隣の男子はよく分からない男子だ   作:刹那的

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♯09 女心あれば男心あり。

 

 

ある日の放課後。

わたしとみなぎがミスドでドーナッツを食べている時のこと。

 

「皐月さ………最近、楠木君とやけに仲良いよね」

 

「ムグッ!?」

 

みなぎから突拍子もない質問を受けた。

 

「ゴホッゴホッ!」

 

「ちょっと皐月、大丈夫!?」

 

わたしはドーナッツが喉に詰まったのでカフェオレでそれを無理やり飲み込む。

 

「ぷはっ。 ………みなぎ、アナタ何を見てそう思うの?」

 

ジロリとわたしはみなぎを睨み付ける。

 

ひッと、みなぎが短い悲鳴をあげた。

………そこまで怯えなくてもいいじゃないの。

 

「だだだ、だって皐月、最近になって楠木君とよくお話してるじゃない………」

 

「…………たまたまでしょ。 その…、席も隣同士だし」

 

そんなに頻繁には会話なんてしていない。

…………まぁちょこっとだけよ?

図書委員の時はそこそこ会話しているけど、教室内でアイツと会話は殆どしない。

それにわたしの足とか胸とかチラチラ見てくるエロ男子とは会話なんてしたくない。 本当よ?

 

………おかげでわたしは毎日足とか肌のケアを気を付けないといけないし。

 

「えー? 皐月、前まで楠木君とお喋りなんてしてなかったじゃん」

 

みなぎはそこで一端言葉を切り、

 

「やっぱり、楠木君の妹ちゃんへのプレゼント選びの時に何かあったの? あの後からだよね? 皐月と楠木君が仲良くなったの………」

 

まただ。

事ある毎にみなぎはこの話題を持ってくる。

 

あの『買い物』の次の日はみなぎと遊んだのだが、まぁ楠木との買い物はどうだったのかを事細かに説明させられた。

 

わたしは最近更に折り込んみを入れたスカートから伸びる足を組み換える。

 

「良い、みなぎ? 前にも言ったけどわたしと楠木の間には何もないの」

 

「えー!? だって………」

 

「だってじゃないわよ。 楠木を見てみなさい。 顔が良い訳でもない。 勉強は………まぁそこそこのレベルだけどアイツの会話は基本的にアニメや野球のことばかりでワンパターンじゃない。 はっきり言えば子供よ子供。 それに今日のアイツ見た? 授業中にシャーペンを7回も落としていたのよ。 あれ、絶対わざとよ。わざと。 普通、7回も落とさないわよ。 シャーペン拾うふりしてわたしの足を見ているに違いないわ。 視線もヤラしければ平気でヤラしい話もするようなスケベな男。 それが楠木よ。 あんな男子とこのわたしの間に何があると思う?」

 

完璧にみなぎを論した。

これではみなぎも反論の余地はないだろう。

それに、わたし青柳 皐月はそこそこ美人だ。

あんな顔面偏差値ぎりぎり平均点のお子様楠木と何があるって言うよ。

 

わたしは楠木 京弥が嫌いなの。

 

ふふん、とわたしは鼻で笑いながらドーナッツを頬張る。

 

対してみなぎはコーラをぶくぶくとさせながらこう言った。

 

「……………皐月?」

 

「何よ?」

 

「楠木君の事、良く見てるね」

 

わたしが再び喉を詰まらせたのは言うまでもないだろう。

 

 

※※※※※

 

 

木曜日の放課後。

ガラガラ、と音を経てながら図書室の扉を開ける。

 

「よっ」

 

楠木はいつものように先に受付の席に着いており、わたしに軽く挨拶をする。

 

わたしも会釈を返して「貸出係」の席に座る。

 

窓の外からは雨の降る音が聞こえる。

 

この3ヶ月、まぁ正確には毎週木曜日だけだが図書委員の仕事をする上で気が付いた事がある。

それは雨の日は図書室を利用する生徒が激減する事だ。

晴れの日でもそこまで利用する人は少ないが雨の日は輪をかけて少ない。

 

雨だから皆早く帰るのだろうか?

