隣の男子はよく分からない男子だ   作:刹那的

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♯07 女子も歩けば男子に当たる。ラスト

 

「やっぱりそのプレゼントは違うわ。 もう一度最初から選びましょう」

 

わたしは彼を呼び止める。

 

「ん? これじゃダメなの?」

 

当然の事ながら楠木は疑問を口にする。

 

「ええ。 よくよく考えてみたらそれではなかったわ」

 

「そのプレゼントは適当に選んだからダメ」と、本当の事は言えない。

 

「そっかー! んじゃこれ、払い戻しした方がいいな!」

 

「………そうね、さっきのお店に戻りましょうか」

 

何故、彼はそんなにもわたしを信用するのだろか?

わたしと楠木は信頼関係が築ける程、会話した事がないのに。

 

「青柳」

 

「なに?」

 

「気が付いてくれてありがとな!」

 

「………ええ」

 

楠木はまた笑顔でわたしに「ありがとう」と言う。

そもそも払い戻しになる原因となったのもわたしだ。

なのに彼は嫌な顔をする訳でもなく、わたしにお礼を言った。

 

もし仮にわたしと楠木の立場が逆だったら、わたしは笑顔で彼にお礼が言えるとは思えない。

 

―――彼は今、心の中ではどう思っているのかしら。。。

 

 

※※※※※

 

 

ショッピングモールへ戻り先程、ピンクのスカーフを買ったお店で商品を払い戻す。

 

わたしがレジに持って行き、店員さんへ謝ろうとしたが楠木が「青柳は手伝ってくれてんだから悪くないよ!」と言った。

でも流石に楠木1人に任せるのは居たたまれないのでわたしも楠木の隣に立ち、一緒に頭を下げた。

 

「それじゃ、どーゆーのが良いのかな?」

 

お店を出た所で楠木が聞いてきた。

 

「逆に聞くけど楠木君はどんなプレゼントをあげたいの?」

 

食べ物をあげたいのか服をあげたいのか、それが分からないとわたしも選びようがない。

 

「えっとな、妹のお洒落に役に立つモノをあげたいな!」

 

………ああ、そう言えば『妹も中2になっておしゃれとか化粧とかも少しずつ覚えてきてんだ。だから少しでも力になりたい』何てセリフを言っていたわね。

 

「なら、服とかアクセサリーとかその辺りでいいかしら?」

 

「おう!」

 

「………予算は?」

 

お金の話は少しだけ聞きにくいがこれも大事な事だ。

 

「7000円位なら出せれるよー」

 

ふむふむ。

わたしは少し考えて、

 

「ねぇ、名前教えてもらっていい?」

 

「え? 俺は楠木 京弥だよ?」

 

違う! アナタの名前じゃないわよ!

頭の中でツッコミを入れる。

 

「………楠木君じゃなくて妹さんのよ」

 

「あ、何だ妹のか! 妹はね、京子(きょうこ)!」

 

兄が京弥だから京子なのかしら?

なら、ご両親のどちらかの名前に『京』が付いているのかな?

最近、何故か人の名前の由来を考えるのが癖になってしまったが今はそれは置いておきましょう。

 

「その京子ちゃんの写メとかある?」

 

「写メ? あるよー」

 

ちょっと待ってな~。と、楠木はスマホをポチポチと操作して、わたしに画像を見せる。

 

スマホの画面には楠木と一緒に写る彼の妹の姿。

楠木はイケメンでもないが京子ちゃんの方は可愛い顔立ちをしている。

しかしやっぱり兄妹だ。

どことなく似ているし、京子ちゃんの笑顔がつい先程見た彼の笑顔にそっくりだ。

 

「京子ちゃんの私服の写メとかある?」

 

「そんなにキョーコの写メは持ってないからあったかな~………」

 

楠木から京子ちゃんの写メを4枚程見せてもらいこれで弾切れのようだ。

 

