太平洋上空15000フィート。海のように青い空を突き刺すように二機の戦闘機が飛行していた。
領海内に正体不明の複数の船が侵入、これに対し防衛措置をとれ。
これがこの二機に与えられた任務だった。
「雲が暑いな。」
「高度を下げますか?」
「いや、レーダーに反応がない。まだ現状高度を維持だ。…すまないな、初めてのスクランブルが面倒な目標で。」
「了解。…いえ、どのような相手でもやることは変わりません。」
「…そうかい。」
通信を切ってから一番機の操縦士は小さくため息をついた。
ここ一か月正体不明のスクランブルが急増した。こいつらが現れると必ずと言っていいほど分厚い雲が発生する。
「レーダーに反応がありました。距離4000。」
「…近いな。」
そして通常の敵に比べてはるかにステルス能力が高い。
「高度を下げる、付いてこい。それと、火器管制をアクティブに。…戦闘に備えろ。」
「了解。」
操縦桿を操作し分厚い雲に飛び込む。
乱気流に揉まれながらも高度計と水平計に集中して今の自分の機体、F-15イーグルがどのような姿勢を取っているのかをイメージする。
そして分厚い雲を抜け、濃紺の海が広がった。
「……!ブレイク!」
叫ぶと同時に右に急旋回ををした。その瞬間機体の下側を砲弾が通過する。
「一度距離を取るぞ、奴らの砲撃はそう遠くまで届かん。」
カリッと言う無線を切る音を確認して、砲撃元から距離を取り編隊を組みなおす。あちらが仕掛けてきたので、反撃措置を取ることができる。
「仕掛けるぞ、お前は左のちっこいのを狙え。」
「了解!」
レーザー照射式のミサイルを選択して迷わず発射スイッチを押し込んだ。
目の前をロケットの火が通りすぎる。
HUD上に映っているサークルに敵を捕らえ続ける。
通常の自動誘導システムを搭載したミサイルはこの敵には無効であることが分かっているため、着弾までこちらがミサイルを誘導する必要があるのだ。
「3…2…1…着弾確認。」
「こちらも着弾確認。」
すぐさまアフターバーナーを点火して高度を上げつつ攻撃効果を確認した。
船体に傷をつけることはできたが、損傷は予想以上に軽微だった。
「…固いですね。まるで昔の軍艦みたいだ。」
「もう一度やるぞ。」
「了解。」
左旋回をしようとした瞬間衝撃が襲う。
「…ぐ、海中に隠れてやがったか!?」
突然現れた敵の砲撃が機体に当たったようだ。あちらの攻撃手段は砲撃などの一昔前の方法だ。それゆえ、こちらのレーダーには映らない。
皮肉なことに原始的な装備こそがこちらの最新式の装備に最も有効なのだ。
目視で損傷を確認。
右の主翼部分から火が噴出していた。操縦桿の反応が悪いことから、操舵翼もやられているようだった。
「こちらレッドオルカ、敵砲撃被弾。中規模の損傷。状況の継続は不可能…戦線を離脱する。」
「了解。気を付けろ。現在こちらのレーダー上に複数のアンノウンを確認。データを送る。」
基地から送られたデーターを画面に呼び出して確認する。
「か、囲まれている…?」
現在二機を取り囲むようにレーダーには敵を示す赤い点が表示されていた。この状態で確実に離脱をするためには一つしか方法がない。
この損傷状態でまたあの雲に突っ込むのか…。
「無茶です!その状態で乱気流に飛び込んだら…!」
「ではこのままあの集団に突っ込めと?」
「それは…。」
二番機の苦悶する声を聴きながら覚悟を決めた。
「安心しろ、イーグルがそう簡単に堕ちたりせんよ。」
自分にそう言い聞かせるようにどす黒い雲を睨みつけた。
「こちらヒーメル・ドライヘ…着陸許可を願います。」
航空自衛隊浜松基地。滑走路へ侵入してくるイーグルの姿は一機しかなかった。
航空自衛隊が確認したこのアンノウンを対処するために、海上自衛隊がすぐさま行動を起こした。しかし、最新式のレーダーやミサイルをもってしても効果は無効と言っても良かった。
