さて、今回少しとんで1位さんが出てきます。決意固めるとかすっとばしてます。
あの日から、特に騒ぎになるような出来事は起こっていない。俺が登校中だろうが授業中だろうがスキマを使って、発動前のジュエルシードを探しているからだ。もっとも、あそこまで小さい物を手掛かりなしに探し出すのは難しいため、初めて回収したものを含めてまだ4つ…いや、ユーノが回収できていた物も含めて5つか。あと16個も残っていると考えると気が遠くなってくる。早く平和になりたい。誰だよこんな危険物作ったの。スキマにブチ込むぞ。
まあ、サッカー観戦して翠屋のシュークリーム食べさせてもらったので機嫌はだいぶよくなったが。その週末に、俺はすずかの家に呼ばれた。仲良し4人組みでお茶会をしようということらしい。女の子のグループに男1人だけってのはどうなのかって?もう慣れたよ、その状況にも大勢の男子の視線にも。
「こんにちは」
「はい。いらっしゃいませ、蒼様」
「…俺小学生なんですから、様つけるのはやめてください、ノエルさん」
「いえ、仕事ですので。むしろ、ファリンはもう少し真面目にやってほしいです」
実の妹に対して辛辣な言葉である。ファリンさんは泣いて…泣いていいや。早くあのドジな面を直して欲しい。
この人はノエル・K・エーアリヒカイト。月村家のメイド長である。態度から分かる通り、仕事に真面目な人である。まあ、反対に
「あ、蒼くーん!いらっしゃiぷぎゅっ」
「…大丈夫、ファリンさん?」
「だ、だいじょうぶ〜」
こけた。何もないところでこけた。
この人が先程ノエルさんが言っていたファリン・K・エーアリヒカイト。見ての通り、ドジっ娘な人であり、またぽわーんとした人である。そのせいか、家にやってくる俺達には一切様を使わない。ちゃんとした客が来る際には大丈夫なんだと信じたい。
「結構早く来ちゃったんですけど、大丈夫ですか?」
「はい、大丈夫ですよ。むしろ、すずか様は早く来ないかと待ちわびております」
「というわけで、蒼くんこっちこっち!お部屋に案内するよー!」
…最近、なのは達とファリンさんの精神年齢を入れ替えた方がいいんじゃないかと思ってきた。だってこんなんだし、ドジっ娘だし…
「あ、蒼くん、いらっしゃい」
「お邪魔します、すずか。相変わらず猫部屋だな、ここ」
「うん。でも、蒼くんの方も相変わらずだね。皆すぐ寄っていっちゃうもん」
山登りでもするがの如く、猫達は俺の頭や肩を目指してよじ登ってくる。こら、止めなさい、毛が付く。
「……ふふっ」
「どうした、すずか?急に笑って」
「ううん。ただ、こうして蒼くんや皆といられるのが、すっごく嬉しいなって」
「…そっか」
その後、俺達はアリサとなのはが来るまで猫と遊んでいた。
それから数分たってからアリサが来て、また数分たってからなのはと恭也さんが来た。まあ、恭也さんは忍さんとイチャイチャしているんだろう。妬ましい。
「ああ、お茶が美味い」
「何ていうか、飲んでるのは紅茶だけどおじさんみたいね、蒼」
