あ、今回ご都合主義多いです。今度こそ前書き終わり。
背後でフェイトが倒れ、なのは達が抱きとめる。だが、事態はそれどころではなく、とんでもないことになっていた。
「次元震が発生! 同時に時の庭園中心部で高エネルギの魔力が増大していきます!」
「庭園内に反応多数! 総数四十、六十……、か、数え切れません! どんどん増えていってます! 出現した反応は魔力によって操られた傀儡兵のようです! いずれもAクラスの魔導師並みの魔力を有しています!」
「発振される魔力数値が既に限界を超えています! このままでは、いつ次元断層が起きるか分かりません!」
話は半分以上分からなかったが、次元震発生しちゃうけど、それを起こしているプレシアを守るために傀儡兵いっぱい出てきたってことは分かった。
「あー…これどうせプレシア移動してるんだろうなぁ…探すの面倒だなぁ」
「君の能力でなんとかならないのか?」
「世界と時の庭園を切り離す程度ならすぐ出来るけど、ジュエルシードは何故か耐性つけてるし、そのジュエルシードが原因で次元震起きてるんだから次元震そのものを止めるの無理。直接探し出して再封印するしかない」
「そうか…厄介だな…」
ホント、ジュエルシードって何なんだろうな。
「よし。僕はこれから時の庭園に突入する。とは言っても、さっきの場所に直接行けるわけじゃない」
「遠回しに俺にショートカットしてこいって言ってるよな、それ。まあ開けるしいいけど。…で、お前らはどうすんの?」
そうなのは達に問いかける。なのはは一瞬フェイトを心配したが、
「私も行く。フェイトちゃんも心配だけど、この状況も放っておけないから」
「僕も行くよ。そもそものきっかけは僕なんだ」
「私もです。頭の硬い元マスターを叱ってあげないといけませんからね」
「…アタシも行くよ。あの鬼婆を一発ぶん殴ってやらないとね」
そう答えてくれた。フェイトは何も言わなかったが。
「…なあ皆、先に行っててくれないか?」
「非常時なんだが…まあいい。すぐに追い付けよ」
「用が終われば超特急で向かうって。お前らの場所ならすぐ分かるから大丈夫」
「蒼。フェイトのこと、頼んだよ」
そう言って、5人はスキマを通って突入した。
「……さて。んじゃフェイト。ちょっと話すか」
「……」
「なあ、返事してくれないか?さすがにそこまで無反応だと俺悲しくなってくる」
どうしたものかと、かける言葉を探していたが…
「私…私ね。母さんに、笑って欲しかったんだ…」
かなり小さな、しっかり聞いていないと聞き逃してしまうほど小さな声で、フェイトが話し出した。いや、これは殆んど独り言に近い。
「心のどこかで薄々思ってた。私は、きっと愛されていないんだって。小さい頃は、そんなこと、思ってなかったけど。ただ、仕事が忙しいだけだって。少し大きくなってからは、愛されてないなんて、信じたくなかった。私がちゃんとしてないから、振り向いてもらえないだけだって」
未だに目に光は戻らず、呟くように、喋り続ける。
「リニスが居なくなってから、愛されてないんじゃないかって、思い始めた。アリシアの記憶がなかったら、私はもっと前に壊れてた…私ね?あんなこと言われても、母さんのこと、嫌いになれてないんだよ。生み出してくれたから…冷たくしてても…それでも、私を生み出して、育ててくれた人だから」
…やっぱり、フェイトは優しい子なんだ、と改めて思った。あんなことを言われても、憎んだり、恨むことなく、心を痛めているんだから。でも、
「なあ、それ今いう言葉じゃないだろ?」
「…」
「俺に言ったって…あ、今のフェイトが俺に話してたのか分からんが、それでも、その言葉を言うべきなのはプレシアに対してであって、俺じゃない」
フェイトは何も言わない。冷たい言葉を何度もかけられて、勇気が出ないのだろう。
「…第三者の俺が言うのも何だけどさ、ほんの少しでも、プレシアがお前のことを愛してなかったってのは、嘘だと思ってる」
「…そんなわけ、ないよ。だって、母さんは…」
「俺だったら、すぐに捨ててるだろうな。何せ、代替品ですらないなら、普通に考えて、似た姿をしただけの邪魔者なんだ。それが自分を親と呼ぶなんて、数年も耐えられる訳が無い。まあ、これは単なる推測なんだけどな」
「……」
「あと付け加えるなら、最後に『大嫌いだった』って言ってたじゃん。だったってことは過去のことだろ?今どう思ってるかは問いたださないとわかんないじゃん」
