隣の男子はよく分からない男子だ   作:刹那的

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♯10 笑顔のアイツに副が来る?。

 

楠木と共に傘を差しながら、高校近くの商店街を歩く。

 

時刻は午後6時過ぎ。

 

田舎町の商店街だが会社帰りのサラリーマン、買い物をする主婦でそれなりに賑わっている。

 

「ここだよ!」

 

そう言いながら楠木は足を止める。

どうやら目的地にたどり着いたようだ。

 

わたし達の目の前には古ぼけた木造の建物。そして看板には『喫茶店 オリオン』と書いてある。

 

本当に営業中なの? と、疑いたくなる位にお店の外見は古し、静かだ。

 

「ここなの? 楠木君、カレーを食べるって言わなかったかしら?」

 

「ここの喫茶店のカレーが上手いんだよ!」

 

成る程ね。 てっきりCoCo壱とかカレー専門店に行くと思っていた。

 

カラン、コロン。

 

喫茶店のトビラに呼応して錆び付いたベルが鳴った。

 

思った通り、お店の中も随分と古い。

少し暗めの照明によく分からない洋楽(?)が流れるラジカセが置いてある。

それにカウンター席は勿論、テーブル席にもお客さんは1人もいない。

 

………大丈夫なの、このお店?

ちゃんとした料理が出てくるのか不安になってきた。

 

「いらっしゃいませ」

 

暗がりのカウンターから声が聞こえた。

そこに若いお姉さんがエプロン姿で立っている。

 

驚いた。

正直、この古びた喫茶店の店員さんは初老のおじさんとかおばちゃんが切り盛りしていると思っていた。

美人で若い店員さんとか意外にも程があった。

20代前半位だろうか?

 

「あら、また来てくれたのね」

 

店員のお姉さんがわたし達を見て声を掛ける。

わたしは当然ながら初来店なので声を掛けられたのは楠木だろう。

 

「はい! ちょっとお腹空いたので来ちゃいました!」

 

楠木はそう答えながらテーブル席に腰掛けた。

 

わたしもテーブルを挟んだ楠木の向かいに座る。

 

店員のお姉さん(以降:お姉さん)はおしぼりとお冷やを持ってきてテーブルに並べる。

 

その時にお姉さんと目が合った。

 

じーッと見つめられる。

 

「えっと………わたしの顔に何か付いてますか?」

 

わたしはたまらずに声を出した。

 

「あ、ごめんさないね」

 

お姉さんはクスクス笑い、今度は楠木の方を向いて、

 

「今日は可愛い彼女を自慢しに来たの?」

 

「ブホッ!?」

 

ゲホッゲホッ! 楠木は飲んでいた水が気管にでも入ったのか盛大に咳き込んだ。

 

は、は!? 辞めてよ!

わたしが楠木の彼女とか………し、死んでもごめんよ!

こんなエロ男子、わたしの眼中にないのよ!

 

「あらあら、女の子の方が先に顔が真っ赤ね」

 

お姉さんは更に爆弾を投下した。

 

わたしは恥ずかしさから下を向いて水をちびちびと飲んだ。

 

と、咳き込みが終わった楠木は腕で軽く口元を拭った後に、

 

「俺とこの子はそんなんじゃないですよ! 彼女じゃないッスよ!」

 

ぶんぶんと頭を振りながら必死にわたしとの関係を否定した。

 

……………そんなに否定しなくてもいいじゃない。

 

「な、なぁ青柳?」

 

楠木がわたしに同意を求めてくる。

 

これは卑怯だ。

楠木からの問いを否定出来る訳ないじゃない………。

 

否定すればわたしは彼女だと認めてしまう。

 

早い話が1卓問題だ。

 

「………ええ、わたしは彼女ではありません」

 

わたしは楠木からの問い掛けを肯定した。

か細い声で………。

 

わたしはチラリと楠木の様子を伺うと、全く一緒のタイミングで彼と目が合った。

 

わたし達は直ぐ様お互いに目を伏せた。

 