でもこれで京子ちゃんの顔や体型が大体把握できた。

しかしどれも部屋着や運動会の時の写メでわたしが求める情報は手に入らなかった。

 

「ねぇ、京子ちゃんの服装とか好きな色とか分かる?」

 

楠木への尋問はまだまだ続く。

早い話がわたしは彼の妹に付いて何も知らないのだから。

 

 

※※※※※

 

 

それからわたしと楠木はショッピングモール内を歩きに歩いた。

 

楠木へ京子ちゃんが普段どんな服装をしているかを聞いてみたが、「フリフリが付いていないヤツ」とか「男っぽいけど女っぽい格好」とか全くもって的が絞れない返答をしてくる。

 

わたし達はレディースの服が売っているお店に入り、楠木に京子ちゃんが普段着ている服を選んでもらう。

その時に、女性店員から「彼女さんへのプレゼントですかー?」と楠木が質問を受けていたが、わたしが直ぐに「違います。それにわたしは彼女ではありません」と答えた。

 

次は本屋に立ち寄る。

ここでは京子ちゃんが普段読んでいるファッション雑誌を楠木から教えてもらう。

わたしもそうだがファッション雑誌等は大体居間に置きっぱなしにしているので楠木も見たことがあったようだ。

 

次は靴屋だ。

わたし達はモール内を3階へ行った後に1階へ行き、今度は2階と計画性もないくらいに行き当たりばったりでお店を廻る。

 

気が付けばわたしは楠木と肩を並べてショッピングモールを歩いていた。

 

 

※※※※※

 

 

わたし達は休憩の為にモール内のカフェの席に座っている。

わたしは紅茶、楠木はカフェオレを飲んでいる。

 

椅子に座ったままわたしは考える。

カチリ、カチリとジグソーパズルを組み立てるように会った事もない「楠木 京子」の人物像を形成していく。

 

彼女はカジュアルなファッションを好み、服の色も白や青、黒などシンプルな色を選んでいるようだ。

『ガキの頃はフリフリな格好が好きだったのに最近は大人っぽい服装するんだよなー』と、楠木は言う。

 

京子ちゃんはカジュアルなファッションに変えて大人っぽく自分を見せたいのかしら?

まぁこの辺りはわたしの想像でしか語れない。

 

カジュアルな服と言っても正直服や靴をプレゼントしたとしてもわたしと楠木が選んだ物が100%京子ちゃんが喜ぶ、とも言い難い。

京子ちゃんの中でもカジュアルな服の中でもまた好みがあるのだろうし。

 

と、不意に視線を感じたのでそちらを見る。

わたしの正面に座る楠木と目が合った。

 

「………なに?」

 

わたしが言うと楠木は、

 

「あ、いやいや何でもないよ!」

 

と、彼は慌てて視線を反らした。

 

わたしが真剣に京子ちゃんへのプレゼントを考えているのに何わたしを見てるのよ。

相変わらず楠木の思考はよく分からない。

ま、とにかく今はプレゼントね。

 

わたしは腕を組んで考える。

 

服もダメ、香水も好みの匂いが分からないからダメ。

と、なれば残されたのはもっともポピュラーなプレゼントだ。

 

「楠木君、プレゼントが決まったわ」

 

「え、なになに?」

 

「アクセサリーにしましょう」

 

 

※※※※※

 

 

それからわたし達はまたモール内を歩き廻る。

 

このモールにはアクセサリーショップが4店舗ある。

それらを1件ずつ廻り店員さんの意見を聞いたり楠木の財布と相談したりしながらプレゼントを選ぶ。

 

そこでもやはり「彼女さんへのプレゼント選びですか?」と営業スマイルの女性店員がわたしと楠木を交互にみながら質問してくる。

 

「いえ、この人の妹へのプレゼントです。 わたしは彼女ではありません」

 

今日、何度目かの同じ質問にわたしは即答した。

 

当たり前だ、わたしは彼が嫌いなのだから。

 

 

※※※※※

 

 

