食べている大和に近づきはしてもカレーを食べようとはしなかった。武蔵の相棒、茶猫は最高の煮干しを求めるグルメハンターである。

 

「床が一面抜けた程度で。それも二階の床ならば、下の部屋の天井が高くなったと思えばいいだけだろう」

 

 要求される煮干しの質があまりに高く(安物は茶猫が責任を持ってゴミ箱に捨てる)、武蔵は普通のキャットフードで我慢させる方法を模索していた。頭の中は煮干しとキャットフードを行ったり来たりしている。今もぞんざいに挽かれているコーヒー豆からどのように不味い飲み物が淹れられるかは客に飲ませてみなければ分からなかった。

 

大和「誰が苦労してヤーナム泊地をつくったと思ってるのよ」

武蔵「お前、シムシティ感覚で遊んでいただろ」

大和「遊んでなんかいません! 照月にも似たようなこと言われたわ。マインナントカみたいだとか何とか」

武蔵「大和。お前の仕事はヤーナム泊地の艦隊が引き継いだ。もうお前の仕事は終わったんだ」

大和「引退したみたいな言い方しないで」

武蔵「だったら次の仕事に取り掛かるんだな。レイテ沖海戦、まだ先の作戦概要を聞いていないぞ」

大和「簡単に言うわね……今の作戦だって詰将棋みたいに戦略を練ったのよ? 結局はもう、とにかく敵部隊をやり過ごして標的だけを叩けって感じになっちゃって。あれで良かったのかなって――ここだけの話よ。ちょっと後悔してる」

武蔵「叩くべき標的があるのだから、その目標達成のための手段を選んでどうする」

大和「いや、ほら。劇場版の。もしかしたら撃沈させることで救えた魂もあったかもしれないじゃない。今までは殲滅こそ最短距離だったから気にしてなかったけれど、敢えてスルーしちゃうのはなんだか……ねえ?」

武蔵「ああ――報酬でもチラつかせておけば何処かの艦隊が救ってやるんじゃあないか。エクソシスト任務だ」

大和「そう言われると、本当にそんな思想の艦隊がありそうよね」

 

 

◆――――◆

 

 

武蔵「ところで床を壊したという斑鳩だが、その後は何か変わりないか」

大和「大規模作戦で忙しくてしばらく天照隊には寄ってないけど。どうかしたの?」

武蔵「うむ。実はな。天照隊の総旗艦に洞観者の存在がバレた」

大和「実はな、って言ってるけど武蔵ね。今まで全国の誰にもバレなかったことが奇跡なんだからね。この機会に公表しちゃえば? 撃沈王がマイクの前で証言してあげてもいいのよ」

武蔵「洞観者は異常な存在だ」

大和「知ってる」

武蔵「青い炎は深海棲艦を連想させる。同時に炎の性質――個々の能力は大きな関心を集めてしまう。私が恐れていることはな。長月や斑鳩のような『艦娘という枠の外で戦える能力を持つ者』が海で暴れることだ」

大和「それも聞いたわよ。何度も。実は深海棲艦側にもドーカンシャみたいな異常個体がいて、こっちが長月ちゃんみたいな最終兵器を持ち出したら向こうも同じことをする、でしょ」

武蔵「頭数は深海棲艦の方が圧倒的に多いんだ。あり得ない話ではない」

大和「武蔵の考える深海棲艦の異常個体って、例えば鬼姫クラスとは全然別物?」

武蔵「あの程度で異常と呼ぶのもな。極端な話になるが、確認が取れている鬼姫クラスの個体はどれも長月に瞬殺されそうだと思わないか」

大和「……必死になって戦ってる私たちが馬鹿みたいじゃない。その言い方」

武蔵「忘れるなよ、この武蔵も現役の艦娘として戦っている身だ。我々が必死こいて戦っているバランスを崩すような真似だけは避けたい、と私は言っている。いいかバランスだ。戦局がどちらかに傾くのは当然だが、崩壊してしまえば少なくとも大和型の手に負えないぜ」

大和「慎重ねえ。時には駆逐艦一人を送り出すために多数の犠牲を払うことも必要なのよ」

武蔵「今から劇場版のような異変が起こってみろ。レイテ沖海戦と重なって地獄だぞ、お前の仕事が」

大和「その時は本気で長月ちゃん一人に任せるわ」

 

 

◆――――◆

 

 

大和「ねえ。ドーカンシャの中に『ジュウオウ』を名乗る艦娘っている?」

武蔵「縦横? 獣王?」

大和「書きは知らない。台湾をちょっと過ぎたあたりでねー変なイチャモン付けてきた艦娘がいたのよ。この撃沈王に」

武蔵「いや知らないな。そのジュウオウが何だって?」

大和「それがねえ。海外艦たち六人の部隊が私たちの部隊を見つけるなりアレコレ言ってきた後で攻撃してきたのよ」

武蔵「お前、アレコレの部分が重要だろうが」

大和「そうじゃなくて、『「アレ」から得た力を使ったところで――!』とか、こそあど言葉が多すぎて会話にならなかったのよ。だから取り敢えず砲撃で応じるしかなかったわけ」

武蔵「レイテを前にしての良い演習だったな」

大和「無駄弾よ」

武蔵「で、その海外艦たちは? お前の作戦の邪魔をしたんだ、罪は大きいぞ」

大和「逃げられた。所属不明。私たちを見るなり『ジュウオウ』と決めつけて襲ってきた――海賊? にしては私たちより身形が綺麗だったのよねえ」

武蔵「じゃあ何かの勘違いだったんだろう。味方艦娘と深海棲艦を見間違える話も年に十数件あるし」

大和「大本営直属の部隊を襲う艦娘なんてねえ。でも私たちが大規模作戦が続く中で海賊と追いかけっこをやってるわけにはいかないし――ねえ? ドーカンシャのまとめ役である武蔵さん? ちょっと空いている手はないかしら」

武蔵「阿呆が。洞観者をそんなくだらない事に巻き込むな」

大和「くだらないって何よ! これは『艦これ』と『アズールレーン』の戦争なのよ!」

武蔵「分かっているなら貴様が行け!」

大和「嫌よ! 一航戦の二人を揃えるのに二週間も3-4を周回し続けたのよ!?」

武蔵「もう行ってやがったぞコイツ……」

 




文字が見づらい……登場人物が二人しかおらず台詞しかない場合、どう書くのが正解なんでしょうね。
合間合間に『「――」と言って武蔵は大和を殴った』みたいな雰囲気を挟むのも(面倒なので)やりたくないですし。難しいですね。
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