「あらあら、初々しいわね」

 

お姉さんのその声に益々わたしは顔が熱くなるのを感じ、お水を一気に飲み干した。

 

お姉さんはクスクスと笑い、わたしと楠木は顔を赤くして俯く。

 

何とも言えない恥ずかしい空気が流れる。

 

「あ、あの! 注文いいですか?」

 

そんな空気に耐えかねて楠木が声を出した。

 

「はいはい、 君は………いつものカレーかしら?」

 

「はい! それでオッケーです。 青柳は何にするの?」

 

「え? ええ、少し待ってもらえるかしら」

 

わたしは机の縁にあるメニューを広げた。

 

ナポリタンやパンケーキ。 魅力的な名前が並んでいるが、夕飯前なので今、ここでお腹を満たす訳にはいかない。

既にお母さんは夕飯の支度をしているはずだから家に帰って食べないのは母に失礼だ。

 

「このカフェオレとトーストでお願いします」

 

わたしは軽い物をチョイスした。

 

「カレーとカフェオレとトーストですね」

 

これなら直ぐに用意出来るからね、とお姉さんは言いながら厨房へと向かった。

 

楠木と2人きりとなる。

 

わたしは空のグラスをもう一度口へ持っていった。

 

「き、今日はなんだか熱いな」

 

楠木は襟元をパタパタと扇ぐ。

 

彼の鎖骨がチラチラと見え隠れする。

男の子の鎖骨………………。

 

「………え、ええ。 そうね」

 

完全に目が泳ぎながら、わたしはそう答えた。

 

 

※※※※※

 

 

「あ、青柳はさ、トーストだけで腹減らないの?」

 

楠木は少し声が裏返りながら質問を投げてきた。

 

「え、ええ。 夕食前だからこの位にしておかないとね。 楠木君はカレーを食べても平気なの? 夕食食べれるの?」

 

「カレーなんてオヤツだよ! 帰ってからちゃんと晩飯は食うよ」

 

「え? その………楠木君、運動部じゃないわよね?」

 

「そうだよ、てか青柳と図書委員やってるじゃん」

 

「個人的に運動とかしているの?」

 

「運動? いや、何もしてないよ」

 

「………毎日カレーを食べた後に夕食も取っているの?」

 

「毎日カレーじゃないけど、体育がある日はすき家とかマックとか寄ってから帰るね! 晩飯だけじゃ腹減るし」

 

「………そう」

 

わたしは楠木の顔や胸元、半袖から伸びる腕を見る。

 

楠木は中肉中背だ。 体操服姿からも彼が太っていなのは分かる。

 

―――どんだけ燃費がいいのよ! この男は!?

 

わたしがスイーツとかを食べ過ぎた日は夕食を少なくしたり、ウォーキングや筋トレでカロリーを無理やり消費する努力をしているのに!!!

 

………うらやましい…。

 

お腹のお肉をわたしは摘まんだ。

 

このお肉が目の前の男子のお腹に移れ!

 

魔法を唱えるがわたしは魔法使いではなかった。

 

 

※※※※※

 

 

 

楠木と世間話をしているとお姉さんが料理を運んできた。

 

「はい、お待たせしました。 君がカレーで、『お友達』の子はトーストとカフェオレね」

 

お姉さんはそう言いながら料理を並べて、空いたグラスにお冷やを注いだ。

 

「あ~、腹減った! いただきま~す!」

 

楠木が小学生みたいに手を合わせてそう言った。

 

「………いただきます」

 

わたしも何年かぶりに手を合わせた。

 

楠木はスプーンから溢れる程にすくうとそれを大きく口を開けて頬張る。

 

「やっべー! マジうめぇ! 青柳は?」

 

トーストに旨いも不味いもないのだけれど。

 

チラリとカウンターに目をやる。

お姉さんはこちらに背を向けて、カチャカチャと食器を洗っているようだ。

 

「ええ、美味しいわね」

 

お姉さんの手前、便宜上そう答える。

 

「だろ! 美味しいよな!」

 

楠木はそう笑顔で言うとまたカレーを食べ始める。

 

………本当に美味しそうに食べるわね。

 

カレーを笑顔で嬉しそうに食べる楠木を見るのは何故か飽きない。

 

間抜け面の楠木が面白いから飽きないのかしら?