極めつけは相手の砲撃の威力であった。装甲の薄い海自の船はことごとく打ち抜かれ、撃沈されていった。
アンノウンの進行は止まらない。お偉い方が頭を抱え始めたその時、一つまた一つと赤い点が消失していった。
一体何が起こっているのだろうか?指令室は一変してざわつき始めた。
全てのアンノウンが消失したところで、哨戒機を飛ばさせた。しばらくして哨戒機からの映像が送られる。画面には一昔前の日本の軍艦の姿があった。
彼らを驚かせたのは無線から聞こえてくる声が、その艦船の上にいる者の姿が、まだ年端もいかぬ少女のものだったことであった。
これが彼女たち艦娘の最初のコンタクトであった。
それから数年がたち―
航空自衛隊浜松基地。
”最後の飛行”を終えたイーグルがドック内に入ってくる。
「よ、お疲れさん。」
「大津、来てたのか?」
「そりゃそーだ。この基地の最後の日だぜ?」
本日をもって浜松基地は解体される。理由は”海軍”に殆どの資金が流れているからだ。
主要基地を除くすべての陸空自衛隊基地は解体されることが既に決まっている。この浜松基地も持っていた方だが、とうとう最後の日を迎えることになる。
「コイツもお役御免か…。」
同僚と共に最後の飛行を終えた相棒を見つめる。
「それはそうと麻木、お前海軍に移るんだってな。」
基地が解散された自衛官たちは一応の優遇措置が取られていた。ほとんどが自衛隊とは無縁な職への再就職だが、稀に海軍へ移籍すると言う事例もあった。
「ああ、何せ空を飛ぶことしか頭にない大馬鹿野郎だからな。」
今までの実績を買われて海軍側からの要請だった。
「よく言うぜ、お頭も良いくせして。俺は御免だね。わざわざ時代遅れのポンコツに乗るなんてまっぴらだ。」
「そう言うなって、今の日本を守っているのは紛れもなく彼女たちなんだぞ?」
その時基地のサイレンがけたたましく鳴り響いた。
「おい、これ空襲警報だぞ!」
空を睨むと複数の黒点が見える。敵の航空機だ。
「「総員退避!!」」
「だめだ…近すぎる。」
小さくつぶやくと同時に大きな衝撃波が襲う。爆風に飛ばされ、何かに体をぶつけた瞬間に意識を失った。
「……うぅ。」
全身から感じる激痛で目を覚ますとそこは瓦礫の山だった。
「大津…?」
少し先に大きなコンクリートの塊がみえる。その下に体を半分潰された同僚の姿があった。彼だけじゃない、見渡すと長年世話になったメカニックたちも皆似たような惨状だった。
これは現実なのだろうか?
火災による熱気と煙のせいで意識が朦朧としていた。あまりにも突然に当たり前の景色が地獄絵図と化したため、現実を受け入られないでいた。
「おい、生きてるやつはいるか!?」
瓦礫をかき分けるように、一つの人影がこちらへ近づく。
「おい、お前!大丈夫か!?」
一人の少女が肩を掴む。必死の形相で麻木の顔を覗き込んだ。
「ああ、俺は大丈夫だ。…ほかに生存者は?」
少女は静かに首を横に振った。
「そうか……。」
フッと力が抜け、麻木は再び意識を失った。
「おい、しっかりしろ!…おい!」
そんな声が徐々に遠のいていくのだった。
「鎮守府まで。」
タクシーを捕まえて行先を伝える。一瞬運転手の身体がピクッと反応し、不安げな表情を浮かべたが、ゆっくりと車が進み始めた。
長いトンネルを抜けると、武骨なゲートと警備員が見えてきた。
「ここまでで良い。ありがとう。釣りはいらない。」
多めに金額を払いタクシーを降りる。運転手はほっとした表情を見せてから、急いでUターンをして去っていった。
警備員に許可証を見せると重厚な音を立ててゲートが開かれる。
しばらく歩くと立派な作りの建物が見えてきた。今の日本の砦である鎮守府だ。ここで艦娘が運用されている。
これまた立派な門をくぐり、建物に入る。
レンガ造りの外壁や木造の廊下など西洋風建築物でありながら、和と洋が見事に調和されている。
途中艦娘と思しき緑色の着物を着た少女に提督室がどこかを尋ねる。
