撃沈王の土産話   作:vs どんぐり

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魔砲・アルマゲドン!

「ねえ。大和型に必殺技のひとつもないのって締まらないと思わない?」

 

 カレーを一皿食べ終えたところで大和は唐突に言った。

 ここで「思わない」と即答してしまうのも芸がない、そう武蔵は思い、カウンターを挟んだ側で皿を磨きながら話を泳がせた。

 

「利害の一致でね。海外艦隊と組んだ時に思ったのよ。私たちも何というか――『撃ち方始め!』みたいな堅苦しさを抜いた方がいいんじゃあないかって」

「海外艦とて『Fire!』くらいのものだろう。大差ない」

「違うのよ、そうじゃあないのよ武蔵。最強の戦艦も流行という波に乗れなければ旧式艦扱いは免れないわ」大和はそう力説した。「時代という名の錆はけっこうしつこくて頑固よ」

 

 戦場の話ではないが武蔵にも丁度思うところがあった。猫、コーヒー、カレー、そして艦娘を売りとしているこの喫茶店ハングド・キャットも黙っていればすぐに飽きられてしまう。数字で管理する武蔵には耳の痛い話だった。

 

「観艦式の様子をテレビで店内に流してみる、か……アリかもしれん」

「黙ってパレードしてても面白味がないって話なの。もっと最強の戦艦たるを世に分かりやすく見せつけないと」

「お前も随分と俗っぽいことを言うようになったものだ。YouTuberになる前に一声かけてくれ。私は武蔵型一番艦になるから」

「武蔵はいいわよね。ドーカンシャはいいわよね。ズバリ分かりやすい特殊能力があるんだもの」

「お前……深海棲艦じみた青い炎を迂闊に燃やせるか」

「少なくとも斑鳩はガンガン能力使ってるわよ。まあ今は少数派より自分たちの話よ。あの海外艦隊と比べられても地味だと言われない必殺技」

「あの海外艦隊、が分からないから話のしようがないな」

「アズールレーン」

「撃沈王がつまらんライバル心を燃やしていると知られたら、それこそ大和型は時代遅れの旧式艦扱いだ。姉妹艦として早急に目を覚まさせてやる必要があるか?」

 

 ここで大和は二皿目のカレーにとりかかった。

 

「ねえ武蔵。ちょっと叫んでみてよ。『魔砲・アルマゲドン』って」

「……必殺技を欲しがっていたのはお前だろう。私は構わないぞ、この店内で撃沈王が『魔砲・アルマゲドン』と叫んでも」

「嫌よ品がない。でもほら、武蔵なら似合うと思って」

「ああ良く知っている。貴様はそういう奴だ。信濃もお前のことを軽蔑してやまないだろうよ」

「勘違いしないで欲しいわ。私は大和型のことを思って海外艦隊を観察してきたの。少なくともキャラクター性で深海棲艦の鬼姫クラスに圧倒されているようじゃあ終わる戦争も終わらないわ」

「お前、自分の立場を弁えての言葉か? 冗談でも許されんぞ」

「今はいいの」大和はカレーを一口パクついてから言った。「武蔵と猫しか聞いてないから。それに少なくとも間違いではないと個人的には思ってるわよ、キャラクター性について。敵の見た目と挑発や恨み言に押され過ぎなのよ、私たちは。砲艦外交じゃあないけど私たちも強烈なキャラクターを持って挑めば、敵が放つインパクトにいちいちおののく手間も省けないかしら」

「そのために『必殺技』という分かりやすいシンボルが欲しい、と」

「そういうこと」

「『魔砲・アルマゲドン』と叫びたいと」

「いえ別に……やっぱり私にはそういうの、似合わないし」

「大洋に名高い撃沈王が尻込みしてどうする。やってみなければ道は開かん」

「そう……かしら?」

「ものは試しだ。この上なくシンプルな挑戦だろう」

「そ、そうよね。チャレンジ精神を忘れちゃあダメよね」

「この武蔵を敵と思え。さあやってみろ」

 

 大和はスプーンを置いてひとつ深呼吸をした。全砲門を武蔵に向けて開いたイメージを持ち、右手を鋭く正面に掲げた。

 

「魔砲・アルマゲドン!」

 

 ハングド・キャット店内に響いた咆哮は他の客と猫をかなり驚かせた。これこそ大和が欲した、最強の戦艦が放つ衝撃である。

 叫び終えた大和は右手をゆっくりと下ろし、そのまま両手で顔を覆った。

 

「死ぬほど恥ずかしい……」蚊の鳴くような声だった。

「おい私まで恥ずかしくなったぞ。というか、そもそも何故さっきの台詞を選んだんだ」

「だって……巡洋艦の子は堂々としてて様になってたし」

「巡洋艦の台詞かよ。超弩級戦艦が聞いて呆れるぜ」

「私、もういい……。普通の撃沈王に戻る」

「ああ普通にしていろ。面倒臭い奴め」

 




最近思うところがあってTwitterを始めました。ええ今更です。
サークル『一ノ傘亭』を見かけたらよろしくお願いします。
そして最近思うところがもう一つあるのですが……ファン小説はこれくらい(↑)の短さで中身もふわっとしていて、書いては投げ書いては投げした方がよいのではないでしょうか。
サイクルを上げるのもひとつの技術だと、これも今更ですが考えたのです。
とは言いつつ時間に追われてばかりなので、とりあえず試作したのが今話でした。
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