『午後 5時 42分』

 

「え?」

 

スマホの時計を確認してわたしは驚いた。

 

確か、みなぎがお母さんから帰宅命令の電話を受けていたのが午後2時半頃だった。

つまりわたしは3時間近くも楠木と行動を共にし、プレゼントを選んでいたのだ。

 

図書委員の仕事で楠木と一緒に居るのは精々1時間半だ。

こんなにも彼と一緒に行動したのは初めてだったので驚いた。

時間があっという間に過ぎた。

 

楠木はレジでプレゼントを買っている。

プレゼントは薄いピンクシルバーのハート型ネックレスをわたし達は選んだ。

これなら京子ちゃんの服にも合うだろうし、『ネックレス』というのは大人の階段を少し登った気分にもなる。

………これはわたしの個人的な経験談だが女子は皆こう思うのではないだろうか?

 

それにしても今日、3時間も楠木とモール内を歩き、悩んで選んだ結果『ありきたりなプレゼント』になったのでわたしは心の中でクスリと笑った。

 

「……………」

 

あることに気付く。

 

3時間も嫌いな男子と行動を共にしたのに不思議と嫌な気持ちではない事に。

 

何故だ?

何故わたしはプレゼントを選ぶのに時間も忘れて夢中になったの?

何故わたしは嫌な気分にならなかったの?

 

1人で悩んでも答えは出てこない。

 

「青柳、お待たせ!」

 

楠木が会計を済ませてお店から出てきた。

本当に嬉しそうにニコニコ笑っている。

 

「………楠木君帰りましょうか」

 

「おう!」

 

彼と肩を並べてショッピングモールの出口へと向かう。

 

―――本当に、不思議と悪い気分ではない。

 

 

※※※※※

 

 

ショッピングモールの外に出ると空が赤く染まっていた。

 

「あ! やっべ野球が始まるじゃん!」

 

楠木はスマホの時計を見ながら言う。

 

「野球、好きなんだね」

 

「おう、おもしれーよ! 青柳も見てみろよ!」

 

「………暇があればね」

 

「うん! なぁ、青柳」

 

「なに?」

 

「一緒にプレゼント選んでくれてありがとう!」

 

「………良いのが買えてよかったわね」

 

「これも全部青柳のお陰だよ!」

 

最初の、ピンクのスカーフを選んだ時も彼は「ありがとう」と口にした。

その時わたしは後悔の念からもやもやな気持ちとなっていたが………。

 

今は彼のお礼を正面から受け止めることが出来る。

 

「んじゃ青柳、また月曜日な!」

 

楠木はぶんぶんと手を振る。

 

「ええ、また」

 

わたしも軽くお辞儀を返す。

 

 

「今日は楽しかった!」

 

 

楠木はそう言うと走って駅の方へ消えていく。

 

 

楽しかった? わたしみたいな無愛想女子と一緒に居たのに?

楠木の様な元気な男の子がわたしと一緒に買い物して楽しかった?

 

―――わたしはどうだったのだろうか?

自分の事なのに自分の気持ちが分からなかった。

 

 

※※※※※

 

 

「ただいま」

 

家の扉を開けるとカレーの香り。

今日の晩御飯はカレーのようね。

 

わたしが玄関で靴を脱いでいると、

 

「あら、皐月おかえりなさい。 何処に行っていたの?」

 

お母さんが台所から出てきた。

 

「…………ミツバ図書で立ち読みしていた」

 

嘘は付いていない。

 

「皐月?」

 

「なに?」

 

「嬉しい事でもあったの?」

 

「………え?」

 

玄関の壁に掛かる鏡には、普段無愛想なのに、頬が緩んだわたしの顔が反射していた。

 

 




こんにちわ! 刹那的です。

今回もこんな読みにくい駄文を読んでくださり本当にありがとうございますm(__)m

相変わらずの誤字脱字の多い作品ですが暖かく見守ってくだされば嬉しいです。

でわでわ~!
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