オネェ料理長物語   作:椿リンカ

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ラバック は いと を つかうのが とくいな フレンズ なんだよー!



五日目の物語
ラバックとシュラが厨房で騒いじゃう話


「ワイルドハントは今日で解散です」

 

厨房で頼んでいた蟹を食べながら、オネスト大臣は自分の息子へとそう宣言した。シュラは慌てふためいてしまう。

オネストの斜め左に座っているドロテアは蟹を食べたまま事態を見守っているようだ。どうやらドロテアからの支援は期待できないらしい・・・そう判断したシュラはとにかく父親へ言葉の真意を問うた。

 

「なっ、なんだよ!!ナイトレイドは見つけたし、あいつらの帝具だってアニエルの奴が没収してるだろう!?」

「別にそれはいいんですよ。厨房に逃げたなら無力化されるでしょうし」

 

「そ、それならなんで・・・」

「・・・エスデス将軍からの贈り物です」

 

そういって彼が見せたのはとある資料

 

シュラが数か月前に起こした事件についての証拠資料である。

どうやらイェーガーズの一員であり、すでに殉職した者が纏めたものらしい。

 

「これがブドー大将軍に提出されていたら危うかったですね」

「うっ・・・」

 

「不祥事は不問にします、だからあなたは大人しくしていてください」

「でもっ」

 

「いいですか。別に私は帝都の市民をいくら殺そうが拷問しようが、どうだっていいんです」

 

一呼吸おいて、オネストはこう続ける。

 

 

「証拠を無様に掴まされるような無能は、必要ありません」

 

 

 

 

一方その頃、厨房では料理仕込みをしている数人の料理人と手伝いをしているラバックがいた。

タツミはアン料理長と共に食材庫へ、ラバックは明日の料理の仕込みをしているようだ。

 

「あら~、ラバックちゃんすごい器用ね!すぐに覚えちゃってるじゃない!」

「そりゃまぁ・・・つか、もう俺たちに手伝い任せてもいいのかよ」

 

今日は明日の料理以外にも、仕込みに時間のかかる料理の下準備をしている。

どれもこれも、皇帝陛下を筆頭とした役職のある人間への料理・・・失敗も、ましてや毒殺も許されない大事な仕込みである。

 

「そうねぇ、料理長が信頼してるしね。まずは食堂での調理になるかもしれないけど・・・ラバックちゃんもタツミちゃんも器用だから、もしかしたらすぐにこっちの厨房勤めになるかもしれないわね」

「へー・・・そんだけ認められてるのか」

 

「当たり前よぉ!ここに来る暗殺者や刺客の大半はろくに料理なんてできない子ばっかりだったんだからッ!」

 

そういわれると、ラバックも悪い気はしなくなってくる。

 

ナイトレイドで料理を多少こなしたこともこうやって役立ってくるのだ。もしもこちらの宮殿での厨房勤めになれば・・・好都合でもある。

 

「(タツミには黙ってるが、まだ帝具は隠し持ってるからな)」

 

そう、ラバックは口の中にクローステールの一部を仕込んでいたのだ。

口の中まではさすがに調べられなかったのが幸いしたらしい。

 

最も、あくまでもこれは最後の手段だ。

 

「(・・・もしも、あのエスデス将軍やオネスト大臣を討てる機会があるなら)」

 

 

そう思った直後、厨房のドアが勢いよく開けられた。

 

 

・・・ワイルドハントのシュラが、そこにいた。

 

 

「ちょっとォ!いきなり何入って・・・」

 

「あ”ぁ”?いいからどけ!」

 

勢いよく殴りかかってくるシュラに対して、料理人はなんとか避ける。

・・・先日と違い、どうやら激昂状態にあるらしい。料理人たちの凄みにも怯むことなく真っすぐラバックのところへと向かい、彼に掴みかかった。

 

「おいナイトレイド。さっさとアジトとてめぇらの持ってる帝具を全部吐け」

「なんだよいきなり、ここは厨房なんだぜ?こんなことして・・・」

 

「っるせぇな!さっさと吐けっつってんだろ!!」

 