少しだけ、目に光が灯った気がする。
「聞くのが怖いなら、側にいてやる。背中を押してやる。俺だけじゃないぞ。お前のことを俺よりも大事に思ってる奴は、少なくとも3人はいる。アルフにリニス。そんでもってなのは」
「…あの、白い子」
「なのは、お前の目が寂しそうって言って、毎日しつこくお話したい、お話したいって言ってたんだぞ?魔法の訓練も、お前に勝って話を聞くためなのが大半だろうな」
「あの子、友達になりたいって言ってた…」
「…聞いただけだけど、なのはにも親の…と言うより、家族の愛情を受けられない時期があったんだ。まあ、これは俺から言うべきじゃないから、内容は本人から聞いて欲しいけど…まあ、共感するところがあったんだろうな。今のフェイトは、あの時の自分だって」
「…」
「アルフがお前のことを心配してるのは分かりきってるだろ?リニスだって、最近までは誰と関わってたかは話してくれなかったけど、今までに何回も話したいって顔したことあったし、お前が傷ついたときは今にも飛び出しそうなくらいになったことも何度もある」
「みんなが…私のことを…」
「で、その心配してもらってる奴はここでただ突っ立ってるだけなのか?母親の問題を管理局に放り投げて任せっぱなしにするのか?」
「……それは、ダメだよね」
「ああ、ダメだ。家庭の問題は家庭で解決しないとな。…行くか?」
「うん。もう一度、母さんと話がしたい。傷つくことになっても、私はまだ、母さんに何も伝えてない」
そう言って顔を上げたフェイトの目には、迷いなんてなかった。
「うし、んじゃなのは達のとこに直接飛ぶぞ。戦闘してるだろうから、デカイの撃てるようにしておけよ?」
「大丈夫。今なら、今までで一番の魔法が使える。そうだよね、バルディシュ?」
《Yes,Sir》
そう言って、フェイトはバリアジャケットを纏った。ボロボロになっていたバルディシュも、そんなことはなかったと言わんばかりに綺麗になっていた。
「うっし、んじゃ分からず屋の説得のために、殴り込みに行くか!」
「うん!あ、でも、母さんは殴っちゃいやだからね?」
…取り敢えず、事が終わったらこの子の天然を治そう。
「ちわーっす。お届け物お一人配達に来ました!」
「あ、蒼!遅いよ!」
クロノとリニスの姿が見えない。たぶんなのはが足止めを提案して、先に行ったのだろう。
改めて辺りを見ると、なんとそこにはたくさんの傀儡兵がいるではありませんか。
「なるほど。これが押し寄せてくるから止まってたのか」
「そういうこと。でも、蒼が来てくれたから、すぐに終わるね」
「…何もしなくても終わりそうだけどな」
え、とユーノは声をあげるが、指で上を指して答えを教える。そこには、2人仲良く並んで巨大な傀儡兵にデバイスを向けるなのはとフェイトの姿が。
「……お疲れ様」
「ああ、お疲れ」
そうして、きっと、俺の最大の手番は、何もすることなく終了した。取り敢えず、2人が組んだら大抵の物は逃げ出す、とだけ言っておこう。
その後、なのはとユーノは魔導炉を破壊しに、フェイトとアルフ、そして俺はプレシアの元に行くためにクロノの位置にスキマを開いて分かれた。
そうして着いた場所は、恐らく最下層である場所なのだろう。あちこちの床が抜け、虚数空間が覗けるが。
「…蒼、やっと来たか」
「クロノ。状況は?」
「リニスさんがプレシアさんを説得している。だけど、互いに一歩も譲らない状況が続いてる」
少し見渡してみると、部屋の中央部に、リニスとプレシアが立っていた。側には、アリシアが入ったカプセルもある。
「リニス!母さん!」
「リニス!」
「フェイト!」
「フェイト…消えなさいと言ったはずよ」
「…貴女に、話したいことがあって来ました」
「聞きたくないわ…今すぐこの場から出ていきなさい」
そう冷たくかけられる言葉。だが、フェイトはそれを無視し、自分の思いを告げる。先ほど俺に話していた言葉を。そして、愛されていない、と言った時、少しだけ…本当に少しだけだが、プレシアの指が動いた。
「…愛されていなくても構いません。貴女が望むのなら、私はどんなことでもします。私が貴女の娘だからじゃない。貴女が私の、母さんだから」
「っ…貴女達は……」
「プレシア…まだ、フェイトの事を認められないんですか?」
「…認められる訳がない!それは…!?ゴホッ」