「提督室~?この階段を上がった二階の奥の部屋だけど…良かったら案内するよ。」
親切な少女に従って廊下を進む。
「はい、到着。ここが提督室だよ。たぶんいると思うけど…提督~いる~?」
彼女の様子から察するにここの最高責任者は随分と部下に親しまれているようだ。
扉を開けると、そこは大きな部屋だった。窓からは美しい海が見える。
そして真ん中の机にいる人物が、この鎮守府を運営している”提督”であろう。麻木はその人物の正面に立ち敬礼をする。
「第一航空団所属の麻木龍一です。本日付でこちらへ配属となりました。」
「まあ、座ってくれ。遠路は疲れただろう?とりあえず茶でも飲もう。」
「はい、失礼します。」
促されソファに座る。程なくして秘書と思われる女性がお茶と羊羹を用意した。
「まあ、食べてくれ。この羊羹は僕のお気に入りでね。」
「頂ます。」
羊羹を一口食べてからお茶をすする。羊羹の上品な甘さがお茶の苦みを引き立てる。
「…美味しいです。」
「それは良かった。では自己紹介から始めようか。僕がここの鎮守府の提督を務めている畠山厳だ。」
「引き抜きの件、感謝しております。」
「本当に良いのかい?僕が言うのもなんだけど。」
「もとより飛ぶしか能のない男ですから。…それに浜松の二の舞を起こさないためにも―」
それは嘘偽りのない言葉だった。麻木の眼を見て畠山は静かにうなずく。
「浜松空襲…唯一の生き残り。君は僕よりも強く、太い芯を持っているようだね。」
「恐縮です。」
「ようこそ、我が鎮守府へ。君を歓迎するよ。」
鎮守府を案内すると言うので、麻木は畠山の後についていき構内を歩く。
「ここが食堂、ここに所属する者全員が利用している。もちろん提督もだよ。ああ、丁度お昼時だね、食べていこう。」
ざるうどんを注文してテーブルにつく。
「あれ、提督。こちらの方は?」
「本日付でここに異動してきた麻木くんだよ。元は空自に所属だったんだ。」
赤と青の弓道着を身に着けた二人が話しかけてきた。
「空自…ということは艦載機に?」
畠山が頷く。
青い方の女性は「…いいけれど」と言って麻木の隣に座った。置かれたお盆を見て驚愕する。丼用の器にこれでもかと盛られた白米の量に。
「提督、こちらの方々は?」
「僕の隣にいるのが赤城さんで、君の隣にいるのが加賀さんだ。二人ともここの主力空母だよ。」
その名前を聞いて麻木は目を丸くした。
赤城と加賀…とてつもないビッグネームじゃないか。
そんな二人と昼食をとっていることに、多かれ少なかれ肩身の狭さを感じる。
まだお代わりを続ける彼女たちに別れを告げ、次は構内演習場へ向かった。
ドォォン…ドン、ドォォン…
まるで雷鳴のような砲撃音が腹の奥を響かせる。
「今は麻耶、天龍、木曾が対空訓練をしてるはずだよ。」
沿岸部では三人の人影が”海の上”に立っていた。驚くことに彼女たちは艤装を展開することで海の上を立ったり、歩いたり、時には滑るようにして水上を移動することができるようだ。
そのうえ艤装を完全に展開すると、本物と同様の艦船を出現させることができるのだ。政府が本腰を入れて彼女たちの研究を行っているのも頷ける。
上空には戦闘機が複数飛んでいて、三人に向かって急降下を仕掛けていた。
「よし、ラスト行くぞ!」
一人が叫び、一斉に対空射撃を始めた。
まるで花火のような弾丸の雨に、一機また一機と塗料が塗られていく。あっという間に全ての機体が真っ赤に染められた。
「流石…容赦のない弾幕だな。」
「でもあれじゃあ艦載機たちのレベル上げにはならないんじゃ…。」
「へっ、落とされる奴が悪いんだってーの。さっさと上がるぜ。」
三人が港に戻ってくる。
「お、提督じゃねーか。珍しーな俺らの訓練見に来るなんて。」
眼帯を付けた短髪の少女が真っ先に話しかけてきた。
「お前らの部隊に配属になるであろうから連れてきた。麻木君だ。」
