オネェ料理長物語   作:椿リンカ

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続きのネタが舞い降りた。
だから続いた。
どゅーゆーあんだすたん?


一日目の物語
ラバックとタツミがオネェとオカマしかいない厨房で頑張る話


 

「次の料理の仕込み終わったわよぉ!」

「まったくッ!トロいったらありゃしないわね!それが終わったら次は明日の料理の食材チェック!ほら急ぎなさいッ!」

「ちょっとォ!はやく侍女呼んで来なさい!料理が冷めるでしょこのスカポンタン!」

「こっち賄いできたから手が空いた子から食べていいわよー!」

 

野太い声が飛び交う帝都の宮殿内厨房。

やたらと筋肉質なオカマ料理人や細身ながらもしっかり女性らしく振舞うオネェ料理人が厨房内を行き交う中、二人の少年が厨房の隅でひたすらにじゃがいもの皮むきをしていた。

 

「・・・俺たち、何してんだろうな。確か大臣の息子にハメられてよ・・・起きたらオカマやらオネェに囲まれててめっちゃ怖かったし・・・」

「なんか気が付いたらこき使われてるしな。でも・・・ラバに怪我がなくてよかった」

 

「そりゃあまぁ、峰打ちっぽかったしな・・・てか、なんでこうなったんだ?」

「うっ・・・エスデス将軍やブドー大将軍から逃げようとして、駆け込んだらオネェとオカマに囲まれたし、土埃だらけだってすごい怒鳴られた」

 

「なにそれ怖い」

「でも、結果的にエスデスやワイルドハントの連中も手出しできないみたいだからよかったけどさ」

 

彼らは帝都に蔓延る悪を斬る暗殺者・・・ナイトレイドのタツミ、ラバックである。

その二人が何の因果か帝都宮殿の厨房の料理人見習いへとジョブチェンジしていた。いや、させられた・・・が、正しい。

 

「あんたたち、口を動かす前にもっとシャキシャキ手を動かしなさい」

 

この料理長、自称アン・シャーリーによって

 

「あ、あの・・・俺たちいつになったら外に・・・」

「俺たちはナイトレイドなんだ!そりゃあ一晩匿ってくれたのはうれしいけど・・・」

「この厨房に土埃だらけで入ってきたお馬鹿ちゃんたちが何を言ってるのかしらねぇ?」

 

彼らの言葉にアンは背後に阿修羅が見えるような鬼気迫るオーラをまとった。顔には青筋を立てているようである。

 

「普通に出れると思ってるの?エスデスちゃんなんて昨日の夜から”タツミに会いたい会いたい”って厨房の出入り口見張ってるんだからね。たまに外から見れたら乙女の表情した後に捕食者の表情してるんだから。一歩でも厨房と関連棟から出れば即座にタツミちゃんを捕まえておいしく食べちゃうって魂胆よ?」

 

「やめて怖い」

 

帝国最強と名高いエスデスが見張っているとなると、やはり出入り口から逃げることは不可能だろう。それでなくともブドー大将軍やワイルドハントのメンバーには自分たちの居場所はバレている。

 

この厨房は料理人たちの私室のある建物と繋がっているため、そちらで寝泊まりすることはできた。

だが、おそらくはすでに宮殿内に自分たちのことは伝わっている。

きっとエスデスだけでなく、宮殿にいる兵士たちもここを警戒しているだろう。

 

・・・なお、帝具についてはアンによって没収された。

逃げる手段は限られている。

 

「・・・俺たちはナイトレイドだ」

「そうね、そう聞いてるわ。でもね、ラバックちゃん。ここは厨房・・・料理人の聖域よ?革命軍の暗殺集団だろうが、帝国軍特殊警察だろうが関係ないわ」

 

「なぁ、あんたは話が通じる人間だろ?あのオネスト大臣にそこまで”約束”させたんだ。少なくとも大臣に好意的ってわけじゃあない・・・そうだろ?」

「・・・えぇそうね。でもあたしはただここを守りたいだけよ。革命なんて好きにやりなさい。あんたたちを逃がすかどうか、そのあたりはもう少ししてから決めてあげる」

 

そうラバックに答えて、アンはさっさと厨房の戦場へと戻っていった。

 

「・・・脈ありって感じだけど、なんかあるみたいだな」

「・・・」

「どうしたんだよタツミ、そんな顔して」

「・・・ごめん、ラバ。羅刹四鬼が生きていただろ?帝国の奴らに俺の正体がバレてたってことだ・・・俺のせいで・・・」

「あー、気にするなって。ナイトレイドは一蓮托生、だろ?」

 