ラバックはそのままシュラに厨房のテーブルに叩きつけられる。だがラバックもそのままやられっぱなしになるわけにはいかない。

すぐにシュラに対して応戦し始めた。

 

「言うわけねぇだろ!ナイトレイドは一連托生なんだからよ!」

「さっさと吐けっつってんだろ!」

 

一気にヒートして、殴り合いから戦闘に持ち込まれる。

 

 

掴みあったままのシュラとラバックに勢いよく水が掛けられた。

 

 

 

「頭、冷えたかしら?」

 

 

 

・・・そう、アン料理長である。

 

どうやらバケツに冷水を入れて二人にかけたらしい。

 

タツミはそんな料理長の後ろで心配そうに見ているようだ。他の料理人たちも事態の推移を見守っている。

 

アンはそのままシュラに対して両手で頬を包むように掴んで自分のほうへと向けさせる。

 

「父親に叱られたのね」

 

「!」

 

「何よその顔。それぐらい分かるわよ。後で話は聞いてあげるけど・・・」

 

 

ス・・・っと、彼の頬から手を放すアン。にっこりと、ラバックとシュラに笑いかける。

 

 

「厨房でよくも暴れたわね?」

 

 

厨房の空気が一気に冷えた。アンの顔は笑っているが、目が完全に笑っていない。

よくよく見れば・・・いや、当たり前だが仕込み中の料理が床に散乱していたり、ほこりやごみが入ってしまったらしい。

 

「厨房でオイタしたなら、ちゃんと躾しなきゃね・・・あんたたち!例のアレを用意しなさい!!」

 

その言葉で料理人たちが即座に何かを用意してきた。トランクケース二つほどなのだが、料理人たちがなぜか異様に興奮している。

この状況でラバックもシュラも、なぜか暴れていないタツミも寒気を感じる。

 

「さて、と・・・」

 

アンは懐から目にもとまらぬ速さで”何か”を取り出してシュラとラバックの首元に刺した。どうやら針のようなものらしい。

 

何かを刺されたと分かったが、分かった時点でラバックとシュラは体が痺れてその場に倒れこむ。

・・・なにかしらの麻痺毒が塗られているようだ。

 

「厨房で暴れるなって言ってたのに、暴れたんだからそれ相応のことをしてもらうわよ」

 

トランクケースから取り出されたのは・・・そう、メイド服である。

 

「そうそう、これだけじゃあ無いわよ。きっちり上から下まで着てもらわなくちゃ」

 

なお、メイド服と共に女性ものの下着も取り出された。

 

 

 

その瞬間、自分たちが「何」を「される」のかを理解した。

 

 

 

「タツミ!!!助けてくれ!!!」

「え、えーと、俺は暴れてないし・・・武器もないし・・・」

「いいから!!なんとかほらあの、弁明してくれよ!!」

「ごめんラバ・・・俺、マインのために綺麗な体で帰りたいんだ・・・」

「裏切り者ォォォォ!!!」

 

ラバックの必死の訴えにも関わらず、タツミは必死に視線を逸らすしかなかった。ここで庇えば確実にタツミ自身も「それ」を着ることになる。

 

女装だけならまだいいだろう、そう、女装だけなら。

 

だがさすがに下着はだめだ

何か大事なものが無くなりそうな気がする

 

「オイ!!ナイトレイドは一連托生なんだろ!?お前もやれ!!!!!

 

もうすでにシュラは着る着ないではなく、いかにして道連れを増やすかにシフトしたらしい。

 

「あら残念・・・シュラ、あんたはきっと嫌がりそうだからものすっごいの用意してたのに・・・」

 

なお、それは正しい判断だった模様

 

アン料理長がトランクから出した【更にスカート丈が短いメイド服with更に危ない女性ものの下着】にさらにタツミたちは戦慄した。

 

 

 

「いやだ!!俺はっ、俺は・・・マインのために男のプライドを守るんだアアアアーーーーッッ!!!」

 

 




アン料理長の出した麻痺毒の針

あれも帝具イーター・オブ・ラウンドの一つ。獲物をしとめる際に使う代物です。獲物は獲物でも野郎に女装させるために今回出した。

後悔はしていない

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