アリサちゃん、と咎めている声がするが、俺の耳には入ってこなかった。おじさん…よく覚えてないけど、前世は仕事をしてるのだけ覚えてるから成人してるわけで、今の年と足せばおじさんって言われる年かもしれないけど…おじさん
「キュー!」
「あ、こら、ダメだよ皆!」
俺がショックを受けている間に、猫はユーノを標的にしたらしく、追いかけ回していた。そんな中、ファリンさんがやってきた。
「お茶のおかわりとお菓子持ってきましたよ~って、わっ!?」
入ってきたタイミングが悪く、ちょうどユーノ達はファリンさんの足元を走り回っていた。ドジっ娘なファリンさんは当然目を回して倒れかける。すかさずなのは達がファリンさんと器を支えたのだが、数が多かったので、持ちきれずに落ちてしまった物もある。それは俺に向かっており、いつもの俺ならキャッチなり避けるなりの余裕があるのだが、未だにショックを受けている俺はそもそもファリンが部屋に入って来ている事すら気付かず、
『あ』
バシャ、という音をたてながら、お茶が俺にかかった。出来て時間もそこまで立ってなかったらしく、熱湯ほどでもないが、高めの温度だったので、
「あっつぅぅぅあぁぁぁぁ!?」
「ふぇぇぇぇん!ごめんなさーい!」
2人の声が月村家に響きわたった。
「ごめんなさい、ごめんなさい、ごめんなさい!」
「いや、ボーっとしてた俺も悪かったですし…」
「でもでも、そもそも私が転ばなければ…」
「いや、それはいつものことで、やっぱりボーっとしてた俺が悪くて…あれ、ファリンさん?」
フォローをしようとしたつもりだが、逆にトドメをさしている。
その事に気づかない俺は、急に落ち込んだファリンさんをどうにかなだめていた。
「じーっ」
「…なんだよ、すずか。そんなに濡れた俺が滑稽か?」
「そういうのじゃないよ…でも…じーっ」
まあ、たぶんほっといて大丈夫だろう。取り敢えず乾かすか。
「ごめんなさい!き、着替え持ってきます!」
「え、いや、大丈夫ですよ」
「ダメです!このままじゃ風邪ひいちゃいます!待っててくださいね!」
断ろうとしたが、それよりも先に部屋を出ていってしまったため、断れなかった。わざわざ持ってきてくれるのに乾かしてて不要になった、だとさすがに可哀想なので、このまま待つことにした。
「お待たせしましたー!」早いなおい。
「あれ?ファリン、それって…」
「はい、そうです。奥様が男の人が新しく来たとき用に作られていた燕尾服です!」
いや、なんで俺のサイズドンピシャなんだよ。それ言い訳だろ。子供サイズはおかしいだろ、俺用だろ。
勿論着るのは嫌だったので、部屋から出ていこうとするが、すずかに手を抑えられ、動けなくなった。
「何処に行くの、蒼くん?」
「いや、ちょっとお花摘みに…」
「そう。でも、風邪ひいちゃうかもしれないから、着替えてからでいいんじゃない?」
「いや、我慢できないし…」
「その割には焦ってないよね?」
つんだ。い、いやまだだ!
「なのは、アリサ!助けt」
「ユーノくん、大丈夫だった?」
「こら、あんたたち!もう止めなさい!」
猫とユーノに構っていた。こうなったら…
「もし能力使ったら…騒ぎになっちゃうよ?」
「ッ!?」
や、やばい、バレてる。何がなんでも着せる気だ!
