オネェ料理長物語   作:椿リンカ

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オネスト大臣「料理でめんつゆを使う料理長なんて雇えませんね」

アン料理長「・・・」
(殴りかかろうとするのをタツミが止める)
タツミ「落ち着いてください料理長!というかめんつゆは普通に使っていいだろ!あれめちゃくちゃ便利なんだからな!出汁を作る手間を省けるし美味いんだからな!あれでおでんもスープ系もごはんもいけるんだぞ!」
ラバック「めんつゆ馬鹿にすんじゃねーよ!めんつゆは万能なんだよ!めんつゆほど便利なもんはねーぞ!ぶっちゃけあれでカレーの隠し味にも使えるんだぞ!」

シュラ「お前らはめんつゆのなんなんだよ」



タツミとラバックは歓喜し、皇帝は残された手紙を読む

シスイカンでの戦闘から数日経って帝都には号外の新聞が発行された。

内容は『ブドー大将軍倒れる!シスイカンが突破される』といったものだ。

 

シスイカンでのブドー大将軍の帝国軍と革命軍の戦いは革命軍側の勝利で終わった。ブドー大将軍は直属の部下たちにより一命はとりとめたものの、意識不明の状態が続いている。

これにより軍全体の士気は下がり、シスイカンを突破された。

 

進軍速度のあがった革命軍と応援にきている援軍も合わせ、帝都は徐々に包囲網を敷かれていくことだろう。

 

・・・・・・その陰で革命軍の帝具使い、そしてナイトレイドがどうなったのかは不明である。

 

 

 

______________帝都宮殿厨房にて

 

 

この一報にタツミとラバックの二人は互いに喜び合った。

厨房での仕事を終えた後に厨房のある棟、料理長の自室で二人はハイタッチをする。

 

「やったぜタツミ!これで革命軍が帝都に集まれる」

「あぁ、あとは決戦だけ・・・それまでに俺たちもどうにかできれば」

 

二人の視線は背後へと移る。

そこにいたのは・・・

 

 

「ほんともう、あの吸血レディはあんたのところの隊員なんでしょ?ほらこれ見てよ!私の白い柔肌ボディに牙立てて・・・もう私、お嫁にいけないっ!」

「お前嫁に行く必要はねぇだろ、何言ってんだよ。頭でも打ったのか?」

 

「お嫁にもらってくれるのね。把握したわ」

「違うわ!!馬鹿じゃねぇのかお前!誰がお前を嫁にもらうんだよ!」

 

「え、じゃあ私があんたを嫁にもらうの?それはちょっと嫌ね。私にだって好みがあるの」

「なんでそうなるんだよ!?というかなんで俺がフラれたような言い方してんだ腹立つなオイ!!」

 

「ふっ、まぁ半分冗談として・・・」

「半分本気混ぜるのやめろ」

 

 

・・・そう、オネスト大臣の息子であるシュラと料理長アンの存在である。

 

シュラはもちろん敵、そして料理長のアンは現時点では自分たちの存在はあるていど肯定してくれているのだが・・・

残念だが完全な味方とは言い難いだろう。

 

ナイトレイドのメンバーとの連絡は時折とれる程度ではあるが、宮殿内部の情報を手に入れるわけでもなし。

あくまでも厨房の自治権を最後まで保つつもりでアンは動いているのだ。

 

「やっぱあれだよな、脱走は無理そうだし」

「そもそもエスデスからの監視もある程度・・・というか、毎日顔をのぞきに来るし」

 

「ほんとお前、そこは羨ましいわ」

「俺にはマインがいるんだから無理だ、無理」

 

 

 

________________同時刻、皇帝の私室にて

 

 

帝国の皇帝陛下にもブドー大将軍が意識不明の重体だと一報は入っていた。だが、彼にはブドー大将軍を見舞うことが許されなかった。

皇帝自身は見舞うことだけでもしたかったのだが、オネスト大臣に諭されてとりやめたのである。

 

革命軍・・・皇帝陛下にとっては反乱軍でもある存在が帝都に近づいている。

 

その不安感に苛まれる皇帝の元にブドー大将軍の家に仕えている執事がやってきた。もちろんこれはオネスト大臣も了承済みであり、持ち運んだアップルパイや花束などにも不審なところは無かったために通されたのだ。

 

「陛下、この度はわが主人への見舞いのお気持ちだけでも感謝を述べようと・・・」

「そうかしこまらなくても良い。余にとってはブドーも国を守るための大事な臣下だと思っている。早く回復すると良い」

 

「そうですね。それとこれを・・・我が家のシェフが作ったものです。もちろん、大臣殿の部下も毒見をいたしましたし、大臣殿にも差し入れたものですので・・・」

 

執事が取り出したのは小さなパイや小さな花束である。

 

「そうか、なんだか気を使わせてしまって悪いな」

「いえ、陛下のお気持ちを頂くだけでは・・・・・・それでは」

 

それだけ伝えて、執事は部屋から出て行ってしまった。

 

「・・・まるで余を見舞ったようなものだな。ブドーの家の者にも心配をかけてしまったのか」

 

独り言を呟きながら花束を机に置き、小さなパイを食べようとすると・・・

パイの下敷きになっている紙の裏に何かあることに気が付いた。どうやら手紙が張り付けているらしい。

 

「・・・?なんだこれは」

 

手紙にはブドー大将軍が使っている封蝋が使われ、ブドー大将軍の直筆で名前が書かれていた。

皇帝はその手紙の封をあけて中身を読み始める。

 

 

【この手紙を読んでいるということは、私は死んだか、それとも事実を伝えることができない状態なのでしょう】

 

【陛下にお伝えしたいことがあります】

 

【陛下以外の皇族はもういないとされていましたが、一人だけ継承権を廃したゆえに残っている元皇族がいます】

 

【厨房の総料理長アニエル、彼が貴方と同じ皇族です】

 

【もしも私がいなくなった場合は相談すると良いでしょう】

 

【あの者もまた、陛下が信頼するに足る人物です】

 

【前皇帝陛下と皇后と親しくしていた、幼馴染なのですから】

 

 

・・・それだけが短く書かれていた。

 

「・・・料理長が、余の・・・」

 

しかしなぜこれを隠すように渡されたのか、皇帝は疑問に思いながらも手紙を枕の中に隠すことにしたのだった・・・

 


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