何かこの作品、(自分にとっては)すごい勢いでお気に入りが増えていってて驚いています。皆さんありがとうございます。
「蒼くん、ほらここ!綺麗でしょ?」
そういい、すずかは雑誌のページを見せてくる。
「ああ、うん、そうだな」
「でしょ?ちゃんと(2人)行こうね」
「ああ。皆で行こうな」
俺はすずかが隠している言葉に気付いて皆で、とわざわざ言ったが、行こうの部分しか耳に入ってないだろう。現に顔を赤らめてくねくねしてるし。
「…さっきから2人だけで話してるの」
「すずか、はっちゃけてるわね…」
ねえ、助けてよ。なんか最近君達俺の事見捨ててない?
あ、どうも。八雲蒼です。現在車の中ですずかに太股を占領されています。直訳で金の週と呼ばれる休暇に温泉に出かけているのですが、毎年こんなことになっております。 あ、リニスも来てるよ。士郎さん達の車に乗せてもらってます。出来れば俺もそっちに乗りたいんだけど。
「あ、蒼くん!ここも行こうね!」
「うん」
《蒼、頑張れ》
頑張れない。
ゆっくりしたい車の中で逆に疲れた。が、旅館に着いたのである程度はゆっくりしたいと思う。
「というわけで俺はその辺ぶらついてくる」
「あ、うん。行ってらっしゃい」
「え!?待って蒼くん、私と出掛ける約束は!?」
「はいすずか、行きましょうねー」
「私達は温泉に入ろー」
「離して2人とも!蒼くん~…」
だんだん声が小さくなり、遂には聞こえなくなった。ありがとう、なのは、アリサ。出来れば明日も頼みたい。せめて一緒に着いてくるとか。
「さて、と。んじゃ適当に近くの森にでも行くか」
そろそろジュエルシードのことを一旦忘れてのんびりしたいよ。
そんなことは許されなかったらしい。あの自称神は俺に呪いをかけているのだろうか。
森林浴出来るかなと森にやって来たら、フェイトとばったり会ってしまった。当然、向こうはバリアジャケットを展開し、バルディッシュを構える。
「貴方は…!」
「いや、待って。俺戦う気ないよ。だからそれ(バルディッシュ)仕舞って」
「…」
やっぱりそう簡単に信じてくれないよな。
「お願いします仕舞ってください」
そう言いながら、俺は両手を地面につけ、その間に頭を入れて鼻を地面につけ、胸と膝をくっつけて懇願した。
「え?あの…何をしているんですか?」
「土下座です」
「土下座…?あの、とにかく、貴方は戦う気はないんですか?」
「はい。少なくとも、ジュエルシードや魔法が絡んでない場合は」
「…そう」
自分でもこの懇願はどうかと思ったが、取り敢えずはバリアジャケットを解いてくれた。警戒は解いてくれないけど。
「ところで、貴方は何故ここに?」
「友達と近くの旅館に泊まりに来た。ただ1人変態みたいな子がいるから離れてるんだけど」
「へ、変態?友達なのに?」
「うん、友達。昔は普通の子だったんだけどね…」
「…貴方も苦労してるんだね」
同情された。あれ、俺さっきまでデバイス向けられてたんだよな?なんで哀れみの目で見られてんの?
「そういや、君は何でここに?やっぱ旅館に?」
「私は、ジュエルシードを探しに…」
ん、そうなのか。
「でも休むのも大事だぞ?ずっと動いてたらぶっ倒れるぞ?」
「でも、私は早くジュエルシードを集めないといけないから…」
「うーん…ちょっと待ってろ」
そう言いながら目の前でスキマを開く。突然現れた物に警戒されるがそんなん知らん。街に戻ってたこ焼きを買って戻る。
「ほれ」
「え?あの、これは?」
「たこ焼き。小麦粉の生地で一口サイズのタコを包んだ食べ物で、味付けや食感をよくするためにソースや青のりなどがかけられて」
「いや、それは知ってるんだけど…何で私に?」
「さっきも言ったけど、たまには休まないとぶっ倒れるからな。集めるのを諦めないのは分かったけど、そういうもん食ったりして気を落ち着かせるのも大事だぞ。たこ焼きを選んだ理由は特にない」
俺の言葉を聞いて、複雑そうな顔をしながらも納得してくれたようだ。
「まあ、俺は迷惑にならなきゃ別に君が集めたって構わないよ。さすがにジュエルシードが発動したら出ていくけど」
「え」
「えっ」
いや、それとこれとは話が別なんだが…
「…ま、まあ、戦う必要がなかったら俺見守ってるだけだから。一緒にいる子達は分かんないけど」
「そ、そうなの?」
「うん。だからそんな怯えた顔しないで、悲しいから」
割と本気で怯えられると辛い。そんなにトラウマになったのだろうか。
「じ、じゃあこれで。機会があればまた」
「え?あ、あの、これはどうすれば…」
「全部食っていいよ。食べ終わったら蒼くーんとでも呼べば青い穴が出てくるからそこに入れといてくれればいいよ」
すると途端に胡散臭い人を見る目で見られた。何も嘘は言ってないんだけどなぁ。
カポーン、という効果音が鳴る。つまりは温泉に入っている。どうでもいいがカポーンって効果音考えた奴すごいな。カコーンじゃなくてカポーンだし。
「あぁ~。なんか久しぶりにゆっくりできてる気がする」
思い返してみると、ユーノが来た日からはスキマを使って毎日ジュエルシードを探し、すずかの変態スイッチが入って精神をすり減らして猫に食われたり…全然まともじゃないな、平和どこいった。
「にしても、原作のフェイトってあんな感じだったのか。INNOCENTとは随分違うんだな」
俺が知っているフェイトは、多少気は弱いが明るい子で、お姉ちゃん大好きな人に優しい子で、あんなに無理をするような…ん?