「ほ~う?」
眼帯の少女はまじまじと麻木を観察する。
「麻倉2等空尉です。よろしくお願いします。」
「俺の名は天龍…フフフ、怖いか?」
麻木はこれまだ生きてきた人生の中で初めてされた極めて特殊な自己紹介に、戸惑いを覚えた。
「恐縮です。」
そう答えた瞬間、天龍の背後で立っていた二人が吹き出した。
「天さんをそう受け答えたのは始めただな。俺は木曾だ。よろしく。」
「木曾、おそらくお前の零偵に乗ることが多いと思う。」
「よろしくお願いします。」
麻木が右手を差し伸べる。
「ふん、艦載機など必要ないけどな。」
言葉で突っぱねるが、握手はしてくれたのだった。
「で最後に麻耶。対空射撃に関してはトップクラスの実力を持っている。演習ではなかなか手ごわいだろう。」
「麻耶様だ。よろしく…な。」
麻木の顔を見て、得意げな表情を一変させ麻耶の顔がどんどん険しくなっていく。
そしてきびつを返してその場を去ろうとした。
「あ、おい麻耶、待てって!どうしたんだよ?」
「天さん!…あ、失礼するお二方。」
木曾が敬礼をしてから二人を追いかけていった。
「麻耶…あぁ、そうだったな。よし、気を取り直して次に行こうか。」
研究開発棟、ドックなどを見学して回り一通りの鎮守府内の案内が終わった。
「これが君が今日から寝泊まりをする部屋の鍵。第二寮に行けば分かるはずだ。」
「了解です。これからお世話になります。」
「…ここの生活に慣れるのも大変かもしれないが君には期待している。」
「身に余るお言葉です。それでは失礼します。」
「ああ、待った。これが君の階級章だ。」
中尉の階級章を受け取り、麻木は提督室を後にした。
「第二寮…ここか。」
隣の第一寮に比べて第二寮はひどく寂れた印象だった。
明かりは点いているのだが、人の気配が無い。
渡された鍵の番号の部屋二〇一号室に入ってみるが、案の定誰もいなかった。
「……どういうことだ?」
「知りたいか?」
突然背後から声が聞こえてきた。振り返ると天龍と木曾が立っていた。
「ここは主に空自から転属してきた奴らが入る寮なんだけどな、今はお前以外誰もいないんだ。」
「…なぜですか?」
「麻耶のヤツが配属されてからどんどん辞めていってな…。原因はアイツの地獄の対空訓練のせいだろうな。」
「彼女の気持ちも分からなくはないが…。」
「そんなに厳しいのですか?」
天龍と木曾が遠い目をした。麻木はその表情から大体の事は察した。
「そうだった用事はそんなこと言うためじゃなかったな。木曾、まだ時間は大丈夫だよな?」
「ああ、十分余裕があるよ。」
二人は首をかしげる麻木を引っ張るようにして食堂へ連れて行った。
食堂に着くと、大勢が席に座っていた。麻木が姿を現せた瞬間何かを待っているような目から、パッと表情を変化させる。
「それじゃあ麻木さんの歓迎会を始めるよ~」
「ほらほら、主役はこっち来て!」
緑色と黄色の着物を着た少女たちに促され一同の視線を一斉に浴びる。
小さな子供から女性まで様々だが、共通してみんな女性であった。艦娘と言うのだからそうなのだろうと頭では理解していたが、いざ目の前にしてみると嫌というほど実感させられた。
「本日付でこちらの鎮守府へ配属となりました、元第一航空団所属の麻木龍一中尉です。このような催しを開いていただき恐縮です。」
「かったいな~まあいいや。みんな~久しぶりの外の人だからってはしゃぎすぎないでね。特にそこの重巡!気を付けるよーに!」
黄色い着物を着た少女がビシッと麻耶を指さす。
「わーってるよ、うっせーな。」
それに対して麻耶は頬杖をついてそっぽを向きながら、そっけなく答える。
「んなことより飛龍、さっさと飲もうぜー。」
「はいはいそれじゃあみんな飲み物もって~。さ、麻木さんよろしく!」
「…乾杯。」
そして麻木の歓迎会が始まったのだった。
重巡、駆逐艦、戦艦、空母、軽巡と一通り回って最後に天龍や木曾のいるテーブルに来た。