 

うめぇ、うめぇと羊が鳴いているように楠木はカレーを食べている。

そんな彼をチラチラ見ながらわたしはトーストをカジる。

 

と、カランと音が鳴る。

楠木が机の下にスプーンを落としたようだ。

 

「あ、やっべ」

 

楠木はそう言うと机の下へ潜り込む。

 

わたしはトーストを食べ終え、カフェオレを飲んでいると、

 

 

ゴンッ!!!

 

 

そんな鈍い音と共に机が揺れた。

 

この流れだ。 どうせ楠木が机に頭をぶつけたのだろう。

 

わたしは机の下を覗き込み、

 

「ちょっと楠木君なにやって――――」

 

楠木と目が合う。

 

「「…………あっ」」

 

お互い、そんな声を出した。

 

わたしは全てを悟った。

 

わたしはスカートで椅子に座っている。

そしてわたしの正面に座る楠木は机の下に居る。

と、言うことは楠木の目線の先にわたしのスカートがある流れで………。

 

!!!!!!!!!

 

わたしはスカートを両手で押さえて楠木を睨み付ける。

 

「うわあ!」

 

楠木はもう一度机に頭を打った後に勢いよく机の下から出てきた。

 

「あ、青柳! その、違うんだよ!?」

 

「な、何が違うのよ! この変態!」

 

「え、いや、嬉しかった!」

 

「はぁ!?」

 

人様のスカートの中を見といて「嬉しかった」ってなんなの!?

 

「ご、ごめん! 間違えた! や、嬉しかったのは本当だけど、その、わざとじゃないんだよ!」

 

嬉しい、嬉しい連呼しないでよ! 女の子の下着見た感想が嬉しいって………このエロ男子!!!

 

「………『見た』のは認めるのね?」

 

「―――――はい…」

 

わたしは自分でも顔が赤くなるのが分かる。

 

見られた見られた見られた見られた!!!!

恥ずかしいにも程がある!

このエッチ! スケベ! 変態!

もー、最悪!!!

 

 

………でも今日の下着はちゃんと可愛い下着だったから大丈夫なはず―――って! 何が大丈夫なのよ!!!

 

 

「ごめん………でも、本当にわざとじゃないんだ………ごめん」

 

ごめんよ~…と、楠木は目に見えて落ち込んでいる。

どうやら本当に反省しているようだった。

 

……………………。

……………………あ~もうっ!

 

そんな悲しそうな顔しないでよ!

わたしの方が被害者なのに、わたしが楠木をイジメてるみたいじゃないの!

 

 

アンタの落ち込んだ顔は見たくないのよ。

 

 

「………まぁ楠木君が反省してるようだし、今回は許してあげるわよ」

 

「え! ホント!? 許してくれるの?」

 

楠木は先程とは打って変わり表情が明るくなる。

 

「………えぇ、今回だけだからね? 次は許さないわよ?」

 

「うん! うん! 次は気を付けるよ! ホントにごめんね、青柳!」

 

いつものニコニコ笑顔に楠木は戻り、

 

「いや、ホントに良かった~。 俺、青柳に嫌われたらどーしよっかと思ってたんだ!」

 

ホッとしたように楠木はため息を吐いた。

 

は? わたしに嫌われてなんで困るのよ……。

大体、わたしはアナタが―――――、あれ?

 

 

わたしは楠木の何が嫌いだったのかしら?

 

 

にぱーっと笑っている楠木を見ながらわたしはそう思った。

 

 




こんにちは、刹那的です。

またまたわたしの文章力の影響で今回はこの辺で切ろうと思います。
今回は所謂パンチラ回ですかね(笑)

ラブコメは難しいです。

毎回こんな駄文を読んでいただき本当にありがとうございますm(__)m

でわでわー!
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