「か、母さん!?」
急にプレシアが咳き込み、会話が止まった。口に当てていた手をどけると、口の端から血が流れていた。
「…無理もない。防ぐための設備が整っていたとしても、アリシアは余波で死んだんだ。現場に悪影響を与える物質が残っていて、それを体内に取り込んでしまっていても何ら不思議ではない」
「か、母さん…」
「…私には時間がないの。早く行きなさい」
…イライラしてくる。
「なあ、プレシア…さん。なんでそんなに早く行け、早く行けって言うんだ?何処へでも行けって言われたフェイトの答えがここなんだからいいじゃないか。あ、それともここが崩壊するから早く脱出しろって意味?まっさかー!違いますよねー!だって、貴女自分でフェイトに『大嫌い』って言ったんですから、フェイトの心配する必要ないですもんねー!ごめんなさい、変なこと聞いちゃいましたー!気にしないでください!」
「な…なっ何を…」
「あれれー?何かどもってますよー!?もしかして図星でしたかー?違いますもんねー!だってフェイトの事、一度だって娘だなんて思ったことないって言ってましたし!」
「お、おい、蒼…その辺に」
クロノが静止の声をかけるが、俺はプレシアが大きな反応をするまで煽るのを止めない。
「それにー!もっと明確に拒絶する言葉かけなくていいんですかー!?そうしないとフェイト達、いつまで経ってもここに居ますよー!?貴女が大嫌いな奴が何時まで経ってもここに「うるさい!」みぎゃぁぁぁぁああ!!」
…かみなり、いたい。
「貴方に…私の事を少ししか知らない貴方に、何が分かるというの!」
「いったいなー…まあ、分かりませんよ。人の気持ちなんてその人にしか分かんないですし。でも、さっきの会話で貴女がツンデレってことは分かりましたね。ツン度9割デレ1割。ツンが多すぎてデレが見えませんが」
さて、何時までも話してるとフェイト達が話せないからもうそろそろ終わらせるか。
「ていうか、見てて鬱陶しい。フェイトのこと娘って思ってんのはさっきの反応で分かりきってるんだから嘘言わずに正直に話せよ。嘘ついてばっかじゃ後悔するぞ?」
「…後悔なんて、とうの昔にしてるわ。アリシアが死んでしまったあの日から、ずっと…」
「また後悔しないように正直になれって言ってんだよ。分かんないかなー」
「貴方の方が分かってない!諦められる訳ないじゃない!アリシアだって、私の娘なんだから!」
「その娘の妹が、あんたがさっきやろうとしたことで傷つくことになってたんだぞ?そこも分かってる?」
「それは…」
「なんで冷たく当たってたかは大体分かった。でも、選択肢2つしか選んでんじゃねぇよ。3つ目選べよ。アリシアとフェイトが居て、あんたも平和に過ごせるハッピーエンド」
「…そんな手段があるなら、もう選んでるわ。リニスとの契約を切ることも、フェイトに辛く当たることもなく「うっせぇ!いいから選べって言ってんだよ!」」
「ここまで話しておいて急にそんな言い方をするな!」
クロノにS2Uで殴られた。さっきから痛いんだけど。
「…フェイト、リニス、アルフ。こんな事を言う資格がないなんてことは分かってる。けど…」
「…母さん。私の思いは、さっき話したよ」
「大丈夫ですよ、プレシア。だって、貴女は私のご主人様ですから」
「アタシは…まあ、その…フェイトさえよければ…」
と、丸く収まりそうだ。
「よし、んじゃ帰るか」
「いや待て。ジュエルシードはどうするんだ?」
「あんな危険物置いておけるか!とっとと虚数空間に捨てるぞ!」
「あ、おい、待っ…」
ヒャッハー!ポイ捨てだァ!
「…蒼、帰ったら話がある」
「おう、分かった。だ が 断 る」
《なのは、ユーノ。こっちは終わった。今から道作るからそこ通って帰ってくれ》
《あ、うん。分かったの》
「よーし、皆、今から道作るからそこ通ってー」
「おい、蒼。僕の話はまだ終わって…」
無視。とっとと皆連れて帰る。
トントン拍子。流れなんて気にしない。次元震は見えないところでリンディさんが頑張って止めてくれました。
今回主人公がはっちゃけてますが、これは別に今までで出番がなかった反動ではありません。思うままに書いてたらこうなりました。あと、プレシアがこんな挑発に乗るわけ無いと思ってる方がいるかも知れませんが、これはフェイトとリニスの説得や病で冷静になれてなかったと思ってください。
次回最終回