「お、ようやく来たな。ま、座れよ。」
天龍の横に座ると早速酒瓶がやってきた。天龍に似た色の服装を来たスラリとした女性だった。
「初めまして龍田だよ~。天龍型の二番艦、つまり天龍ちゃんの妹よ。」
そう言ってなみなみと酒が注がれていく。
「頂ます。」
それを躊躇なくスーッと飲み干していく。
「あの空母組と飲んだ後だってのにやるな。」
「それじゃあ球磨たちの酒も飲むクマー。」
そう言って再びコップに酒を注いでいく。彼女は軽巡洋艦の球磨で、木曾はその五番艦に当たるそうだ。
「これから木曾がお世話になるクマー。」
「いえいえこちらこそ…。あれ、そういえば麻耶さんは?」
麻木が食堂を見渡す。
「あーなんかいつの間にか消えてたな。」
「嫌われたニャー。」
多摩と名乗っていた少女がぽつりと呟いた。自分のせいだったかと麻木はうつむく。
「アンタの責任じゃねーよ。麻耶が勝手にキレて勝手に出てっただけだ。ほれ、まだいけるだろ?」
そんな麻木の顔を見て天龍がフォローをした。
「ありがとうございます。天龍さんもどうぞ。」
お返しと麻木も酒を注ぐ。それを何かの挑戦状と受け取ったのか天龍は酒を飲みほして「お前も早く空けろよ」と不敵な笑みを浮かべる。
しばらくして机に突っ伏す天龍がいた。
「お前…本当に人間かよ。うぅ…たつたぁ~」
「あらあら、天龍ちゃんったら~。」
すぐさま龍田が開放を始める。
「不死鳥の名は……。」
「…ひゃっはぁぁ」
「鎧袖一触…れす…」
「あ~格納庫…わぁ…。」
気が付けばすべてのテーブルの飲兵衛たちがつぶれていた。
「今日はいい酒だった。ありがとうとみんなに伝えてくれ。龍田。」
「なんだか口調も変わってるけど、そっちの方が良いかな~?これから一緒に戦ってくんだし、変な遠慮はいらないよ?」
「…了解。」
風呂に入った後に少し外を散歩してみることにした。
夜だと言うのに自主訓練に励む艦娘がいたり、提督室ではまだ明かりがついている。鎮守府はまだ眠らないようだ。
港まで行くと人影が一つ。
「こんなところで何をしてるん…ですか?」
「別に無理して丁寧にしゃべんなくて良いよ。アイツ等からも言われただろ?」
麻木は麻耶に聞こえないように小さく深呼吸をしてから一歩前に出た。
「あの時はありがとう。助けてくれて。…あの時の麻耶だろ?」
体育座りをしていた麻耶が立ち上がって振り返る。
「ああ、間違いなくその麻耶だよ。…で、なんでここに来た?」
「もう一度飛ぶため。」
「ふざけんな!!」
麻耶は叫ぶと麻木の胸倉を掴んだ。
「そんな理由なら旅客機のパイロットにでも転職すりゃいいだろ!なんで海軍(ここ)なんだよ!」
「…守るためだ。」
「だから!それなら空自にいろよ!なんでわざわざ最前線に来たんだよ!」
麻木は麻耶の拳にそっと掴んだ。
「”あの時”お前もいたんだよな?お得意の対空射撃はどうしたんだよ…なあ。なんで基地上空まで敵航空機が無傷で侵入してきたんだよ?」
「そ、それは……。」
「空自にいちゃ哨戒任務しか回ってこない。会敵してもあとはケツ振って逃げるだけ…。ははは笑えるだろ、最新式の機材だぜ?トップクラスの防空システムだってよ。」
だけどと麻木は続ける。
「”海軍(ここ)”なら戦える。堕とせる。この手で、守れるんだよ。」
じっと麻耶の眼を見据える。
麻耶はしばらく俯いた後に麻木を突き飛ばした。
「クソッ…!クソが!」
イラついたように頭をかきむしり、麻木を睨みつける。
「ぜってー追い出してやる。容赦なんてしない、ぶっ潰れるまで徹底的に…二度とそんな口が聞けねーようにな…。」
麻木を見るその目が激しく燃え上がっていた。
麻木もそんな麻耶の眼を静かに睨みつけていた。
長い間書きたいと思いなかなかかけないでいた艦これの小説を、やっと始めることができました。
ただほかの2作品の更新をメインとしてますのであしからず。