落ち込むタツミを小突きながらもラバックは一足先にじゃがいもの皮むきを終えたらしい。

次に頼まれている玉ねぎの皮むきにとりかかるようだ。

 

「生きてる限り、チャンスはある。はやく戻って、マインちゃんを安心させてやれよ」

「・・・あぁ、そうだな」

 

 

 

シュラの罠にハマり、宮殿内に移動させられて半日が経過した。

もうすでに午後になるだろう時間帯。厨房も一段落したのか少しばかり静かになった。

とはいえ、熱心な料理人は試作の料理を作っては試食会を開いているようだ。

 

「ちょっとォ、ラバックちゃんもタツミちゃんもこっちに来なさい」

「ほらほらぁ」

「やーん!もうかわいい顔よね。食べちゃいたいぐらい」

「あらぁ、いい体してるわね。さすがは暗殺者ってところね」

 

やたらと筋骨隆々なオカマと小綺麗なオネェにがっちりと両腕をつかまれて、二人は強制的に試食会に混ざることとなった。

渋々ではあったが、試食に出る料理はどれも美味しい。さすがは帝国中の食材が集まる宮殿の厨房だ。素材も選り抜きのものばかりだ。

 

「アン料理長はね、先代の料理長に可愛がられて、継承権を捨てて厨房の見習い料理人になったのよ~?」

「へ、へぇ・・・」

「その・・・オネスト大臣と約束してるって聞いたけど、なんでここまで厨房が優遇されてるんだ?」

 

オカマたちやオネェたちの熱い視線に怯むラバックをよそに、タツミはまっすぐに彼らに問うた。

 

「・・・あの大臣が料理長の地雷を踏み抜いちゃったのよ」

「地雷?」

 

聞き返すタツミに料理人たちは言葉を濁す。一番体格の良いオカマの料理人が重い口を開いた。

 

「先代の皇帝陛下の料理にね、毒を混ぜてたのよぉ。ほんっと最悪よぉ!アン料理長は当時副料理長だったんだけど、その頃から帝具が使えていたから・・・それで調べて分かってね。もうほんと怒り心頭ってカンジ?」

「毒・・・」

 

「アン料理長ったら何したと思う?オネスト大臣の近しい親戚100人分でフルコース作って脅迫したのよ。”今度料理に混ぜ物したら、全員捌く”ってね。あの大臣にはあまり効果は無かったけれど、ほかの奴らからしたら顔面蒼白もんよね。いろいろあって、今の取り決めになったってワケ」

「・・・100人分でフルコース?」

 

100人にフルコースを振る舞ったのかと聞き間違えたのかと、タツミは困惑した。まるでその言い方は・・・

 

 

「・・・人間で料理したのよ。ニ・ン・ゲ・ン」

 

「・・・ッッ!!?」

 

 

その言葉にラバックとタツミは真っ青になった。

 

「まぁ、大臣も人肉は嗜んでるらしいわね。取り決めの中に”厨房の自治権を与える代わりに人肉料理を提供する”ってあるし。さすがに帝具使いの料理長だけが料理してるけどね」

 

「に、人間って・・・どういうことだ!?」

「それがおかしいって思わないのかよ!」

 

「あのねぇ、そんなこと厨房全員が思ってるわよ!このアンポンタン!そういう取り決めがあるから、今の宮殿で料理に毒は仕込めないし仕込ませない。厨房の自治権がある。・・・何よりも、巡り巡ってアンタたちが助かってんのよ。つべこべ言うんじゃないわよ!おかしいと思うならさっさと革命でもなんでもしちゃいなさい!」

 

体格の良い料理人にそういわれて二人は黙ってしまう。

間違ったことがまかり通ってしまう帝国の現実を改めて知らされたのだ。

 

「・・・もう一つ質問」

「なに、タツミちゃん」

 

「・・・アン料理長の帝具ってなんだ?」

 

「美食礼賛イーターオブラウンド、それが料理長の帝具よ」

 

 

 

 

 




帝具「美食礼賛イーターオブラウンド」

ナイフやフォーク型などの帝具
食事用食器や調理器具のセットとなっている。
レシピ本も付属されている。
食材を仕留めつつも安全に提供するための麻酔薬の調合方法なども記載している。

なんでも美味しい料理にできる帝具。また、これで作ったものを食べれるようにできる。
「なんでも」なので人間を食べることも美味しく料理することも可能。

超級危険種や毒性の強いものなども調理ができるため、後方支援として使われていた帝具である。
おいしい食事を食べることで軍の士気を上げたり、栄養を効率よく摂取することができる。

基本的に後方支援だが、一流の料理人が扱うことで武器として使うことも可能。

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