オネェ料理長物語   作:椿リンカ

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デザート 調べる度に お腹が 減るよ


ラバックはオネェ料理長と一緒にデザートを作る話

皇帝陛下とオネスト大臣へのアフタヌーンティーの給仕も終え、少しばかり休憩時間が出来た。

数時間すれば、また夕食の準備を始めないといけないだろう。

 

「さて、私はデザートをまた作らないと。ラバックちゃん、手伝ってちょうだいね」

「お、俺ですか」

 

「あらぁ、昨日喧嘩したのはどこの誰だったかしらねぇ」

「手伝わせてもらいます!!」

 

ラバックが即座に返答したことに満足したのだろう。アンは「それじゃあシュラとタツミちゃんはこっちの料理の下ごしらえを他の子たちとしてね」と言づけた。

 

 

 

「あの、何を作るんです?」

「バノフィー・パイよ。今日から数日はちょっとありあわせのものでデザートを作らないといけないの。お上品というよりは、ちょっと庶民的になっちゃうけど・・・」

 

「バノフィー・パイ・・・?って、なんのパイですか。あんま、聞いたことがないパイですね」

「そうねぇ、あまりメジャーなデザートではないもの。でも結構美味しいのよ?兵士や侍女たちが使う食堂で時々出してるデザートなの」

 

バノフィー・パイとは、バナナとトフィー(砂糖または糖蜜とバターを加熱して作る菓子)のパイのことである。(実際はイギリス発祥の菓子であり、一般的なお菓子らしい。ちなみに日本だとトフィーをタフィーと称することが多いそうだ)

・・・トフィーが想像できない場合は、キャラメルの親戚程度の扱いで良いだろう。

 

ショートクラストタイプのパイ生地に、トフィー、バナナ、生クリームを重ねたデザートであり、大変シンプルながらもやみつきになる菓子である。

 

「ただ、トフィーを準備するのに時間が掛かるから、今から準備しないといけないのよね」

「へぇ、どのぐらい掛かるんですか」

 

「数時間、2~3時間ね。パイ生地を作ったり、生クリームを泡立てたりもあるからそれも済ませておきたいところかしら・・・」

「そんなに掛かるんですか!?」

 

「そりゃあトフィーから作るんですもの。キャラメリゼには時間が掛かるのよね」

「そうなんですか・・・」

 

「本当は生クリームで作る方法のトフィーにしたかったけど・・・生クリームも量が足りないからね。大丈夫よ、ラバックちゃん。コンデンスミルクの缶ごと煮るから、あんまり様子を見なくてもいいの」

 

そう、バノフィー・パイに使うトフィーを作る際、綺麗なキャラメル色のトフィーにするのにコンデンスミルクの缶を丸ごと、2時間から3時間煮なくてはならない。

なお、生クリームから作る方法、短時間でトフィーを作るレシピもある。あくまでも基本的なレシピの話なのであしからず。

 

 

 

そんなこんなで、ラバックとアンの二人でバノフィー・パイ作りが始まった。

ラバックは元々手先も器用なため、苦になることもなくパイ作りが進んでいく。パイ生地を作り、生クリームの準備やバナナの下準備も滞りなく済んでいく。

 

余裕があるからか、ラバックはアン料理長と雑談をしながら作業を進めていくことにした。

・・・パイ生地を焼く間や、トフィーを待つ時間があるからだ。

 

「アンさんって、本当に料理が好きなんですね」

「・・・昔から何かを作るのは好きだったの。先帝と奥方様がお若い頃は、作ったものを食べてもらっていたり、試作品をもっていったりね」

 

静かにアンは、昔のことを思い出しながらラバックへと語った。

 

「料理ってね、見て楽しんだり、誰かと一緒に作ったり、一緒に食べたり・・・食欲を満たすだけじゃない何かが、料理にはあると思うの。」

「・・・」

 

「ラバックちゃんも、誰かと一緒に食べて嬉しいとか、もっと美味しく感じるってこと・・・ある?」

「・・・ありますね。そういう人は俺にもいますから」

 

アンに問われ、ラバックは自分の想い人であるナジェンダを思い出しながら答えた。

ラバックは周囲を確認しながら、静かにアンへと向き直った。

 

「・・・アンタ、人間を料理してるって聞いたんだけど」

「・・・そうね。大臣を脅した時の人間料理、大臣が“気に入って”ね。他の人間には牽制になったけど、大臣には逆効果だったのよねぇ。それで今は、厨房の自治権の代わりに・・・ね?」

 

「・・・平気なのか」

「・・・慣れちゃった、わね。でも安心しなさい。この国が終わるときには、私も処刑台に行くつもりだもの」

 

アンの言葉にラバックは黙って彼を見つめた。しばらくの間、缶を煮詰めるコトコトとした音だけが二人の沈黙の間に流れた。

 

「・・・・・・アンタは、それで良いのか。革命軍に掛け合えば、きっと」

「・・・継承権は捨てたけど、私も皇族よ?生きていたら、新しい国にとって邪魔になるしかないわ」

 

その言葉にラバックは何も言えなくなってしまった。

そういえば、この料理長は皇族の一人だった。継承権を棄てても皇族である限り・・・利用される可能性も、脅威となる可能性もある。

 

「・・・それに、“皇帝陛下”(あの子)だけを処刑台に行かせられないもの」

 

とても静かに、アンはそう答えて「そろそろトフィーができるわよ!ほらほら、準備しなさい!」とラバックに声を掛けて準備に取り掛かった。

 

「・・・はい、そう、ですね」

 

ラバックはそう返事をして、すぐに準備に取り掛かることにした。

 

「(・・・あー、ほんと。やるせねぇなぁ)」

 




そろそろラバックは女装姿から普通の姿に着替えなおしてるはずです
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