「さあ、着替えてくださいね、蒼くん?」
「………はい」
転生して、初めて泣きたいと思った。
アリサSIDE
私達が必死の演技で蒼を見捨てた後、燕尾服に着替えた蒼が戻ってきた。戻ってきたんだけど…
「似合ってますよ、蒼くん!」
「ハイ、ソウデスカ」
「あ、そうだ蒼くん、写真撮ろう!」
「ウン、ワカッタ」
喋り方が少しおかしくなっていた。あたしは似合ってると思うんだけど、そんなに嫌だったのかしら?それとも、すずかの様子が少しおかしいのが怖いのかしら。ファリンさんは素でやっているんだろうけど。
「な、なのは」
「アリサちゃん、ダメなの。ああなったすずかちゃんは止まらないの」
どうやらなのはも様子がおかしいのに気づいたらしいけど、止めるんじゃなくて放置することを選んだらしい。
「大丈夫だよ、アリサちゃん。もうそろそろ蒼くんが怒るから」
「それもそうね。離れてましょうか」
ここまで玩具のように扱われたら、さすがに怒るでしょうね。現に、光が灯っていなかった目が戻ってきているし。
「いい加減にしろぉぉぉ!」
「わ、びっくりした!ダメだよ蒼くん、ご主人様には敬意を持って付き合わないと!」
「誰が!誰のご主人様だ!」
「私が、蒼くんのご主人だよ!」
すずかが壊れている。あそこまでおかしいすずかは一度も見たことがない。
「そっかー、じゃあすずかお嬢様、お茶をどうぞ」
「あ、ありがとうごふっ!?」
「あれ?どうしたんですかすずかお嬢様?」
「な、なに、これ…?」
「お茶ですが、何か?さあ飲んでくださいよすずかお嬢様?部下の出したものを平然と捨てるんですか?」
「う、うぅ…」
すっごいいい笑顔(褒めていない)ね。…たぶんあれ、能力使って普通のお茶に見えるようにしてあるんでしょうね。能力の無駄使いに呆れればいいのか、能力使ってまで仕返しするのに驚けばいいのか…
「ほら飲んでよ!飲み干して下さいよ!」
「ふぇぇん!」
ちなみに、蒼の燕尾服は後日仕舞われたらしい。処分していないから、また着させるつもりなんだろうけど…すずか、あたし達を巻き込むつもりはないでしょうね?
蒼SIDE
全く、人が嫌がってんのになにするんだよ。着替えがないから仕方なく着てるけど…
「ごめんなさい…もうこんなことしませんから…」
「蒼くん、ごめんね?」
「いや、ファリンさんはいいんですよ。善意で持ってきてくれたんですから」
「私は!?」
「すずか、明らかに俺の反応みて喜んでただろ」
「それはー、そのー…」
「目を逸らすな」
なんでこんな子になったんだろう。会ったときは普通の大人しい子だったのに…
その後、暫く話してたら、庭の方でジュエルシードの発動した反応があった。
《っ!?なのは、ユーノ》
《うん。でも、今抜け出したら…》
《そうだ。二人とも!》
ユーノが何かを思いついたらしい。そして、ユーノは外に飛び出していった。…あ、そういうことか。
「あ、待ってユーノくん!アリサちゃん、すずかちゃん、ごめんね。ユーノくん追いかけてくる!」
「なのはだけじゃ心配だし、俺も行くわ」
「あたし達も着いて行くわ」
「いや、人が多いとユーノが怖がるかも知れないし、俺達だけで探してくるよ」
「むー…気をつけてね」
何故すずかが不機嫌なのか分からなかったが、取り敢えずユーノを追いかけよう。
「なのは、ユーノ。ジュエルシードは?」
「この先にある。急ごう」
といい、ユーノが結界魔法を使った。
「あ、ならこれ使うか?」
え、と反応されるが、気にしない。スキマを開く。
ちなみに、俺のスキマはあの目がたくさんこちらを見ているものではなく、青色の空間だった。個人差があるのか、あの自称神が変えたのかはわからないが。
「これ、何?」
「便利移動空間。ほら、入った入った」
まあ、どこでもドアみたいにくぐれば目的地に着くんだが。
「わ、本当に移動してる」
「なるほど。蒼が使っていたのはこれか」
「そゆこと。で、ジュエルシードは…」
振り返ると、何と言うことでしょう。とても大きな猫がいるではありませんか。
「な、なんなの、あれ?」