「あれ、アリシアは何処にいるんだ?あのお互いに大好きな姉妹が離れてるっていうのは少しおかしくないか?」
一瞬、もしかしたらINNOCENTのオリジナルキャラかと思ったが、よく考えたらあの作品にオリジナルキャラはいなかったはずだ。つまり、リリカルなのはの世界にアリシアはいるはずだ。だが、今までアリシアの姿を見たことは一度もない。
「この世界が原作と違ってアリシアがいないだけならいいんだけど…もしいるんだとしたら、今何処にいるんだ?」
…どうやら、原作の世界は予想以上に暗い物語のようだ。
「…くん……蒼…ん…蒼くん!」
「何だよー、リニスー、さっきサファリゾーン行ったばっかだろ?早くライオンから降りてサバンナ行くぞ」
「私はなのはだし、サファリゾーンはゲームの話だよ!どんな夢見てるの!?いいから起きて!」
体を揺すられ起きる。何か変な夢を見ていた気がするが、気にしない方がいいのだろう。
「で、なのは、何の用?トイレ?」
「ジュエルシードが発動しちゃったの!いいから来て!」
その言葉に起き上がり、すぐに着替える。さすがに旅館の浴衣のまま外に出るわけにはいかないしな。そして、なのはとユーノに連れられて(まだ完全に目覚めてない状態でスキマを使うのは危険だと判断したため)走って向かう。
ジュエルシードの反応があった場所に到着すると、フェイトと女性が何かの動物と戦っていた。
「あ、旅館で会った人!」
どうやら、なのははもう一人の方を知っているらしい。…まあ、手助けするか。
「フリーズランサー形成、目標捕捉。射出!」
氷の槍を作り出し、フェイト達に当たらないように撃ち出す。狙い通り命中し、動物は当たったところから凍りついていく。
「!?…ジュエルシード、封印!」
突然謎の攻撃が行われたことにフェイトは驚いていたが、俺の姿を見たあとに落ち着いてジュエルシードを封印した。
「誰だい!?…アンタ、旅館で会ったガキンチョか。いい子にしてないと、ガブッといくよって忠告したよね?」
助けてやったのに、何やら今にも戦闘を始めそうな雰囲気になっていた。
「よ、フェイト。さっきぶり。大丈夫だったか?」
「うん。助けてくれてありがとう」
「あれ!?なんで蒼くんその子とそんなに仲いいの!?」
「フェイト!なに気抜いてるのさ!そいつはジュエルシードを狙う敵なんだよ!?」
「え、でも、その人もう戦闘はしないって…」
「ちょ、蒼、どういうことなのさ!」
「イヤー、ソノデスネー、ナンテイウカ…いくらなんでも女の子にトラウマを植え付けたくないんです。ヘタレなんです」
あれー、おっかしいぞー?俺とフェイト、仲間に責められてる。
「と、兎に角!もう約束したから、俺は戦闘に参加しないからな!」
「あ、ちょ、蒼!」
そう言いながら、俺はスキマに引きこもる。まあ、さすがに何もしないわけには行かないので、境界を操ってこの場を他の生物に認識されないようにしておく。
「…あ、そうだ!ジュエルシード!」
「これは、渡さない。私には目的がある」
「待て!それは危険なものなんだ!ちゃんとした所で保管して、慎重に取り扱わないと…」
「ゴチャゴチャ煩い!フェイトの邪魔をするってんなら、容赦しないよ!」
そういいながら、赤髪の女性がなのはに殴りかかる。だが、その間にユーノが入り込み、転移魔法を使う。なるほど、転移魔法はそんなふうに使うのか。
「君はいい使い魔を持ったね」
「ユーノくんは使い魔とかそういうのじゃないよ!私の友達!」
「…兎に角、ジュエルシードは渡せない。どうしてもと言うのなら…」
そこまで言われれば、なのはも気付き、レイジングハートを構える。
「はあぁぁぁぁ!」
「っ!?」
咄嗟にプロテクションを貼ったが、予想を超える速さで距離を詰められたことに驚愕するなのは。
「シューター!」
