オネェ料理長物語   作:椿リンカ

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Q.どうして人間を殺してはいけないのですか?
A.相手も貴方も人間だからです


タツミは料理長と寝る前に会話する話

厨房でついどたばた騒いだ後、料理人達で厨房の後片付けや掃除をすることになった。

ただし、ラバックとシュラは料理長が最終的に腹パンで眠らせたため(※気絶させたが正しい)、料理長の自室に運ぶ事になった。なお、下着は免れたが女装はさせられた模様。

 

タツミもラバックを背負って運ぶ事になった。簡素な寝具を用意も手伝い、アンに言われて二人を寝かせた。

「さてと・・・アタシはちょっとここでやることがあるの。タツミちゃんは厨房で片付けを手伝ってあげて」

「はい。それじゃあ、終わったらまた戻りますね」

 

 

厨房の片づけと掃除は1,2時間程度で終わった。

タツミが思っているよりも、厨房の料理人たちはこの場所をとても大事にしているらしい。厨房自体は少し歴史を感じさせる古さがあるが、しっかりと手入れをされている。

食材の在庫管理、残った下ごしらえの確認などを終えると、タツミは先に部屋に戻るように言われた。

 

「でも、皆さんがまだ・・・」

「いいのよ。タツミちゃんは新人さんだしね」

「アタシたちはちょーっと今から新作コンペの試作とか、いろいろあるのよ」

 

「・・・」

 

この厨房にいる料理人の3分の一は、宮殿へ忍び込んで厨房に逃げてきた暗殺者やスパイらしい。元々は宮殿に居る悪人を殺すためにやってきたはずなのに・・・もともといる料理人たちと違いが分からぬほど、この厨房を_________料理を愛している。

 

それは素晴らしいことだとは、タツミは理解している。

少なくとも帝国で悪事を働いている人間に比べれば、自分の仕事に真摯に向き合っている姿はとても好感は持てる。

だが、それでも彼は解せない。

 

・・・この国がおかしいと思っているなら、協力してほしい、と。

 

「どうしたのタツミちゃん?」

「・・・いえ、じゃあ料理長に報告します。その、おやすみなさい」

『おやすみなさ~い』

 

 

 

「(アン料理長、もう寝てるかな・・・帝具を使った後は疲れるらしいし・・・)」

タツミはそんなことを考えながら、そっと部屋の扉を開ける。

・・・彼の予想は外れたようだ。アンは未だに起きているらしい。

 

机の傍にあるランプの灯りをもとに、何かを考えては羽ペンで何かをまとめている。机の上にはいくつか丸められた紙が置いてある。どうやら何度も書き直しているらしい。

 

「・・・あ、あの」

「・・・あら、タツミちゃん」

 

「片付けと掃除が終わって、その、先に戻らされました」

「あらそう。じゃあ寝てもいいわよ。ほら、ラバックちゃんとシュラの間空けてるし」

 

「は、はい」

 

ぶっちゃけ命を狙っている相手同士を雑魚寝させるのもどうだろうか・・・と、タツミは思うが、すぐに考えるのをやめた。

何よりアン料理長は大臣の息子の扱いが多少上手いようだし、ちゃっかり大臣の息子からも帝具を没収している。

 

「アン料理長はその・・・寝ないんですか?」

「アタシは献立の練り直しがあるもの。多少被害は少なかったけれど、コース変更しないといけないし・・・コース変更してもいい相手とそうじゃない相手もいるからね」

 

「・・・・・・そうなんですか?料理、どれも美味しいと思いますよ」

「ふふっ、褒めてくれてありがとう。でも、食べ物にアレルギーがあるとか、どうしても食べられない食材があるとか・・・そういうのも含めて考えてあるもの。食堂のメニューとは別に、兵士個人に用意してるのもあるからね」

 

微笑みを浮かべて返答するアンは、少し楽しそうでもある。

だが、アン料理長が自慢の料理を提供するのは好ましい人物ばかりではない。オネスト大臣やエスデス将軍のような・・・革命軍やナイトレイドにとっては敵対する外道畜生も含まれている。

 

「料理長、なんでそんなに・・・嫌な相手に提供する料理でも、真面目に料理をしようって思えるんですか」

「・・・そりゃあ、自分が大好きな仕事で、責任のある仕事場を任されてるの。私情を挟むような半端な真似はしたくないのよ。・・・まだまだ、究めてはないけどね!私もまだまだねぇ・・・」

 

困ったように答えるが、それでも彼の表情は多少明るい。

 

「・・・でも、半端だっていいじゃないですか。少なくともアンタはこの国がおかしいと思ってるし、許せないことだって・・・」

「・・・タツミなんでもイイトコどりってのはできないの。全部中途半端になるなら、自分の中で一つだけ譲れないものを守るべきよ。貴方だって、それが“革命”ってことでしょう?」

 

「それはっ、そう・・・ですけど」

「貴方は革命、私は料理、それだけよ」

 

一般論で正論だろう。たまたまタツミとアンは選んだものが違っただけだ。

タツミは偶々、帝国の闇を知って、レオーネと知り合っていて、そしてナイトレイドを選んだ。

アンは偶々、皇族に生まれて、厨房の料理長に弟子入りして、そして帝国の宮殿厨房を選んだ。

 

「・・・」

「・・・まっ、それにアタシだって大臣とそう変わりないわよ。大臣との約束で死体で料理作ってるし、大臣相手の脅しであいつの親族を殺したわけだし」

 

「変わりないって・・・いや、でも、アンさんは良い人じゃないですか」

「良い人はそもそも人を殺さないわよ」

 

その言葉にタツミは言葉を詰まらせた。

その言葉を否定したかったが、今の自分は・・・暗殺者である。自分の同僚たちは同じ殺し屋だが、善良な部分もある。

だが、そう・・・どんな理由があっても、人を殺すのは、罪なのだ。

 

「そもそも大臣が先帝と奥方を殺したのだって、確たる証拠はないのよ。料理に毒物はあったけど、大臣が入れたって証明ではないもの。・・・ま、そのあたりは皇帝継承の政争でほかの人間に押し付けられちゃったけど」

 

アンはそう答えつつ、「もう寝なさい、明日も早いわよ」とタツミに優しく声をかけた。

 

「・・・アンさん、貴方は良い人だと・・・俺は思います」

「・・・ありがとう。でもね、相手が悪人であっても殺すことはいけないことなの。人間にはやってはいけないことがあるのよ、タツミちゃん」

 

「・・・・・・」

「はいはい。さっさと寝なさい」

 

「・・・おやすみなさい」

「おやすみ、タツミちゃん」

 




アレルギーのある兵士や役人、貴族には専用メニューまで作っている帝国宮殿厨房兼食堂のクオリティ

なお、「ただたんに嫌いなもの」の場合はさりげなくメニューに組み込み食べれるようにしたりしている。
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