「た、たぶん、あの猫の大きくなりたいっていう願いが叶った形なんだと思うよ」
「いや、あんな物理的に大きくなりたかったんじゃなくて、成猫サイズに大きくなりたかったんだろ。ねじ曲げすぎだろ」
と、猫がこちらを見てきた。そして、顔を下げてお尻を上げる、飛びつく体制になっていた。
そういや俺、猫が近づいてくる体質だったなー、アッハッハ。
「ぎゃぁぁぁぁあ!」
飛びかかってきた。なのはとユーノには目もくれず、俺にだけ向かってくる。
「や、やめ、こっち来んなぁぁ!」
「ゆ、ユーノくん、どうしよう?」
「あれ、たぶんじゃれついてるだけだね。危険はないと思うよ」
「現在進行形で俺が危険なんですけど!?」
さすがに疲れてきたので、ジュエルシードを無力化しようとしたが、雷のスフィアが飛んできた。
「スキマシリンダー!」
「え!?」
スキマを開いてスフィアをしまい、位置やスフィアが飛んでいく方向を調整して返した。
改めてそちらを見ると、金髪の露出度が高いバリアジャケットを纏った…ってフェイトだあれ。
「何処の誰かは分からんが、猫を攻撃しようとするなくぺっ」
『あ』
そうだ、忘れてた。俺猫に追われてるんだった。
「あ、えっと…どうしよう」
「お、落ち着いて、その…誰?」
「なのはも落ち着いて。大丈夫だって」
えーっと…あ、あった。無力化無力化〜。
「あ、あれ?猫が小さく…」
「あ、蒼くん!大丈夫だった?」
「視界が真っ暗になって死ぬかと思った…」
さて、猫よ。いつまでも頭に噛み付いてるんじゃない。早く離れるんだ。…離れろ。
「…で、君は誰?」
「え?あの、その猫は…」
「いや、いいから。で、誰なんだ?」
「…教えません。それより、ジュエルシードを渡してください」
「君のものなのか?」
「そういうわけじゃないですけど…」
「なら渡せない。君のものじゃないから渡す理由もない」
俺がそういうと、フェイトは構えた。さすがにこのままだと危ないので、猫を引きはがしてなのはに預ける。
「この子、預かっといて」
「戦うの?」
「なんか話聞いてくれないし。行ってくる」
飛行魔法を使い、空に上がる。さて、どう出てくる…?
そう思考していると、猛スピードで接近してきた。そして、背後に回り込み、斬りかかってくる。
「甘いな、もうそこには居ないぞ?」
「なっ!?」
よほどスピードに自信があったのだろう、自分が気付かないうちに回り込まれたことに驚いていた。まあスキマを認識させずに通って後ろに出ただけなんだけど。
「ブルースフィア射出。ほれ、当たると動き封じ込められるぞ?」
「くっ!」
やや大きめの水球を出し、そう発言する。この言葉を聞いたフェイトは俺のだした水球をデバイス…バルディッシュだっけ?で破壊する。まあ、それが狙いなんだが。
「きゃあ!」
「別に当たれば封じ込められると言ったが、割られたら爆散してダメージを受けないなんて一言も言ってない」
フェイトが水球を破壊した瞬間、中に隠しておいた小型のスフィアが弾け、ダメージを与える。まあ、2度目はないだろうが、ダメージは大きいだろうし、同じような攻撃手段を持っていると警戒してくれるだろう。
「どうする?続けるか?」
「…」
俺がそう言うと、フェイトは悔しそうな顔をして去っていった。
その後、アリサとすずかに遅くなったことを謝り、夕方までお茶を飲んだり遊んだりした。
…リニスに話した方がいいのだろうか。
蒼くんは燕尾服を着るのが嫌なのではなく、燕尾服を着た姿を見たすずかが怖くなると分かっていたので嫌がってました。サイズは勿論すずかママがすずかに頼まれて作りました。ちなみに、すずかが飲まされたお茶は栄養のあるものを見境なく混ぜ合わせたものなのでとてつもなく不味いです。さすがに悪影響が残るようには作ってませんが。
そしてフェイトに対して悪役のような立ち回り。フェイト好きの方に怒られないか心配。
あと、今回SIDEで他のキャラとの視点変更をやってみましたが、どうでしょうか。主人公だけでいい、いらない、邪魔などの声があがれば今後使いません。