わたしが理由を考えた所で他の人の気持ちが分かる訳がない。

 

 

そう、当たり前だがわたしには他の人の心が読める能力なんてないのだ。

 

 

誰も来ない図書室でわたしと楠木は共に時間を過ごす。

 

雨音と吹奏楽部の演奏がBGM。

 

楠木は小説を読み、わたしも図書室から借りた本を読んだりスマホを操作したりする。

 

楠木がたまに話し掛けてくるが直ぐに会話は途切れる。

 

だけど、わたしに取っては、気まずい空気や、ギスギスした空気ではない。

 

ゆっくりと、優しい、まどろみのような。

そんな空間。

 

嫌いな男子が隣に居るはずなのに。

 

わたしに取っては別段、悪くない時間。

 

なら………。 隣の彼にとって、この時間はどんな時間なのだろうか?

 

彼の横顔を見てみるが、当然ながら彼の考えなんてわたしには分からない。

 

 

※※※※※

 

 

午後、5時半。

 

図書室を閉める時間となったのでわたしと楠木が帰り支度をしている時だった。

 

図書室の扉が勢いよく開いた。

 

「良かった~。 まだ開いていた」

 

肩で息をしながら1人の女子生徒が入ってきた。

ブラウスのリボンと上履きの色から同学年の女の子だとわたしは直ぐに理解した。

 

それは向こうの女子も一緒だろう。

 

「ごめんね! まだ本の貸出ってやってくれる?」

 

わたしにそう言った。

 

「ええ、大丈夫よ」

 

時間的に言えば本当はアウトだがそこまで鬼ではない。

わたしがそう思っていると、

 

「あれ? 鈴木じゃん」

 

楠木がその女子へ声を掛けた。

 

「え? あ! 楠木! アンタ何やってんの?」

 

「俺は図書委員なんだよな~、これが」

 

「は?(笑) 楠木、図書委員なの!? マジウケる!」

 

どうやら、楠木とこの女子、鈴木さんは知り合いのようだ。

 

彼らはしばらく談笑を始める。

 

先程までの図書室はもうそこにはない。

彼らの話し声で埋めつくされる。

 

楠木もさっきまでは静かにしていたのに今は笑顔で鈴木さんと話している。

 

わたしとはあまり喋ってないのに………。

 

鈴木さんは楠木と話した後に料理の本を受付の席へ持ってきた。

「今日さ、友達と夕御飯作る約束して私が本を借りる予定だったのに忘れちゃってさー」と、鈴木さんは言う。

 

本を借りた鈴木さんは楠木に別れの挨拶と、わたしには軽くお辞儀をした後に図書室を出て行った。

 

また図書室が静まりかえる。

 

「すっげーハイテンションな女だっただろ?」

 

楠木は笑いながら言った。

 

アナタも大概でしょ、とわたしは心の中でツッコミを入れるが言葉には出さなかった

 

「………そうね」

 

そんな言葉を出すので精一杯だった。

 

彼はわたしのような無愛想女子より、鈴木さんのような元気な女の子が好きなのかしら?

 

そんな想いがわたしの中で膨らんでいた。

 

 

※※※※※

 

 

「俺、職員室にカギ返してくるわー! バイバイ青柳!」

 

図書室の扉の前で楠木と別れる。

いつも彼がカギを返してくれる。

 

たまにはわたしが返した方がいいのかしら?

………来週はその提案をしてみよう。

 

わたしは昇降口に向かう。

靴を履いて傘立てから自分の傘を取ろうと傘を選ぶが―――。

 

あれ?

わたしの傘がない。

 

もう一度探すが、やはり見当たらない。

一応別の傘立てもさがしてみるが何処にも見当たらない。

 

…………最悪。

 

何故か今、わたしはブルーな気持ちなのに傘を盗まれるなんて追い討ちもいいところだ。

 

赤くて可愛らしい、結構お気に入りの傘だったのに………。

 

ザー、雨の音がなんとも哀愁を漂わせる。

 

どうしよ?

別の傘を勝手に使おうかしら?