魔力弾を数個作り出し、フェイトに向けて撃ち出す。が、フェイトは弾道を全て読み切り、なのはに向かって最短ルートで進み、どうしても邪魔になるものはバルディッシュで切り裂いていく。が、なのははフェイトが接近してくるのを待っていた。
「ディバインバスター!」
なのははフェイトが魔力弾を切り裂いていた瞬間に自分の得意な砲撃魔法を撃つ。これが、なのはなりに考えた戦術なのだろう。
「やった!?」
だが、所詮は魔法を知ってたかが数日、しかもまともな知能を持ったものとは一切戦ってこなかったなのはの戦術が、フェイトに通じる訳がなく。
「サンダー…」
「えっ!?」
勝ったと油断したその間に後ろに回り込んだフェイトは、
「スマッシャー!」
近距離で砲撃魔法を撃ち込んだ。
「きゃぁぁぁぁ!」
当然、対応出来なかったなのはは直撃をくらい、地面に向かって落ちていく。
「おっと」
が、今の今まで引きこもっていた俺がここでようやく出てくる。さすがに頭から落下を見過ごすわけには行かないからな。
「ほら、なのは、えーっと…フェイトだっけ?もうその辺でいいだろ?もう勝負はついたんだから」
自分のこの発言が、どれだけなのはを傷つけるか分かっていても話す。実際、どれだけやろうとも、今のなのはがフェイトに勝つのは不可能だろう。
「さっすがアタシのご主人様!で、あんたはどうすんのさ?友達の敵討ちとでもいくかい?」
「言ったろ、フェイトと約束したって。緊急時なら破るだろうけど、一対一でやってたんだから約束を破るような真似はしないよ」
「そうかい。まあ無駄な戦いをしないならアタシはそれでいいさ。それに、何でかしらないけど、アンタから懐かしいニオイがするからね」
懐かしいニオイ?…ああ、なるほど。
俺が一人で納得していると、フェイトと女性が俺たちに背を向けて歩き出した。
「貴女はもう関わらない方がいい。その程度の力で出て行っても、どうにもならない」
そう言って、フェイトは立ち去っていった。
「なのはー!」
「あ、ユーノ」
「蒼…『あ、ユーノ』じゃない!どういうつもりなんだよ!」
「お、怒るなよ。お前だって、自分から進んで女の子にトラウマ植え付けたりしたくないだろ?」
「それは…まあ…」
「それに、なのはにとってもいい経験になったと思うんだ」
「ふえ?」
「今回の一件で、あの子…フェイトとの差があるって分かっただろ?俺は今後役立たずの倉庫になる。だったら、なのははどうすればいいか分かるか?」
「…強くなる?」
「うん、そうだ。まあ、話し合いで進めばいいんだけど、フェイトは結構頑固だからな。ジュエルシードを奪い取る、くらいの気持ちでぶつかっていないといけない。…それに、今なんか考えてるだろ?フェイトのことで、戦い以外のことで」
「う、うん。伝えたいことがあるの」
「だったら、その伝えたいことを伝えるために力をつけないとな。口だけじゃあのタイプは納得しないから。特訓なら俺も手伝える。頑張ろうな」
「うん!」
さて、なのはの決意も固まった…が、俺これからどうすればいいんだろう。戦闘ではお荷物だし…回復役にでもなるか。うんそうしよう。
「と、ところで蒼くん」
「なんだ?」
「…そろそろ、降ろしてくれない?」
「へ?ああ、ごめん」
なのはの言葉で、俺が何時までもお姫さまだっこをしていたことに気付く。まあ落ち着かないもんな。気付かない俺が悪い。
「まあ、今日はもう寝よう。必要になったらいつでも呼んでくれ。力になるから」
「うん。特訓の相手、よろしくね!」
「任されましたよっと」
この後の展開で部屋に戻ったあとにすずかが起きててなのはと何処に行ってたのかと問い詰めるシーン書こうかと思ったけどグダグダになりそうでやめました。
本当、なんですずかこんな子になったんだろう。当初の予定だと性格は原作と変わらないってなってたのに…なんか気づいたらこうなってたんだよなぁ。すずかファンの方々ごめんなさい。