オネェ料理長物語   作:椿リンカ

9 / 25
Welcome to ようこそ オカマパーク


六日目の物語
ラバックとタツミはシュラと一緒に給仕をする話


昨晩の騒動から夜も明けて、翌日になった。

メニュー構成を変えたことを連絡し、朝から食事の支度が始まった。戦争にも近い厨房の忙しさではあったが、帝国宮殿の厨房はこれでもシフト制を導入している。

それほどまでに料理人(※オネェとオカマのみ)が宮殿に多数在籍しているということでもあるのだが・・・

 

手の空いている料理人や、今日は休日予定の料理人がタツミやラバック、シュラを確保している。

確保しているというよりは完全に着せ替え人形のごとく衣装を準備しているのだ。

 

それもそのはず、ラバックとシュラが厨房でどったんばったん大騒ぎしたのだから、メイド服ぐらいで済ませるはずもないし、彼らはそれだけで許すようなオネェやオカマではない。

オネェやオカマといった類の精神性を持つ者達が、ドラマや漫画に出てくるような寛容性のある人間ばかりではないのだ。

 

ただ、シュラに関しては大臣の息子であるということも考慮されて、人前の女装は止められた。

(あくまでも人前で、というだけあって自分たちが楽しむためなら殴られようが蹴られようが全力で女装させるのだが)

 

 

 

結果、ラバックは見事な女装技術によって可愛らしいメイド服を纏ったメイドに変身していた。

 

「今日だけになるけど、料理を運んでくれるラバ子ちゃんにタツミちゃん、あとはシュラよ」

 

アン料理長及び休みの料理人、シフトの無かった料理人がドヤ顔をしていた。一仕事した料理人たちの前に、スカートの端を掴んだラバックが現れる。

なお、タツミとシュラも何故か給仕姿に着替えさせられていた。

 

ラバックも女装程度なら任務のためにできるが、よもや化粧から何やらすべてにおいて無駄な技術力を発揮された女装をするとは思っていなかったようだ。

今の彼は精神的に死にかけている。辛うじて下着は死守したのが唯一の救いだろう。

 

「やだ~~ラバ子か~わ~い~い~!」

「タツミちゃん初々しいわ~~今すぐぺろっと食べちゃいた~~~い!」

「ちょっとちょっと、シュラちゃんすごい似合ってる~抱かれたーーーい!」

 

野太い声での黄色い声援が飛び交っている中、タツミは着慣れない服装に落ち着かず、シュラは料理人たちを睨みつけ、ラバックは一人で「なんでこうなったんだよ?!」とツッコミを入れている。

 

「さて、アンタ達にはお仕事してもらうわよ」

 

 

 

午後三時も回り、皇帝陛下とオネスト大臣にアフタヌーンティーが振舞われる時間帯となった。

「オネスト、今日は料理長が“楽しみにしてくれ”と言っていた。どんな美味しいお菓子が出るのだろうな」

「いやぁ、分かりませんな・・・ただ、腕は確かですから」

そんな会話を交わす二人に紅茶が運ばれてくる。

「あぁ、これはありが・・・」

 

オネストの席に紅茶を持ってきたのは、自分の息子だった。

 

「・・・シュラ?」

「・・・親父、何も聞かないでくれ」

「察しました。証拠を掴まされた上にまさか厨房に喧嘩を売るなんてよほどの馬鹿ですね」

 

オネストの言葉に反論することなく耐えるシュラ。

なお、アンはすぐ近くに待機しているために何かやろうとすればすぐさま麻酔針が飛んでくるだろう。

 

オネストもそれが理解している上で・・・タツミへと視線を移した。

羅刹四鬼の一人であるスズカから得たナイトレイドの一人がもう一人の給仕として紅茶を皇帝陛下に運んでいるらしい。

 

アンが暗殺者や侵入者の類をこうして教育しているのは理解しているし、仮に暴れたりしたところでセキュリティは万全

・・・いざとなれば、自分も身を守ることは可能だ。

 

むしろオネストはアンのそういった試みを楽しんでいる。

自分の命を狙っているだろうに、絶対に手を出せない、出したところで返り討ちされる。そんな虫けらを眺める感覚なのだ。

 

「陛下も大臣も、お待たせしましたわ」

 

アンが女装したラバックと共に苺のタルトを持ってきた。

皇帝陛下はすぐに喜ぶが、ラバックの姿を見ると少しだけ頬を赤らめる。

 

「新しい侍女か?」

「えぇ、ラバ子ちゃんです。新しく入ったんですよ」

「そ、そうか・・・」

 

皇帝陛下の様子を見て、オネストは「陛下?」と声を掛けた。

 

 

「・・・こんな可愛らしい侍女もいるのだな」

 

 

「そいつは男だ」とタツミとシュラは叫びそうになるのを我慢するのがやっとだった。

 

 

「あらぁ~、陛下はラバ子ちゃんみたいな子が好みなんですね!」

「いっ、いや、好みでは・・・ただ、その、可愛らしいと思って」

 

頬を赤らめる皇帝陛下を少しだけからかって、アンはタツミたちと共に席を外すことになった。

なお、部屋から出た瞬間にシュラがあからさまに頭を抱えて呻き始める。自分の父親に更に失望されたと思っているのだろう。

 

「今日はお疲れ様。で、どうよ、タツミちゃん」

「え?あぁ・・・その、皇帝陛下、思ったよりも子供だったし・・・オネスト大臣、余裕そうだった」

「そうそう、貴方の敵はあれよ。下手に肝が据わってるからね」

 

そんな会話をしていて、タツミはふと気が付いた。

 

「そういえばラバ、お前は緊張とかしなかったか?」

「・・・」

 

「・・・ラバ?」

「・・・タツミ」

 

「なっ、なんだよ」

 

 

「俺、可愛いのかな」

 

 

「戻ってこいラバアアアアア!!!!!その道はだめだ!!!!お前にはナジェンダさんがいるだろしっかりしろ!!!!!!」

 




そろそろお気づきの方もいると思いますが、「処刑場編」が無いので原作からちょっと離れるよ!!!
  1. 目次
  2. 小説情報
  3. 縦書き
  4. しおりを挟む
  5. お気に入り登録
  6. 評価
  7. 感想
  8. ここすき
  9. 誤字
  10. よみあげ
  11. 閲覧設定

▲ページの一番上に飛ぶ
X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧 ※ログインせずに感想を書き込みたい場合はこちら
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。