でも今度はその傘の持ち主が傘を盗まれる無限ループに突入するし…………。

 

職員室に置いてある学校用の傘があることにはあるが、あの傘はダサくて使いたくない。

 

背に腹は変えられないのだろうか?

 

わたしが途方に暮れている時だった。

 

「あれ? 青柳どしたん? 帰らんのん?」

 

その声を聞いて身体が反射的に振り替える。

 

そこには居たの、やはり楠木だった。

 

「………傘ねぇの?」

 

楠木は靴へ履き替えながらわたしに近づく。

 

「ええ、どうも盗まれたみたい」

 

「うわ! そりゃ災難だったな!」

 

楠木はそう言うと傘立てを漁り、

 

「えっと………、あったあった! はい、青柳!」

 

1本の傘をわたしに渡してくる。

 

「俺のだけど貸してあげるよ!」

 

と、ニコニコ笑顔の楠木。

 

「え? でも………」

 

わたしは雨が降る校庭へ視線を伸ばす。

 

「あー! 俺は大丈夫だよ!」

 

楠木は鞄から折り畳み傘を取り出す。

 

「テケテケーン! 折り畳み傘~!」

 

ドラえもんが秘密道具を出す効果音と声を真似る。

が、余りのクオリティの低さにわたしは思わずクスクスと笑ってしまう。

 

「え? どうどう! 似てた? 似てた?」

 

「全然似てないわよ」

 

「えー!? そーかー?」

 

わたし達はそんなやり取りをしながら笑い合う。

 

「なぁ青柳、帰ろうぜ!」

 

「ええ」

 

傘を差し、わたし達は口を合わせた訳ではないのに同時に歩き出した。

 

何となくだが『一緒に帰る雰囲気』だとお互いが感じていた、と思う。

 

楠木と一緒に肩を並べての下校。

 

まさか、コイツと2人だけで帰る日がくるなんて思いもしなかった。

 

楠木のたわいもない話をわたしは相変わらず「ええ」か「そう」と、相づちをするだけ。

 

わたしにもっと会話力があればこの会話を盛り上げる事ができるのかしら?

さっきの鈴木さんのように…………もっと楠木が笑ってくれるのかしら?

 

そう思っていると、

 

「な、なぁ青柳」

 

「なに?」

 

「その、さ………腹減らない?」

 

楠木は頭をガジガジ掻きながらそう言った。

 

「え?」

 

「いや、あの、俺、ちょっと腹減ってさ………どっか寄りたいな~ってさ……………」

 

楠木は下を向きながら小石を蹴飛ばした。

 

「は? ………え?」

 

それってわたしと一緒に何か食べに行くって事………?

 

「や、青柳がさ、暇だったらって話しでさ、1人で飯食べに行くのも………なんじゃん?」

 

………まぁ、わたしも1人でミスドに行こうとは思わない。

 

「ど、どう?」

 

楠木がわたしの顔を覗き混んで聞いてきた。

 

楠木と目が合う。

 

わたしは傘で顔を隠して、

 

「………ま、楠木君が行きたいのなら仕方ないわね」

 

そんな強がった台詞を吐いた。

 

顔が熱い……………。

 

「うんうん! 行こうぜ青柳!」

 

彼は満面の笑顔でそう言った。

 

そんな笑顔を見ていると、わたしも何故だか嬉しく思う。

 

「………それで何を食べに行くの?」

 

ミスド? 男の子だからマック?

 

「んとね、カレー!」

 

「は?」

 

晩御飯前なのに?

 

つくづく思う。

 

この隣の男子が何を考えているのか分からない、と。

 

「こっちこっち!」

 

笑顔で手招きする楠木の後をわたしは追い掛けた。

 

 

 




こんにちは! 刹那的です。

少し長くなりそうだったので今回はこの辺で切ろうと思います。
次回はお食事会(?)を書こうと思います。

このような駄文を読んでいただき本当にありがとうです。
また感想やお気に入り登録をして頂いた方々も本当にありがとうです!

少しでも、楽しい文を書ければな、と思います!

でわでわ!
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